第十五回

悪徳精神科医の悪事を暴く.
通り魔に夫の出世を賭ける妻

脚本:和久田正明 監督:井上梅次

渋谷で一人のサラリーマンが包丁で刺されて殺された. 殺人犯は包丁を片手に大暴れ.通行人を殺した後,警官に逮捕された. しばらくしてサラ金の社長が斧を持った元工員に斬殺された.

今週のギャラ交渉

「東京モノレール」車内でチャンプが園山からゴッドの指令を聞いていた.
園山「この記事,読んだかね.最近,続けて起きた無差別大量殺人.」
チャンプ「ああ,知ってるも何も,まさか,これを.」
園山はうなずいた.
園山「こいつの裏を探ってもらいたいんだ.」
チャンプ「園やん,そんな.これの裏探れって言ったって, 二人とも犯人捕まってますがな.それに新聞によりますと, この二人とも犯行当時は心神衰弱状態で無罪になるって話やおまへんか.」
すると園山はチャンプの右手を両手で握り締め,こう言った.
園山「ところがね,何のつながりも無いと思えるこの二人の犯人, 共通したものがあるんだよ.」
チャンプ「ほんまでっかいな?」
園山「ゴッドはねえ,これはただの無差別殺人ではない,陰で何かが動いてる, こう見ておられるんだ.」
チャンプの右手を握る園山の手に力が入った.
チャンプ「その無差別殺人は偽装やと.」
園山はうなずいた.
チャンプ「言われてみるとねえ, わいもなんやけったいな具合やなあと思うてましたんや.」
ここでチャンプは話題を変えた.
チャンプ「なあ園やん,ええ加減にこの手離してもらえませんかいな. 気色悪いやな.」
園山は両手を離した.
園山「ああ,こりゃ失礼.」
チャンプ「けったいな趣味があるのと違いますか?」
園山「そんなものはないよ.」
園山はきっぱりと否定した.
チャンプ「で,報酬はなんぼもらえますのや?」
園山は右手を広げた.500万ということだ.
チャンプ「これ.あほくさ.降ろさせてもらいますわ.」
園山「いや,それじゃあ,これ.」
園山は左手の人差し指を右手につけた.600万ということだ.
チャンプ「アホなこと言いなはんな. この犯人はすでに警察の手に渡ってまんのやで.どうやって嗅ぎ回れ, いいまんのやがなあ.ま,せめて700,いやあ800で.」
ここで画面は転換.チャンプと園山の会話は騒音に紛れてしまい, 他の客には聞こえなかった. そして園山からチャンプにギャラがいくらか払われた.

調査開始

アジトでチャンプが指令を説明した. 渋谷で殺人を行なった男は佐川でドヤ街に住んでいる労務者. サラ金を襲撃したのは中井という男で元アルミ工場の工員. 奇妙なことに,二人とも事件を起こす2週間前から姿を消していた. しかも二人ともその間の記憶が無いらしい. 警察の取調べにも終始ボケーっとしてさっぱり要領を得ない. 今精神鑑定を行なっているはずだ.二人には注射の痕があったが, 覚醒剤やその他麻薬の反応は一切無かった. 警察の見解ではおそらく麻酔のようなものを打たれたのではないかという話だが, 時間が経過しすぎていて立証は難しいに違いない. 中井も佐川もはじめからターゲットは一人だった, ところが人が騒ぎ出したために結果的に無差別殺人のように見えた, とゴッドは考えていた. サラ金の社長は恨みを抱いている人間がたくさんいるに違いないので, ここから探るのは難しいだろう. 渋谷で殺された男はタサカ貿易の超エリート社員だった. 大変有能な男で次期ロサンゼルス支店長の椅子は目前だった. だからこの男の殺しを依頼した人物がいるに違いない.

