第二十四回

女性アイドル歌手スキャンダル捏造一味を吊るす.
ニャンニャン写真がライバル歌手を殺す!

脚本:柏原寛司 監督:永野靖忠

蝶子が雅則のパンツを干し終わり,テレビをつけるとワイドショーが始まった. テレビにでかでかと「宮崎好美 衝撃自殺!!」という字幕が表示された.
アナウンサー「今朝7時30分頃,アイドル歌手宮崎好美さんが, 自宅のマンションで死んでいるのを,迎えに来たマネージャーの若松氏が, 発見しました.」
続けてマネージャーの若松順一(小林稔侍)がインタビューに答える様子が, 映し出された.
若松「好美がねえ,好美がだよ,宮崎好美がどうして自殺したのか, 俺は信じられない.信じられないよ.」

調査開始

その後,蝶子が買物に出かけると, マネージャーが街頭でミシンの実演販売をしているところにでくわした.
マネージャー「あ,奥さん.」
パピヨンは立ち止まった.
マネージャー「ちょっと.我社の新製品ですぞ.見てください,ね. ハ,ハ,ハ,ハ,ハ.」
笑いながらマネージャーはカタログを広げた.
マネージャー「さて,歌手の宮崎好美が自殺したのは知っとるね.」
マネージャーはカタログの上に写真週刊誌も広げていたのだ. この週刊誌には「宮崎好美ニャンニャン写真発覚 同級生と」という見出しで, 宮崎好美が男と一緒にベッドに入り,タバコを手に持っている写真が載っていた.
パピヨン「見ましたわ,これ.」
マネージャー「つまりねえ,スキャンダルを作り上げ, 彼女を自殺に追いやった人間達がいるってことだよ.ほい. 詳しくはこの資料を見て頂戴.」
マネージャーは封筒を渡した.
マネージャー「それでは,ミシンの方,検討してみてください,奥さん.」
パピヨン「はい.」
マネージャー「はい,どうも.」
ちなみにマネージャーは「世界初!! おしゃべりミシン コンパルα 新発売」 と書かれたのぼりを立てていた.

アジトでパピヨンが指令を説明した.エジソンの分析によると, 例の写真は実に巧妙に作られた合成写真だった. 普通の合成写真は首から上を挿げ替えたりするだけなので, 光線の具合でおかしな感じになる.例の写真は不自然な感じではなかった.
エジソン「ま,俺からすりゃ簡単なこったよ.いい?」
エジソンは自分の写真とパピヨンの写真を使い, エジソンとパピヨンがベッドで仲良く並んで寝ている写真を作り上げた. ご丁寧にもパピヨンはタバコまで持っていた.
ファルコン「おう.ホ,ホ.」
エジソン「ちっとも不自然じゃないでしょ.」
得意になってエジソンはそう言ったが
バニー「経費の無駄使いはよしてください.」
むきになって怒ったバニーを見て
エジソン「何恐い顔して…あ,ごめん.お前の作ってやれば良かったな.」
バニー「いや,僕は全然.」
話が明後日の方向へ向かい始めたので
パピヨン「ちょっと.ちょっと.仕事.仕事.」
それまで清純派の人気アイドルとして人気絶頂だった宮崎好美が, このスキャンダル以後人気が凋落し, 彼女のライバルだった榊真由美の人気が急上昇. そして宮崎好美は失意の内に睡眠薬自殺したというわけだ. そのスキャンダルを作り上げた一味をハンギングするのが今回の仕事だ. 手口は違うが,ここ数年でスキャンダルで失脚した女性歌手が3人もいた.
バニー「知ってます.小出りえ,三隅なつこ,井上ようこです.」
ファルコン「詳しいじゃない.」
エジソン「それじゃ,ま,この3人と合成写真作ってやろうか?」
バニー「あ,はい,お願いします.」
さっきの舌の根も乾かない内にバニーはそう言った.
エジソン「へー.蝶子さんじゃなくて,その3人がいいの.」
また話が変な方向へ行ったのでパピヨンはエジソンをはたいたが
エジソン「へー.」
ファルコンが話を元に戻した.一発当たれば歌手は儲かるので, スキャンダル捏造組織に金を払ったとしても,十分にお釣が来る. 宮崎好美の今年の売上予定は5億だった.宮崎好美が失脚して得をするのは, ライバルの榊真由美が所属するYプロダクションだ.
バニー「そっち,僕に当たらせてください.」
マネージャーの資料によると米本と言う音楽評論家が一枚噛んでいるらしい. パピヨンは米本を当たることにした.
パピヨン「(エジソンに)ね,手伝って頂戴ね.」
エジソン「はい,はい.よろこんで.」
ファルコンは宮崎好美のマネージャー若松を当たることになった.
エジソン「ちょ,ちょっと待って.その前に,頂くもの,頂かないと.」
パピヨン「あ.今回は経費込みで70万.」
エジソン「経費別って,この頃ないよ.」
すかさずバニーが叫んだ.
バニー「一つ.」
エジソン「わかった.わかってるって.」
ここでエジソンは日頃の不満を爆発させた.
エジソン「ねえ,なんで俺は(バニーを指差して) こいつと一緒にやんなきゃいけないの? 一生懸命,頭使ってんのにさあ.」
ファルコン「そう.僕から見ると団栗の何とやらだよ.」
そう言ってファルコンは去って行った.これはパピヨンの失笑を買った.
パピヨン「バニーだって一生懸命やってるわよねえ.」
バニー「はい.」
パピヨンとバニーが去るのを見ながら
エジソン「若いうちから金持たすとろくなことない.」

小田急沿線にある若松プロの事務所を見ながら
ファルコン「こんなところに事務所があるところを見ると, あんまり儲かっていねえんだろうなあ.」
とりあえず,ファルコンは事務所の扉を開けるやいなや, 若松が飛び出して行った.慌ててファルコンは若松に声をかけた. ファルコンはフリーライターの伊吹と名乗り, 宮崎好美の自殺を追いかけていると言ったが, 若松はファルコンからもらった名刺を破り捨て, 忙しい,とだけ言って去ってしまった.仕方がないので, ファルコンは若松の乗ったタクシーを追うことにした.

さてここはUCMレコードの社屋.パピヨンは「芸能実話社 記者 英蝶子」 と書かれた名刺を米本(小島三児)に渡し, 宮崎好美の自殺に関する話を聞いていた.
米本「なんぼくれる?」
パピヨン「何分にも,お金がないもので.」
米本は立ち去ろうとしたが,すかさずパピヨンが
パピヨン「別の形で.」
と言うやいなや,態度が一変した.ホテルの部屋で米本が浴室に入っている隙に, パピヨンは米本の持つメモ帳を腕時計型カメラで撮りまくった. 「Yプロ 伊藤」とか「Yプロ 伊藤 広瀬」とか言う文字ばかりだった. そして米本は浴室から全裸でバスタオルを羽織っただけの格好で登場. パピヨンに迫った.
パピヨン「私には夫がいるんです.」
米本「私にも妻がいるんだ.」
パピヨン貞操の危機.そこへ
エジソン「またやってんな.」
エジソンは警察手帳を見せながら登場した. 売春防止法違反の現行犯で逮捕しようと言うのだ.
エジソン「この女はねえ,この辺縄張りにしてる常習犯なの. あんた,客だろう.」
米本は躍起になって否定したが,裸になっている弱みがあるので, 強く出ることができなかった.パピヨンは, 宮崎好美の件について聞こうと思ったんです,と言った.
エジソン「昔から芸能界,凄いからねえ.でも,その話の後で, 仕事しようとしてたんでしょう.」
米本は,無理矢理連れ込まれた,とごまかそうとしたが
エジソン「あんた,どっかで見たことあんねえ.」
米本は手で目の辺りをいじって人相をごまかそうとした. とりあえずエジソンは米本を見逃し,パピヨンを連れて出て行った. うまく言った,と聞くエジソンに
パピヨン「あの年でタフなのねえ,米本って.」
エジソン「ん?」
パピヨン「どっか,体悪いのかしら,うちの人.」
エジソンは首をかしげるばかりだった.

Yプロの前に緑美園のワゴンを停め,バニーは盗聴機を仕込んだ植木鉢を確認. だがバニーが乗り込む前に若松のタクシーが停まり,ファルコンの車も停まった.
バニー「ファルコン.」
若松の尾行を邪魔されたファルコンは怒った. ファルコンは強引に若松の乗ったエレベータに乗った. 若松はYプロに乗り込み,社長の伊藤(佐々木勝彦)の胸倉をつかんだ. そしてスキャンダル写真をでっちあげたのはお前だろう, と若松は伊藤に詰め寄った.宮崎好美を発掘したのは若松だったので, 若松の怒りは頂点に達していた.ファルコンやYプロの社員はとめようとしたが, 怒りに燃えた若松をなかなかとめることができなかった. 騒ぎが大きくなったのでファルコンは若松を強引に連れ出した. その隙にバニーは植木鉢をYプロに置いた.

若松プロダクションでファルコンは若松から話を聞いた.
若松「伊藤の野郎が苦しかった時代を俺は知ってるんだよ. どうしようもない演歌歌手一人抱えてうろついてた頃だ. 俺もなあ,客がにこりとも笑わないコメディアン抱えてて, ふん,二人でよく安酒を飲んだもんだよ.」
ファルコン「大変だなあ.あんたらの商売も.」
若松「俺は好美と巡りあった.伊藤はスポンサーを見つけてYプロを始めた. ライバルどうしだったんだ,あいつとは.だからと言って, あんなスキャンダルでっちあげて許せると思うか!」
ファルコン「儲けそこなったって訳か,あんたも.」
若松「儲けるためにこんなことやってるわけじゃないよ. 俺が果たせなかった夢をタレントに託してるんだよ.」
ファルコン「ということは,あんたも?」
若松「ああ.役者志望だったんだ.」
思わずファルコンは吹き出してしまった.電車の通る音が響く中
ファルコン「失礼.」
若松「だから,俺の手でスターを育てたかったんだ. 好美にも,そのうち芝居をやらせるつもりだったんだ.」
ファルコン「で,誰なんだよ.伊藤のスポンサーって言うのは.」
若松「広瀬って若手の実業家だ.」
ファルコン「広瀬?」
若松「ああ.俺にも粉掛けてきたが,きっぱり断ってやった.」
ファルコン「何で?」
若松「好美のファンだからって好美の面倒見たいってなあ.よくいるだろう. 商売でちょっと当てて芸能界に色気出してくる助平な野郎が.その類だ.」
ファルコン「なるほどねえ.」
そのとき,若松はファルコンの顔をジーっと見た.
ファルコン「なんだよ.」
とつぜん,若松は叫び声をあげてファルコンの胸をつかんだ.
若松「決めた.俺はお前をスターにしてやる.スターに!」
怪訝な顔のファルコンに
若松「お前ならなあ,日本のジェームス・ディーンになれるよ. ジェームス・ディーンに! な.」
ファルコンは退散しようとしたが
若松「スターになったら,お前,ロールスロイスに乗れるんだぞ, ロールスロイスに.」
ファルコン「国産でいいから.」
だがなおも若松は熱っぽく語るので,ファルコンは逃げ出した.

その頃,伊藤は広瀬の部下に若松が乗り込んできたことを電話で報告していた. その様子をバニーがワゴンの中で盗聴していた. 広瀬の部下は伊藤に,その晩に六本木のポパイ&オリーブという店で会おう, と命じ,米本も呼ぶことを話した.伊藤は渋ったが, 広瀬の部下は,誰のお陰でプロダクションを大きくなったんだ,と言い, 伊藤を納得させた.

その晩.六本木のポパイ&オリーブというディスコにバニーもやってきた. バニーは零心会時代に鍛えた踊りを披露.その脇で伊藤は広瀬の部下と米本に, 榊真由美を広瀬に差し出せ,と強要されていた.
米本「なぜ宮崎好美のスキャンダルをでっち上げたと思ってるんだ. 榊真由美をスターにするためじゃないか. それぐらい,広瀬さんに応えてあげてもいいだろう.」
広瀬の部下も伊藤に迫った.密談の模様をバニーは写真撮影した.
米本「私だって便宜を図ってるんだ.音楽番組に出演させたり, 音楽祭へ推薦したりしてなあ.」
広瀬の部下は翌日に榊真由美を広瀬のマンションへ連れてくることを厳命した.

翌朝.英家の食卓には豪勢な食事が並んでいた.勿論, 雅則を「強く」するためだ.だが雅則は胃にもたれてしょうがないとこぼした. さらに蝶子は特製の飲み物を雅則に渡した.中身は
蝶子「人参,セロリ,ほうれん草,ニンニク,玉葱,蜂蜜のジュースです.」
雅則「何でこんなの飲まなきゃいけないんだよ.」
蝶子「あなた,ご自分でお分かりでしょう.」
思わず雅則は股間を見た.蝶子も雅則の股間を覗き込んだ.
蝶子「これでは困ります.」
仕方なく,雅則は特製の飲み物を飲んだ.一口飲んで,雅則は凄い顔をした.

その後,アジトでパピヨン達はバニーの写して来た写真を, ホワイトボードに並べた.広瀬(丹古母鬼馬二)はYプロの影のオーナー. 米本は広瀬に株で儲けさせてもらってから,広瀬と手を握っていた. 広瀬の部下の名前は松本で,広瀬の秘書兼用心棒だった. Yプロのタレントを売り出すために, 広瀬達がスキャンダルをでっち上げたのだろう. お金を儲けることに関しては広瀬は貪欲だ.
エジソン「ねえ,ねえ,ほら.何とかジャーナルの何とかっていたじゃない.」
ファルコン「ああ.」
エジソン「似てるじゃない.ひげまで生やして.」
パピヨンは笑った.
ファルコン「下品なとこなんてそっくりだよ.」
それを聞いてさらにパピヨンは笑った.確かに丹古母鬼馬二さんは, 倉田まり子さんと噂になった投資ジャーナルの中江滋樹さんに似ている. 閑話休題.ファルコンがパピヨンが撮影した米本の手帳の話をした. 米本は広瀬に月に3回の割で会っていた.手帳にはイニシャルにも書かれていた. 即座にパピヨンがその意味を答えた. 米本が同伴していった女性タレントのイニシャルが書かれていたのだ. A. O. は小川あゆみ,K. Y. は山崎きょうこ,M. S. は瀬川まいだ.
ファルコン「詳しいですね.」
パピヨン「週刊誌読んでるから.」
ファルコン「さすが主婦.」
パピヨンは話を続けた.米本が女性タレントを連れて行く店は, 必ず赤坂の料亭だった.そこは広瀬が愛用している店でもあった. つまり,広瀬好みのタレントを連れて行くというわけだ.
エジソン「ポン引きか,この米本ってのは!」
当然,米本は広瀬から金をもらっていたのだろう.
ファルコン「きたねえ奴らだぜ.」
スキャンダル写真を作ったのはおそらく松本で, それをマスコミに流していたのが米本だろう.
パピヨン「広瀬をもう一押ししてハンギングと行きましょう.」

榊真由美がレコーディングをしていた.それを見ながら伊藤は複雑な顔. 伊藤は松本に電話をし,榊真由美を差し出す件を断った. それを松本から聞いた広瀬は饅頭をほおばりながら外を見た. その頃,車の中で,伊藤は榊真由美にこう言った.
伊藤「もし俺がYプロをやめたら,ついてきてくれるか?」
あまりにも突飛な質問だったので榊真由美は困惑した.
伊藤「どうだ,真由美?」
真由美「そんなこと,急に言われても…」
伊藤「考えといてくれ.」

その晩.若松プロダクションに電話がかかってきた. 電話は伊藤からのものだった.若松に相談したいことがあるので, Yプロダクションへ来て欲しいと言うのだ. 伊藤は宮崎好美のスキャンダルを流した奴らのことを話す,と若松に言った.

その頃,緑美園にパピヨンがいるのでファルコンがいいのかと聞いていた. その日の雅則は得意先の接待があるので帰るのが12時過ぎ. だからパピヨンは悠々と緑美園にいたのだ.
ファルコン「大丈夫なんでしょうかね.旦那様,浮気の方は.」
パピヨン「浮気ができるくらい,元気ならいいんですけどねえ.」
ファルコン「は?」
そこへ電話がかかってきた.電話は若松からのものだった.
ファルコン「ジェームス・ディーンの件ならお断りだぜ.」
若松「そうじゃねえんだ.好美をはめた連中の件で, 伊藤が話したいって言って来たんだ.」
それを聞いたパピヨンは立ち上がった.
若松「俺はこれからYプロに行く.お前も来るか?」
ファルコン「もちろんだ.」
若松「じゃあ,Yプロで待ってるよ.」
ファルコン「わかった.」
ファルコンが電話を切るやいなや,パピヨンはファルコンと一緒に出て行った.

伊藤がYプロにいると,松本がやって来た. 伊藤は改めて榊真由美を差し出す件を断った. 伊藤は松本にしこたま殴られたが,それでも伊藤は拒否した.そこへ
若松「そういうことだったのか.」
若松がやってきた.
若松「きたねえ真似しやがって.好美のスキャンダルを仕掛けやがったのは, 貴様達だな.」
松本は若松に飛び掛ったが若松の反撃を受けた.そこで松本はナイフを取り出し, 若松の腹を2度も刺した.伊藤は呆然とするだけだった. そして伊藤も松本に狙われた.好美の件で逆上した若松を, 伊藤が思わず刺してしまい,それを気に病んで飛び降り自殺をする, という筋書きだ.松本は窓を開け,伊藤をYプロのビルから落とそうとした. ファルコンとパピヨンが到着した時,正に伊藤が落ちたところだった. ファルコンはYプロへ走り,倒れている若松を発見した.
若松「お前か.」
ファルコン「誰にやられたんだ?」
若松「好美をはめた野郎だ.」
それだけ言って,若松は倒れてしまった.ファルコンは電話で救急車を呼んだ.
ファルコン「おい,若松,若松.」
若松は目を開けた.
若松「お前に言っとかなきゃならないことがある.」
ファルコン「なんだよ.」

その頃,パピヨンは立ち去る松本の姿をしっかり目撃していた. 一方,ファルコンは
ファルコン「てめえの金儲けとロリコン趣味を兼ねてYプロを陰で操ってたのか. 広瀬って野郎は.」
若松はうなずいた.
若松「お前,お前はなあ,ジェームス・ディーンにしたかったぜ.」
ファルコン「俺も実は芸能界に色気があってよ. あんたに身任せようと思ってたぜ.」
それを聞いた若松は満足したのか目を閉じた.そこへ救急隊が駆けつけた. 怒りに燃えるファルコンはついたてにパンチした.
ファルコン「くそったれ.」

さてパピヨンは松本を尾行していた. そして料亭を伺っていたエジソンとバニーに伊藤が殺されていた件を, 無線で伝えた.松本は駒沢通りを西へ向かっていた. おそらく榊真由美のマンションへ向かったのだろう. エジソンは自分達も榊真由美のマンションへ向かうと答えた.

パピヨンの予想通り,松本は榊真由美の部屋へ現れ,榊真由美を拉致した. 車に戻ってきた松本にバニーを連れたエジソンが声をかけた.
エジソン「おじさん,似合わないよ,そんなかわいいこ連れてちゃ.」
松本「なんだ,貴様ら.」
エジソンはバニーにタッチ.バニーは松本と格闘し, その隙にエジソンとパピヨンが榊真由美を救出した.
バニー「よーし,これでゆっくり料理ができる.」
松本「野郎,おかげで…」
激しい格闘の末,バニーは松本に逃げられてしまった.
バニー「よーし,やったあ.」

電話で広瀬は松本から報告を受けた. 広瀬は翌日からしばらく海外へ高飛びしろと命じた. びびる米本に広瀬は政治家にも顔が利くから安心しろと答えた.

手術室の前にいたファルコンのところへエジソンとバニーがやって来た. 若松は十中八九ダメらしい.エジソンは榊真由美を保護したことと, 翌日ハンギングを決行することをファルコンに告げた.
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「Let's go!」
ファルコン「Hanging!」
手を出すバニーの手をファルコンが叩き, ファルコンの手をエジソンとバニーが叩いた. 今回もエジソンとバニーは初期の格好.バニーはワゴンの中でバンダナを巻いた.

ハンギング

「NSB ヤングアイドル フェスティバル 86 スパーク青春, 金の懸賞は誰の手に!! 主催 毎朝テレビ」と書かれた立て看板の立つ会場に, 米本が現れた.米本は審査員室に入ろうとしたが
バニー「おはようございます.先生のお部屋は他に用意してございます.」
案内された部屋は
米本「何だ,ここは.便所じゃないか.」
大便器からエジソン登場.
エジソン「ああ,すっきりした.」
米本「あ,刑事さん.」
エジソン「ちょっと,署まで来てくれる?」
慌てて米本は逃げようとしたが,バニーに捕まれ, エジソンにより,大便器の中で殴り倒された.

高飛びしようとする松本にファルコンが声をかけた.
ファルコン「ご旅行ですか?」
松本「なんだ,貴様は.」
ファルコン「行き先変更してもらおうかなあ.」
松本「何?」
ファルコン「鉄格子の別荘によう.」
と言うやいなや,ファルコンは松本を殴り倒した.人が集まってきたが
ファルコン「ただの行き倒れですよ.」

広瀬が車に乗ろうとすると,中にはパピヨンが乗っていた. そして広瀬はあっという間に指輪の餌食になった.

若松の病院へ行ってみたファルコンは若松が奇跡的に回復したことを知った. しかし面会謝絶の状態は続いていた.それでもファルコンは病室に入った. すると若松は目を開けた.
ファルコン「4時になったら,テレビ見てくれる.面白い番組があるらしいぜ.」
それを聞いた若松は起き上がろうとした.
ファルコン「ああ,わかってるって.ジェームス・ディーンだろ.」
若松はうなずいた.
ファルコン「そんくらい元気なら大丈夫だ.」
ファルコンは若松の胸を叩き,去って行った.

さてハンギングの会場の真中に「HANGING SLISE OFF」と書かれた円盤が, 置かれていた.円盤の中心には棒が立っており, 棒にはロープが3本つながっていた.そのロープは米本,広瀬, 松本にそれぞれ結ばれていた.3人は縄で縛られ,椅子に座らされていた.
ファルコン「さて,そろそろ始めますか.」
松本「何をする気だ?」
ファルコン「レコードの周りをよく見て御覧.」
円盤はレコードのつもりだったのだ.なんとレコードは鋸状の刃がついていた.
ファルコン「そのレコードを回すとどうなると思う? やってみようか.」
レコードが回転をはじめ,ロープが巻きついて行った. それにつれ,悪党達や大根,白菜,マネキンが中心に引き寄せられていった.
ファルコン「そのまま引っ張られて行くと,どうなるかな? レコードについている刃より君達が強ければ命は助かるが.」
大根が切られるのを見て米本は真っ青になった. 松本の前では白菜が切られた.
広瀬「やめろー.こんなことしてなんになるんだ.」
ファルコン「冗談は顔だけにしろよ,お前ら.お前達がやったことを全て吐け. そうしたらレコードは止めてやる.」
それでも悪党達は白状しようとしなかった.
ファルコン「よーし.それじゃあ,白状するまでそのままにしとこう. スタンバイ.」
エジソン「了解だあ.」
アンテナが準備された.悪党達は悲鳴をあげた.
ファルコン「今度は人形だ.そしてお宅達.お前達がやったことを吐けば, 助けてやるって.」
パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
米本「やめろー.助けてくれえ.まだ死にたくない.」
この姿は「東京・渋谷 吉田二三雄さん宅」のテレビなどに映し出されていた. このお宅は提灯屋さんらしい. そして若松も酸素吸入用マスクを取ってテレビを見た.
米本「助けてくれえ.まだ死にたくない.」
ついにマネキンの首が切断された.
米本「ゆう.ゆうからやめて.やめてください.」
広瀬「やめろ,米本.」
米本「私が広瀬好みの女性歌手をあいつに紹介しただけなんだあ. ロリコンなんだあ,あいつはあ.」
広瀬「ば,馬鹿.お前だってリベートを,リベートを取ったじゃないか.」
ファルコン「伊藤を殺したのはお前か,米本?」
米本「違う.それは松本だあ.」
松本「俺はホントはやりたくなかったんだあ.広瀬さんに言われて, ああ,仕方なくやったんだあ.」
広瀬「だ,黙れ,松本ー!」
米本「宮崎好美のスキャンダルをでっち上げ,失脚させろと言ったのは, 広瀬なんだあ.みんな,広瀬が悪いんだあ.」
広瀬「黙れ.」
米本「人を殺させ,若松に自供させる.みんな広瀬なんだあ.」
広瀬「そうだ.その通りだあ.だから,レコードを止めてくれえ.」
これを若松も見た.
広瀬「俺は昔から女にはもてなかったんだよー. だから金であいつらを自由にしようと思ったんだあ.助けてくれ. 助けてくれえ.」
ついに広瀬の腹にレコードが迫った.悲鳴をあげる悪党達. 切られる寸前にレコードは止められた.溜息をつく悪党達. 部屋が真っ暗になり,薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
米本「誰だ,お前は?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. そして悪党達はとある警察署の前に止められた車に閉じ込められた.

事件解決して…

緑美園ではエジソンがゴリラのぬいぐるみの顔を前にして, なぜ口が動かないんだろう,と悩んでいた. ゴリラのぬいぐるみを着て顔だけ出したバニーが言った.
バニー「いい加減にしてください.まだ仕事が残ってるんです.」
エジソン「いいじゃねえか.それも仕事だよ.」
ファルコン「デパートの上でも行けば.」
バニーは出て行った.エジソンはファルコンに話し掛けた.
エジソン「惜しかったねえ,役者になる話さあ.」
ファルコン「和製ジェームス・ディーンだからねえ.」
エジソン「ついでに付き人にしてくれる?」
ファルコン「OK.OK.マネージャー,なんでもやってあげる.」
エジソン「でもねえ,あんたならねえ,人気出る前に死ぬね.」
その時,パピヨンがアジトから出てきた.
パピヨン「夕食の支度あるから,お先ね.」
パピヨンは出て行こうとしたが,この事件を通して, 真剣に悩んでいたことを聞いた.
パピヨン「ねえ,中年の男性には何を食べさせたら,スタミナがつくと思う?」
部下の答えは
エジソン「レバ刺し.」
ファルコン「スッポン.」
いつのまにか戻ってきていたバニーも答えた.
バニー「アンキモ.」
驚いた一同はバニーを見た.
パピヨン「アンキモ?」
バニー「はい.」
念のため,ファルコンが聞いた.
ファルコン「アンキモってお前,わかってるの?」
バニーの答えは
バニー「はい.餡子と肝です.」
それを聞いたエジソンはずっこけるのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp