ある晩.ホテルの一室で女が吊るされ,男(小松方正)が乱暴していた. 女はついに全裸にされ,男に犯された. 勢い余った男は女の首を絞め殺してしまった. 慌てて男は電話して垣内(佐藤京一)と山崎(江幡高志)を呼び出した. 早速垣内と山崎が問題のホテルに駆けつけ,女の死体を非常階段から運び出した. なんと男は警察署の署長で垣内と山崎は刑事だった. 女は前科三犯の浜田の妻だった.浜田が服役中に署長が強引に関係を結んでおり, 浜田はこのことを知らなかった.浜田は出所後,警備会社に勤めていた. その晩は浜田が夜勤なので署長が強引に浜田の妻を呼び出したというわけだ. 署長は服役中の犯罪者の妻に手を出すと言う悪い癖があった. こういう殺人も今回で2回目だ.前回は秩父の山の中に死体を埋めたが, 今回はもうその手は使えないだろう. そこで署長は,浜田の妻けいこのアドレス帳に載っている人物を, 犯人にでっち上げること作戦を発案した. 二人はやばいと躊躇したが,署長は山崎には定年後に自動車学校校長にすること, 垣内には空手道場を開く手助けをすることを約束した.
翌日.三人は城西署の署員だった.垣内は結城五郎に目をつけた. 独身者で身寄りもないので彼を捕まえても問題はないだろう.
さて「深大寺(調布)」そばの蕎麦屋でチャンプが園山に深大寺蕎麦を御馳走し,
仕事を売り込んでいた.
チャンプ「なあ,園やん,そこなんとかしたってえな.
このままでは干上がってしまうわ.仕事頼むわ.」
園山「いやあ,結構,結構.君達が忙しいようじゃあ,困るんだからね.
世の中,平和が何よりだよ.」
そこでチャンプは新聞を取り出した.
チャンプ「なあ,園やん,この事件はどうや.美人トルコ嬢謎の失踪.
貯金の3千万もドロン.背後に暴力団の影.どうや.」
くどいようだがこの頃はソープランドをトルコと呼んでおり,
ソープ嬢をトルコ嬢と呼んでいた.それはともかく,園山は冷たく答えた.
園山「その犯人は昨日上がったよ.君は新聞も読んどらんのかねえ.」
チャンプ「ほな,こらどうや.ええ,愛人バンクの経営者,
今度はホストクラブ経営.あかんはなあ.事件にならんわ.えーと,
そんだったら,それだったら,これはどうかな.」
園山は蕎麦を食べ終わってしまい,こう言った.
園山「小出君なあ,今日のところはこれで解散しよう.
うまかったよう,いずれまたね.じゃ,ご馳走様,お先ね.」
園山は帰ってしまった.
チャンプ「おい,園やん.園やん.鬼.冷血.」
その頃.E・Tは山崎と垣内に捕まっていた.検問に引っかかり, E・Tの車が止められ,車のトランクを開けてみると見たこともない女の死体が. E・Tはパトカーに乗せられ,城西署に連行されてしまった.
アジトにチャンプ,マリア,ヌンチャクが集まった.
チャンプ「結城が逮捕された.みんな知ってるな.」
そこへ園山がやって来た.チャンプは驚いた.
チャンプ「園やん.」
園山は無言だった.
ヌンチャク「園山さん,ゴッドはなんて.」
なおも園山は無言だった.
チャンプ「園やん,まさか.」
マリア「園山さん.」
ヌンチャク「言ってくださいよ,はっきり.」
園山「では,ゴッドのお言葉を忠実にお伝えしよう.
もし結城君がこのまま戻れないことになったら,
もし彼の口から我々の存在が明らかにされるようなことになったら,
迷うことなく,結城君を抹殺して欲しいと.」
ヌンチャク「冗談じゃないっすよ.俺,やらねえよ,そんなこと.」
チャンプ「ヌンチャク.」
チャンプはヌンチャクをたしなめた.
マリア「園山さん,それがゴッドの命令なんですか.」
チャンプ「そうだ.」
ヌンチャク「あんた,よくそんなこと,平気で.」
園山「甘ったれるんじゃない.自分達をなんだと思ってる.
君達は本来はこの世には存在しない,いわば日陰の人間達じゃないか.
法の裏をかく悪党どもにその日陰の立場から密かに制裁を加える.
しかし一度君達に不測の事態が起こった場合は,
自らの始末をつけねばならんことはゴッドと君達との間の暗黙の契約のはずだぞ.
だから,仔細の判断は君達に任せる.自分達で決着をつけるんだな.」
チャンプ,マリア,ヌンチャクは無言.園山も無言で去って行った.
チャンプ「やってみようやないか.できる限りの事は.」
E・Tを犯人に仕立て上げるため,山崎と垣内は暴力で拷問していた. 浜田けいこはアロハツーリストの客だった. 浜田と二人で海外旅行へ行くためにアロハツーリストへやってきたのだ. 山崎と垣内は,けいことE・Tが深い仲になり,邪魔になって殺した, という筋書きを書いていた.ついに山崎は漏斗にゴム管をつけ, E・Tの鼻の穴にゴム管を入れた.そして垣内が漏斗から水を入れて拷問した. その後,E・Tを留置場に閉じ込めてしまった.
霊安室で署長はいけしゃあしゃあと浜田に,
必ず犯人のE・Tに罪を償わせてやると言っていた.
しかし浜田はE・Tと浜田の妻けいこがそんな関係だったことが信じられなかった.
署長は山崎と垣内に浜田から目を離すなと命じていた.
城西署から出て,昼間から場末の酒場で飲んでいる浜田に,
早速チャンプが接触した.
屋台で浜田はチャンプにも三角関係が嘘じゃないかと思うと言った.
すかさずチャンプは何かおかしなことがなかったかと聞いた.
浜田は「まさか,あの署長.」と叫び,去ってしまった.
チャンプが屋台で支払いをしている間に,
浜田は山崎と垣内に轢き殺されてしまった.
チャンプ「くっそう.何しようとさらしおんねん,外道が.」
翌日.署長はE・Tに浜田が自殺したと伝えた.遺書にE・Tのことが書いてあった, E・Tを心底恨むと書かれていた,とも言った.その頃,マリアが城西署を訪れ, 垣内と山崎に会った.だが共犯容疑で取り調べたいと山崎に言われたので, マリアは退散した.その後,アジトでチャンプが, 浜田の轢き逃げ殺人のことを報告した.浜田は傷害の前科三犯だったが, 真面目に更生しようと警備会社に入ったばかり. さらにチャンプは城西署署長のことを報告した.名前は吉田やすあき. 更生者の面倒をよく見るという評判だったが,さらに突っ込んで調べてみると, なんのことはない,更生者の妻や愛人に言い寄っていたのだ. けいこはちょくちょく吉田に呼び出されていたという証言が得られた. 前科者を亭主にする妻や愛人は辛い. まして世話になった所轄の署長からの申し出を断ることは出来ないだろう. それが吉田の狙いだ.そしてチャンプは, 吉田の部下の垣内こういちと山崎かつとしのことも報告した. 荒っぽいやり口でホシを自白に追い込むためには, 半殺しの目にもあわしかねないという評判だ.
E・Tは垣内から「雨宮礼子からの差し入れ」のサンドイッチを渡した.
サンドイッチを口にくわえるのを見て,垣内は去ったが,E・Tは苦しみだした.
そしてE・Tは城西署から山崎と垣内に連れ出された.だが行先は病院ではなく,
採石場.そこへ吉田も現れた.あのサンドイッチは吉田が作ったもので,
毒入りだった.毒は死に至るほどではないが体をかなり弱らせる効果があった.
吉田はE・Tに拳銃を向けた.
吉田「結城,お前は急病を装い,病院に移送のチャンスを狙って逃亡,
そして山崎,垣内両刑事の制止も聞かずに抵抗,通り合わせた
わしの拳銃によってやむなく射殺,新聞記事はそうなるぞ.」
だが吉田が拳銃を撃とうとした瞬間,E・Tは立ち上がった.
E・T「お生憎だなあ.俺は一口もサンドイッチを食べてなかったんだ.」
吉田「結城!」
E・T「お前達のインチキな取調べだけでもいい加減反吐が出るって言うのに,
これ以上,毒入りのサンドイッチを食わされてたまるか!」
吉田は拳銃をぶっ放したがE・Tは逃亡.
そして吉田達三人をうまく巻いて逃げることに成功した.
アロハツーリストに垣内と山崎が現れた.
加代子「いらっしゃいませ.グアムでしょうか,サイパンでしょうか.」
垣内は警察手帳を加代子に見せた.
加代子「警察の方ですか.」
垣内「結城は来てるか?」
加代子「結城さんはそんな大それたことのできる人ではありませんのよ.
何かの間違いですわ.」
山崎「無実の人間がどうして警察を脱走するんだ.」
加代子「脱走?」
マリア「先日はどうも.あのう,結城さん,逃げたんですか?」
垣内「ああ.やっぱり奴が本星だ.匿っちゃいねえだろうな.」
チャンプ「匿うなんてそんな.お疑いでしたらどこでもどうぞ調べて下さい.
あ,あたし達は善良な市民ですからそんな物騒なことは,とても.
ねえ,野川さん.」
加代子「ええ.勿論ですわ.でも,私,信じられませんわ.
絶対に信じません.結城さんがそんなあ.」
山崎「どうやらここには来ておらんようだなあ.」
垣内「おじゃまさん.」
山崎と垣内は帰っていった.
加代子「なんて感じの悪い人達なんでしょう.ねえ,小出さん.」
チャンプ「ん?」
加代子「結城さん,いったいどうなっちゃうんですか?」
チャンプ「野川さん,心配入りまへん.ええ,そうや.
今日はもうクローズしましょ.」
加代子「でも私,心配で帰れませんわ.」
チャンプ「ほな残業してくれますか?」
加代子「やっぱり帰ります.それじゃ,お先に.どうもお疲れ様でした.」
マリア「お疲れ様.」
チャンプ「お疲れさん.」
ヌンチャクが加代子を見届けた後,マリアがロッカーを開けた.
E・Tはロッカーの中に隠れていた.
アジトでチャンプとマリアがE・Tに事件のからくりを話した.
マリア「チャンプ,これは立派にハンギングに値するわね.」
チャンプ「当然だよ,当然.ええな,E・T.」
E・Tはうなずいた.
深大寺でチャンプは園山と会った.
チャンプ「なあ,園やん.ゆうときますけど今回は報酬はちょっと高いで.」
園山「どうしてだね,小出君.」
チャンプ「そりゃ,そうやないかいな.
え,今までわしらをつめとうつき離しといて,
どんだけハングマン一同心細い思いで待ってたか.このソビエト連邦が.」
園山「いやあ,わかったよ,小出君.いや,しかしねえ,
あの時は私の立場としてはしょうがなかったんだ.そこを汲んで欲しいんだ.
報酬の方はね,君の言い値で出そうじゃないか.」
チャンプ「ホンマか.」
園山「ああ.だからさ,機嫌を直してくれよ,な.」
チャンプ「よっしゃ.ほな大目に見たろ.その代わり報酬は800.」
さすがに園山は驚いた.
園山「800!」
チャンプ「文句あんのか.」
園山「いえ,ありません.ありません.」
園山はアタッシュケースを開け,封筒を渡した.
園山「これは600.」
チャンプ「600.」
懐から札束を出し
園山「これは700.」
チャンプ「700.」
さらに懐から札束を出した.
園山「800.」
チャンプ「800.」
ギャラが分けられ,アロハツーリストは閉店した.
怒った吉田は山崎と垣内に怒鳴っていた.そこへマリアから電話が入ってきた. 今夜マリアのところにE・Tが来ると言うのだ. まんまと騙された吉田達はあるマンションの部屋へ誘き出されてしまった. だがそこは空き部屋だった.3人はヌンチャクとE・Tに倒されてしまった. ちなみに3人とも止めをE・Tがさした.
3人は縄で縛られ,仰向けに寝かされてギロチン台に置かれていた.
E・T「諸君,お目覚めかな.」
吉田「おい,なんだ,これは.おい.やめろ.」
突然,吉田だけが外された.
吉田「おい,何すんだ.」
吉田の代わりに大根が置かれた.そしてギロチンの刃が降りて大根を叩き切った.
それを見た吉田達は脂汗を浮かべた.そしてまた吉田がギロチンにセットされた.
E・T「吉田署長,浜田けいこさんはお前が殺した.そうだな.」
吉田「ば,馬鹿言え.あ,あの女を殺したのは結城五郎だ.」
E・T「よくもそんなことが言えるなあ.貴様はそれでも警察官か.」
吉田「こ,こ,こんなことして,ただで済むと思っているのか.」
チャンプ「貴様ら,浜田けいこさんの前にも殺しをやってるはずだぞ.」
垣内「おい,お前達は誰なんだ.」
E・T「素直に言わないんなら,ギロチンで責めることになるが,
それでもいいのか.」
山崎「や,や,やれるもんなら,やってみろ.」
E・T「上等だ.」
リモコンスイッチが入れられた.山崎のギロチンの刃が落ちてきて,
首の手前で止まった.山崎は叫び声をあげた.
吉田「おい,ば,ば,馬鹿な真似はやめろ.」
E・T「馬鹿な真似はお前のほうだろ,署長.立場の弱い女ばかり
散々いじめやがって.首が胴からおさらばしてもいいんだな.」
リモコンスイッチの操作により,また山崎のギロチンの刃が落ちてきて,
首の手前で止まった.
山崎「うわあ.やめろ.やめてくれえ.」
チャンプ「だったらすんなり吐け.」
山崎「浜田けいこを殺したのは署長だ.」
吉田「おい.」
山崎「署長は殺人者です.」
吉田「何言うんだ,貴様.」
E・T「おい,垣内,何か言うことはないか.」
垣内「俺は知らん.俺は知らないんだよ.俺は何も知らないんだよ.」
だがギロチンの刃が首の手前まで落ちると
垣内「わかった,わかった,言うよ.二年前の窃盗犯の愛人を殺したのも署長だ.
な.署長だよ,俺じゃねえよ.署長がやったんだよ.な.」
山崎「ああ,そうだ.俺達は署長の命令で奥秩父の山の中へ埋めただけなんだ.」
吉田「いや,や,や,やめろ.わしは浜田けいこの亭主を殺せとは
言わなかったぞ.お,お前らが昇進したいばっかりに勝手に
やったんじゃないか.」
垣内「何言うんだよ.署長が言ったんじゃないか.」
山崎「署長のド助平が.言い逃れを言うな.」
吉田「貴様ら,よくも.」
そして三人は怒鳴りあいを開始.3人ともギロチンの刃が首の手前で止まった
ところで失神してしまった.と同時に壁が降ろされてさらされた.
ここは池袋駅の東口.野次馬達が集まる中,さっきの自白テープが流された.
吉田「おい,やめろ.やめろ.でっちあげだ,これは.でっち上げだぞ.」
垣内も山崎もこの期に及んで白を切ったがパトカーが駆けつけて来て,
警官に連行されてしまった.それを見届け,ハングマンは去って行った.
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