男が首を吊って死んでいる死体が男のアパートで見つかった. 管理人の通報で警官が来て捜査を開始. ワープロに「私はもうカメラを持つ自信がありません. ご迷惑かけます.梶」と打ってあるのが発見された.
その日の昼,
「国立競技場」わきのテニス練習場でチャンプと園山がギャラ交渉をしていた.
練習場は若い女性ばかり.
チャンプ「園やん.園やん.いつまでも太腿に見とれとらんと,
(右手の親指と人差し指で丸を作って)こっちゃの話つけようや.」
園山はチャンプの方を向かず,
テニスコートで練習する若い女性の太腿に見とれたまま,
右手でVサインして見せた.
チャンプ「チョキ? ちょっと,せめてパーは出したれな.」
園山は200万,チャンプは500万を主張していたのだ.
仕方なく,園山はチャンプの方を向いた.
園山「いや,今回はこれ.」
チャンプ「あかん.最低はこれや.」
園山「これだ.」
チャンプ「これ.」
園山「これ.」
チャンプ「これ.」
園山「これだ.」
チャンプ「これや.」
今回も両者とも譲らない.
チャンプ「ええ大人がじゃんけんしている場合やおまへんで.」
ここで園山が一計を案じた.
園山「よーし,今回はじゃんけんで決めよう.ジャンケンポン.」
園山はチョキを出した.チャンプは後出ししたにも関わらず,
うっかりパーを出してしまった.
園山「よーし,勝った,勝った.ほれ.」
園山は懐から封筒を出して帰ってしまった.
チャンプ「ちょっと,園やん.何でや,おい.」
そこへテニスのボールが飛んできた.
若い女性「すいません,ボール取ってください.あそこです.」
チャンプ「はいはい.球触るのはこれだけにしときや.」
若い女性「どうもありがとうございました.」
チャンプ「ああ.ええ子やなあ.」
そんなことをしてる場合ではないだろう.
チャンプは封筒を見て途方にくれるのであった.
アジトでチャンプはブーイングを受けた.
チャンプ「200万? 今までの中で最低のギャラじゃないですか.」
マリア「随分安く見られたもんね.」
ヌンチャク「それで引き受けたんですか?」
チャンプ「そう言うなよ.え.園やんかて,
ええ年こいて泣いて頼みやがんのやなあ.近頃,園やん,
予算オーバーやゆうてゴッドにえらい叱られてるそうや.」
チャンプの出任せをヌンチャクとマリアは納得しなかった.
ヌンチャク「こちらの問題じゃないですよ.」
マリア「そうよ.」
チャンプ「ごちゃごちゃ言うなよ,お前も.長い付き合いやないかいな.
園やんの身にもなったれよ.ホントに.」
E・T「とにかく,今更断るわけにはいかんだろう.」
チャンプ「さすがE・Tや.ええとこあるな.頼むわ,おい.な,
わしも一旦腕叩いてしもうたからにわ.よし,これで銭の話はなし.ええか,
打ち切りやど.」
チャンプはギャラを金庫にしまった.
チャンプ「さてと,ビジネス,ビジネス.」
チャンプはこれ幸いとギャラの話を打ち切り,ゴッドの指令を説明した.
梶のぶゆき27歳はフリーのカメラマンでアフリカ戦線の報道写真や,
カンボジアの難民キャンプの取材などで賞を取ってる硬派のカメラマンだった.
この男が自殺死体で発見された.だがゴッドは自殺ではないと睨んでいた.
自殺に見せかけた他殺だというのだ.
遺書もあるし技術上の行き詰まりじゃないか,というヌンチャク.
だが遺書はワープロで打たれたもので本人の筆跡がわからない.
E・T達は手分けして梶の身辺を探ることにした.E・Tとヌンチャクは出版社で, 梶が最近西山辰夫というルポライターと組んで取材をしていたことを聞き込んだ. 早速E・Tとヌンチャクは西山の家を訪れたが西山の妹が出て, 西山が三日前に飲酒運転で有明埠頭から海に飛び込んで死んでしまったことを, 知らされた.だが西山の妹は,何事にも慎重な西山が飲酒運転をすることに, 疑問を抱いていた.梶もそのことに疑問を抱いていたという. 西山の妹は梶と結婚を約束していた 西山の妹は梶が死んだことを聞いて驚いた. E・Tはネガを素手でべたべた触りながら,何か心当たりがないかと聞いた. どうでも良いが,素手でネガを触ったら, 指紋がついてネガが使い物にならなくなるぞ! 西山の妹は, 梶が東南アジアで凄いネタをつかんだと言っていたことを思い出した. しかしネタの内容までは話していなかった. E・Tはネガを素手でべたべた触りながら, 東南アジアのネタに関するネガを探したが,一本も見つからなかった. 見つかったとしても指紋がついたら….
チャンプはカメラマンに梶のつかんだネタを聞き込みに行った. ついでにヌードモデルにポーズの指導をした.ネタの内容はわからなかったが, 梶が二,三日前に青山のクラブに入るのをそのカメラマンが目撃したことを, 聞き出した.最近はやりの東南アジアの女の子を置いている店だ.このことから, チャンプは西山と梶が東南アジアからの女性を密輸入している組織を, 追跡取材していると睨んだ. 東南アジアの女性にとっては日本は絶好の稼ぎ場所だ. しかし観光ビザでは15日,ワーキングビザでは6ヶ月しか滞在できない. せっかく日本に来ても大した儲けにはならない. そこで闇ルートで密入国するのだ. 何しろ入国したことにはなっていないので潜ったら後は儲け放題だ. そこへ西山の妹からE・Tに連絡が入った.
西山の妹は梶から送られた手紙をE・Tとヌンチャクに渡した. 封筒の中にはタバコの箱が入っていた.しかし,梶はタバコを吸わないという. そこでE・Tが中を調べてみると写真二枚分のネガが出てきた. 現像してみると一枚は和服を着た女の写真, もう一枚は二人の男がクラブで外国人のホステスと飲んでいる写真だった. 男の一人は誘拐犯の津田,もう一人は保険金殺人の中井だった. 二人とも指名手配されている男だ. チャンプはホステスに見覚えがあったのでマニラで撮影された写真と断定した. つまり,女を密入国させる組織は, 犯罪者を東南アジアへ密出国させることも行なっていたのだ. これは危険だが凄いスクープだ.もう一枚の和服を着た女の素性がわかれば, 組織へ近づくこともできるかもしれない.
マリアは前髪を染めたズベ公に変装.津田の情婦と称し,
チンピラに津田の行方を聞く振りをして,和服の女の素性を聞いた.
和服の女はルミと言い,青山のクラブサンセットのホステスだった.
そこでマリアはクラブサンセットに潜入した.
チャンプも行ってみると東南アジアの女性ばかりだ.早速,
ルミと男の話を盗聴してみると,
男がマニラへ逃がしてくれと頼んでいるのが聞こえた.
店が終了した後,ルミは男(片桐竜次)の運転する車で去って行った.
その様子をマリアが撮影した.男は牧村ゆうじで30歳.
解散した銀龍会のチンピラでルミのヒモのようなことをしていた.
チャンプは牧村がチンピラにしてはいい車に乗っていることに目をつけた.
ルミの給料ではとても買えそうにない高級車だ.
密航ルートの稼ぎで買ったに違いない.
しかし元チンピラだけで密航ルートを運営できるはずがない.黒幕がいるはずだ.
E・T「いぶり出してみるか.」
その翌日.
チャンプがアタッシュケースを持ってアロハツーリストへ戻ってきた.
加代子「おかえりなさい.」
チャンプ「ただいまあ.やりました,やりました.別嬪さん,お茶頂戴.」
マリアがお茶を入れに行った.
加代子「あらいかがなさったんですか.ご機嫌ですねえ.」
チャンプ「わかりますか.じゃーん.」
チャンプがアタッシュケースを開けると札束がつまっているのが見えた.
チャンプ「はは.見てちょんまげ.ねえ.正真正銘の日本銀行発行のお札や.」
ヌンチャク「どうしたんですか?」
チャンプ「5千万.5千万やど.埼玉の農協のなあ,
ヨーロッパツアーの前金やがなあ.」
加代子「じゃ,決まったんですか,あの契約.」
チャンプ「そうやがなあ.伊達に営業で飯食ってまへんで.」
チャンプは喜んで笑った.
チャンプ「さすが農協やがなあ.キャッシュや.キャッシュや.」
加代子「私,はじめて見ます.こんな5千万なんて大金.」
ヌンチャク「会社始まって以来ですねえ.」
チャンプ「そうや.これで当分安泰やがなあ.野川さん,
あんたの暮れのボーナス,当てにしてもらってもええよ.」
加代子「はーい.」
E・Tは札束を一つ手にとった.
E・T「5千万って事は当分遊んで暮らせるなあ.」
チャンプ「Don't touch! 触るな.」
チャンプはE・Tから札束を取り上げ,アタッシュケースにしまい,
アタッシュケースを閉じてしまった.
チャンプ「えーと,これ当分の間,銀行にでも預けてもらおうかな.
えー,そうやな,野川さん,行ってくれるか?」
加代子「はい.でも一人じゃ心細くって.」
チャンプ「ああ,そう.結城,お前,一緒に行ったれ.」
E・T「はあ.Ok!」
銀行へ行く道すがら,加代子がE・Tに話した.
加代子「小出さんって見かけによらず優秀なんですね.あたし,
見直しましたわ.」
E・T「今までどう思ってたんです?」
加代子「ただの好色そうな中年だとばっかり.あ,
これ小出さんに内緒ですよ.」
E・T「ええ.」
E・Tは笑った.
加代子「ホントですよ.」
ドサクサに紛れて加代子はE・Tの腕につかまった.すると突然,
E・T「あ,痛.」
E・Tは腹を押さえてうずくまった.
加代子「どうなさったの?」
E・T「いや,ちょっと急にお腹が…」
加代子「大丈夫かしら.」
加代子はE・Tの背中をさすってやった.
E・T「いや,あの,トイレ行ってきますから.ここでちょっと待っててください.
すぐ戻りますから.」
加代子「ティッシュ,これ.」
E・T「あ,大丈夫です.ここで待っててくださいよ.」
E・Tはアタッシュケースを持ったままビルの中へ入っていった.
仕方なく加代子は外で待っていたがE・Tはなかなか戻ってこなかった.
加代子「遅いわねえ.どうしたのかしら.見て来よう.」
加代子はビルの中へ入った.そして男子便所に入った.
大便器の一つがふさがっていた.
加代子「結城さん.ごめんなさい.結城さーん.結城さん.」
加代子はドアをノックした.
加代子「大丈夫?」
ドアが開いて出て来たのはE・Tとは別人だった.加代子は叫び声をあげた.
アロハツーリストへ加代子が血相変えて戻ってきた.
マリア「お帰りなさい.」
加代子「結城さん,戻っていませんか?」
チャンプ「いや.一緒でしょうが.」
加代子「トイレに行くって言ったまま戻って来ないんです.」
マリア「戻って来ないってどういうことなんですか?」
加代子「それでトイレも見たけど見当たらないんです.」
加代子はビルの中の男子便所を全部見たのだろうか?
それはともかく,それを聞いたチャンプも血相を変えた.
チャンプ「金は? 5千万は?」
加代子「結城さんが…」
チャンプ「礼子,銀行へ行っとるのかどうか電話してみてくれ.」
マリア「はい.」
マリアは電話をかけた.
加代子「私には何がなんだかさっぱりわかんないんです.」
ヌンチャク「小出さん,まさか結城さん…」
チャンプ「うるさい! 心乱すようなこと言うな.どうやって?」
マリア「はい.アロハツーリストの結城って者なんですけど.行ってない!
あ,そうですか.どうも.」
マリアは電話を切った.
加代子「あの,じゃ,一体どこへ?」
チャンプ「前島,あいつの自宅へ電話して.」
ヌンチャク「はい.」
ヌンチャクは電話してみたが
ヌンチャク「誰も出ませんねえ.」
チャンプ「出んか.やられた.」
加代子「やられたって言いますと?」
チャンプ「持ち逃げやがなあ.横領か痛い.ね,猫糞や.
あいつ,5千万持って,とんずらしよったんや.」
加代子「トンズラって結城さんに限って,何か事故でも遭ったんじゃ.」
チャンプ「アホなこと言いなはんな.
大の男が白昼のビルの便所で何を事故がおこりまんのや.ああ.
わしの血と汗と涙の5千万がパーやないけ.」
加代子「それじゃ,警察に電話を.」
なぜかチャンプ達は加代子を止めた.
チャンプ「警察に電話したら行かん.この店から縄付きを出すつもりか.
縄付き出したらアロハツーリストの信用がた落ちやないか.」
ヌンチャク「それでなくても信用ないんですからねえ.」
チャンプ「うるさい.アホ.商人は,商売は,信用が第一や.ホントにもう.」
加代子「それじゃ,いったいどうすれば.」
加代子は半狂乱の状態だ.
チャンプ「探せ.探せ.手分けして探せ.草の根分けても探し出すんや.
あいつの立ち回りそうなとこを.え.金を使わんうちに.」
ドサクサに紛れてチャンプはマリアの尻を触った.
チャンプ「はよ行け,はよ.」
ヌンチャク「わかりました.」
マリア「行ってきます.」
ヌンチャクとマリアは外へ出て行った.
チャンプ「ああ,もう頭いとうなってきたあ.」
加代子「私がいたらないばっかりに申し訳ありません.」
チャンプ「ああ,もういい,もうええ,ええ.
あんたに謝ってもろうてもしゃあない.金が返るわけやなし.もう.」
加代子「小出さん.」
チャンプ「へ?」
加代子「あたくしが弁償いたします.この先,お給料は要りません.」
チャンプ「簡単に言いなはんな,あんた.5千万やで,5千万.
あんたの給料何ぼや,11万8千円やないかい.
あんた,ここで七十,八十になっても返せしまへんがな.もう.」
加代子は泣き出してしまった.
チャンプ「泣くな,おばはん.それともトルコで働くゆうのか.」
加代子「はい.」
チャンプ「やめろ,な,もう.」
しつこいようだが,この頃はソープランドのことをトルコと呼んでいた.
その晩.E・Tはクラブサンセットに現れ,ルミに会った.
アロハツーリストから5千万円持ち逃げしたので,
自分をマニラへ逃がしてくれというのだ.
E・Tは自分がマニラで津田と会っている写真を見せ,
津田から密航ルートのことを聞いたと言うのだ.
ルミはとぼけたがE・Tは金を握らせた.そして自分の居場所を知らせ,
写真を渡して帰っていった.
E・T「よーし.餌は撒いたし,後はうまく食らい付いてくれよ.」
E・Tはバスの中で自分の靴の底に発信機を仕込んだ.
次の日.アロハツーリストでは
チャンプ「あいつが良心に目覚めて帰ってくるのを待とう.」
加代子「そうですわ.結城さん,魔がさしたんですわ.
誰だって5千万見たらふっと妙な気になりますもの.」
チャンプ「黙ってなさい,あんた,もう.
考えることと実行に移すことは別です.」
加代子「えーん,そんな酷い言い方しないで.」
加代子は泣いてしまった.そこへ牧村が現れた.
牧村「こんちわっす.こちらに結城さんって方いらっしゃいますか?」
チャンプ「あんた,どなたですか?」
牧村「あのう,結城さんのあのう昔の友達なんですけれど,
近くに来たもんですから.」
チャンプ「お友達?」
牧村「はい.」
チャンプ「ちょっと,ちょっと,お入りになって.ちょっと,おおきに.
ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけどねえ.
結城がどこ立ち回ってるか知りまへんか? わしらも探してまんのやけど.」
牧村「あのう,なんかあったんですか?」
チャンプ「ええ.実はねえ.結城の奴,会社の金を5千万持ち逃げしましたんや.
ああ,見損ないました.いや,元々わしはねえ,
あいつのこと気に入らんかったんです.一見,ええ男風ですけどねえ,
いやこりゃ計画的な犯行だっせ,計画的な.」
加代子「いえ,結城さんはそんな方では…」
チャンプ「あんたは黙っとりなさい,ホントにもう.え.もう.わからんくせに,
もう.」
加代子はまた泣き出してしまった.
チャンプ「あなたも気いつけなあきまへんで.友達やゆうても.
あいつは大体がねえ,根性が腐ってますがな.女には手が早い,金にはきたない,
口はうまい,いやあ,わしはあんな最低最悪な人間今まで見たことおまへんで.」
自分のことを言っているのではないのか? それはともかく
牧村「あのう,しかし,そんなこと,新聞には出てなかったんですがねえ.」
チャンプ「わしらの力で今警察押さえてまんのやがなあ.」
牧村「あ,そうですか.」
チャンプ「わしらの商売,信用が第一でっしゃろ.」
マリア「極秘で捜査してもらってるんです.」
チャンプ「あ,そうや.あなた,お友達やったらせめて半分,
いや三分の一でも立て替えてもらえまへんか.」
牧村「いや,そんな.」
雲行きが怪しくなってきたので牧村は立ち上がって帰ろうとした.
だがチャンプは尚も食い下がった.
チャンプ「十分の一でええ.500万.500万.」
牧村「ええ?」
チャンプ「それだけでも立て替えてくれなはれ.あの,500万なかったら,
わてらニッチもサッチも行きまへんのや.」
牧村「あのですね,私ねえ,あのう,一度会っただけなんです.」
チャンプ「何が?」
牧村「いやいや,結城さんと.どうも失礼.」
牧村は逃げ帰ってしまった.
加代子「小出さん.何もあんなにぼろくそに言わなくてもいいじゃありませんか.
仮にも机を並べてお仕事した仲じゃありませんか.私,もう耐えられませんわ.」
チャンプ「やめますか?」
加代子「いいえ.早びきさせていただきます.」
加代子は帰ってしまった.
チャンプ「ふん,なんじゃ.血の気の多いおばはんや.」
チャンプ達はアジトに入り,E・Tの居場所を確認した.
チャンプ「まだバスの中だ.」
E・Tの言うことに嘘はないらしいことを確かめた牧村はE・Tを連れ出した.
E・Tを車のトランクに入れ,ある場所へ連れてきた.
そして中で石神(宗方勝巳)と言う男に会った.彼がボスなのだ.
石神は密航の代金として二千万を要求.さらに服と靴を変えるように言った.
手配されている可能性があるからだ.
E・T「いいでしょう.その前に一服させてくださいよ.」
E・Tはタバコに火をつける振りをして,
ライターに仕込んだカメラで石神の顔を撮影した.E・Tは木箱の中へ入れられ,
車で運ばれて行った.E・Tが運ばれた後,
チャンプ達もE・Tが連れ込まれた場所へやってきたが,
E・Tの服と発信機つきの靴があるだけだった.
だがE・Tのライターも残されていたのでボスの顔を確認することができた.
ボスの石神は以前拳銃の密輸をやっていた男だ.
石神は東南アジアのギャングとは太いパイプで結ばれている.石神なら密入国,
密出国はお手のものだ.そこでチャンプは大胆な作戦を発案した.
チャンプはヌンチャクにE・Tが作らせた偽写真とその元となった写真を,
石神の作ったダミー会社,中光貿易へ届けさせた.これにより,
E・Tが津田の知り合いではないことがばれてしまった.石神は牧村に連絡し,
鳥羽の戸田家という旅館へ先に行くよう指示した.
そして牧村は部下にE・Tを殴らせ,
E・Tが入った木箱の蓋に釘を打ってしまった.
石神,そしてヌンチャク,マリア,チャンプも「近鉄特急ビスタカー」で, 鳥羽の戸田家へ向かった.石神達の部屋に電話が入り, 次の日の朝10時に浜島で船が来ることが伝えられた. マリアはホテルの客室係に化けて石神の部屋に潜入. E・Tが箱の隙間から出したメモを受け取った. E・Tはどうやってメモを書いたんだ?
その翌日.石神達はE・Tの箱を船に運び込み,指定された場所へ向かった.
箱は甲板に載せられた.だが船の中にはヌンチャク,マリア,
チャンプが潜入していた.ヌンチャクは船の舵を取っていた男坂本を殴り倒した.
甲板にいた牧村は不審に思っていた.
