第十五回

エイズを利用した詐欺のからくりを暴く.
悪徳医師にエイズ患者?が作られていく!

脚本:鴨井達比古 監督:山根成之

あるロック歌手がコンサートを行なっていた.コンサートは盛況. だが歌手の表情は暗かった.独りにしてくれとマネージャーに言い, 彼は楽屋で独りで酒を飲んだ.そして電話を掛けた.
歌手「あ,もしもし.柴田だ.もう一度先生に会いたいんだが…いや, 金は何とかする.当てはあるんだよ…え?…アメリカに帰った?…ちょっと, そんな馬鹿な.もしもし.」
電話は切られてしまった.柴田が腕を見ると発疹が. 絶望した柴田はビルの屋上から投身自殺してしまった. その翌日.新聞はこの事件を「人気ロック歌手 謎の投身自殺!」 「同性愛の 発覚を恐れて?」と報じた.

さて雅則は「エイズ,国内初の家庭内感染」という見出しの記事を読んでいた.
蝶子「あなた,食事しながら新聞読むのやめてくださいって言ったでしょう.」
雅則「うーん,だんだん他人事じゃなくなったぜ,日本でも.」
蝶子「え?」
雅則は新聞を見せた.
蝶子「やだ,エイズ.」
雅則「20世紀のペストと呼ばれるエイズ, 後天性免疫不全症候群が世界的に急増している中で,昨日, 我が国14人目の患者が発見されたが,その妻も患者である夫を通じて, エイズウィルスに感染していることが明らかになった.」
蝶子「いやだあ.いやだ.」
雅則「おっかねえなあ.」
ここで雅則は新聞を置き,蝶子の肩を叩いて言った.
雅則「そう言えばさあ.」
雅則は右足の痣を見せた.
蝶子「なあに?」
雅則「まさかなあ.いや,取引先の部長にねえ,ゲイバーの常連がいるんだよ. もしかしたら,(右足の痣を指差して)これ.」
蝶子は慌てた.
蝶子「いや.まさか,あなた.」
雅則「もしそうだったら,どうしよう,蝶子.」
雅則が蝶子の手を握ると
蝶子「いやだ.いやだ,触らないで.」
蝶子は露骨に嫌がり,手を引っ込めた. ちなみに手で触った程度ではエイズは感染しないのだが, 放送当時はエイズに関する知識が充分に行き渡っておらず, こういう偏見を持つ人が多かった.同性愛者にエイズ患者が多かったことも, 偏見に拍車をかけていた.閑話休題.
雅則「冗談だよ.これ昨日ねえ,会社で石の角にぶつけたんだよ.」
雅則は蝶子をからかったのだ. 怒った蝶子はジャムを塗ったパンを雅則の顔にぶつけた.

調査開始

さて蝶子が買物をしていると,焼芋屋の声が聞こえてきた.
マネージャー「はい,はい.ほっかほかの焼き芋だよ. いーしやーきーいもー.ねえ.おー,は,は,は.」
ご丁寧にもマネージャーは鉢巻をし,ドテラを着込んでいた. 呆れたパピヨンは無視して通り過ぎようとした.
マネージャー「奥さん,奥さん.」
パピヨンは立ち止まった.
マネージャー「焼き芋はいかがかな.ね.栄養満点,ガス会社推薦の一級品. さあ,さあ.」
パピヨン「マネージャー.何やってるんですか.」
マネージャー「へ,へ,へ.大きな声を出すんではない. (焼き芋を新聞紙の袋に入れながら)これでもねえ,君達の経費を出すために, 色々と苦労しとるんだよ.」
そうだったのか.マネージャーも大変だ.
パピヨン「ふーん.焼き芋を売って?」
マネージャー「ん?」
マネージャーは苦笑してこう言った.
マネージャー「内緒の話だけどね,やってみると案外売れるもんだねえ.」
パピヨンは苦笑した.マネージャーは普段不思議に思っていることを聞いた.
マネージャー「ね,聞いて,聞いて.日本の女って,どうして芋が好きなの?」
パピヨン「さあ,どうしてでしょう.じゃあ,あたしも頂きますか. 一応日本の女性ですもんね.」
マネージャー「は,は.そうかね.はい,はい.はい,まだ. このままあげちゃえ.」
マネージャーは何個も何個も焼き芋を詰めた.その量は半端ではなく, 両手で抱えるほどの大きさに袋がなるほどであった.
マネージャー「ほら.100円だ.」
パピヨン「随分安いわねえ.」
これなら売れるのも当然だ.
マネージャー「それじゃあ,まけついでだ.その分持ってけ.」
マネージャーはファイルと封筒も渡した. パピヨンは荷物の多さにうんざりした表情.

アジトでパピヨンが指令を説明した. 1週間前に飛び降り自殺したロック歌手のジョニー柴田. 前の月に高速道路で事故死したが,自殺と言う噂も流れたレーサーの佐伯としお. 2ヶ月前に首吊り自殺したアメリカ文学の権威,南よしひこ. この3人には共通点があった.3人ともアメリカ帰り. ジョニー柴田はアメリカで1年間修行していた. 佐伯は前の年のインディー500マイルのレースに参加. 南はボストン大学の客員教授だった. さらに3人ともわずかの間に預金を引き出していた.ジョニー柴田は1800万円, 南は2500万円,そして佐伯は900万円の定期預金をわずか1ヶ月で引き出した上に, スポンサーから700万円借金して事実上破産状態. そして3人とも変な共通点があった. ジョニー柴田はホモだったと言う噂があった. 南も六本木のゲイバーに出入りしていたらしい.
エジソン「なんか,やーな予感してきたなあ,おい.」
バニー「まさか,エイズ?」
本放送当時は同性愛者と言うとエイズじゃないかと言う偏見を皆持っていた.
ファルコン「いやあ,ちょっと待ってよ.佐伯としおはホモじゃないだろう. あいつは女好きで有名だったもん.」
パピヨン「そう.確かに彼はホモじゃないわ.でも, レースで重傷を負って入院し,輸血を受けてるはずよ.」
ファルコン「そうか.エイズってのはホモだけじゃなくて, 輸血からも感染するんでしたね.」
エジソン「ちょっとパピヨン,はっきり言ってよ.3人ともエイズ?」
パピヨン「さあ,それはわからないわ. でも死ぬ前のわずかの期間に大金を使い果たしていることに, 犯罪の臭いがするってわけ.」
取っ掛かりは南が出入りしていたと言うゲイバー辺りだろう. ファルコンも同意した.

というわけでエジソンがバニーと一緒に, 六本木のゲイバー「BAR お友達」へやって来た.
エジソン「お友達ね.やっぱ,お前入れ.」
バニー「ダメ.冗談じゃないですよ.こういうのはエジソンの役目だって, みんな言ったじゃないですか.」
エジソン「エイズな.ぞっとしねえ.」
仕方なくエジソンは独りで中に入った.男同士がチークダンスを踊るのを見て,
エジソン「やっぱ俺の来る世界じゃありません.」
#2と違ってエジソンはあまり乗り気ではない.
エジソン「でも仕事だもんなあ.」
と呟いていると,ホステス?達(コロッケら)に気づかれてしまった. 仕方なくエジソンは席についた.ホステス?のミミ達と乾杯するエジソン. エジソンはニューヨークで南と知り合い,前日に帰ってきたばかりだと称し, このゲイバーへ来れば南と会えると思ったと言った.
ミミ(コロッケ)「じゃ,知らないの? 先生が亡くなったの.」
エジソン「うっそー.(ミミ,うなずく)南先生,死んじゃったの!」
ホステス?「そうよ.先生自殺しちゃったのよ.」
エジソンはわざとらしく驚き,自殺の理由を聞いた.
ミミ「多分ねえ,エイズノイローゼ.」
エジソン「ホント.」
悪い予感があたり,エジソンはグラスを置いた.
エジソン「先生がエイズだなんて信じらんないわ.」
ホステス?「そうよ.先生はエイズじゃなんかじゃなかったわ.ねえ,ミミ.」
ミミ「だって,先生がエイズだったら, 私だってエイズに感染しているはずだもの.」
思わずエジソンはミミから離れた.
ミミ「あ,大丈夫よ.あたし,血液検査ちゃんとしたし,エイズじゃないわ. 大丈夫.踊りましょ.」
仕方なくエジソンはミミと踊った.
ミミ「さ,気分直しに踊りましょ.」
エジソン「じゃ,何.先生はエイズでもないのに,そう思い込んで?」
ミミ「そうなの.凄く悩んでたの.あの女が悪いんだわ.」
エジソン「誰,その女?」
ミミ「先生がねえ,アメリカで知り合ったって言うの. 青山のブティックの女社長なのよ.先生がホテルで缶詰になって, (いやそうにエジソンうなずく)雑誌の論文を書いてる時,私, ちょっと遊びに行ったのよね.そしたら,その女が来てて.」
エジソン「その女が先生にエイズだって言ったの?」
ミミ「そうはっきりじゃないけどさあ,先生そのとき体調が悪くて, 風邪気味だったのよ.熱が出たり,下痢をしたりでね. そしたらその女がさあ,自分の知り合いもね,おんなじような症状で, 結局エイズで死んだなんて.」
エジソン「熱と下痢ねえ.」
ミミ「ほら,あたし達がねえ,男性しか愛せない.それなんで, エイズのこと気になってるじゃない.」
エジソン「そうよね.」
ミミはうなずいた.
エジソン「それで先生は本気で悩み始めたの.」
ミミ「そうみたい.神経質な人だったから.」
エジソン「その女,なんて名前なの? 青山のなんてお店.教えて.」
その途端,ミミの態度が変わった.エジソンが女に興味を持ったからだ.
ミミ「ちょっと,あなた何しに来たの?」
エジソン「え! 俺はだから…」
ミミ「ちょっと,あんた.あんた,ホモじゃないわね.」
エジソン「あたし,ホモよ.」
ミミ「嘘.」
ミミはエジソンの急所をつかんだ.エジソンは本気で痛がった.
ミミ「ここでかいもの.」
ミミはスカートを捲り上げ,男の口調で言った.
ミミ「てめえ,この野郎.」
エジソン「はい.」
ミミ「お前,この店,何しに来やがった.」
エジソン「わかった.」
エジソンは退散した.
ミミ「いい加減にしろ,この野郎.」
エジソン「失礼します.」

パピヨンは雑誌の記者と称して佐伯のレースクラブを訪れた. 佐伯の妻は佐伯の死が事故だと言い張った. レーサーの整備士がパピヨンのところに集まってきた. パピヨンがエイズの件を持ち出すと妻は健康だったと激昂. 雑誌に書いたら名誉毀損で訴えると息巻いた.

エジソンは南が受け取った年賀状を元に,問題のブティックを探し当てた. 早速バニーが服を買いに行く振りをして,ママ(三崎奈美)の顔を確認した. そして服に仕込んでいたカメラで写真を撮った. ママの名前は瀬川ひろみ.しょっちゅうアメリカへ行き, 豪勢な暮らしをしていた.車は800万円もする外国製のオープンカー. さらに家賃30万円の高級マンションに住んでいた. ファルコンはジョニー柴田の事務所へ行き, 瀬川ひろみがロサンゼルスでジョニー柴田の楽屋に何度か来たことを確認. さらにパピヨンは,瀬川ひろみがアメリカで佐伯で会っていたことを確認. つまり,3人が3人ともアメリカで瀬川と会ったことがあるのだ.
エジソン「死んだ3人がこの女に金を巻き上げられてるとしたら, あの豪勢な暮らしも理解できる.」
うなずきあうファルコンとエジソン.だがパピヨンはその説を否定した. 3人のうち2人はホモ.だから女に騙されて大金を吐き出すとは考えられない. どうも事件の全貌が見えてこない.エイズだと言う話もあったが, 南と知り合いだったオカマのミミも佐伯の妻もエイズには感染していない.
パピヨン「これが何らかの犯罪だとしても,女独りではできるとは思わないけど. とにかく,この女を突破口にするしかないわねえ.」

パピヨンは瀬川のブティックに買い物客を装って入り,電話を借りた. そのとき,ついでに盗聴機を電話機に仕掛けた.
パピヨン「ええ.準備OKです.」
早速
エジソン「来た,来た.」
瀬川は浅野(小笠原弘)と言う男に電話をかけていた.話の様子から,
エジソン「仲間じゃねえなあ.」
バニー「かけた番号,わかりますか?」
エジソン「はい,調べましょう.」
浅野は微熱があり,かったるい上に下痢も酷かった. そして電話番号の検索結果等は
バニー「えーと,浅野インターナショナル.貿易会社ですね. 所在地は赤坂です.浅野たけひこ,48歳.社員80人の貿易会社を経営. 8年前に妻が病死しています. 現在は21歳になる一人娘のゆみ(横田さとみ)と二人暮し. かなりの資産家のようです.」
ファルコン「アメリカに行ったことは?」
バニー「仕事の関係上,毎年,何度も.昨年秋に交通事故をやり, 現地の病院に1ヶ月入院したことがあります.」
パピヨン「条件にピッタリね.もしかしたら,第4の犠牲者かもしれないわ. 徹底的にマークして頂戴.」

瀬川と会食しながら,浅野は瀬川からもらった薬を飲んでみたが, 体調が思わしくないと言っていた.すかさず瀬川は, アメリカで輸血を受けた人が,半年前に亡くなったという話をした.
瀬川「でも,まさか.」
浅野「君,はっきり言ってくれ.どういうことなんだ.まさか,その人は.」
瀬川は話題を変えようといったが,浅野はなおも食い下がった.
浅野「その人がエイズだと?」
瀬川は噂だけだと言った.瀬川は中座し,ピンク電話から電話をかけた. すかさずファルコンも横のピンク電話にやって来て立ち聞き.
瀬川「あ,もしもし.あたし.ぼちぼち作戦開始しても大丈夫みたいよ. うん.かなり不安がってる.」

ある日曜日.浅野はゆみに起こされた. 婚約者のけいすけとテニスへ行くと言うのだ. ゆみが出た後,浅野は深刻な顔でエイズに関する新聞記事を読んだ. そこへ来客が.男(内田勝正)は「衛生省貿易局 感染症対策小委員会 柏木政浩」 と書かれた名刺を出した. 柏木は浅野がロサンゼルスで輸血を受けた話を持ち出した.さらに柏木は, その病院でこの1年間に輸血を受けた患者の中から, 22名のエイズ患者が発見された,と浅野に告げた. その中に日本人が3名いると言う. この事実がマスコミに漏れればパニックになる. だから衛生省は極秘で対策を進めていると柏木は言った.浅野は不安を感じた. 血液検査をしてみないとエイズかどうかはわからないと柏木は答え, さらに浅野の体調を聞いた.微熱,下痢, 関節の痛み等があると浅野から聞いた柏木は
柏木「やっぱりー.電話をお借りできますか?」
柏木は電話でこう言った.
柏木「やはり,可能性ありです.そうです.初期症状が. でも我々のチームでは全部のクランケを扱うキャパシティーがありませんから. あ,そうですか.都立病院で.わかりました.」
不安を感じる浅野.柏木は電話を切って, 都立中央病院の感染症研究室で検査を受けてもらうことにした, お嬢さんも会社の社員の方も検査を受けてもらうことになると思う, と浅野に告げた.浅野は内密にできないかと頼み込んでいた.

その頃,バニーは柏木の車に盗聴機をセット. その直後に柏木が浅野を連れて出て行った. ヘッドホンをしながら,エジソンとバニーが追跡開始.話を聞きながら
エジソン「やっぱりエイズか.」
車はビルの地下駐車場に入った.そのビルの一室で, 白衣を着た男(中山昭二)が「パラダイス産業事務室」という黒地の看板を裏返し, 「衛生省特別分室」という白地の看板に差し替えていた. 準備完了したところへ柏木と浅野が中に入った. 早速血液検査を受ける浅野.その頃, エジソンとバニーは真上に位置する「北栄建材株式会社」に侵入.
バニー「日曜日で良かったですねえ.」
エジソン「日曜日は俺も休みたい.」
エジソン達はドリルで床に穴を開け,下の部屋にカメラとマイクを突っ込んだ. その頃,「検査結果」は
医者「残念ながら.」
浅野「やっぱり.」
医者は浅野の体調を聞き,典型的な初期症状だと言った. さらに医者は東京でエイズの治療をしているのは中央病院だけだと言い, まだ有効な治療法が見つかっていないと不安を煽る事を言った. 何か方法はないのかと言う浅野に医者は,実験段階だがかなり有効な薬がある, と言った.ただし,莫大な費用がかかると言う. ダメを押すために柏木は,あの薬は予約がいっぱいでと言った. 浅野は金ならいくらでも出す,と言い,薬を買うことにした. 柏木は誰にも漏らすなと言った.

早速バニーが忍び込み,薬を盗み取った.浅野は荷物をまとめていた. 浅野は仕事の都合でしばらくホテルで暮らすとゆみに伝えた. 結納の日取りを決めたいと婚約者のけいすけが言っているというゆみに, しばらく待ってもらえと言う浅野.さて,浅野が会った連中の正体は,
ファルコン「柏木五郎(内田勝正). 例のビルに事務所を持つパラダイス産業って言うインチキ会社の社長だ. そしてもう一人,5年前までは関東医大の講師だったが, モルヒネの不正横流し事件で有罪判決を受け,医師免許も剥奪された, 久保田えいじ(中山昭二).そしてそんときの共犯者が, 元看護婦の瀬川ひろみだ.」
瀬川ひろみの役目はアメリカで鴨をみつけることと,エイズの不安を煽ること. そして薬の分析結果は
ファルコン「あれはとんでもないインチキ薬でしたよ. えーっとベースになってるのはカルシウムとブドウ糖. それに少量の下剤と後は発熱を促す何とかという薬ですね.」
浅野はもう1千万円近く金を注ぎ込んでいた.このままでは4人目の犠牲者が出る.

ファルコンとバニーは黒タイツを被って浅野の前に登場. ファルコンは浅野に催眠ガスを吹き付けた. しばらく経って,江ノ島で釣り人が「浅野の靴」と「遺書」を発見し, 警官に報せた.
警官「こっから飛び込むと死体があがらないんだよなあ.」
新聞でこれを知った柏木は悔しがった. 浅野から1億円以上巻き上げる計画だったのだ. 相場で焦げ付いた金を今月中に返さないと闇金融の奴らは大人しくしていない. ボスはどうやら柏木ではなく,久保田の方らしい. 久保田は急いで瀬川ひろみに客を探させることにした.

悲しみに暮れるゆみのところへ電話がかかってきた. なんと電話は浅野からのもの.ゆみは驚いた. 浅野は黙って言う通りにしろと言った.身の周りの物をまとめて表に出て, 迎えの車に乗れと言うのだ.ゆみはパピヨンに連れられて出て行った.

瀬川ひろみのブティックをパピヨンが訪れた. パピヨンは瀬川ひろみに,浅野から聞いたと称し, エイズにかかった弟のために薬を都合して欲しいと言うのだ. パピヨンは青山で堀部美容室という美容院をやっていると言い, 弟はニューヨークで絵の勉強をしていたと瀬川ゆみに伝えたらしい. そのことを瀬川ゆみから聞いた柏木と久保田は確かめることにした. 瀬川ひろみが店へ行くと,確かに大きな美容院で,従業員も客も大勢いた. 帰っていく瀬川ひろみを見送ってから
パピヨン「御苦労様.さ,皆さんにアルバイト料をお支払いして.」
ファルコンとバニーを除く従業員と客は全員,エキストラだったのだ.

アジトに帰ったパピヨン達.
パピヨン「罠にかかったわねえ.」
ファルコン「奴ら,かなり焦ってますねえ. 浅野から予定通り金を取れなかったから.」
エジソン「3人の他に共犯者はなし.」
バニー「やりましょう,ハンギング.」
エジソン「(なぜかオカマっぽい口調で)やりましょう.」
バニー「やりましょう.」
エジソン「(なぜかオカマっぽい口調で)やりましょう.」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
ファルコン「(「お控えなすって」のポーズをとりながら)Let's」
エジソン「(「お控えなすって」のポーズをとりながら)go」
バニー「(「お控えなすって」のポーズをとりながら)Hanging!」
パピヨンはファルコン,エジソン,バニーの順に手を叩いた. 3人の部下はなぜかそのままのポーズで歩いて行った. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

弟のエジソンは柏木に連れられて「衛生省特別分室」へ行き, 血液検査を受けた.
久保田「私はアメリカで何百人ものエイズ患者をみてきたが, 君の自覚症状は真性のエイズとみてほぼ間違いないだろう.」
エジソン「ああ.あのー,特効薬が開発されたそうなんだけど, それもらえますか?」
久保田「アメリカから取り寄せなくちゃならんし,高くつくよ.」
エジソン「そうっすか.いえ,また下痢が始まったみたい. トイレどこですか?」
エジソンはトイレへ駆け込んだ.それを見ながら
柏木「ホントに下痢してるみたいですよ. ひろみのインチキ薬飲んだわけじゃないのに. なんだか本物のエイズのような顔して.」
久保田「馬鹿言うな.日本にはまだ十数人しかいないんだ. きっと食あたりだろう.」
その頃,バニーがエジソンの腹に化粧して発疹を作っていた.
エジソン「はー,ふー.」
バニー「息止めて.」
エジソンはトイレから戻って来た.
エジソン「あ,どうもすいません.いっくら薬飲んでも下痢止まんなくて. あの薬,すぐ注射してもらえますか.」
久保田「まあ,とにかく血液検査をしてみてから…」
エジソン「いやいや.もう,その必要はないんですよ. 僕は3つの病院で間違いなくエイズだっての,診断されたんですから.」
エジソンは3枚の診断書を懐から出した.驚く久保田と柏木.
エジソン「それにねえ,こんなもんできちゃって, 気持ち悪くて仕方がないんです.」
エジソンはシャツを開けて腹の「発疹」を見せた.これは効いた.
エジソン「何をそんなに驚いてるんですか? 薬あるんでしょう. 打ってくださいよ.エイズ治してくださいよ.エイズ治して. 私のエイズを治してよ.」
エジソンに迫られ,「衛生省特別分室」から逃げ出す久保田と柏木. そこへファルコンとバニーが登場.
久保田「誰だ,君達は?」
ファルコン「エイズマン.」
久保田と柏木はファルコンとバニーに倒された.

浅野とゆみの泊まる部屋に手紙が届いた.
パピヨンの声「今夜9時にテレビを見てください. あなた達を死に追いやろうとした者達に制裁が下されます.」

気がつくと,悪党達は病院のベッドに手錠でつながれ,点滴の管が刺されていた.
後ろには「AIDS」と書かれた壁が置かれ, 上の方には点滴用の瓶が吊るされていた.
ファルコン「やあ,諸君.お目覚めかな.」
久保田「なんだ,これは.誰だ.」
ファルコン「これから諸君にあるゲームをやってもらう.久保田先生, あんたは医者だ.いや,免許を取り上げられたから,元医者と言うべきか. どっちにしてもエイズについては十分知ってるはずだ. だからこそ,今度のような悪巧みを思いついたんだろうからなあ. 諸君の頭上にある3つの瓶のうち,2つはごく普通のリンゲル液だ. そして1つは見てわかる通り,血液.ただし, 真性のエイズ患者から採取したエイズウィルス入りの血液だ. これから点滴を始めるが,何しろ途中で管がごちゃごちゃになってるんで, どれが誰につながってるのか私にもよくわからん. つまり,めでたくエイズに感染できるのは3人のうちたった一人だ.」
それを聞いた悪党は暴れた.
ファルコン「では始める.」
瓶が降りて来た.そして管が刺さり,点滴開始.悲鳴をあげる悪党達.
瀬川「いやあ,やめてえ.」
久保田「何をする.殺人と同じだぞ.」
柏木「そうだ.これ,人殺しだ.」
ファルコン「おや,何をそんなに恐がってるんだ. エイズに感染したって構わんじゃないか.君達は特効薬を持ってるんだろう. ジョニー柴田や,南教授や,レーサーの佐伯,それに浅野社長に, 高い金で買わした特効薬を.」
リンゲル液や血液が管を落ちて行くのが見えた.恐怖で悲鳴をあげる悪党達. ついに
瀬川「お願い,やめてえ.」
柏木「やめてくれえ.頼むからやめてくれ. 特効薬なんか最初からなかったんだ.インチキだったんだ.」
久保田「おい,柏木.やめろ.やめるんだ.」
ファルコン「死にたくなかったら喋るんだなあ. ジョニーや南教授から全財産を巻き上げ,自殺に追い込んだ特効薬ってのは, いったい誰が発明したんだ.レーサーの佐伯はどうやって殺したんだ.」
パピヨン「スタンバイ.」
エジソン「了解.」
アンテナが準備された.パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押すと同時に「ON AIR」開始.
瀬川「私じゃない.ねえ,エイズを使って金を儲けようって持ちかけてきたのは, 久保田先生なのよー.」
久保田「しかし俺はあんな大勢死人が出るなんて事は, 思っても見なかったんだよ.」
柏木「なーにを言ってるんだ.佐伯にインチキがばれそうになった時に, 車の細工をして殺せって言ったのは,先生,あんたじゃないか,え!」
この醜態は「東京・日本橋 壽堂」という日本料理屋の厨房のテレビなどに, 映し出されていた.浅野とゆみもテレビを見ていた.
浅野「本当にあの連中の言う通りだったのか.」
ゆみ「良かった.パパが変な病気じゃなくて.」
浅野「しかし,いったい,あの連中は何もんなんだ.」
ゆみ「パパ.」
ゆみは浅野に抱きついた.
ゆみ「良かった,生きてて.」
さて悪党達はなおも悲鳴もあげていた.
バニー「どうも,どうも,どうも.お疲れ様でした.ご苦労さん.ご苦労さん. いやあ,どうも,どうも.お疲れ様でした.」
バニーは壁ごと瓶を運んで行った. 悪党達は管が最初からつながっていなかったことに気がついた.
久保田「くっそー.騙しやがった.」
瀬川「嘘つきー.」
柏木「嘘つきは泥棒の始まりだぞー.」
悪党達は自分の悪事を棚に上げてののしり始めた.部屋が暗くなった.

また部屋が明るくなり,薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
瀬川「あなたは…」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. 翌日.蝶の描かれたダンボールにつめられ,大高警察署へ届けられた. 今回は「極悪人 在中」の高札付.

事件解決して…

雅則はアメリカでエイズの特効薬の試作に成功という新聞記事を読み, 蝶子を呼んで教えてやった.拍手する雅則を見て
蝶子「ねえ,あなた,こんな記事で大喜びするなんて,なぜ? なんか思い当たることでもあるの?」
雅則「何が?」
蝶子「だってさあ,最近ちっとも相手にしてくれないし, 女より男の方が良くなったんじゃないかって.」
雅則は咳払いした.
雅則「ああ,掛布ってすげえなあ.場外ホームランだって.」
拍手する雅則を見て
蝶子「8時半ですよ.」
冷たく言いながら蝶子はパンをほおばった.

「ザ・ハングマンV」へ 「全話のあらすじ」へ 「全話のキャスト」へ 「緊急指令トラトラトラ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp