林の中をカップルがオートバイを二人乗りしていた. キスしあうカップル.しかし,女は突如叫び声を上げ,キスをやめた. 中年の男の首吊り死体を見つけてしまったからだ.
事件は伊豆山中で起きた.
この記事を読んでいた雅則は読むのに夢中になってしまい,
炒り卵をフォークで取るのに四苦八苦する始末.
テーブルをフォークで叩いてしまった後,やっと炒り卵を取ることが出来た.
蝶子「何熱心に読んでるの?」
雅則「いや,かみさんに蒸発された中年男が自殺したらしいよ.
首吊りだってさあ.」
朝からそんな話をする雅則に蝶子は閉口した.それでも雅則は
雅則「かみさん,新婚旅行から帰ってきて,すぐに蒸発したらしいよ.
はー,1ヶ月ぐらい探し回っていたらしいね.疲れたんだねえ.
40にもなって結婚してさあ,女房に蒸発されたらショック大きいよ.
わかるよ,この気持ちは.」
だが蝶子は会社遅れますよ,と雅則の話には乗らなかった.
上着を着る雅則は
雅則「今夜,体空けといてくれねえか?」
蝶子「何なの?」
雅則「見合いだよ,見合い.」
蝶子「誰の?」
雅則「会社の長原君.若い娘とねえ,お見合いするんだって.」
蝶子「ふーん.」
雅則「で,後見人というかね,親代わりをね,頼まれたんだ.部長に.」
蝶子「部長さんに?」
雅則はうなずいた.
雅則「部長,急にね,出張で行けなくなったんで,それで頼むって言うんだよ.」
蝶子「ふーん.部長さんに頼まれたんなら仕方がないけど…」
さて,買い物に出かけた蝶子はあごひげを伸ばした易者に呼び止められた.
マネージャー「もしもし,奥さん.そこの奥さん.」
蝶子は振り返った.
マネージャー「何か悩みがおありのようじゃな.さあ,見てしんぜよう.」
パピヨン「マネージャー.」
マネージャー「は,は,は.どうかな.似合うかな.」
パピヨンは苦笑してしまった.
マネージャー「は,は,は,は,は.さあ,座って,座って.
黙って座ればぴたりと当たるよねえ.金運,恋愛,健康,何でもぴたりと当たる.
さあ,手ー出して.」
パピヨンは手を出した.マネージャーは写真をパピヨンの手の上に置いた.
マネージャー「山本健太郎,40歳.かみさんに蒸発されて自殺した男だ.
知っとるね.」
パピヨン「今朝,新聞で.」
マネージャーは次々に写真を置いていった.
マネージャー「この1年間に自殺や事故で死んだ男達だ.
揃いも揃ってようやく探し当てたかみさんに蒸発されておる.ねえ.
しかも,そのかみさんというのが日本人じゃないんだなあ.
東南アジアの女性なんだよ.」
パピヨン「東南アジアの?」
マネージャー「まあ,国際結婚といえば,それは聞こえがいいが,だ.
事情があって婚期を逸した男性達に,
東南アジアの女性を斡旋している組織があるんだ.
もちろん,合法的な組織なんだが,そこで紹介された女性が蒸発,
残された亭主が自殺というのが気になるんだなあ,これが.」
パピヨン「ただの自殺ではない,と.」
パピヨンがアジトで指令を説明した.
真鶴の漁師山本健太郎,自動車修理工の田中みのる43歳,
工員の竹内ともお41歳などが,この1年間に自殺した男だ.
仕事はばらばら.共通点は妻が東南アジアの女性で目下行方不明ということだけ.
そして自殺した男達に女性を紹介したのが友愛結婚相談所.
所長は石丸ようすけ50歳(菅貫太郎).元商社マンで脱サラして結婚相談所を開設.
商社時代の担当は東南アジア向けの雑貨で人脈もかなりあるらしい.
エジソン「ジャパユキさんの本拠地か.」
ちょっと意味合いが違うぞ,エジソン.
パピヨン「じゃあ,今回のギャラは一人80万.(ファルコンに)はい,
(バニーに)はい,(エジソンに)はい.」
エジソン「毎度.」
パピヨン「大変,急がなきゃ!」
また始まったと思う(バニーを除く)部下2人.
バニー「何か?」
パピヨン「ん? お見合い.お見合いなの.」
これを聞いたバニーは何か勘違いしたらしい.
バニー「は? パピヨンが?」
これはパピヨンの失笑を買った.
エジソン「(バニーの胸を叩いて)馬鹿,お前.
亭主持ちが何でお見合いするんだよ.」
パピヨン「あたしは明日真鶴の方当たってみるわ.」
バニーは扉を開けてやった.
パピヨン「じゃ,お先に.」
緑美園のワゴンの中でエジソンは男と女の人形がキスしあうおもちゃで遊んだ.
そして
エジソン「おい,バニー.(キスのつもりで口を突き出し)うん.行って来い.」
バニー「はい.」
エジソン「(また口を突き出して)うん.気をつけろ.」
早速バニーが友愛結婚相談所へ乗り込んだ.
石丸「この花を私に?」
バニー「はい.良縁をお世話して頂いてありがとうございました,
とのご伝言でございます.」
石丸「名前は?」
そこまでバニーは考えていなかった.
バニー「あ,いえ,仰ってませんでした.お若い男性の方で.」
石丸の部下(中村孝雄)「若い男性.最近,若い男性というのはいませんよねえ.」
慌ててバニーはこうごまかした.
バニー「いや.若く見えたけど結構年が行ってたかもしれません.」
部下「山田さんですか?」
バニー「あ,そういえばそんなことも言ってました.
とにかくここに置いてきますから,後をよろしくお願いします.」
去っていくバニーを怪訝に思う石丸達.だが盗聴機つきの花を置いていくことに,
バニーは成功した.
石丸「山田さんねえ.」
パピヨンは真鶴で週刊誌の記者と称して山本のことを聞き込んでいた.
自殺したのは蒸発した妻のせいじゃないかというパピヨンに,
漁師仲間はそうだろうなあと答えた.さらに漁師は憤慨してこう付け加えた.
漁師「あんな死に方をするなんて,だらしがねえと思うかもしれないけんど,
奴はまるで女に縁がなかったんだ.40歳過ぎても独りもんだった.」
パピヨン「は?」
漁師「大体いけねえのは日本の女が一番悪いんだよ.
魚くせえだの,なんだの抜かしやがって.冗談じゃねえんだよ.」
憤慨する漁師に恐縮しながらも,
パピヨンは蒸発した女の写真を手に入れることには成功した.
新婚旅行に行く時の写真が残っていたのだ.
ファルコンは田中の調査をしていた. 田中は「酔っ払って電車の線路の上に寝込んで事故死」したのだ. その事件は新聞に出たのに妻は戻ってこなかった. 田中の新婚旅行先は東南アジア.結婚相談所の招待で行ったのだ.
さて友愛結婚相談所をエジソンとバニーは張り込んでいた.
相変わらずエジソンが男と女の人形がキスしあうおもちゃで遊んでいると,
動きがあった.早速盗聴開始.村岡(鶴田忍)という元客が乗り込んできたのだ.
妻のスーランが蒸発してもう3日.やはり新婚旅行から帰った翌日に蒸発した.
村岡は足を棒にしてスーランの行方を探していた.
はじめはそのうち帰ってくると村岡をなだめていた石丸達だったが
石丸「村岡さん,勘違いしないでくださいよ.
私どものやっているのは結婚の紹介であって,
人探しではないんですからねえ.」
部下「結婚生活に入った後のごたごたまで持ち込むのは,
筋違いというもんですよ.」
村岡「しかし,
お宅が紹介した女房が新婚旅行から帰った翌日に行方不明になったんですよ.」
部下「ああ,お帰んなさい.これ以上,
ここにいられると仕事の邪魔になるんですよ.」
村岡は石丸のネクタイをつかんだ.
村岡「所長さん.スーランを,スーランを早く探してください.」
部下が引き離そうとすると
村岡「でないと,私だって出るとこへ出ますよ.」
部下「何を血迷ったこと言ってんだ.帰れ.帰るんだ.」
このとき,例の花が落ちて鉢が割れてしまい,盗聴機も壊れてしまった.
ものすごく高い音がした後,盗聴不能になった.
バニーが耳を押さえている間に,エジソンは出てきた中年男,
すなわち村岡を発見.
エジソン「おい,後を頼むぞ.」
バニー「はい!」
エジソンは村岡を尾行することにした.
村岡は村岡洋服店という洋服店を営んでいた.
「洋服の病院 村岡洋服店 カケハギ.寸法.修理.加工.」という看板を見て,
エジソンは自分の袖を洋服から破き,中へと入った.客を装い,聞き出すためだ.
村岡「スーランか.」
だが
村岡「あ,いらっしゃい.」
スーランではなくて中年男なので村岡はがっかりした.
エジソンは女に引っ張られたと称して服を縫い直してもらった.
エジソン「うちに帰って修理してもらってもいいんだけど,
女房の奴に出ていかれちまってね.」
一瞬,村岡の手が止まった.これをエジソンは見逃さなかった.
エジソン「全く何だかんだ言っても,男ってのは女房いなければ,
ボタン一つつけられないんですよね.どこで何してんのか,ホントに.
今度帰ってきたら二度と敷居またがせないんだ.
亭主馬鹿にすんのもいいかげんにしろってんだ.離婚だな.
その方がさばさばする.」
エジソンの作戦成功.村岡は反応を示した.
村岡「そんな強がり言うもんじゃないの.」
エジソン「え?」
村岡「いくら強がり言っても,人間独りじゃさびしいよ.
帰ってきたら,迎え入れてやりなさいよ.男には女が,女には男が必要なのよ.
優しく迎え入れてやらなきゃ.」
駄目押しとしてエジソンはこう応えた.
エジソン「人事だと思って簡単に言うけどさ.ま,俺の身にもなってみてよ.
あんたなんて,きっと,いい奥さんいるんだろうねえ.」
村岡は首を左右に振った.
エジソン「奥さん,いないの?」
村岡「私もあんたと同じ境遇.」
エジソンの作戦成功.
エジソン「ねえ.もし良かったら訳聞かせて.やっぱり俺と同じ博打が原因?」
村岡「そんなんじゃないんです.」
村岡はアルバムを出した.
村岡「これ.見てください.」
村岡の妻は東南アジアの女性だった.
エジソン「これ,奥さん.」
村岡はうなずいた.
エジソン「若いじゃない.エーキゾチック!」
村岡「スーランって言うんだ.」
麦茶を飲みながらエジソンは続きを聞いた.
村岡「俺なんか,学歴はねえし,(村岡が麦茶を出してくれたので,
エジソンが手を出して感謝のポーズ)顔だって見た通りだしね.
月々の稼ぎだってそんなにないし,おまけに寝たきりのお袋をかかえてちゃ,
嫁の来てなんか誰もいないよ.」
エジソン「ババ抜きの世の中って訳だ.」
村岡「うん.それで,お袋が逝ってくれて,
(エジソン,仏壇に手を合わせる)ふーっと周りを見渡したら,
俺も40過ぎて独りっきりだ.それで恥をしのんで紹介所訪ねて行ったら,
スーランを紹介してくれたって訳.」
エジソン「ふーん.」
村岡「向こうの女性は日本人と結婚したがってるらしいから.」
エジソン「うん.」
村岡「それが東南アジアへ行って帰ってきたら行方不明だ.
星野さん,俺ホント,狐につままれたような気持ちだよ.」
エジソン「旅先でなんか変わった様子なかった?」
村岡「何もなかったよ.どうして?」
エジソン「いやあ,別に.」
村岡「なあ,星野さん.スーラン,どこにいると思う?
スーツケース一つしか持ってないんだよ.もちろん金も持ってないし,
あいつみたいにろくに日本語も喋れないような女,日本で働くとしたら,
どういうところで働くのかなあ.」
エジソンはしんみりした顔で相槌を打った.
村岡「考えたくないけど,言葉が喋れなくても出来る商売って他にないもんな.」
エジソン「あんまり落ち込まないで.スーランさん,帰ってくるって,きっと.」
村岡はしみじみとエジソンを見ていた.
アジトでエジソンが村岡のことを報告した.
村岡が取られた金は結納金,日本語学校の授業料,日本に渡ってくる旅費,
相談所の紹介手数料などで約300万円.
バニー「300万って言ったら,大金じゃないっすか!」
エジソン「そうだよ.それだけ切実に嫁さん欲しかったってことだ.
それが新婚旅行帰って来た次の日にいなくなっちゃうだから,
たまんないよね.」
それを受けてファルコンが報告した.
新婚旅行のコースも全員申し合わせたように同じコースを回っていた.
泊まるホテルも同じだ.同じ結婚相談所の紹介だから当然なのかもしれないが.
さらにパピヨンが報告した.死んだ男は,これも判で押したように,
必死に蒸発した妻を探し回っていた.
パピヨンは東南アジアの女性を紹介された男は他にもいると睨んでいた.
妻が蒸発しても探さなかった人がいるに違いない.
マネージャーの網に引っかかったのは死んだ人間だけだろう.
さらにパピヨンは蒸発した妻を探し回ったから死んだと睨んでいた.
その頃,新宿歌舞伎町の風俗店を村岡が一生懸命回っていた. しかし成果はなかった.その様子を石丸の部下が見ていた.
エジソンがアジトでコンピュータの基板をいじっているところへ,
ファルコンがやってきた.そのとき,バニーから連絡が入った.
石丸が迎賓館の前で誰かと会っているというのだ.
伝送されたバニー撮影のビデオを見るエジソンとファルコン.
エジソンはバニーに指示して石丸の相手をアップで撮らせた.
エジソンはその画像をキャプチャーして写真にした.
ファルコン「何もんだ,このおっさん.」
エジソン「わかんねえな.バニー,このおっさんのケツつけろ.」
早速バニーが「このおっさん」を尾行.
そのとき,パピヨンがアジトへ戻ってきた.
蒸発した妻達は誰も出国していなかった.
スーラン,アーチ,ジュラン,いずれも出入国管理事務所に届出なし.
さらに身元不明の変死者の中にも東南アジアの女性は該当者なし.
エジソンは「このおっさん」の写真を見せた.
パピヨンも「このおっさん」の素性を知らなかった.
その晩.
「このおっさん」は風俗店に1時間前に入ったきり店から出てこなかった.
大事な客らしく,丁寧にボーイが迎えていた.
バニーと合流したファルコンは
ファルコン「じゃあ,お前さん,ここでエジソンの報告待っていてくれ.
俺ちょっと店探検してくるわ.」
バニー「あ,俺も一緒に行きます.」
バニーはファルコンに往復ビンタされた.
ファルコンは一人で店の中に入っていった.
その店は「Sweet Box」という名前の会員制クラブ.
ホステスは皆アイマスクをしていた.
ファルコンの席には蝶の形のアイマスクをしたホステスが座った.
ホステスは東南アジアの女性.ファルコンはアイマスクを取ろうとしたが,
ホステスに拒否された.
ホステス「ここでは取れない.奥で取るね.」
ファルコン「奥で.奥で.奥ね.おーお.奥と言えば,あそこの奥の人,誰かな?」
ファルコンは「このおっさん」の素性を聞いた.
ホステス「どの人?」
ファルコン「ほら,あそこのヒゲメガネ.」
ホステス「ああ,あれ.President Amano.」
ファルコン「(なぜか外国語訛りで)オー,大統領?」
ホステスは苦笑.
ホステス「社長さんよー.」
ファルコン「(なぜか外国語訛りで)オー,社長さんねー.」
天野は席を立った.
ファルコン「(なぜか外国語訛りで)オー,I go to 厠ね.」
ファルコンはトイレへ行き,誰もいないのを確かめてから靴を脱いだ.
無線機になっているのだ.ファルコンはバニーに天野のことを報告し,
エジソンに伝えるよう指示した.その後,奥の部屋へ入ろうとしたが,
「メンバー以外の方の入室は御遠慮ください」と書かれた看板が立っていた.
構わずカーテンを開けると恐そうな外国人のお兄さんが立っていた.
その頃.村岡の靴と遺書がビルの屋上に置かれた.
そして石丸の部下が眠らされた村岡をビルから投げ落とさせた.
この事件は村岡栄治の投身自殺として新聞で報道された.
アジトで新聞を読んだエジソンは
エジソン「石丸の野郎!」
新聞をコンピュータのディスプレイに叩きつけた.
エジソン「今すぐハンギングだ.」
ファルコン「待てよ.」
エジソン「何で! 消えた女房,探してる男が次々自殺に見せかけられて,
殺されてるんじゃないよ.探されちゃ困る石丸がやったに決まってるんだ.」
今回のエジソンは珍しく感情的になっていた.
村岡に同情していたに違いない.だが石丸がやったという証拠がない.
それに石丸の悪行の全貌が未だ見えていない.
石丸と天野とのつながりもはっきりしない.
そう言ってパピヨンとファルコンはエジソンをなだめた.
エジソンは天野のことを報告した.天野の名前は天野こうじで48歳.
10年程前に土地転がしで大儲けし,現在新宿,渋谷,
池袋にクラブやキャバレーを多数経営していた.
半年ほど前に麻薬取締法違反で逮捕されたが,証拠不十分で不起訴になっていた.
パピヨン「この男がなぜ石丸と接しているのか.」
ファルコン「鍵はあのクラブの奥の部屋にありって訳だ.」
というわけで,その晩,ファルコンとバニーがクラブに裏口から侵入した.
その際,ファルコンとバニーはお互いに頭をぶつけ合ってしまい,痛がった.
奥の部屋は個室になっていて,客とホステスが情事を行っていた.
ファルコンは発煙筒に火をつけて投げ込み,
ファルコン「火事だー.火事だー.」
騙されたホステス,客達がどんどん部屋から出てきた.
ファルコンとバニーは写真を撮りまくった.その結果
ファルコン「村岡のかみさんのスーラン,漁師のかみさんのアーチュ,
竹内さんのジュラン,みんなここにいる.」
クラブの奥部屋が蒸発した妻達の仕事場だったのだ.
バニー「なんで石丸が女達を蒸発させる必要があるんですか?
蒸発させるくらいなら最初から結婚なんてさせなけりゃいいじゃないですか.」
パピヨンはこれを在留資格の問題だと考えた.ファルコンが代わりに説明した.
観光ビザで日本に滞在できるのは3ヶ月.ところが日本人と結婚すると3年になる.
その3年間は大手を振って日本にいられるという訳だ.
村岡達はそのために利用されたのだろう.女達もぐるだろうと言うバニーに,
パピヨンはそれはわからないと言った.
ホントにその人が好きだったかもしれないからだ.
ファルコン「結婚して蒸発して来い.そして天野の店で働けって訳ですか.」
パピヨン「やはり彼女達も石丸達の犠牲者よ.」
さらにエジソンは覚醒剤のこともありそうだと考えた.
その理由を説明するためにエジソンは東南アジアへの新婚旅行の写真を並べた.
それを見たパピヨンは,蒸発した妻達が皆同じスーツケースを持っていることに,
気がついた.スーツケースにからくりがあるのかもしれない.
しかしそのスーツケースはどこにあるのだろうか?
エジソンは村岡の言葉を思い出していた.
村岡の声「スーツケース一つしか持ってないんだよ.
もちろん金も持ってないし…」
覚醒剤が入ってるとすれば,
スーツケースは天野のところか石丸のところにあるに違いない.
というわけで
パピヨン「この際,お嫁さんをもらってもらうしかないわね.」
ファルコン「うん.」
エジソン「誰がやる?」
バニー「お嫁さんの来てがいない中年男といったら,
一人しかいないじゃないですか.」
皆エジソンの方を向いた.
エジソン「わかったよ,やるよ.」
エジソンは高倉文太と名乗った.昭和26年12月10日生まれ.
年齢は35歳で職業は植木屋.パピヨンはエジソンの姉の役.
石丸の部下は高倉文太の結婚歴を聞いた.口篭もるエジソン.
すかさずパピヨンがこう言った.
パピヨン「いえ,なんて言いますか,弟は女性に対して奥手でございまして,
もう少しまめなら結婚の機会もあったと思いますが,なんせ,
女性の前に出ますと,口も利けなくなってしまうような有様でして.」
石丸は見合い歴を聞いた.
パピヨン「いいえ.お見合いしたことは何度もございますんですが,
(一呼吸置いて)なんせ,この弟には,欠陥がありまして…」
思わずエジソンがパピヨンの方を見た.
部下「欠陥と言いますと?」
パピヨン「あ,いえ,なんて言いますか,
いざというときに元気がなくなってしまうらしいんです.」
エジソンはパピヨンから目をそらした.
パピヨン「あ,それで,あたくし,この子に問い詰めたんです.
そうしましたら,東南アジアに旅行しました時に素晴らしい女性に出会った,
それを思い出すと日本の女性の時はどうもうまくいかないと申すんです.」
物凄いでまかせだ.
石丸「東南アジアの女性に魅せられてしまったという訳ですか.」
パピヨンは東南アジアの女性を紹介してくれと頼み込んだ.
石丸「それはまあ,心当たりもないこともありませんが.」
駄目を押すためにエジソンは目を輝かして石丸の方を見た.
パピヨンも石丸に頼み込んだ.石丸の部下は書類を揃えてと言った.
抜かりのないパピヨンは戸籍抄本,納税証明書,住民票,
会社の在職証明書を揃えて持ってきていた.
早速石丸の部下が緑美園にやってきた.ファルコンは店で水をやっていた.
他の3人はアジトに待機.
ファルコン「来やがったな.お出ましだよーん.」
ファルコンは部下を出迎えた.
ファルコン「いらっしゃいませ.」
部下は素晴らしいお店だとお世辞を言った後,
部下「あのう,このお店に高倉さんと言う方,いらっしゃいますか.」
ファルコン「はいはい.ああ.高倉ならおりますが.」
部下「ああ.いらっしゃる.」
ファルコン「はい.」
部下はタバコを勧めたが,ファルコンは自分は吸わないと断った.
そのやり取りはアジトのモニターに映っていた.
ファルコンは隠しカメラに向かってピースしたが,部下は気がつかなかった.
部下「高倉さんって言う人はどういう人ですか?」
ファルコン「どういう人といいますと?」
部下「ええ,あのう,なんと言うか,このー,性格と言うか,お人柄というか.」
ファルコン「ああ,お人柄はまあ,あのー,おめでたいというか,
能天気というか.」
これを聞いたエジソンは
エジソン「タコ!」
パピヨン「怒らないの.これも敵を油断させるため.」
部下「あのー,お姉さん,いらっしゃいましたねえ.」
ファルコン「あ,姉さん.あれはまた口がうるさくて神経質でねえ.」
これを聞いたパピヨンは
パピヨン「何よ!」
エジソン「作戦,作戦.」
部下「顔がこのー全然似てませんけど,ホントのお姉さんですか?」
エジソンはしまったという顔をした.ファルコンのでまかせが凄まじい.
ファルコン「あ,違うようですねえ.お姉さんは何でも狐さんで,
弟さんは狸さんで(エジソンは吹き出した),
まあ養子縁組のご姉弟って言ったところでしょうか.」
パピヨン「ちょ,ちょっと,もう.」
バニー「お静かに,お静かに.」
部下「いやあ,なるほど,よーくわかりました.」
部下は去って行った.
エジソン「俺,狸の子かよ.」
そこへファルコンが能天気に帰って来た.
ファルコン「OK! OK! OKよ.」
ファルコンはエジソンから腹に頭突きを食らい,
パピヨンからはヘッドロックを食らった.
ファルコン「おーい,なに,どうしたの.あんなにうまくいったじゃない.」
早速石丸は「一人おめでたいのが飛び込んできてねえ」と天野に電話.
そして石丸は翌々日に見合いすることをエジソンに電話した.
見合いの日.エジソンはパイメイという女性を紹介された.
とんとん拍子に事が運び,
パピヨン「明日入籍して東南アジアにご出発.」
ファルコン「敵さんもだいぶ焦ってますね.」
翌日.エジソンは石丸から東南アジアへの新婚旅行を「プレゼント」され,
部下とパイメイが例のスーツケースを持って登場.
そして車でエジソン達は出発した.ご丁寧にも車は空き缶を引きずっていた.
パピヨンはパイメイに栄養剤を勧めた.
栄養剤を飲んだパイメイは眠ってしまった.
そう,栄養剤ではなく睡眠薬だったのだ.
アジトでファルコン達はスーツケースを開けて調べてみたが,
出てくるのは下着ばかり.
ファルコン「取引の金が入ってると思ったんだけどなあ.」
パピヨン「今回だけ違うなんてありえないわよねえ.」
荷物を全部出した後,ファルコンがスーツケースを叩いてみると,
空洞があるような響きがした.そう.スーツケースは二重構造になっていたのだ.
空洞の中には札束が詰まっていた.
気がついたパイメイにエジソンが声を掛けた.
エジソン「ここは東南アジアのホテルと言いたいところだけどねえ,
残念ながら,都内某所.」
パイメイ「東京?」
エジソン「東京.」
飛行機が出ると慌てるパイメイの前にファルコン達も現れた.
偶然にも,パイメイはファルコンの相手をしたホステスで,
ファルコンの顔を知っていた.
ファルコン「なになに,東南アジアから来たばっかりだって?」
パイメイは逃げようとしたが,取り押さえられた.
ファルコン「逃げようったって無駄だあ.君は当分ここにいてもらうよ.」
エジソンは新婚旅行先で何をするつもりだったとパイメイに聞いた.
パイメイは覚醒剤のことは知らなかった.
パイメイが石丸から指示されたのは,スーツケースを持っていくこと,
ホテルのフロントにスーツケースを預けること,そして,
逃げて帰る時に持って来いと言う事だけだった.
おそらく,ホテルで金を抜いて代わりに覚醒剤を入れるのだろう.
パピヨン「どうやら,本当らしいわねえ.」
パイメイ「あたし,ここにはいられない.返してください.」
ファルコンは石丸のところに戻るのは危険だと警告した.
正体がばれたパイメイが無事で済むわけがないからだ.
エジソン「逃げるならね,くにへ逃げなさいよ.束の間のデートだけど,
楽しかった.はい.」
エジソンは航空券を渡してやった.
パイメイ「タカクラサン.」
エジソン「ま,くに帰っても大変だと思うけどね,がんばんな.
またいつか会えるじゃん.」
パイメイ「ありがとう.」
ファルコンとバニーはパイメイを目隠しして新宿まで送ってやった.
ここから成田空港までのリムジンバスが出るのだ.
パイメイは礼を言ってファルコン達と別れた.
エジソンは新婚旅行に出る前にパイメイがいなくなったと石丸に電話.
泡食った石丸は聞いた.
石丸「え? あのー,それで,高倉さん.スーツケースはどうなりました?」
エジソンは持っていると答えた.それを聞いた石丸は一安心.
エジソン「それじゃあ,今から返しに行きますんで,よろしく.」
エジソンは電話を切った.
そこへパイメイを送ったファルコンとバニーが戻ってきた.
ファルコン「よろしく言ってたぞ.」
エジソン「ホント?」
ファルコン「くにに帰ったら会いたいって,な.」
バニー「ええ.」
エジソン「あの別嬪が.じゃ,行きますか.」
パピヨン「Coming!」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「Let's go!」
ファルコン「Hanging!」
バニー「Hanging!」
エジソン「Hanging!」
3人は手を叩きあった.そしてハングマンは出動した.
友愛結婚相談所に天野も来ていた.そこへパピヨンとエジソンが登場. スーツケースを返して出て行った.すかさず石丸達はスーツケースを開けた. すると爆発して催眠ガスで部屋が充満した.
さて石丸達が気がつくと,彼らは頬にハートマークの電極をつけられ,
立ったままの姿勢で固定されていた.後ろには金屏風が立っていた.
ファルコン「さて,結婚を食い物にしてきた皆様方に,
相応しい罰を与えるとしよう.名づけて,キッスオブデスマッチ.」
ウェディングドレスを着たロボットが真中に登場した.
ロボットは自力でベールを上げ,銀色の顔を披露した.
ファルコン「お前達には勿体無いお嫁さんじゃないか.
ただし安心するなよ.そのお嫁さんの体には強力な磁石が入ってる.
口には電流が通ってる.
その口でお前達の頬に熱い接吻を送ってもらおうじゃないか.」
要するにオープニングでエジソンがやっていることを,
悪党達に味わってもらおうということだ.
石丸「ふざけるな.」
部下「何の真似だよ,これは.」
天野「冗談はやめろ.」
ファルコン「それじゃあ,オープニングセレモニーと行こうか.」
夫役のマネキンが登場.お嫁さんが手招きするとマネキンがお嫁さんに近づいた.
お嫁さんがキスすると電流が流れ,なぜかマネキンが爆発した.
ファルコン「今のは1000V.お前さん方には100Vから味わっていただく.
電圧は次第に上がっていき,ついには感電死.黒焦げの死体になる.
熱いキッスが欲しくなかったら,
一刻も早くお前たちのやった悪事を話すことだなあ.」
石丸「びくつくな.これはただの脅しだ.子供だましにおたおたするなよ.」
と言った瞬間,お嫁さんが振り返り,石丸をお出で,お出でと手招きした.
これを見た石丸は舌の根も乾かないうちにびくついた.
そして熱いキッスを受けた.
ファルコン「どうだい,100Vのキスの味は.次は200Vに上げさせて貰うよ.」
天野「びくつくんじゃねえ.」
お嫁さんが天野の方を向いた.舌の根も乾かないうちに天野もびくつき,
熱いキッスを受けた.
部下「俺は知らない.」
そう言った途端,部下の方をお嫁さんが向いた.
部下「ホントだ.嘘じゃない.嘘じゃありません.
言われたことをやっただけだ.」
電圧が400Vになった.
パピヨン「スタンバイ.」
アンテナが準備された.熱いキッスを受けながら,
部下「ゆう.ゆうからやめてくれえ.」
石丸「黙れ.ゆうな.何も言うな.」
石丸の方をお嫁さんが向いた.
石丸「やめろ.ゆうな.何も言うんじゃないぞ.」
ついに電圧が1000Vに達した.
石丸「言うな.言うな.言わんぞー.」
しかし1000Vのキッスは効いた.石丸の髪の毛は逆立ち,
石丸「うわあ,喋る.喋るからやめてくれえ.」
なぜかメガネもずり落ちた.石丸はショックのあまり,倒れこんでしまった.
ファルコン「OK.実況中継を開始してくれ.」
パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押すと同時に「ON AIR」開始.
「東京・渋谷 青木久義さん宅」のテレビなどに,悪党達の姿が映し出された.
悪党達は痺れて舌が回らない.
石丸「しんこんりょこうをりようして,
かくせいざいのはこびやをやらしたのみとめる.」
部下「めざわりなていしゅをころした.みとめる.
だからもうやめてくれえ.」
天野「ほすてすでばいしゅんもさせた.みとめる.じぇんぶみとめる.
だからゆるしてくれえ.」
ファルコン「(コンピュータがよく言う無機質な口調で)ヨクイッタ.」
部屋が暗くなった.
また急に明るくなり,薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
悪党達は髪の毛の逆立ちも直り,3人一くくりに縛られていた.
石丸「なんだ,お前は.」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は再び眠りに入った.
そして蝶の描かれたダンボールにつめられて警視庁大高警察署へ送られた.
もちろん,札束とスーツケースも一緒にだ.
雅則は泥酔して帰って来た.長原が振られたので付き合って飲んだらしい. 相手の女性は外人と付き合っていて, お見合いしてみて外人の方がいいと再認識したらしい. なぜか雅則も憤慨するのであった.
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