E・Tとマリアは渋谷で殺された男,吉田の妻に接触することにした. ちょうど吉田の妻が社宅から引っ越すところだった.E・Tは吉田の妻に会い, マリアは社宅で吉田の評判を聞くことにした. E・Tは吉田の妻英子(沢井孝子)に会い, 週刊トップジャーナルの記者結城二郎と名乗った. E・Tは吉田が死んで得する人間はいないか聞いてみた. 保険金は500万のものしか入っていないし, 田舎の実家にある財産も大した額では無い. さらにE・Tは会社の人間関係について聞いてみたが, 吉田は英子には会社のことをあまり話していなかった. そこへ女(真木洋子)がやってきた.
相沢の妻「奥様.」
英子「相沢さん.長い間,お世話になりました.」
相沢の妻「いいえ.あたくしの方こそ.ご実家の方に行かれるのですか?」
英子「ええ.とりあえずそこに.」
相沢の妻「あのう,これみんなで出し合ったんですの. お見舞金なんてほどのもんじゃないですけれど.」
相沢は封筒を渡そうとした.
英子「いえ,そんなことをしてもらってわ.会社からも頂いてますし.」
相沢の妻「どうか受け取ってください.」
英子「そうですか.それじゃあ.」
仕方なく,英子はお金を受け取った.
相沢の妻「ホントに旦那様,あんな通り魔みたいな奴に.あたし, まだ信じられませんわ.」
なぜか相沢の妻は泣き出した. 荷物が積み終わったので英子は幼い息子を連れてトラックで去って行った.
E・T「辛いでしょうね.こういう事件の遺族っていうのも.」
相沢の妻「ええ.私も辛くて辛くて.」

一方,マリアは社宅に住む奥様方に聞き込みをしていた.そこへ車が通りかかり, トラックにぶつかりそうになった.車を運転していたのは相沢の妻だった.
相沢の妻「危ないじゃないの.どこ見て運転してるの.」
トラックの運転手「すいません.」
相沢の妻「前見て運転してよ,前見て.わかった.」
そう言って相沢の妻は車で去って行った.
マリア「あの方,どなたですか?」
主婦「今,お話していた相沢さんの奥さんです.」
主婦「とても激しい方ですよ.」

早速E・Tとマリアは聞き込んだことを報告しあった.マリアの聞き込みでは, 吉田が死んで一番得をするのは相沢という部長(石濱朗)だ.
マリア「その奥さんが凄いきつい人.」
E・T「きつい人って,たった今,その相沢夫人って人に会ってきたよ. 涙ながらに吉田の夫人を励まして,みんなから集めた見舞金を渡してたぜ.」
マリア「みんなから集めた? おかしいわねえ.会社から見舞金が出たから, みなさんやめたって言ってたけど.」
E・T「たしかにおかしな話だなあ.」

さて池袋の公園で寝ていた浮浪者の男に, 刑事と名乗る二人の男(塩見三省ら)がやってきて,男を連れ出した. 刑事は男にご馳走させ,車でどこかで連れ出した. 車を走らせていると検問しているのが見えた.
刑事A「おい,警官だぞ.」
刑事B「やべえなあ.」
刑事A「回り道しろ.」
なぜか刑事は回り道して検問を避けた.

マリアはエアロビクスのクラブで相沢の妻に接触した. マリアに相沢の妻は近くロサンゼルスへ行くので体を絞らなきゃと話していた. 相沢ゆういちが栄転してロサンゼルス支店の支店長になったのだ.
相沢の妻「人間なんてどこに運が転がってるかわからないわねえ.」
その後,マリアはタサカ貿易の前に止めた車の中でチャンプと話した. マリアの感では相沢の妻には何かがある. 相沢ゆういちも目的のためには手段を選ばない, どぎつい性格の男だった.その晩, 部下がロサンゼルス支店長就任の記念パーティを開くという. 早速チャンプが相沢に声をかけ, パーティに乗り込んだ.散々,チャンプが相沢をヨイショした後,
相沢「君,どうも思い出せんなあ,しつれいだが.」
チャンプ「私ですか? 忘れてもうたら困りまんなあ. 忘れてもうたらかなわんなあ,相沢さん.わて, お宅さんの下請けのまたその下請けの. こう言って飲めるのも相沢さんのおかげ.大出と申します.よろしう.」
チャンプはそう言ってごまかした.チャンプは吉田の話を持ち出し, さらにそのおかげで相沢が支店長になったと話した. すると相沢は血相を変えて話題を変えさせた.

次の日.アロハツーリストにチャンプが戻ってきた.
チャンプ「おはようさん.」
加代子「おはようございます.」
チャンプ「おはよう.」
加代子は立ち上がって挨拶しようとした途端, めまいを起こして倒れそうになってしまった.
チャンプ「ど,どないしはりました.どないした.どないしはりました. え,奥さん.」
チャンプは後ろから加代子を抱きかかえた.すると
加代子「いけません.いけませんわ,小出さん.」
チャンプ「どないしはりました.」
加代子「私,人妻でございます.」
チャンプ「いえいえ.それはわかってますけど,だ,だ,だ,だ,大丈夫? 大丈夫?」
加代子「このごろ,頭痛や立ちくらみが.ああ.」
チャンプ「ちょっと,ちょっと,お座り,お座りなさい.」
チャンプは加代子を椅子に座らせた.そして加代子の肩を揉んでやった.
加代子「夫が長の療養生活で」
チャンプ「うん.」
加代子「家に帰ればいつも一人.」
チャンプ「うん.」
加代子「小出さん,体によくありませんわね,こんな暮らし.」
チャンプ「そうですよ,奥さん.そら一人でいるというのはろくなことおまへん. だいたい,この体のこの辺がもやもやっとしてきまっしゃろ.」
チャンプはどさくさに紛れて加代子の胸を触った.
加代子「ええ.朝から.」
チャンプ「朝から.奥さん,そういう人が性犯罪に走りやすいんでっせ.」
自分のことか?
加代子「あたくしが?」
チャンプ「そう.奥さんの性ってのが自然に.例えばでっせ, 新聞配達の美少年を引っ張り込みたいなあ,とか,ね, ちり紙交換のおっさんを襲ったろうかいなあ,とか,あの,気になりまへんか?」
加代子「まあ,どうしましょ.私,この頃そういう夢よく見るんですの.」
チャンプ「夢? ちり紙の?」
加代子「ええ.」
チャンプ「そりゃあかん.重症やわ.かなり進んでまっせ. あのね.それだったら神経科か精神科のお医者さんにみてもうた方が. 3丁目にありますがな.ちょうど暇やさかい,行きはったらどうですか?」
加代子「じゃあ,早速そうさせていただきます.」
チャンプ「善は急げや.お医者さんにみてもろうた方がええ. だ,だ,だ,だ,だ,だ,大丈夫か.心配やのう.気いつけてね.」
加代子「はい.行って参ります.」
チャンプ「すっきりして戻ってきてね.気いつけてね,野川さん.」
加代子を見送ったチャンプは合図してE・T,ヌンチャク,マリアを連れ, アジトに入った.

ヌンチャクが調べた結果,事件の1週間前に, 相沢名義の口座から300万円と200万円の現金が引き出されていることがわかった. だが犯人の佐川と相沢夫妻が会った様子は無かった. お金を引き出したのは相沢の妻.相沢の妻は吉田の妻に見舞金を渡し, 相沢も悩んでいる様子.二人ともかなり怪しい.

その晩,徳丸クリニックという病院で院長の徳丸(佐原健二)は客に, 今度の学会での発表を楽しみにしていると言われ,喜んでいた. 飛行場が近くにあるらしく,飛行機の騒音がする.徳丸が客を見送った後, 刑事が車で連れ去った男石神が逃げ出した.刑事は徳丸の部下だったのだ. 結局,石神は徳丸の部下に見つかってしまった.

E・Tは相沢の妻に接触し,その晩6時にコスモビルの駐車場で会おうと言った. 相沢の妻はその誘いに応じた.一方,マリアはクラブのホステスと称して, 相沢とデートしたいと言った.相沢は承諾した.さて6時になり, 車の中で相沢の妻が待っていると相沢が現れるのが見えた. 相沢の妻は驚いて身を隠したが相沢に見つかってしまった.二人とも驚いた. そこへマリアがやってきて
マリア「パパ,お待たせ.」
相沢は会ったこともない女が現れたので驚いた.
相沢の妻「あなた.この人と待ち合わせしてたの?」
そこへ
E・T「奥さん.お待たせしました.」
相沢「みさ,お前,この男と.」
E・T「誘ったのは俺だ.」
マリア「私も誘ったわ,相沢さんを.お二人とも誘惑には弱いようね.」
ヌンチャクも現れ,吉田殺し依頼の件を盾に相沢夫婦を連れ出そうとした. 相沢夫妻は逃げようとしたが,結局捕まってしまった.実はプールで相沢の妻 みさに医者の徳丸が近づき,吉田を出世レースから外す話を持ちかけてきたのだ. ただし,徳丸は名乗らなかったし,殺しをやるとも言わなかった. そしてその話に乗った相沢夫婦は目隠しされて車で連れ出された.そのため, 一味のアジトの場所は相沢夫婦にも正確にはわからなかった. みさが吉田の妻に見舞金を渡したのはせめてもの償いだったというわけだ. そしてE・Tは車がはじめは甲州街道をまっすぐ進んだこと, 新宿を出てしばらく行った所で渋滞が酷くて道を変えようという話が, 二人の男に出たこと,そのとき大原交差点という名前が聞こえたこと, 新宿から30分くらい走った所, 調布辺りと思われるところで三重衝突の事故に出くわし, 片側通行で手間取ったこと,そこからかなり走ったこと, 連れてこられた場所には見慣れない機械があったこと, そして連れてこられた場所で飛行機がかなり低空で飛んでいたことを聞き出した.

その頃,徳丸は嫌がる石神を怪しげな装置のついた椅子に座らせていた. 石神は金属製の輪を頭にはめられていた. 輪には電線らしきものがついていて装置につながっていた. さらに椅子の肘掛には手かせがついていた.
徳丸「これは一種のショック療法だ.」
徳丸は装置のダイヤルを回した.装置から輪に高圧電流が流された.
徳丸「お前みたいな社会の役に立たないクズみたいな奴にはうってつけだ.」
石神は苦しんだ.
徳丸「これをあと数回やれば完全にあたしの言いなりの人間になる.」
石神は失神し,ベッドに寝かされてしまった.

次の日.ヌンチャクの調べで, 三重衝突を起こした事故は調布のつつじヶ丘で起こったことがわかった. その先で飛んでいる飛行機といえば米軍の厚木基地から飛ぶ飛行機に違いない. E・Tは車で甲州街道を西へ進んだ.E・Tは精神科の医師ではないかと睨んだ. そして徳丸クリニックを発見.早速E・Tは徳丸クリニックに忍び込んだ. E・Tは前の晩に徳丸が使っていた装置を発見. さらにE・Tは徳丸が石神に行なっている治療を見た. 徳丸は石神に注射した後,写真を見せていた.
徳丸「いいか.この男の顔をよーく覚えるんだ. お前はこの男を殺さなければならない. この男の家の近くまで連れて行ってやるから, スポーツ洋品店で金属バットを買い,それでこの男を殺す. 邪魔者が現れたらそいつらも叩きのめす.わかったな.」

E・Tの報告を聞いたチャンプは驚いた.
チャンプ「ほんまか,E・T.それが事実やったら無茶苦茶な話やないかい.」
徳丸は街でみつけてきた男をショック療法で心神を半ばいかれさせ, その上で催眠療法で洗脳して冷酷無残な方法で殺人鬼に仕立てあげていた. 徳丸は優秀な精神科医だったが, 強引な治療法により犠牲になった家族から訴えられ, 敗訴して莫大な賠償金を支払わされていた. その金を支払うために今回の犯行を思いついたというわけだ.
チャンプ「よしわかった.早速金を分けてハンギングしよう. 今回は一人頭94万6800円.端数は例によって赤十字.」
アロハツーリストは閉店した.

ハンギング

吉田の妻英子のところに手紙が届いた.
E・Tの声「無差別殺人にみせかけて, あなたの御主人を殺害した男達に天罰が下ります. 明日 朝10時 下記のところへおいで下さい.」
場所は地下鉄東銀座駅近くの松竹会館の裏.

さて徳丸達は人形に標的の顔をつけ,石神に殺人の特訓をさせていた. 治療の効果はテキメンで石神は標的以外の男の顔には目もくれず, 標的の男の顔写真が人形につけられた時のみ, 金属バットを振り回して人形に襲い掛かった.石神は人形の頭をぶっ飛ばし, さらに床に落ちた写真に向かってバットを何度も何度も振り下ろした.
徳丸「よし,よし.よく飲み込んだ.それでいい,それでいい.」
そのとき,石神が叫び声をあげた. なんと標的の写真を顔につけた人物が3人も現れたのだ.
徳丸「なんだ,君達は.」
部下「誰に断って貴様ら.」
それはE・T,マリア,ヌンチャクだった.3人の部下が襲い掛かったが, 全員倒されてしまった.徳丸は病院の中へ逃げた. そして装置の置いてある場所へ徳丸が逃げ込むと
チャンプ「お待ちしてました.」
徳丸はチャンプに殴り倒され,さらに火のついた葉巻を首につけられ
徳丸「あちい,あちい.」

徳丸達4人は自分達が使った電気ショックの装置にくくりつけられた.
徳丸「やめろ.やめろ.いったい何をするつもりだ.君達,暴力はやめなさい.」
チャンプ「暴力はやめなさい? 己はなんじゃい,こら.え. 植物人間作りやがって.フランケンシュタインのつもりか.どあほが.」
「植物」の部分は2000年にCSのファミリー劇場で放送された時にカットされ, 聞き取れなかった.
E・T「よーし.」
E・Tが合図した途端
徳丸「やめろ.何する気だ.」
部下「やめてくれえ.」
マリア「何をされるかあなた達が一番よくわかってるでしょう.」
ヌンチャクがスイッチを入れ,ダイヤルを回して徳丸達の頭に電流を流した. 徳丸達は口をパクパクさせた.それを見たE・Tが合図したので電流は止められた.
E・T「では話してもらおうか.」
チャンプ「おい,院長よ.そもそも,お前なんでこんなもん考えたしたんや.」
徳丸「これは人間頭脳の改革だ.偉大な発明なんだ.」
マリア「その研究を悪用して人殺しに使ったのね.」
徳丸は首を左右に振った.
徳丸「違う.私はそんなことはしていない.」
チャンプ「ぬけぬけと嘘ぬかしやがって.おい, これはパーマ当てとるのと違うのやど. お前の脳味噌取り出してホンマのこと言わしたろか. (徳丸の部下達の方を向いて)お前らもやど.おい,きつめに入れたれ,電気.」
また電流が流された.チャンプは装置に手を触れていたので痺れてしまった.
チャンプ「アホ.」
自分で指示したくせにチャンプはそう叫んで装置から離れた. 電流を流されたので震えながら部下達が自白を始めた.
部下A「ホントのこと言うよ.院長はしゃ,借金のために考え出したんだ. リ,リ,リモコン殺人を.」
徳丸「なんだって.何を言う.黙れ.」
部下A「本当だよ.そう言ったじゃないか.」
部下B「こんな金になる仕事はないって言ってたじゃないか.」
部下C「俺達は雇われてやっただけなんだ.」
電流が止められた.
E・T「院長が人体実験に使用した患者から莫大な補償金を取られて, その支払いのために殺し屋を育てた.そうだな.」
徳丸は首を左右に振ったが
部下A「そうだ.」
部下B「その通りだ.」
部下C「本当だよ.」
そして徳丸はこうほざいた.
徳丸「偉大な研究には犠牲はつきもんだ. その犠牲者に対する償いを偉大な研究で支払おうとしたんだ. それがどこが悪いんだ.」
チャンプは徳丸の頭を叩いた.
チャンプ「アホか,お前.お前の頭は普通やない.完全にいかれとるわ. よし,治したろ.おい,一番きつい奴にせい.」
徳丸「やめろ,やめてくれ.」
しかしこの頼みは聞き入れられず,また電流が流された. 徳丸達4人は失神してしまった.

徳丸が気がつくと,中は真っ暗になっていて,ハングマンの姿が消えていた. その頃, 「第三回エレクトロニクス サイエンス エコロジー 研究総会」の会場前に, 吉田英子がやってきた.すると英子の他にもたむろしている人がいた. みな妙な手紙で呼び出されていて,しかも無差別殺人の被害者の遺族だった. そこへ学会の係員がでてきた.徳丸はその学会で発表することになっていたのだ. 係員は妙なトラックが止まっていることに気がついた. 運転席には誰もいなかった.が,荷台から助けを呼ぶ声が聞こえてきた. 実は中に徳丸達がいたのだ.そして荷台が開けられ, 徳丸達4人が例の装置に座らされている姿がさらされた.
学会の会員「徳丸君,この真似は一体なんですか.」
徳丸は無言だった. するとスピーカーから先程の自白テープが大音量で再生された.
部下Aの声「言う,言う,ホントのこと言う. 院長は借金のために考え出したんだ.リモコン殺人を.」
徳丸の声「何を言う.黙れ.」
部下Aの声「本当だ.」
部下Bの声「あんたがそう言ったじゃないか. あんた,こんな金になるいい仕事ないって言たぞ.」
部下Cの声「これからも続けると言ったぞ.俺は雇われただけだ.」
徳丸の声「偉大な研究には犠牲はつきもんだ. その犠牲者に対する償いを偉大な研究で支払おうとしたんだ. それがどこが悪いんだ.」
学会員達も無差別殺人の犠牲者の遺族達もそのテープを聞いた.
徳丸「嘘だ.出鱈目だ.君達,速く,あのテープを止めてくれ.速く.」
だが
老女「人殺し!」
吉田英子「私は夫を殺されたのよ.」
老女「私は息子よ.」
男「僕のにいさんはめちゃめちゃに刺されたんだ!」
女「私は娘よ.誰か警察呼んで.」
この期に及んでも
徳丸「嘘だ.嘘なんだよ.あのテープはみんな嘘なんだよ.」
本当に徳丸は往生際が悪い.だが
部下A「ホントだよ.あれは本当だよ.俺は関係ない.関係ないんだあ.」
部下B「俺は知らねえ.知らねえぞう.」
部下C「俺は雇われただけなんだ.助けてくれ.」
そしてパトカーが駆けつけた.徳丸達は警官に連行されて行った. 脇に止まっている車の中には相沢夫婦が手錠でつながれて閉じ込められていた. それを見届け,チャンプが,マリアが,ヌンチャクが,そしてE・Tが立ち去った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp