第二十二回

不動産乗っ取り一味を吊るす.
三億の豪邸がコソ泥に持ち逃げされる!

脚本:中村勝行 監督:井上梅次

夜のクラブで初老の紳士がホステスといい気分. 紳士は所用の為,途中で切り上げ,歩いて帰っていった. 彼は世田谷に数億の豪邸を持つ大金持ちだった. その彼は車から降りてきた男達に拉致されてしまった.

さて英家では「♪サラリーマンはー気楽な稼業と来たもんだ〜」と歌いながら, 雅則が電気剃刀でのんびりひげを剃っていた. 今日は部長が出張しているのでのんびり羽根を伸ばしていたのだ. 雅則が蝶子にテレビをつけさせると,ちょうど「モーニング情報デスク」 の庄司アナウンサーが冒頭の事件を報じるところだった.
庄司「一人暮らしの金融業者が10日ほど前から消息を絶ち, 関係者から捜索願が出されております.失踪したのは世田谷区内に住む 高田武重さん,56歳です.高田さんは10日前の夜10時頃, 行きつけの銀座のクラブを出たまま行方を絶ち, 取引先や知人などにも連絡がないことなどから, 警察では何らかの事件に巻き込まれたものと見て捜査しております.」
このニュースを見た雅則はこれは問題だと言った.
雅則「例えば俺がだよ,ある日突然会社が嫌になって, ブラーッと旅に出たとするだろう.」
あまりにも突飛なことを言い出したので蝶子は怪訝な顔.
雅則「いや,例えばの話だよ.」
蝶子「でも,多少本音が入ってるんでしょう?」
図星だったのか
雅則「誰だって,そういうことはあるんだよ.現実逃避願望だよ,ね. 一人でのんびりしてみたいな,と思うことあるでしょう.」
蝶子は「そうかしら.」と聞き流そうとした.
雅則「いえ,あることにしてもらわないと話が先に進まないの.」
蝶子は「はい,はい.」と適当に相槌を打った.
雅則「そういうときに警察に探しまくられたりしたら困るだろう. これはね,ある意味で司法権の濫用だよ.」
蝶子「でも身内から捜索願が出されたらしょうがないでしょう.」
雅則「君は突然僕が失踪したら捜索願い出す?」
蝶子「うーん,そうねえ.」
雅則「ま,君のことだから当然…」
蝶子「あたし,ほっとくわ.」
意外な答えが返ってきて唖然とする雅則.
蝶子「あなたは必ずあたしのところに戻ってくるもの.」
雅則「大した自信じゃないか.でもわからんよ. 俺は君が思ってるほど純じゃないからね. 今夜にでもぷっつり姿を消すかもしれないよ.」
強がりを言う雅則.
蝶子「あなたにはできませんよ,そんなこと.」
雅則「ふん.それが女の浅はかさだよ.僕だってね,一歩外に出たら, 君の知らない面がいくらでもあるんだから.じゃ,行って来るよ.」
蝶子「(荷物を渡しながら)はい,行ってらっしゃい.」
雅則は外へ出て行った.しばらく経って
雅則「蝶子.」
蝶子「わかってます.はい,今日のお小遣い,3千円.」
雅則「やっぱり,俺,ここに戻ってくるのかなあ.」
蝶子「ねえ.」

なんとファルコン渡豪

その頃,緑美園に外国から速達が届いていた. 不精なエジソンはレールから洗濯バサミを糸でつるし, 郵便配達員に「悪いけど,そこに挟んでくれる.」と言って, 封書をはさませ,リモコンで操作しながら封書を手元まで運ばせた. ちなみにこの装置,物凄く大きい.運んでいる途中でバニーが投げ縄で横取りし
バニー「この方が速いですよ.」
エジソン「お前,俺をおちょくっとんか?」
手紙はファルコンからのものだった. ファルコンはオーストラリアへ行っていたのだ. 実際は佐藤浩一さんのスケジュールの都合だろう.
ファルコンの声「前略.小生シドニー近郊のホテルに滞在中. 毎日気ままにあちこちの牧場を見て回っています.広大な原野とユーカリの森, そして時折ハイウェイを横切るカンガルーの群れに, これぞまさしく小生が夢に描いていたオーストラリア大陸.」
エジソン「なーにを言ってるんだ. カンガルーだったら上野にいっくらでもいるじゃないか.」
エジソンは読むのがあほらしくなり,バニーに手紙を渡した.
バニー「というわけで」
ファルコンの声「当初は1週間ほどの滞在予定でしたが, もう1週間伸ばすことにしました.」
エジソン「なんだとー.」
ファルコンの声「とにかく毎日がごきげん.留守中よろしく頼みます.」
エジソン「その間に引っ越してやろうか.」
そこへ電話がかかってきた. ゴムの鉢植えを4鉢持ってくるように注文が入ったのだ.

というわけでエジソンとバニーは配達に出かけた. 車から二人が離れた隙にウェスタンブーツを履いた車荒らし(中西良太)が登場し, ワゴンを荒らそうとした.しかし,そこへエジソンが戻ってきた. 慌てて逃げる車荒らしと追いかけるエジソン. エジソンは車荒らしに飛び掛ったが,ブーツの片方だけを残して, 車荒らしは逃走してしまった.
エジソン「派手なの履いてんじゃん.かたっぽじゃ使えやしねえ.」
エジソンはブーツを放り投げてしまった.

調査開始

さて蝶子がゴミを捨てるために橋を渡り,ゴミ収集場にゴミ袋を捨てると, なぜか屋台が出ていた.
マネージャー「(佃煮を箱に入れながら)奥さーん.作りたての佃煮, いかがですか? (箱を渡しながら)はい.」
パピヨンは呆れてしまった.
マネージャー「ほら,ちょっと,つまんでみてください.」
マネージャーとパピヨンは川岸に場所を移して話を始めた.
マネージャー「この1年の間に,宝石ブローカーが,会社社長,大学教授, この3人の男が忽然と姿を消したまま,未だに消息がわからん. しかも彼らが失踪した直後,何者かによって土地家屋の名義が書き換えられる. 第3者の手に売り渡されているんだよ.そして,4人目はこの男だ.」
冒頭で拉致された高田の写真だ.
マネージャー「おそらく一連の事件の背後には, 不動産乗っ取り一味が暗躍してるんじゃないかと,私はそう睨んでいる. この事件を洗って欲しい.」

アジトでパピヨンが指令を説明した.高田武重は手形の割引や小口の金融を営む, いわゆる金融ブローカーでかなりの財産を持っているらしい. 時価3億円はくだらないと言われている高田の自宅の写真を見て, エジソンは仰天していた.高田は5年前に妻が病死して以来,一人で住んでいた. 子供もいないし,財産の相続権を持つ係累は全くいないらしい. 乗っ取りグループにとってはかっこうの獲物だ. 今のところ高田の自宅の名義が書き換えられた形跡はない.
バニー「ということは持ち主はまだ生きているって事か.」
エジソン「おお,バニーちゃん,だいぶ成長のあとが見えるねえ.」
高田の自宅を一味が売り払おうとすれば,必ずここに姿を現すに違いない.
パピヨン「じゃ,張り込み頼むわね.」
出て行こうとするパピヨンに
エジソン「ちょっと待って.パピヨンは何すんの?」
パピヨン「町内会の集まりがあんの.」
エジソン「町内会!」
パピヨン「うちのアパート,順番に当番が回ってくんの.」
エジソンは頭を抱えた.
パピヨン「今月,あたしの番だから.町会費集めたり,ゴミの後始末したり, 余計な仕事増えて困っちゃうわ.じゃあね.」
パピヨンは去ろうとしたが
エジソン「ちょっと,待って,待ってよ.町会費集めたり, ゴミの後始末も結構ですけど,俺達のギャラどうなってんの?」
パピヨン「ああ,そう,そう,そう.」
エジソン「○○なことしてる?」
パピヨン「違うわよ.」
パピヨンはエジソンを叩いた.
パピヨン「今回は経費込みで一人70万.」
エジソンはその額に納得しなかった.
エジソン「ちょっと待ってよ.ほらー,いないの. (右腕を上に伸ばして)あのでかいの,がさつなの. あいつの分割増しといて.」
だが
パピヨン「そんなのダメよ.最初から差っぴかれてんだもん.」
エジソン「そりゃないよ.俺達でやるんだもん.」
パピヨン「いるの,いらないの.」
仕方なく
エジソン「いります,いります.ありがとうございました. 参ったなあ,来週,俺休もう.」
バニーは「ありがとうございましたー」とお辞儀してパピヨンを見送った.

エジソンとバニーはワゴンで高田家を見張った.やる気がないのか, エジソンはエロ本を見ていた.潜望鏡で覗くバニーに
エジソン「どうだ,おい.よく見えんだろう.」
バニー「ええ.」
エジソン「俺の頭ってのは,んなもんだ.」
バニー「自慢するほどのもんじゃないでしょう.」
エジソンはエロ本の写真を指差し,こう言った.
エジソン「お前をこの子と変えてもらうことにするぞ.」

その頃,高田は乗っ取り一味のものから名義を変えるように拷問を受けていた. その後,高田の死体は山林の中に埋められた.

須栄都市開発の須賀社長(田島義文)のところに電話がかかってきた. 書類が揃ったというのだ.どうやらこの男がボスらしい. 早速社長に電話をした男が客を連れて高田の屋敷の前に現れた. エジソンとバニーは彼らが乗った車を追跡した. 車はレストランの駐車場に停まった.男は客に現金や小切手で払うように言った. 客が土地の権利書を見せてくれ,というと,男はうっかりしていたといい, 車へ戻ろうとした.ちょうどその頃.男達の車を車荒らしが荒らしていた. 車荒らしはアタッシュケースを持って逃げた.
エジソン「あ,あいつだ.」
そう.車荒らしは緑美園のワゴンを荒らそうとした車荒らしだったのだ. 車荒らしを男が,そしてエジソンが追いかけた. しかし,見事に巻かれてしまった.
車荒らし「ばーか.」
そのアタッシュケースの中に土地の権利書が入っていることに気づかず, 金だけとって捨てようとしたが,子供やお節介なおっさんに注意され, アタッシュケースを捨てることができなかった.

エジソンがパピヨンにそのことを報告した. 須栄都市開発に電話をしていた男は北新宿に西尾不動産という看板を出していた. この時点ではエジソン達は須栄都市開発のことまでは知らなかったが, 西尾不動産が普通の不動産屋ではなさそうだと言うことを嗅ぎつけていた. パピヨンは西尾不動産の男を洗うことにした. さらにパピヨンはエジソンとバニーに車荒らしを探すように指示した. 盗まれたアタッシュケースの中に証拠になるような品物が入っていると, パピヨンは睨んだのだ.
エジソン「あんなチンピラ,どうやって探すの?」
パピヨン「それが仕事.」
手がかりは派手なウェスタンブーツを履いていることだけ.

車荒らしはアタッシュケースをコインロッカーに預けた. 西尾不動産の者,そしてエジソンとバニーは車荒らしを一生懸命探した. 新宿での聞き込みの際,エジソンはチンピラ連中に絡まれた. そして走って逃げ,公園(渋谷にある鍋島松涛公園)の公衆便所に入った. しかし大便器はどこもいっぱい.やっと一箇所開いたが
エジソン「ああ!」
車荒らし「ああ!」
エジソンは車荒らしの胸倉をつかんだが,チンピラ連中の声が聞こえたので, 一緒に大便器の中に入った.エジソンは車荒らしに匿うよう頼んだ. 車荒らしはエジソンにマッチを渡し,扉の陰にエジソンを隠して外へ出た. そのため,チンピラ連中はエジソンのことに気づかなかった. いつのまにか車荒らしも逃げてしまったが,マッチを見たエジソンは
エジソン「ファッションマッサージニュー…」
ちなみにマッチには「ファッションマッサージ・ニュー69」と書かれていた.
エジソン「この野郎.」

マッチの店にエジソンはやってきた.なんと車荒らしは鉄という名前だった. ちょうど鉄はマッサージ嬢のユミを口説いている最中だった. だがけんもほろろに断られ,エジソンにも捕まってしまった. エジソンは喫茶店に場所を移し,鉄と話を始めた.
エジソン「いやあ,かっこいいなあ,そのウェスタンブーツ.」
エジソンは鉄をヨイショした.
鉄「これ? あんたに片一方持っていかれちゃったからさあ, 新しいの買ったんだよ.」
エジソン「いや.あれよりそっちのが全然良く似合う. まるでクリント・イーストウッドだ.」
それを聞いた鉄は上機嫌.
鉄「あら,あんた,イーストウッド,好き?」
エジソン「好き.」
鉄「それ,話,合うよ.」
エジソン「合わねえのは女の趣味だよ.」
鉄「女?」
エジソン「見たんだよ,さっき覗き部屋で.あれやめた方がいいぞ. 根性悪そうだもん.」
鉄は抗弁した.その様子を西尾不動産の手の者が見ていた. そうとも知らず,エジソンは鉄に,一緒に組んで金儲けしないかと持ちかけた. エジソンはアタッシュケースの件を持ち出した. 鉄はエジソンが刑事じゃないかと疑い,断った. 外へ出た鉄をエジソンと,合流したバニーが追いかけた. そこへ西尾組の連中も乱入.エジソンとバニーは何とか連中を撃退した. 今回はバニーの活躍が目立つ.
エジソン「おい,これ(投げ縄)結構役に立つじゃない.」
だが
エジソン「あれ.あのタコは?」
鉄にも逃げられてしまったのだ.
エジソン「ばーか,役に立たねえな.見張ってろ,この野郎.」

その頃,西尾不動産のボスの車をパピヨンが尾行していた. そして西尾不動産のボスの服に盗聴機を仕込み, 西尾不動産のボスと須栄都市開発の須賀社長が密談するのを盗聴した.
須賀「で,みつかったのかね,例の若僧は.」
西尾「石崎の息のかかった若い連中が動いていますので, いずれは網にかかるかと.」
須賀「そうか.ところで,話というのは次の仕事の件だがね.この男だ.」
須賀は写真を取り出した.
須賀「元は会社の重役.現在は引退して楽隠居の身だがね, 杉並に500坪ほどの屋敷を持っとる.」
西尾「独り暮らしですか?」
須賀「ああ.娘がいたが,とっくに嫁に行って女房は去年病死した.」
西尾「なーるほど.おあつらえ向きですな.」
須賀「うん.今の仕事が片付き次第,これに取り掛かってくれ.」
西尾「承知しました.」

パピヨンは黒幕のことを報告した.須賀の名前は栄次郎. 須賀が標的を探し出し,西尾が乗っ取りを実行していたというわけだ. エジソンはパピヨンに西尾の手が鉄に伸びているらしいことを報告した. パピヨンは密談の内容を思い出していた.
須賀「で,みつかったのかね,例の若僧は.」
西尾「石崎の息のかかった若い連中が動いていますので, いずれは網にかかるかと.」
パピヨン「エジソン.早く探し出さないと彼の命が危ないわ.」
エジソンもそれを見越して,バニーに探させていた.

ところが石崎達の方が一枚上手だった. 石崎達は鉄が言い寄っていたユミを拉致した. その晩.バニーが新宿のバーに入った.
バニー「水割り一つ.」
未成年のバニーはどうどうと酒を注文.そのバーのローンズには鉄もいた. すると電話が
鉄「もしもし.」
ユミ「テッちゃん.」
鉄「おう,ユミ.」
ユミは石崎達にナイフで脅されていた.
ユミ「あんた車の中からアタッシュケース盗んだでしょう. それ持って来てよ.すぐ持ってきて.」
鉄が電話に答えるのをバニーも聞いた.
鉄「おい,ユミ.どうしたんだよ.今,どこいんだよ.」
ユミ「お願い.それ持って来てくれないと,あたし殺されるのよ.」
鉄「殺される?」
石崎が電話に出た.
部下「おい,若僧.女助けてやりたかったらなあ, すぐにあのケース持って来るんだ.場所は西4丁目の工事現場.」
鉄「西4丁目の工事現場?」
電話は切れてしまった.慌てて飛び出す鉄.バニーも飛び出し, アジトへ電話した.こうしてバニーの飲酒は未遂に終わった.

早速アタッシュケースを持ち,西4丁目の工事現場へ鉄は向かった. エジソンとバニーもワゴンで西4丁目の工事現場へ向かった. 鉄はユミの救出には成功したが,ナイフで腹を刺されてしまい, アタッシュケースも奪われてしまった.

逃げるユミをエジソンが呼び止めた.そして鉄の居場所を確認した.
エジソン「坊主,行くぞー.」
エジソンとバニーは工事現場へ急行.だが鉄は虫の息だった.
鉄「あんたか.」
エジソン「しっかりしろ.」
鉄「俺,かっこいいだろう.」
エジソン「お?」
鉄「命張って,女,女,助けたんだぞー.」
エジソン「馬鹿だねえ,お前.あんな女に命張ってよー.」
鉄「俺,死ぬときはかっこよく死にたかったんだ. クリント・イーストウッドみたいによー.」
エジソン「アホ.クリント・イーストウッドってのはなあ, 主役だから最後まで絶対に死なないの.」
鉄「そうか.俺,主役じゃないもんなあ.だけど,かっこいいだろう. 刑事ドラマみたいでよう.」
鉄は血まみれになった右手をあげた.
鉄「ほら.こんな血が出てるよ.」
エジソン「お前,ちょっと,動くな.じっとしてろ.」
鉄「俺,かっこいいだろう.」
こうして鉄は息絶えた.
エジソン「鉄.タコ.」
そう言いながらもエジソンは心打たれたようだ.
エジソン「情けなくてやってられねえよ.」
エジソンはしばらく鉄の死体を見ていたが
エジソン「バニー.何ぼさっと立ってるんだ,警察,連絡あんだろう.」
慌ててバニーは走っていき,エジソンは歩いて去って行った. そして鉄はウェスタンブーツを履いていた.

その頃,蝶子は書置きを残していた.
パピヨンの声「町内会の会合があって出かけます. 冷蔵庫にカレーが入ってますから,レンジで温めて食べてください.蝶子.」

蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「二人で,大丈夫?」
バニー「任して下さい!」
エジソンは無言だった.
パピヨン「Let's go!」
バニー「Hanging!」
バニーは両手を伸ばした.エジソンは一瞬躊躇したが, バニーの両手を叩いた.ちなみに二人の格好は初期と同じ. バニーはワゴンの中でバンダナを巻いた.

ハンギング

西尾不動産にバニーが鉢植えを持って乗り込んだ. 須賀からのお届け物だと言うのだ.不思議に思う西尾と石崎は, 鉢植えから噴射されたガスの餌食になった.

須賀が車に乗ろうとすると
パピヨン「ちょっとエンジンがかからないんです.」
須賀「バッテリーじゃないかなあ.」
車を覗き込んだ須賀は指輪の餌食になった.

さて悪党達が気がつくと,彼らは椅子に座らされ, 穴の開いた机から首だけ出した状態になっていた. 上には大根が6本ぶらさげてあり,さらに左横にはマネキンが, 右横にはチェーンソーの載った台らしきものが置かれていた. 誰かいないかと叫ぶ須賀.
エジソン「いるぞ,いるぞー.」
今回はファルコンがいないのでエジソンが進行役を務めていた.
エジソン「そいつは首切りマシーンだ.」
石崎「首切り?」
西尾「馬鹿な!」
エジソン「それじゃあ,ちょっとチェーンソー,動かしてみるか.」
チェーンソーが動き始めた.
エジソン「これが移動してきて,お前達の首をきれーいに切断するって, 仕組なの.」
西尾「馬鹿な!」
エジソン「命が惜しかったら,お前達の悪事を洗いざらい吐く. そんじゃ,いっぺんリハーサルしてみるか.」
まずチェーンソーは悪党達の頭上の大根を切断していった.
エジソン「今度は左から.ちょうどお前達の首を通過する位置にする.」
ご丁寧にもマネキンの左にも大根が置かれていた.大根を切りながら
エジソン「さあ,どうだ.何もかも吐けば止めてやるぞ.」
チェーンソーがマネキンにも迫る.
エジソン「もう時間がないぞ.世田谷の高田,それに宝石ブローカー,会社社長, 大学教授と続いた一連の失踪事件,みんな,お前達が殺して, その不動産を横取りしたんだろう.」
助けてくれえと叫ぶ悪党達.
エジソン「だから,もう30秒もないよ.隣りのマネキン,見て御覧.」
遂にマネキンの首も切断された.一番左にいた西尾の顔は真っ青だ.
西尾「ゆう.ゆう.何もかもゆう.」
石崎「と,と,と,と,止めてくれえ.」
西尾「助けてくれえ.全部ゆう.」
須賀「やめてくれえ.」
石崎「止めてくれえ.」
エジソン「よーし,行くぞ.」
エジソンはスイッチを押した.
エジソン「スタンバイ.」
パピヨン「OK.」
アンテナが準備された.パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
パピヨンがスイッチを押すと同時に悪党達が喋る様子が, 「東京・渋谷区 伊藤理容店」のテレビなどにも映し出されていた.
石崎「資産家の年寄り殺して財産奪い取ったのは,この二人だ. 俺はただ言われたとおり,手伝っただけだあ.」
須賀「何を言うか.わしゃ,知らん.」
西尾「いやあ,俺もこの須賀にそそのかされてやっただけだあ.」
須賀「し,し,知らん.高田を殺したのはこの二人だあ.」
石崎「死体を中井の山の中に埋めて来いと言ったのは,その西尾だ.」
須賀「そうだ,こいつだあ.」
西尾「お,俺じゃない.高田をやれって言ったのは,この須賀だあ. みんな須賀の計画だったんだあ.」
須賀「違う.わしじゃない.」
チェーンソーがなかなか止められなかったので西尾は悲鳴をあげた. やっと止められたとき,悪党はホッと溜息をついた. すると蝶のシルエットが壁に映し出された.
須賀「なんだ,ありゃ.」
薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
須賀「お,お前は.」
西尾「誰だ?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. 翌日.蝶の描かれたダンボールにつめられ,警視庁大高警察署へ届けられた.

事件解決して…

雅則が帰って蝶子にワイシャツを渡した.
雅則「蝶子.このワイシャツ,クリーニングに出してくれ.」
すると手紙が零れ落ちた.
蝶子「明日 お店が終わったあと いつもの場所で お待ちしております 雅則様へ クラブ『ラボンヌ』 朱美より」
白々しく,どうかしたの,という雅則に蝶子は怒る振りをして詰問した. こう見えても結構もてるんだと高笑いをする雅則に
蝶子「下手な小細工はやめてくださいよ.」
雅則「え?」
蝶子「会社の便箋でしょう.」
迂闊なことに紙には「<NB>」という透かしが入っていた.頭を抱える雅則.
蝶子「どうせ会社の事務員さんに代筆させたんでしょう.お生憎様でした.」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp