第十一回

写真誌記者轢き逃げ事故の裏に隠された真相を暴く.
トリック写真に殺人者を現像!

脚本:鴨井達比古 監督:山本迪夫

今週のリハーサル

稲川さんは助監督に連れられ,スタジオ入り.「おはようございます.」と, 山本監督に挨拶し,セットの方へ.今回は#5と似たようなセットだった. ただし,今回は趣向が違った.稲川さんは棒を軽々と持ち上げた途端, スタッフは棒を支えていた柱のようなものをどかした.
助監督「はい,ストップ.そのまんま.」
稲川さん「ちょっと,これだけじゃさあ,トレーニングになんないよ.」
助監督「そう思うでしょう.」
助監督は意地悪な笑みをたたえてそう言った. そしてスタッフが稲川さんの首に縄でできた輪をかけた
稲川さん「何これ.」
助監督「上見てください,上.」
なんと輪は上の滑車を経由して棒に結ばれていた. 稲川さんが棒を上下させるたびに稲川さんの首が絞まった.
稲川さん「なんなんだよ,これよ.」
助監督「だんだん重たくなりますよー.」
助監督達は稲川さんが持ち上げていた棒の両端を持ち,押さえつけた. そのため,稲川さんの首が絞まり,稲川さんは苦しんだ.
稲川さん「馬鹿馬鹿しい.これがホントのハンギングじゃねえかよ.」

アンクルとスポット,写真誌に憤慨する.

ここは富士短期大学.門の所で岡田ともえという女子大生を, 写真週刊誌の記者が取材攻めにした.記者は両親の離婚についてきいたが
岡田「やめてください.」
そこへアンクルとスポットの乗ったワゴンが通りかかった.ワゴンは停車し, アンクルはワゴンから降りた.そして
アンクル「馬鹿野郎,嫌がってるじゃねえかよ.」
記者「なんだい,てめえは.暴力をふるうのか? 私は週刊カメラアイの者だ. 君は言論の自由に対してだなあ…」
良くそんなことが言えた物だ.これを聞いたアンクルは激怒.
アンクル「何が言論の自由だ.頭冷やして,てめえのやってること考えてみろ.」
スポットも飛び出した.
スポット「あー,アンクル,アンクル,やばい.また絞め殺すんですか? ちょっと,やめてください.」
アンクルは記者を突き飛ばした.そして記者達は退散した. スポットとアンクルは岡田ともえに声を掛け,あんな連中, 相手にすることはない,とか,良かったら送る,というのであった.

S.S.C.に帰ったアンクルとスポットはフラッシュとアイリスにその話をした.
アイリス「住所と名前は?」
それを聞いたアンクルは呆れた.アイリスは, 話題性があるから岡田ともえをタレントとして売り出すつもりだったのだ.
フラッシュ「よせ,よせ. こう見えてもアンクルはフェミニストなんだからなあ. そんなこと言ったら,お前,はっ飛ばされるぜ.」
アンクルは嘆いた.
アンクル「しかしなあ,キャメラアイと言ったら, 発刊当時は硬派が売り物だったのに,今じゃ,軟派のスキャンダル記事が専門だ. (カメラアイを放り投げて)悲しいね.」
フラッシュ「そういう世の中なのさ. 写真誌の過当競争でろくに経験もない奴等が, キャメラマンと称して走り回ってる.ステータスが低過ぎるんだよ.」

事件発生

そんなある日.ある坂道で車が待ち合わせをしていた. 先に来て待っていた男(佐原健二)は車から降り, 後からやって来た男(浜田晃)を丁重に出迎えた. そして先に来ていた男は車のトランクを開け,ダンボール箱を出し, 渡そうとしたが,落としてしまった.中から札束がはみ出るのが見えた. 慌てて男達は札束をダンボール箱の中にしまった. その様子を別の白い車の中から写真で撮っている二人の男達がいた. そうとも知らずに,ダンボール箱を男達は別の車のトランクの中に移していた.

早速白い車に乗っていたカメラマン達は写真を現像.
記者「やった,やった.これで一目瞭然だ.」
相棒のカメラマン吉村は週刊カメラアイの編集長に電話した. そして編集部へ行って編集長に写真を見せた.
記者「1億以上は絶対あります.いいですか.こっちの男(後から来た男)は, 元産業大臣大倉こうぞうの第二秘書の加納たかよし. そしてこっちの男(先に来ていた男)は近東物産の松岡副社長です.」
編集長はネガを要求.上と相談するというのだ.吉村達は会議室で待機した.

編集長は吉村達に1千万円の小切手を渡した. 政治家を敵に回すことを恐れたのだ. そして劇作家のとものやすひこが宝塚の女優と付き合っているという情報がある, それを追え,という編集長の言葉を聞き,吉村達は激怒. 相棒の記者は小切手を破り捨てた.
記者「随分落ちぶれたもんですね,うちの雑誌も. こんな金,受け取れませんよ.ネガを返してください.」
だが編集長は拒否.吉村達は3ヶ月も追いかけた特種を没にされ, さらに激怒し,会社を辞めると言い出した.それを聞いた編集長は, トラの尾を踏むことがどういうことか,わかっているのか,と言い出したが
吉村「あんたに心配してもらわなくても大丈夫だよ. トラだろうがライオンだろうが食らいつくのがジャーナリストじゃないのか?」
吉村達は出て行った.そしてその晩,吉村達にトラックが向かって来た. そして吉村の相棒の中尾はトラックにはねられて死んでしまった.

仕事開始

アンクルは岡田ともえと喫茶店にいた.岡田ともえは前に助けられた礼を言った. アンクルは上機嫌.岡田ともえは相変わらず追い掛け回されて困っていた. アンクルは岡田ともえにモデルにならないかと誘ったが, そのとき,腕時計が鳴った.

ゴッド「ゴッド指令.二名のジャーナリストを襲った犯人をつきとめ, その背後にある汚職事件の中心人物をハンギングせよ.」
1週間前,渋谷区の一方通行の道路で二人の男がダンプにはねられた. 記者の中尾は即死.カメラマンの吉村一郎は全治1ヶ月の重傷を負い,現在, 関東中央総合病院に入院中.警察は単なる轢き逃げ事件と見ていたが, ゴッドの調査によると,この事件の背後には政治が絡んでいるらしい. 2人とも写真雑誌カメラアイの社員だったが,事件当日の午後, 会社に辞表を提出.アンクルはそんな硬派な記者がいたのか,と感心. スポットは昔からの記者だろうと言い,アイリスは, 昔はカメラアイが政治家から名誉毀損で訴えられたことがある,と言った. 吉村はフラッシュが中近東にいた頃の知り合いだった. 吉村は命知らずの優秀な報道カメラマンだ. 中近東にいた頃はフランスの通信社と契約していた. そこでフラッシュは自分が吉村に当たってみることにした. 吉村が追っていたネタを知ることと吉村がまた狙われる可能性があるからだ.

吉村はフラッシュの来訪を喜んだ.ベイルート以来,約4年ぶりの再会だ.
吉村「今,何をやってるんですか?」
フラッシュ「しがない街の写真屋さ.見合い写真,スーパーの広告写真, その他何でもだ.」
吉村「まさか.嘘でしょ.」
フラッシュが誉めるだけあって,吉村は優秀なカメラマンだ.
フラッシュ「嘘じゃないさ.平和な日本に戻ってきたら, 俺達みたいにカメラしか能のない人間にとっちゃ,飯の種はそんなもんだな.」
フラッシュはそう言ってごまかした.そして
フラッシュ「だが,どうやらお前さんは違ったらしいな.」
吉村「どういう意味ですか?」
フラッシュ「カラシニコフの銃弾の嵐の中で怪我一つしないで飛び回ってた, お前さんが,いくら酔っ払ったからってダンプに轢かれる訳は無いだろう. 吉村,俺の勘は鈍っちゃいないぜ. 消されても仕方の無いようなやばいネタを追ってたんだろう.」
その言葉を聞いた吉村は話し始めた.

その頃,関東中央総合病院の前に停まっている車の中から, 怪しい男達が様子を伺っていた. 吉村の妻が入っていくのを彼らは見逃さなかった.

吉村が追っていたのは闇の政治献金絡みのネタだった. 政府公認のプラント輸出の利権を独占する為に大手商社が金をばらまく現場を, 吉村は押さえたのだ.吉村が写真撮影した現場ではダンボール箱2つ分の札束が, 受け渡しされていた.そして吉村はネガを編集長に取られたことも, フラッシュに話した.この話を聞いたフラッシュは, 吉村と中尾を襲った連中はマスコミにコネと力を持っている連中だと睨んだ. 吉村も同意見だった.
吉村「少し冷静になって考えれば,大倉こうぞうなら.」
その名前を聞いたフラッシュは驚いた. 大倉なら出版社の2つや3つを潰すのは訳が無い. その時,病室へ吉村の妻が入って来た.

病院のロビーでアンクルはフラッシュから話を聞いた. 大倉の名前を聞いてアンクルも驚いた. フラッシュはこのまま関東中央総合病院に入れておいたら, 吉村の命はないと考えた.アンクルが看護婦に聞き込んだ情報によると, 吉村は後は時間さえかければ治るらしい.

その晩.吉村の病室に先程病院の前で見張っていた男達が乗り込んだ. 吉村を殺害するためだ.だが,寝顔に見えたものは枕. 吉村はワゴンで脱出した後だった.

翌朝.吉村の妻葉子のところへ電話がかかってきた.電話は病院からのもので, 吉村がいなくなったと言うのだ.慌てて外へ出た葉子の所へフラッシュが登場. フラッシュは吉村の潜伏している「SHINJUKU NEW CITY HOTEL」へ, 葉子を連れて行った.葉子は潜伏している理由を聞いたが, 吉村は話そうとしなかった.フラッシュは吉村が悪いことをしている訳ではない, と言い,一緒にこのホテルに潜伏するように言った. そして身の周りの物はホテルの地下街で揃えるようにとつけくわえた.

加納は吉村が逃げたことを「中国名菜 銀座 亜壽多」で松岡から聞いた. 加納は吉村の始末を厳命した.もし万一のことがあれば近東物産も危ない. 加納は近東物産などどうでもいい,と言い, さらに「先生」はマスコミを左右するだけの力があるので, 写真の件が表沙汰になる前に押さえた,と言った. 加納は松岡が大倉の名前を出すことも許さなかった. 大倉は無関係だと言うのだ.

その頃,スポットは吉村が写真を撮った現場を撮影していた. フラッシュは連中に揺さぶりをかけるために「証拠の写真」を作ることにした. まずフラッシュは吉村から写真を撮った現場の場所を聞いた. そして戻って来た葉子にホテルから出なかったことを確認し,帰って行った. 葉子は,いつまでここにいるのか,と聞いていた. 家賃を払わなければならないし,小鳥に餌もやらなければならない. 葉子は訳もわからずにホテルに潜伏することに飽きていたのだ.

フラッシュはアイリスに加納と吉村に似た男を調達させようとした. 一生懸命アイリスは御茶ノ水の聖橋の上で声を掛けた. だが適任者はみつからない.アイリスはオカマにまで声を掛けてしまい, もうやめた,と言い出した. そこでフラッシュは背格好だけ似ている男達を調達させた.そして写真を撮影. 顔をはめ込み合成し,印刷所で細工し,「証拠写真」を作り上げた.

早速フラッシュは写真の載ったゲラを持って松岡竜一のところへ乗り込んだ. フラッシュは吉村からネガを受け取って雑誌社に持ち込んだと言い, フラッシュがゴーサインを出さなければ流出を阻止できると言って, 去って行った.早速加納は松岡から話を聞いた.加納は抹殺を命令した. その後,松岡のところにフラッシュから電話が入った. フラッシュは松岡に現金で5千万円を要求し, さらに午後3時に住吉の研修所跡に加納と二人で来いと言って電話を切った. フラッシュとアンクルは出動し,証拠写真を撮ってハンギングすることにした.

ところがそうは問屋が卸さなかった. 吉村が寝ている隙に葉子が書置きを残してホテルを出て,自宅へ戻ったのだ. 葉子は待ち構えていた松岡の部下達にナイフで脅された. 吉村が気づいた時は後の祭.慌てて吉村は自宅へ電話. 吉村は松岡の部下に脅され,ある場所へ来いと厳命された.

そうとは知らないフラッシュはライフルで狙われた. 慌ててフラッシュはアンクルに腕時計で連絡を取った. フラッシュは二人組に追い詰められ,絶体絶命のピンチ. 間一髪アンクルが階段の上からドラム缶を投げ,二人組を倒した. フラッシュとアンクルはなぜフラッシュの命を狙ってきたのか, なかなかわからなかった.そのとき, フラッシュ達は吉村達のことに思い当たった.

吉村は車に乗せられ,地下室へ連れられた.そこには葉子もいた. 男達はガスバーナーで写真をどこの雑誌社に売り込んだか拷問した. だが無言だったので葉子の方へガスバーナーが向けられた. 「吉村」は「待て.」と言った.
男「ほう.やっとその気になったか.」
フラッシュ「質問はこっちがする.誰に頼まれた.」
実は吉村にフラッシュが化けていたのだ.アンクルも現れ, 葉子は無事救出された.そして男達が逆にガスバーナーで脅された.
アンクル「人間バーベキューか.面白そうだなあ. 焼肉のたれでも持ってくるんだったよ.」
すでにやっているではないか.これは効き, 男達は松岡の名前を出した.だが男達は命じられただけ. 中尾と吉村をダンプカーを襲ったのも彼らだったが, 裏の事情までは知らなかった.

アンクル「で,吉村夫妻は?」
フラッシュ「ああ.無事に病院に戻ったよ.」
スポット「それじゃあ,こっちはこっちの仕事やりますか.」
フラッシュ「そういうこと.行くぞ.」
全員立ち上がった.
フラッシュ「Say Cheese!」
全員,サムアップして出動した.

ハンギング

松岡は地下駐車場でフラッシュの手で眠らされた.

国会議事堂の前で,アンクルは加納が運転する車の前に立ちはだかり, 例のゲラを広げて見せた.そして停まった車の助手席に強引に乗り込み, 加納を眠らせた.

早速「寿司元」へ電話がかかってきた.
高田「はい,寿司元.ああ,どうも.まだ開店前でねえ,出前できません.ああ. 愛ちゃん? ああ.あ.仕事.ああ.やめとくよ.え? あ,そうじゃないけどさあ. そりゃ愛ちゃん大好きだけどさあ,あのう,ここんとこ,いつもさあ, 変な仕事しかくんねえんだもん.俺,考えちゃってさあ.」
怒ったアイリスは言った.
アイリス「馬鹿言ってないで,速くいらっしゃい.」
だがアイリスは思い直して甘い声を出して言った.
アイリス「元ちゃん,あなたにしか頼めないのよ.だから, あなただけなんだもん.信じられんの.」
これは効いた.
モルモット小父さん「ええ? ホント? (ふきんを口にくわえながら)ホントかなあ.」

悪党達は柱に縛られていた.
フラッシュ「そこの二人はお前達の殺人計画についてすっかり喋ってくれた.」
松岡と加納は無能な部下二人をジロっと睨んだ.
フラッシュ「そこでお前達に制裁を加えることにした. どうやって制裁を加えるか,まず見ていただこう. この男もまたお前達と同様に人間にあるまじき悪党だ.」
モルモット小父さんが棒を持って登場した.棒の両端にはタンクがついていた. そしてモルモット小父さんの首にはロープで作った輪がかかっており, 輪は滑車で棒につながっていた.
モルモット小父さん「お,重いよー.段々重くなってきやがって.くそう.」
モルモット小父さんは耐え切れなくなって腕を降ろしたが, 首が絞まったので慌てて腕をまたあげた.
フラッシュ「注水開始だ.」
スポットの操作にタンクに水が入れられた.やめろーと叫ぶモルモット小父さん.
フラッシュ「御覧のとおり,バーベルは段々重くなって行く.重さに耐えられず, 手を降ろすと自動的に首が絞まる.よく見るんだ.その男の末路を.」
モルモット小父さんは手を上下させた後,ついに耐え切れなくなり, 棒を落としてしまった.そして宙吊りになり,動かなくなった.
アンクル「よーし,こいつは終わりだ.次はお前達4人まとめてやるぜ.」
フラッシュ「そうだなあ.4人まとめてたっぷり死の恐怖を味わってもらうか.」
4人の前に輪が下りた.
加納「やめろ.やめてくれ.」
フラッシュ「キャメラ用意.」
カメラが用意された.そして
部下「わし達は命令されてやっただけだ.」
部下「そうだよー.松岡さんが殺せと.」
松岡「殺せって言ったのは加納だ.」
加納「違う.私はただ善処しろと言っただけだ.」
松岡「同じことじゃないか!」
加納「二億も現金取ったんだあ.大倉先生が,大倉先生に言われて.」
そして加納達は警察に引き渡された.新聞は「闇に葬られた 証拠写真!」 「松岡副社長,殺人事件にも関与!」「大倉代議士,地検が事情聴取!」と報じた. 新聞を病院で吉村も読んだ.

事件解決して

モルモット小父さんはヒーヒー言っていた.
モルモット小父さん「あー,気持ちわりい.伸びた首がさあ, 元通り縮まるといいよ.」
首を叩かれたモルモット小父さんは痛がった.そして
モルモット小父さん「あのさあ,どうせやるんだったらさあ, 裸になってやろう.」
突然モルモット小父さんがズボンを脱ぎだしたのでアイリスは慌てた.

ギャラが分配された.今回は一人100万円.カメラアイは廃刊. 吉村は例の写真で名が売れ,新しい会社に移る事ができたと言う. そしてアンクルは岡田ともえと喫茶店で話をした. 岡田ともえはカメラアイが潰れて喜び,モデルの話も快諾. スポットは街で写真を撮り, フラッシュはジムで筋力トレーニングに励むのであった.

「ザ・ハングマン6」へ 「ほぼ全話のあらすじ」へ 「ほぼ全話のキャスト」へ 「緊急指令トラトラトラ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp