深夜の車の中で一人の男が縄で縛られて寝かされていた. 男は気がついたが,もう遅かった.車はガソリンをかけられて火をつけられた. そして男は車ごと炎上して死んでしまった.
しばらく経ったある日.
「神代植物公園」で園山とチャンプがギャラ交渉を行なった.
バラの咲き乱れる中,園山は深呼吸したが,チャンプはくしゃみをしっぱなし.
チャンプ「けったいなとこへ呼び出してくれるやないかいな.」
園山「地球上の酸素は年々減少しているそうだ.
政府はもっと緑を増やす政策を取らなければなあ.」
園山はくしゃみをするチャンプにファイルを渡した.
チャンプ「酸素ね.要するに単なる焼身自殺やないってわけやな.」
園山「報酬は300万.」
チャンプは不満をもらした.
チャンプ「300? は.話にならんわ.返すわ.」
チャンプは資料を返した.
園山「比較的単純な仕事だ.それにゴッドもできるだけ切り詰めろと仰ってる.」
チャンプ「ゴッドのおっさんも相当渋ちんやなあ.
墓場へ銭持っていってもしゃあないやろに.」
チャンプの暴言を園山は聞き逃さなかった.
園山「縁起でもないことを.いくらなら引き受けるんだ.」
チャンプ「いや,問題はおっさんやない.あんたが何ぼ出せるかってことや.
な,ちょっとかし変えよう.」
園山「かし?」
チャンプ「わしは根っから都会人やろ.こういう自然の中は落ち着かん.
くしゅん.くしゃみは出るし,もう.あ,どや.昼サロへ行こう.
オール女子大生の.」
園山「女子大生.」
チャンプ「そう.」
園山「ふん.よし,わかった,わかった.100万だけ上乗せしよう.」
チャンプ「それからこういう遠いところへ来たんや.わしに10万,色つけて.
領収書出して.Ok?」
園山は首をかしげるばかりであった.
その頃,E・Tは傭兵時代のことを思い出し,夢を見ていた.
E・T達が森林の中で実戦訓練を受けていた.E・T達は二チームに別れた.
そしてE・Tを相手チームの男(団次朗)が銃で狙った.
男「装備を外せ.ぐずぐずしてると脳天ぶっ飛ばすぞ.」
E・T「実弾の使用は許されていないはずだ.」
男「お前だけは別だ.この銃は Jap を撃ちたくてうずうずしてるんだ.」
E・T「なぜ日本人を憎む.お前だって半分は日本人だろう.」
男「うるせえ.はやくしろ.」
仕方なくE・Tは銃を捨てた.途端に男はE・Tを銃で殴るのであった.
夢から覚めたE・Tに電話がかかってきた.
さて,野川加代子は暇を持て余してあくびをしていた.
加代子「暇な会社ねえ.これで成り立つのかしら.」
加代子はハワイ旅行のパンフレットを見ると
男のサーファがお尻を出している写真が写っていた.
加代子「まあ.」
加代子が赤くなっているところへE・Tがやってきた.
E・T「どうかしましたか?」
加代子「いえ,いいえ.結城さん,今日はお休みのはずでは.」
E・T「え? ええ.そうなんですが,暇を持て余しましてねえ.」
加代子「もったいない.きれいな娘さんと一泊旅行ぐらい
いらっしゃればよろしかったのに.」
E・T「そんな人はいませんよ.」
加代子「うっそー.あなただったら,恋人の一人や二人…ホントですか?」
E・T「ええ.いい人がいたら紹介してくださいよ.」
加代子「そんなあ.他人を紹介するくらいなら,あたくしが.」
E・T「え?」
加代子「え.いえ,独り言.」
加代子が苦笑しているところへチャンプがやってきた.
チャンプ「おばさん.一泊旅行なら,わしがおつきあいしましょう,
おまへんか.」
加代子は狼狽した.
チャンプ「湯の香る温泉街.お互いナイスミドル同士,ええ思い出を作ろうや,
おまへんかいな.」
加代子は後ずさりした.
チャンプ「あのう,切符取りますさかいに.ぐいんで.」
加代子「いけません.あたくしは人妻でございます.
それも長患いの夫を抱えて.」
チャンプ「そやから,お誘いすんのや,おまへんかいな.
旅の恥はかきすて言いますやろ.」
ここでチャンプは咳払いし,加代子を抱き寄せた.
チャンプ「好っきやもん.」
加代子「ああ.」
チャンプ「奥さん.」
加代子「こんな,はしたない,いけません.私,お食事に行ってきます.」
加代子は外へ出て行ってしまった.
チャンプ「奥さん.ああ,奥さん.」
E・T「チャンプ.」
チャンプ「は,は,は.おばはん,本気にしよった.」
E・T「からかうのもいい加減にしとけよ.」
チャンプ「いやいや.これはなあ,べんちゃらや,べんちゃら.
女っちうのはな,いつまでも色気を亡くしたらいかん.功徳や,功徳.」
「口説く」の間違いじゃないのか?
E・T「功徳ねえ.」
そこへマリアとヌンチャクがやってきて,アロハツーリストは閉店した.
チャンプ「うえむらしんじ28歳.元防衛隊特殊部隊隊員.
除隊後ガードマン会社に就職.十日前多摩川の川原で焼死体となって発見された.
警察で調査の結果,失恋が原因の自殺と断定したが,
どうも偽装自殺の疑いがあるんだ.」
マリア「偽装自殺?」
チャンプ「うん.どうやら,仕組まれた殺しらしい.」
E・T「根拠は? 物理的な証拠でもあるのか.」
チャンプ「そんなもん,あるかいな.
この3ヶ月の間にうえむらの同僚が二人も変死を遂げとる.これや.」
チャンプはその男の写真をスクリーンに映した.
チャンプ「野沢かずお26歳.元機動隊員.先々月,自宅近くで交通事故死.
水口しげる23歳.某有名私立大学射撃クラブ出身.ガードマンとして勤務中,
ビルの屋上から原因不明の転落死だ.」
E・T「なるほど.確かに偶然とは思えんなあ.」
チャンプ「そやろ.」
ヌンチャクもうなずいた.
マリア「で,そのう,ガードマン会社って言うのは?」
チャンプ「あ,ちょっと待ちいな.今説明するさかい.えーと,ムービーは.」
チャンプは東日警備保障のビデオを映し出した.
チャンプ「東日警備保障株式会社といえば聞き覚えがあるやろ.
社長の望月やすお(神田隆)は旧陸軍の生き残りで戦後は防衛隊の幹部.
そのせいか,訓練も軍隊式で社員の能力も極めて高いって話や.」
そしてチャンプが捜査方針を指示した.
チャンプ「よし.とりあえずわしとマリアは仏さんの身辺を洗ってみるさかいに,
おまはんらは東日警備保障を探ってくれ.」
ヌンチャク「探るって言ってもどうやって?」
チャンプ「頭を使ってみようね.これや,これ.」
チャンプは東日警備保障の求人広告を見せた.基本給は20万円.
早速E・Tとヌンチャクは東日警備保障の求人に応募した.
中から探ろうというわけだ.求人募集には人が大勢来ており,倍率は20倍.
受付に設置されたカメラで一人の男がE・Tに目をつけた.
ヌンチャクは面接試験で望月と専務の目の前でヌンチャクの腕を見せ付け,
武道の段数が合計25段であることを話した.結果は合格.次はE・Tの番だ.
だがE・Tは別の部屋へ通された.部屋で待っていたのは意外な男だった.
彼はE・Tの傭兵仲間であり,
あのときの実戦訓練で日本人のE・Tをいたぶった男でもあった.
男「しばらくだったなあ,結城.
中近東でゲリラに殺されたとばっかり思ってたぜ.」
E・T「俺は結城じゃない.」
男「ん?」
E・T「俺の名は田代えいじ.そのカードにも書いてあるはずだ.」
男「ま,いいだろう.俺もここでは偽名を使っている.」
E・T「この会社で働いているのか.」
男「社長に雇われているんだ.技術顧問としてなあ.
良かったら仕事世話してやるぞ.」
E・T「お前が?」
男「月100万は保証する.
もっとも,俺の世話になりたくないっていうなら話は別だがな.」
E・T「この際,月100万は魅力だな.」
男「よし,話は決まった.明日の朝,もう一度出直して来い.」
そう言って男は去って行った.
その頃,チャンプとマリアは変死した警備員の遺族の家を手分けして訪れていた.
チャンプはうえむらの実家を訪れた.うえむらの実家は田舎の古い家だった.
母親「わざわざ遠い所来てもらって.その上,お香典まで頂いてしまって.」
チャンプ「いやあ,こんなもんは経費で落としますさかいに.」
母親「経費?」
チャンプ「いえ,こっちの話です.」
チャンプはごまかして話を聞いた.
チャンプ「いやあ,しかし,
うえむら君が焼身自殺なさるとは思いもよりませんでした.いやあ.ああ.」
母親「ところで,あんたさんはいったい?」
チャンプ「あ,こりゃ申し遅れました.
私はしんじ君が特殊部隊におった頃の上官で小出と申します.」
母親「小出さん.」
チャンプ「はい.」
母親は腑に落ちない顔だ.
母親「そった名前,聞いたことねえけどねえ.」
すかさずチャンプが出任せを言った.
チャンプ「ごもっとも.特殊部隊と申しますのは,
お母さんにわかりやすく言いますと隠密部隊でございましてな,
これはその隊のマークですが,
ああ,隊員の名前を口外するわけにはいかんのですわ.」
母親「なんかねえ.」
チャンプ「いやあ,閑静なええお住まいですなあ.」
母親「古いだけで,なーんの取り得もねえだよ.」
チャンプ「いやあ,文化財的価値がありますよ.
忍者でも出そうではございませんか.」
母親「立て直すにはえれえ金かかるもんで,
それで,しんじにガードマン会社,勤めてもらっただ.」
その話を聞いたチャンプは疑問に思った.
チャンプ「しかし,あそこの給料は高々20万ぐらい.
いくらしんじ君が貯金をしてたと申しましても立て直すまでにはあ.」
母親「いやあ.せがれの給料は100万近かっただあ.」
チャンプ「100万? まさか.」
母親「いや,ホントだ.その代わり,
他の人と違う仕事させられるって言ってただあ.」
チャンプ「どんな仕事ですか.」
母親「よくしらねえけんど,なんだか随分辛い仕事だったみてえで,
できたら一日でも早く仕事やめてえって言って,
手紙書いてよこしたくらいだもんなあ.」
ノーパン喫茶で働いている菅原珠美のところへはマリアがやってきた. うえむらが失恋した相手だ. しかし菅原は特別社員のうえむらとはあまり会っていなかった. そこへ恐いお兄さん達が登場してマリアの聞き込みを妨害した.マリアも脅され, 絶体絶命のピンチ.だがE・Tが登場し, お兄さんたちを撃退したので事なきを得た.
変死した他の社員も特別社員だった.
E・Tが誘われたのも特別社員としてに違いない.
E・Tに話を持ちかけた男はマイケル北山といって,
E・Tがアメリカの傭兵訓練所にいた頃の仲間だった.
マイケルは凶暴なサディストで日本人を腹の底から憎んでいた.
マイケルの父親は日本人だが,
アメリカ人の妻を虐待して自殺に追い込んだらしい.
マイケルは少年時代に父親をナイフで刺し,大怪我を負わせていた.
チャンプ「早い話が極度のマザコンが人種偏見を育てたっちうことやな.
嫌いなタイプや.そういう奴とつきあうのは気つけないとあかんぞ,おい.」
翌朝.E・Tは東日警備保障へやってきた.E・Tはマイケルに連れられ,
望月に紹介された.望月もE・Tを気に入り,特別隊員の訓練場へと連れて行った.
E・Tの発信する電波を元にマリアはコンピュータで追跡した.
E・Tが乗る車は首都高速から中央高速を走り,山梨県の山の中へ入っていった.
そしてついた場所では迷彩服を着た男達が軍事訓練を受けていた.
望月「いい眺めだろ.」
E・T「何の真似だ.」
マイケル「見ての通りさ.俺がリーダーになって戦争の○○を育てているんだ.」
○○の部分はCSのファミリー劇場放送時にカットされたので聞き取れなかった.
E・T「それじゃあ,君達は傭兵を育成しているのか.」
望月「徴兵制度が廃止されている以上,本物の兵隊を育てる方法はこれしかない.
日本人は元々優秀な戦士なんだ.
紛争国に送り込めば必ず一騎当千の働きをしてくれるに違いない.」
E・T「そしてあんたは莫大な礼金を手に入れるわけだ.」
望月「地球上から扮装がなくならない限り傭兵は必要とされる.
需要と供給の関係だよ.」
軍事訓練は本格的なものだった.
兵士「リーダー.お帰りなさい.ご覧のように成果は上がっております.」
マイケル「まだまだ手ぬるい.」
マイケルは機関銃を手にすると倒れている兵士に向かって銃を乱射した.
マイケル「一人や二人死人が出ても構わん.徹底的にやれ.」
兵士「は.」
兵士は去って行った.そしてマイケルはE・Tに話し掛けた.
マイケル「あいつは無能だ.どうだ,サブリーダーにならんか.」
E・T「サブリーダ?」
マイケルはうなずいた.
マイケル「俺とお前が組めば世界で最強の傭兵部隊も夢じゃない.」
望月「田代,是非頼むよ.」
マイケル「ま,今日一日,ゆっくり考えてくれ.
訓練を見ているうちに傭兵の血が騒いでくるはずだ.」
一般社員として入社したヌンチャクは社内をいろいろと探った. 社長室で探っているときにガラス製の灰皿を落として割ってしまった. その音を聞いた専務が中を伺ったが, ヌンチャクはドアの陰に潜んだので無事だった. そして調査結果をヌンチャクはエアロビクスをしていたマリアに伝えた. 菅原はやはり東日警備保障と関係があった. 望月の手帳に住所などが書いてあったのだ. 菅原の住所は渋谷区西幸町4丁目6-12のマンション. 早速マリアは菅原のマンションを訪れた.マリアは強引に部屋に入り, 話を聞いた.マリアはうえむらが自殺ではないことをほのめかしたが, 菅原は白を切った.マリアは菅原の部屋に盗聴機を仕掛けて帰っていった. そして菅原がどこかへ電話するのを盗聴していた. 電話した先は東日警備保障の社長だった.
その頃,訓練場でE・Tがマイケルに質問していた.
E・T「もし断ったらどうなる?」
マイケル「もちろん,黙って帰らせてやるさ.もっとも,
この森を出る前に実戦訓練の標的として蜂の巣になってるだろうがな.」
そのとき,兵士がやってきて土屋という隊員が脱走したことを告げた.
マイケルはジープで追いかけ,土屋を轢き殺した.
E・T「殺したのか?」
マイケル「脱走罪は死刑.どこの軍隊も同じだ.」
E・T「どうするつもりだ.」
マイケル「死体にも使い道がある.事故死に見せかければな.」
E・T「事故死にみせかける.」
その日の夕方.望月はマイケルを呼び寄せた.
専務の大川から無線連絡があったのだ.
菅原珠美の身辺を嗅ぎまわっている女がいるので,
東京へ戻って始末しなければならないのだ.
車に乗ろうとしたマイケルは音波発信機を発見した.
その頃,E・Tは無線で連絡していた.
E・T「こちらE・T.こちらE・T.チャンプ,チャンプ,聞こえるか.
聞こえたら応答してくれ.」
チャンプ「はい,こちらチャンプ,よう聞こえてまっせ.おい.
そろそろ連絡してくる頃や,思うてな,
さっきから真面目に待機してますのやがな.」
チャンプはエロ本を見ながらそう答えた.慌ててチャンプはエロ本をしまった.
チャンプ「いや,ほんまやで.おい.えらい山奥にいるようやけど,
何しとんのや.」
E・T「よーく聞いてくれ.連中はここで傭兵を養成してるんだ.」
チャンプは驚いた.
チャンプ「なんやて.ほんまかいな.」
E・T「ああ.この目で確かに見た.」
チャンプ「そやけど何のためにそんなことを.」
E・T「詳しくは帰ってから話す.それより,まずいことになった.」
チャンプ「なんやねん?」
E・T「例のデート喫茶の女な…」
そこまで話したとき,
E・Tはマイケルに通信しているところを見つかってしまった.
E・Tは逃げ出そうとしたが,周りを兵隊に取り囲まれ,
逃げることはできなかった.
マイケル「明日の朝,望み通り標的にしてやる.」
その晩.東日警備保障へ望月とマイケルが戻った.大川と菅原珠美が待っていた.
菅原は外国へ逃げるために大金を要求.
望月「それよりもっと安全な方法があるんだがね.」
マイケルはナイフで菅原珠美に襲い掛かった.
マイケル「死人に口なしだ.お前が死ぬのが一番だ.」
その頃,マリアは車に細工をしていた.細工が終わった頃,
逃げ出した菅原をマリアは自分の車で連れ出した.
マイケルも車で追いかけようとしたが,
マリアの細工により,発進できなかった.
マイケル「くっそう.」
望月「この始末をどうつけるつもりだ.」
マイケル「必ず見つけ出してぶっ殺してやる.」
だが望月はマイケルに拳銃を突きつけた.
望月「殺されるのは貴様だ.」
その頃,菅原はマリアに何もかも話していた.うえむらは望月達に殺され,
菅原が偽証したのだ.マリアは菅原を病院へ連れて行った.
翌朝.望月は縛られているE・Tのところへ,
同じく縛られているマイケルを連れてやってきた.
望月「どうだ.貴様ら傭兵隊員の落ちこぼれにはかっこうの死に場所だろうが.」
大川「お前達二人,同士討ちって寸法だ.」
驚いたマイケルは大川を睨んだ.
マイケル「貴様ら,俺にまで保険を.」
望月「やっと筋書きが読めたな.」
マイケルは大川に刺し殺されてしまった.そこへヌンチャクが現れ,
E・Tを救出した.望月は非常召集をかけたが,
バイクを駆ったヌンチャクは兵隊を振り切って逃げるのに成功した.
皇居のお堀端にあるジョギングコースで園山が待っているところへ,
チャンプがジョギングして現れた.
チャンプ「あ,お待たせ.」
園山「約束の時間,もうとうに過ぎとるよ.」
チャンプ「そんな.女みたいに膨れなさんな.」
園山「なんだったら,かしを変えてもいいんだよ.
君はタバコの煙がもうもうのところがいいんだろう.」
チャンプ「じらしなはんな.ほんで,頼んだこと調べてくれたんかいな.」
園山「いやあ,苦労したよ.保険会社ってところはねえ,
企業秘密が厳しくってねえ.」
チャンプ「前置きはええ.要点だけ.要点だけ言うて.」
ジョギングしてきたチャンプは足踏みしていた.
園山「例の三人だがねえ.」
チャンプ「うん.」
なぜか園山も足踏みを開始した.
園山「君の睨んだとおり,生命保険に入ってた.」
チャンプ「やっぱり.ほんで金額は?」
園山「5つの会社にそれぞれ3千万.」
チャンプ「うん.」
園山「つまり,一人頭1億5千万になる.」
チャンプ「うん.」
園山「これが保険証書のコピーだ.」
チャンプ「うん.」
二人とも足踏みしながら保険証書のコピーを受け渡した.
チャンプ「あんたも走ってまんのかいな?」
園山「すぐつられる性質でねえ.」
園山は何か魂胆がありそうだったが,チャンプは気がつかずに笑った.
二人は一緒に走り始めた.
チャンプ「3人でしめて4億5千万.ごっつい金額やわ.」
園山「しかも受取人は東日警備保障会社になってるんだ.」
チャンプ「それでわかった.奴らは傭兵部隊を抜け出すものを殺し,
保険金を稼いどったんや.」
園山「いやあ,ところでなあ.
本来は君達が自分達の手でやる仕事を手伝ってやったんだ.手数料として100万,
差っぴかしてもらうよ.」
そう言って園山は走っていった.慌ててチャンプも追いかけた.
チャンプ「ちょっと待てえ.おい,ちょっと,おっさん,待て.おい.」
だが園山は止まらない.
チャンプ「おい.ちょっと.おっさん.ちょっと.」
園山はスピードを速めた.チャンプもスピードを上げた.
チャンプ「園やん.ちょっと.おい,待て.園やん.おい.」
ギャラが分配された.
マリア「必要経費を差し引いて一人頭52万3842円.」
マリアはその分のお札とコインを4人分テーブルに置いた.
望月のところへ手紙が届いた.金搾取と傭兵部隊養成をばらされたくなかったら, 1億円持って府中の競馬場へ来いと言うのだ. そしてアロハツーリストは閉店した.
望月と大川は府中競馬場に着いた.競馬場の客席で望月と大川は声をかけられた.
振り返ると兵士が全員いるのが見えた.
副隊長「お待ちしていました.」
望月と大川は驚いた.
望月「君達,どうしてここへ?」
副隊長「どうしてって,社長がお呼びになったんじゃありませんか!」
望月「私が?」
副隊長は望月のところへ駆け寄った.
副隊長「今朝,無線で連絡されたでしょう.全員集合せよと.」
望月「馬鹿な.そんな指令を出した覚えはない.」
大川が気がついた.
大川「じゃ,これはやはり罠.」
そのとき,
チャンプ「そうや.お前達を一同に集めて,いたぶったろう,思っとるんや.」
望月「誰だ,お前は.」
チャンプ「わしか.わしはのう,ハングマン.闇の死刑執行人や.」
望月「死刑執行人だと.ふざけやがって.」
望月は拳銃を構え,チャンプを狙った.
だがE・Tが拳銃を撃って望月の拳銃を跳ね飛ばした.
そして望月の拳銃を下にいたヌンチャクが拾った.
E・T「今度動くと頭蓋骨をぶち抜くぞ.」
近寄るチャンプとE・T.
大川「待て.待て.金はここにある.はやく受け取ってくれ.」
チャンプ「そりゃおおきに…と言いたいところやが,そんな汚れた銭はいらん.
傭兵の話に乗せられて事故や自殺に見せかけて殺された連中の恨みが,
こもっとる.」
副隊長「なんだと? そりゃ,どういう意味だ.」
E・T「ここにいる軍国主義の亡霊はとんだ詐欺師だって意味さ.
お前達ももしかすると殺される運命だったんだ.」
副隊長「まさか.ホントか.」
チャンプ「ああ,ほんまや.ええか.おまえらの仲間うえむらしんじ,
野沢かずお,水口しげるは,それぞれ保険を掛けられた上殺された.」
E・T「それに,お前達の隊長,マイケル北山も同じ手口で,
この社長に殺された.」
驚く兵隊達.
チャンプ「信じられんかったら,これを見てみい.」
チャンプは兵隊達の保険証書のコピーを投げた.兵隊達はコピーを拾った.
兵隊「これは保険証書じゃないか.1億5千万もあるぞ.」
兵隊「佐藤,お前のもあるぞ.」
兵隊達は真実を知った.
副隊長「社長.あんた,こんなつもりで俺達を.」
思わずたじろぐ望月と大川は兵隊達に周りを取り囲まれた.
大川「やめてくれ.やめてくれ.私は社長のアイデアを事務的に処理したまでで,
何もかもこの社長が悪いんだ.」
望月「なにを今更.殺しの計画を立てたのはお前だ.
それに金だってたっぷりくれたじゃないか.」
大川「嘘だ.嘘だ.みんな聞いてくれ.みんな,私じゃない.
この社長に脅かされてなあ.おい,やめろ.やめてくれ.」
副隊長「いい加減にしろ! よくも騙しやがって.」
逃げる望月と大川.追いかける兵隊達.
その醜態はヌンチャクによってビデオで撮影されていた.
望月と大川が逮捕されたテレビニュースをチャンプとE・Tは食堂で知った. テレビニュースではヌンチャクが撮影したビデオも流された. そして頼んだ天丼が来るのが遅いので, チャンプは食堂のおばさんに一生懸命催促し, E・Tはみっともないからよせとチャンプをなだめるのであった.
この話は第1話よりも先に撮影された可能性のある話です.というのも, 番組の宣伝スチールとなっている,ヌンチャク,チャンプ,マリア, E・Tが並んで写っている写真は背景が府中競馬場の客席になっており, 初期の話で府中競馬場が舞台になっているのは,この話だからです.おそらく, まず前作や前前作を多く担当していた中村勝行さんや田上雄さんが, 大まかな話を作ってから,柏原寛司さんが第1話を書いたのでしょう. 私はそう考えています.
「新ハングマン」へ 「ほぼ全話のあらすじ」へ 「ほぼ全話のキャスト」へ 「緊急指令トラトラトラ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.