牧村「妙ですね.」
石神「どうした?」
牧村「今,あの島はさっき見たような気がするんですけどねえ.」
石神「同じとこ回ってるって言うのか?」
牧村「ええ.」
石神「おい,坂本.」
そこへ
チャンプ「坂本は今昼寝中や.」
と同時にE・Tも蓋を開けて箱の中から出てきた.
釘が打ち付けられていたのではないのか?
石神「な,なんだ,貴様.」
チャンプ「閻魔さんも避けて通る地獄の掃除人や.おい,石神,
己の私利私欲のためにえらいえぐいことやってくれたなあ,おい.」
E・T「女の密輸だけじゃ飽き足らず,凶悪犯人を海外へ逃亡させ,
それを探った人間まで殺した.」
石神「ちきしょう.おい.」
しかし石神達はチャンプ,E・T,
そして現れたヌンチャクによって倒されてしまった.
さて遊覧船では海女のショーが開かれた.ショーもたけなわになった頃
E・T「皆様,突然ではございますが,本日の特別ゲストをご紹介いたします.」
海中から石神と牧村が浮かび上がってきた.
二人ともなぜか海女の格好をしていた.
E・T「ただいま浮かんできたこの二人,右側の男が石神かつお.」
石神「引っ張らないでくれ.」
E・T「拳銃の密輸で警察にあげられたこと1回.
現在は東南アジアから女の子を密入国させては,
国内の犯罪者をフィリピン方面に密出国させているわるーい男でございます.」
石神も牧村も海面を上下していた.海中から引っ張られたりしているらしい.
E・T「左の男はその手下で牧村ゆうじ.日本の国際的キャメラマンの梶のぶゆき,
ジャーナリストの西山かずお両氏を殺害した凶悪犯でございます.では,
この二人の水中ショーをごゆっくりご覧下さい.」
海上には海女の格好をしたマリアとヌンチャクもいた.
二人は石神達を水中から引っ張った.
石神「引っ張るな.引っ張らないでくれ.引っ張るな.」
牧村「やめろ.」
石神「やめてくれ.」
二人ともアップアップしている.
石神「助けてくれ.俺が悪かった.引っ張るな.
マニラに犯人を送ってたのは俺達だ.悪かった.ああ.引っ張らないでくれ.
おい.」
牧村「私は泳げないんですよ.何でも喋るから.助けてよ.西山の事故死とねえ,
梶の自殺はねえ,この人と僕がやったんですよ.うわあ.」
そう言うと牧村は海中に引っ張られてしまった.
そこへ水上警察の船がやってきた.ハンギング終了後,
ハングマンは鳥羽の海上を船で進むのであった.
さてアロハツーリストでは
加代子「結城さーん.お帰んなさい.」
E・T「ご心配をおかけしました.」
加代子「もう,どこへ行ってたんですか.」
チャンプ「野川ちゃん,ごめんな.いろんなことゆうてからに.
いや,そりゃ聞いたらお笑いやねん.こいつな,銀行まちごうたんやて.」
加代子「ええ?」
チャンプ「それでわしの成績に刺激受けてな,
東北の方に営業に回ってたっちゅうやないかい.」
E・T「いやあ,野川さんがあんまり小出さんのこと誉めるからもう,
俺も一つってなっちゃったんですよう.」
加代子はこの出任せを信じてしまった.
加代子「それで,成績は?」
チャンプ「なし,なし,なし,なし.なんにもなし.おい.お前,
わしのむこうはるには十年早いぞ.十年早いぞ.バキューン.」
チャンプは銃を撃つ真似.
加代子「バキューン.」
加代子も銃を撃つ真似.
チャンプ「はい.今度こそ間違いのう銀行に預けてきよってなあ.」
チャンプは加代子にアタッシュケースを渡したが
加代子「これだけはやめさせていただきます.」
そう言って加代子は出て行ってしまった.
この作品は#12と同様,伊勢志摩でロケーションが行なわれた作品です. ご丁寧にもチャンプ達が泊まるホテル,そしてハンギングに使われる遊覧船も, そしてチャンプ達が鳥羽へ向かう列車も#12と同じです.
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