老人(天本英世)の屋敷にある池のほとりで, 老人に片桐という男(神田隆)が話していた. 伊藤繁樹という兜町では少し名の通った株屋が国税庁に目をつけられ, 片桐のスポンサー筋から伊藤の存在を危惧する声が挙がっていると言う. 片桐はスポンサーから伊藤の始末を頼まれており, 老人に頼み込んでいたと言うわけだ.片桐はアタッシュケースを開けた. 中は札束でいっぱいだ.老人は快諾し,部下達(浜田晃と沖田峻一郎)に合図した. そしてある晩,伊藤はコンクリート詰にされ,海中に没した.
ここ(ロケ地は浦安)はあるアパート.
ある日の朝,英雅則は新聞で「兜町の風雲児 伊藤繁樹氏,失踪!」
「愛人宅を出たまま 行方を断つ」という記事を読み,
奇々怪々だなあと言っていた.
雅則「この男,とっくの昔に消されちまってるんじゃないかねえ.」
パジャマを着たままテーブルに座っている雅則に妻の蝶子が言った.
蝶子「あなた,そんなことより,早く支度しなきゃ.ネクタイ,
これでいいかしら?」
雅則は何でもいいよと答え,なおも「そこそこにしときゃいいのにな.
やりすぎたんだ,この男は.」と言いながら服を着替え始めた.
ふと蝶子が時計を見ると
蝶子「あなた,8時半よ.」
雅則「わかってる,わかってる.ああ,今夜遅くなるかもしれんよ.
得意先の接待があってね.」
蝶子「あら,珍しいわね.あなたが接待だなんて.」
雅則「部長が出張中でねえ,ご名代ってわけさあ.
どうせ俺なんか場つなぎの役だし,
酒飲んで相手をヨイショしてれば良いんだから.気楽なもんだ.」
そして雅則は出て行こうとしたが,蝶子が呼び止めた.
雅則が靴下を履き忘れていたのだ.
蝶子は買物に出かけた.だがその後を一人の男をつけていた. そして蝶子が川のほとりを歩いていると,目の前に1台の車が止まり, ジェイソンのマスクをした男が二人降りて来た. 一人は先程蝶子をつけていた,グレーの服を着て黒いマスクを被った男, もう一人は黄色い服を着て黄色いマスクを被った男だ. 男達はあっという間に蝶子を殴り倒し, 車に連れ込んで連れ去ってしまった.
気がつくと,蝶子は一人で立たされていた.するとドアが開き,
一人の男が現れた.
男「久しぶりだなあ,パピヨン.」
その男の声を聞き,顔を見た蝶子は驚いた.
男「どうした? 私の顔を忘れたのかね?」
蝶子は驚きで震えながらこう言った.
蝶子「まさか!?」
蝶子はある事件を思い出していた.
男は両手を車のハンドルに縛り付けられていた.
男の乗せられた車は崖へ向かって走っていた.そして車は崖から落ちて爆発し,
炎上.
男「そう.私は一度死んだ男だよ.」
蝶子は息を呑んだ.
男「だがね,悪運が強いのか,それとも,閻魔大王に嫌われたのか,
奇跡的に地獄から這い上がることが出来たよ.」
男はスーツの上を脱いだ.ネクタイを外し,Yシャツも脱ぎ,
男「これがその証だよ.」
男は背中を見せた.背中いっぱいに火傷の痕があった.
それを見て驚く蝶子.男は背中に火がつきながらも,
車の中から脱出することに成功したのだ.
男「九死に一生とは,まさにこのことだ.それから私はねえ,
あるルートを頼ってヨーロッパに逃亡した.帰国したのがつい一月前.
帰国すると同時にある人物と知り合う機会があってねえ.
ま,とにかく相当な資金を持つ人間だ.
現役からは退いているが政治的にもまだ強い力を持っている.
しかしねえ,その人物はもうかなりの年だ.
金銭に対する執着心も政界の生臭い権力争いにも興味はない.
ただ一つ,彼が身上とするのは正義は金で買えるということ.
これを実行するためにはいくらでも金を出すと言う殊勝なお人だ.
そこで私はある事業計画を提案した.
闇の世界に蔓延る悪を闇の世界で裁く死刑執行人.
つまりハングマンを組織することだ.」
蝶子「ハングマン?」
男「紹介しましょう.」
手回しのいいことに,男はメンバーを何人か揃えていた.
男「伊吹賢司.」
先程蝶子をつけ回していた男だ.
男「星野良一.」
あまり風采のあがらない男が入ってきた.
男「若月清志.」
伊吹と一緒に蝶子をさらった若者だ.
男「この3人が構成メンバーだ.そして君が組織のリーダーになる.」
蝶子「あたしが?」
男「そう,君がだ.組織を運営していくには,どうしても君の力が要るんだ.」
あまりにも突飛な申し出を聞き,蝶子は無言だった.
男「やってくれるね?」
蝶子「お断りします.」
腕組みしたまま伊吹が星野の肩を押した.
蝶子「私は5年前に過去を捨てたんです.今はご覧のとおりのただの主婦.
あなたとは一切関わりのない女なんです.」
それを聞いた男は笑った.
男「誤解されちゃ,困るなあ.私も一度生まれ変わった男だ.
君に関する特別な感情は何もない.私が必要としてるのは君の才能だけだ.
私はマネージャーとしてね,資金面と仕事の取次ぎだけを担当する.
組織をどう動かすかは全て君の裁量に任せる.」
だが蝶子はこう言った.
蝶子「生憎ですが,お引き受けするつもりは毛頭ありません.
この話はなかったことに.失礼します.」
蝶子は立ち去った.追いかけようとする若月を男が制止した.
男「待て.」
若月は立ち止まって振り返った.
若月「顔を見られちまったんですよ.」
男「心配はいらん.」
男は笑ってこう言った.
男「彼女は必ず戻ってくる.」
午後11時.蝶子は家計簿をつけていた.そして窓ガラスに止まっていた蝶を見て,
蝶子は男と過ごした日々を思い出していた.
蝶子の声「パピヨン.5年前,あたくし英蝶子は赤坂の高級クラブ,
パピヨンのマダムでした.そして,彼,前尾大輔は進和党の大物代議士,
片桐陽之助(神田隆)の秘書.あたし達は下世話に言う愛人関係だったのです.
でいつしかこの店も政治の舞台裏として利用されるようになり,
あたし自身政界の裏側に深く関わりをもつようになっていったのです.
当時,彼は片桐陽之助の疑獄事件を巡って,
マスコミや世論の矢面に立たされていました.
ところが,ある日突然事態は思いがけないことに…」
片桐は五星商事からの多額の賄賂を秘書の前尾が勝手に着服して,
パピヨンの赤字の穴埋めに使っていたことが判明したと発表.
そして前尾は先程の老人の部下達に拉致された.
逃げ回る蝶子だったが崖に追い詰められてしまった.
崖から足を滑らせて落ちる蝶子.だが蔓につかまることができたため,
九死に一生を得た.そして蝶子は前尾の乗る車が崖から滑り落ち,
爆発するのを見たのだ.それ以来,
伊吹達を紹介される日まで蝶子は前尾とは会っていなかったのだ.
雅則が帰ってきて,布団に入って寝てしまった.
蝶子の声「奇跡的に助かったあたしは,
その後パピヨンには二度と姿を現さなかった.」
鼾をかいて寝る雅則.
蝶子の声「あの事件の後,もしこの人があたしの前に現れなかったら…」
老人の部下(浜田晃)は片桐に会っていた. 片桐は党内の最大派閥政友会幹部の木下孝夫(平野稔)の写真を見せていた. 木下は今度の選挙で片桐の選挙区から出馬することになった. 片桐の選挙区は保守乱立の激戦区なのに敢えて木下を立てるというのは, 片桐を倒す陰謀に違いない.そこで木下の出馬阻止を片桐は老人に依頼したのだ.
さて木下は愛人の女(根本律子)にレストランで会っていた.
木下は妻と離婚の話がついたことを女に伝えた.
女はこのままの関係でもよいと考えていたが,
政治家にはスキャンダルがタブーであるため,木下がけじめをつけたのだ.
そして木下は封筒を取り出した.
木下「それよりも,この中に片桐幹事長の過去の疑獄事件の真相が入ってる.
もし僕に万一のことがあったら,この書類を検察庁に提出してくれ.」
それを聞いた女は驚いた.
木下「君は何も心配することはないんだ.」
ホステスは封筒を受け取った.そして木下は女を連れてレストランを出た.
それを老人の部下が見ていた.
車を走らせる木下と女.そこへダンプカーがやって来て, 強引に前に割り込んだ.車を止め,逃げる木下と女,かよこ. だがダンプカーからも,後ろから来た車からも男達が降りて来た. 港のコンテナ置場で木下は自分が囮になって男達を引き付けた. 翌朝.木下は首吊り死体となって発見された.
新聞は「木下代議士 自殺!!」「愛人,失踪!?」
「愛情問題の もつれか―」と報じた.
蝶子が洗濯物を干していると前尾がやって来た.
前尾「いい洗濯日和ですなあ,奥さん.」
蝶子が振り返ると前尾の姿が見えた.前尾は笑って庭に入ろうとした.
前尾「この間の返事をね,聞きに来ましたよ.」
蝶子は門を出て答えた.
蝶子「前尾さん,何度言ったらわかってもらえるんですか.
私には夫もいるし,ささやかな家庭もある.あなたとは住む世界が違うんです.
お願いですから,そっとしておいてください.」
だが前尾はその答えを予想していたらしく,
懐から何かを取り出しながらこう言った.
前尾「これを見れば気が変わるだろうな.」
前尾が懐から出したのは蝶が表紙に描かれたメモ帳だった.
そして新聞も手に持っていた.メモ帳を見た蝶子は驚いた.
蝶子「これは!」
前尾「そう.これは君と私の共有の過去だ.
私達が過去に関わった全ての秘密が記録されてる.
いつか必ず役に立つ時が来るだろうと思ってねえ,肌身離さず持っていたんだ.」
前尾はメモ帳を懐にしまった.さらに新聞を開いて見せた.
前尾「早速役に立つ時が来た.」
前尾は「木下代議士 自殺!!」事件の記事を見せた.
前尾「これは明らかに謀殺だ.」
蝶子「謀殺?」
前尾「全く同じケースさ.5年前の私達の事件とね.」
蝶子「まさか!」
前尾「間違いない.黒幕は片桐だ.」
蝶子は驚いた.
前尾「いや,こうしてる間もね,
奴ら血眼になって木下代議士の愛人の行方を追っている.どうやらねえ,
彼女が片桐の弱みを握ってる節がある.何もかもおんなじだよ.
5年前のあの時と.君は断れん.君の性格は私がよく知ってる.」
蝶子は溜息をついた.前尾は一枚の紙を出した.
前尾「さ,これねえ,ハングマンのアジト.ほ,ほら.さあ,さあ,さあ,
さあ.」
ここは緑美園(ロケ地は調布市深大寺にあるGreen Hobbyというお店).
店内は植物でいっぱい.その中にあの3人がいた.
顕微鏡を覗く伊吹に星野が聞いた.
星野「よ.」
伊吹「ん?」
星野「1個だけ聞いていいか?」
伊吹「なんだい.」
星野「お前さあ,大学の農学部まで出て,なんでハングマンなんかになった?」
伊吹はタバコを吸いながら答えた.
伊吹「金だなあ.」
星野「金か.」
伊吹「俺みたいな男,雇ってくれる会社もないし,
大した給料もらえるわけじゃねえしよう.
金でも貯めてオーストラリアに牧場でも開こうかなあって思ってるの.」
星野は感心した.
星野「お前,図体もでかいけど夢もでっかいね.」
伊吹は笑った.
伊吹「あんたは?」
星野「俺? 俺はそこそこの人生でいいわけ.将来は新宿にスナックでも出して,
酒と女と惰眠の日々.ふふ.ボヘミアンだな,俺.」
伊吹「せこい夢だねえ.」
伊吹は冷笑した.
星野「ほっといて.」
そこへ
若月「来た!」
大声で若月が叫んで入ってきた.
若月「来た.来た.」
蝶子がやってきたのだ.
蝶子「ポトス,あるかしら?」
伊吹「あ,ああ.ポトスですね,ポトス.」
星野「おい.合言葉だろうが.ああ.ようこそいらっしゃいました.」
蝶子は顕微鏡に気がついた.
蝶子「あら,何か研究なさってるの?」
伊吹「ああ.バイオテクノロジーっていう奴ですよ.ね.奥へどうぞ.」
星野が隠しスイッチを押すと壁の一角が開いた.そこがアジトへの入口なのだ.
4人はアジトへ入って行った.
アジトには(当時の)最新のOA機器が揃っていた.
この頃のフロッピーディスクは5インチで黒い大きなものだ.
伊吹「ここが我々の集合場所です.」
蝶子「改めて自己紹介させていただきます.あたくし,英蝶子.
コードネームはパピヨンと申します.」
伊吹「ファルコンです.」
星野「エジソン.よろしく.」
若月「バニーです.」
パピヨン「バニー?」
バニー「自分としては気に入らないのですが…」
エジソンはバニーの顔をなでながら言った.
エジソン「でも顔にあってるでしょう.」
バニー「俺,そんなに女っぽくないですよー.」
ファルコンはバニーの頬を叩いた.
ファルコン「ぴったしなんですよ,これが.」
パピヨン「そう.あの,早速仕事の話ですが,
前尾さんから資料が届いてるはずですけど.」
ファルコン「はい.」
ファルコンはパソコンにフロッピーディスクをセットし,パソコンを起動させた.
バニーはパピヨンに椅子を勧めた.
ファルコン「これが問題の片桐幹事長です.そしてこれが殺された木下代議士.
次が木下の愛人,清瀬かよこ.六本木のクラブ,
サーティースリーのホステスです.」
エジソン「うん.結構いい女じゃない?」
パピヨン「サーティースリーはあたくしが当たりをつけてみます.多分,
片桐の一味も探りに来ると思うんで,
きっと何か手がかりがつかめるんじゃないかと.」
ファルコン「じゃあ,一緒にわたくしもついて行きましょうか?」
パピヨンは笑ってこう言った
パピヨン「いいえ,あたくし一人で充分.
あなた方はここで待機していてください.」
ファルコン「いや,しかし…」
突然バニーがファルコンの耳元で大声で叫んだ.
バニー「ひとーつ! リーダーの命令には絶対服従.」
ファルコンはバニーの頬を両手でビンタ.
ファルコン「なんだ,お前は!」
バニー「マネージャーから,そう言われてるんですよ.」
エジソンは手に平べったい箱を持ってこう言った.
エジソン「(バニーに)わかった,わかった,わかった.
(ファルコンに)駄目よ,ひっぱたいちゃ.力強いんだからー.」
そしてパピヨンに箱の中身を説明した.
エジソン「あ,これがね,俺が作った七つ道具です.」
中にはイヤリングやコンパクトなど,
7つのアクセサリー…に似せた道具が入っていた.
エジソン「いざって言うとき使ってください.」
パピヨン「どうもありがとう.」
ファルコン「あ,ちょっとこちらへ.」
ファルコンが扉を開けた.
ファルコン「こちらが衣裳部屋になっております.どうぞ御自由に.」
パピヨン「まあ,それはどうも.」
パピヨンは服を物色.とそのとき
エジソン「おい,肝腎なこと忘れてないか?」
ファルコン「何?」
エジソン「ギャラ.」
ファルコンが金庫を開けて札束を出した.
ファルコン「マネージャーから預かった俺達のギャラと経費です.」
パピヨン「今後はあたくしが直接預かることにします.
今回のギャラは一人80万.経費は20万.必ず領収証を持って来て下さい.」
呆気に取られたエジソンが聞いた.
エジソン「領収証いるんですか?」
パピヨン「うん.ああ,そうそう.お夕飯の支度をしなきゃ.」
バニーは壁のスイッチを押してパピヨンを外へ出してやった.
エジソン「お夕飯.」
ファルコン「お夕飯.」
蝶子は雅則のために夕飯を作り,メモを残した.
蝶子の声「高校時代の同級生から急にクラス会の呼びかけがあって,
出席することにしました.ちょっと遅くなると思います.
夕飯の支度は出来てますから,レンジで温めて召し上がってください.蝶子.」
アジトに戻ったパピヨンは衣裳部屋で着替えていた.
エジソン「おい.随分遅いじゃないか.なにやってんだ.」
エジソンは覗こうとしたが
バニー「駄目です.」
バニーが衣裳部屋の前に立ちはだかっていた.
エジソン「何が駄目なの?」
バニー「(大声で)ひとーつ! リーダーの着替え中は立ち入り禁止.」
エジソンは耳を押さえた.だがエジソンは
エジソン「おい,賭けしない.彼女の下着の色.
俺はピンクかなんかだと思うんだけど.」
となおも覗こうとした.エジソンの動きに合わせてバニーも動く.
それを何度も繰り返した後,ファルコンが中に入ってきた.
エジソンが「堅いのよ」とぼやくと,
ファルコンは「バニーちゃん若いもん.」と応えた.
すると衣裳部屋のドアが開き,和服姿のパピヨンが登場.
パピヨン「行ってきます.」
見送りながら
ファルコン「あー,夢か幻かって.」
エジソン「一度だけ,お願いしたい.」
何をだ? ファルコンとエジソンはお互いを見合った.
六本木のクラブ,サーティースリーにパピヨンは潜入した.
そしてホステスと老人の部下(沖田峻一郎)が,
かよこのことを話しているのを聞きつけた.
部下はホステスにかよこの居場所を聞き出した.
すかさずパピヨンは勘定を払っている部下に
パピヨン「ありがとうございました.」
と言いながら,部下のポケットに自分がつけていたイヤリングを入れた.
男は気がつかずに出て行った.パピヨンはトイレに入り,
ハンドバッグからコンパクト…型の無線機を取り出した.
ファルコン「はい,こちらファルコン.」
パピヨン「今,不審な男が出てったわ.発信機つけといたから,
大至急追跡して頂戴.」
ファルコン「了解.」
バニー「出動準備します.」
だが
ファルコン「待った,待った,待った.お前さんはここで留守番ね.
連絡待ってて頂戴.」
エジソン「彼女やるね,結構.」
ファルコン「あんたより役に立つわ.」
ファルコンの言葉の意味は後でわかるので注意しよう.
エジソン「一言多いね.(バニーに)お土産買ってくるから.飴玉.」
発信機を追いながら車を走らせるファルコンとエジソン. その頃,かよこのところに老人の部下達が現れた. かよこを拉致しようとするところへファルコンが登場. ファルコンは部下達を一人で殴り倒し,かよこ救出に成功した. ちなみにエジソンはずっと車の中.
老人は部下から報告を受けていた.発信機を叩き壊し, 片桐陽之助に狙いをつけているのではないかと老人は睨んだ.
次の日.港の展望台でファルコンはパピヨンに,
かよこを横浜の隠れ家に保護したことを報告した.
片桐は前の日から東富士の山荘に静養に行っていると言う.
パピヨンは片桐を捕まえに行くことにした.
早速ハングマンは全員片桐の山荘へと向かった.
目的地にはついたが,銃を持った屈強な男達が周りを囲んでいた.
パピヨン,エジソン,バニーの3人が様子を伺っていた.
パピヨン「ねえ,あいつらを誘き出す手はないかしら?」
エジソン「うーん.ファルコンがちょっと遅いんだよね.」
パピヨン「え?」
無謀にも
バニー「俺,やってみます.」
バニーは黄色い鉢巻を頭に巻いた.
エジソン「お.」
パピヨン「ちょっと,バニー.ああ.無茶よ.」
だがバニーは突入していった.
エジソン「おお.少年特攻隊.」
突然,草むらの中にバニーの姿が消えた.
パピヨン「あら?」
エジソン「消えちゃった.」
バニーは転んだだけだった.またバニーが転んだ.
エジソン「作戦かなあ.」
その頃,片桐は山荘の中で高笑い.
ひょうどう会長によろしくと片桐は老人の部下達に言っていた.
だが老人,すなわちひょうどうの部下は片桐に拳銃を向けた.
片桐を始末するつもりなのだ.と突然,
バニー「ふぉ,ふぉ,ふぉ…」
と言う鳴き声が聞こえてきた.バニーが外で飛び跳ねていたのだ.
鳴き声に気を取られている隙に片桐は拳銃を叩き落した.
外ではバニーを男達が追いかけていた.そこへジャイロコプターが飛んできた.
ジャイロコプターを操縦しているのはファルコンだ.
男達は銃を撃った.だがファルコンには当たらない.
ファルコンはパチンコを用意した.
エジソン「今だ.」
エジソンとパピヨンは車へ向かった.
ファルコンはパチンコで男達を倒していった.
バニーはめくら滅法に銃を振り回して暴れまわっていた.
バニーをファルコンが援護.パピヨンとエジソンは車で山荘の前までやって来た.
すると外から片桐が逃げ出してきた.
だが片桐はパピヨンの目の前でひょうどうの部下に撃ち殺された.
部下はパピヨン達にも拳銃を撃って来た.
ジープの陰に隠れるパピヨンとエジソン.絶体絶命のピンチだ.
そこへファルコンのジャイロコプターが飛んできた.
エジソン「ちょっと遅いんだよね.」
ファルコンはパチンコで部下達の拳銃を落としていった.
パピヨン「ほら,速く行きなさいって.」
エジソン「いや,いいよ,俺は.」
パピヨン「駄目よ,ほら.」
エジソン「こういうのは駄目なの.」
バニーもやって来た.
パピヨン「ほら,バニー一人じゃかわいそうだから速く行って,ね.」
エジソンは掛け声をかけるだけ…と思ったら部下を押さえた.
そしてバニーに殴らせた.何とか部下達を全員倒した後
エジソン「おい,お前,こういうの一人でやってくれよ.
(自分の頭を指差して)俺,ここ使ってるんだから.」
バニー「はい.」
ファルコンが降りて来た.片桐の死体のそばで呆然とするパピヨン.
エジソン,バニー,ファルコンもやって来た.
バニー「死んでる.」
エジソン「一体どうなってるんだ?」
ファルコン「飼い犬に噛まれたってわけか.」
パピヨンはしばらく無言だったが
パピヨン「片桐が死んだ.あの片桐が.」
しばらく経ったある日.隅田川の岸でマネージャーが釣り糸を垂れていた.
どこから見てもただの釣り人だ.?女に見せてあげたいぞ.
マネージャー「因果は巡るとはまさにこのことですな,奥さん.
片桐が殺されるとはねえ.」
パピヨン「意外でした.片桐の背後にもう一人黒幕がいたなんて.」
マネージャーも意外だったらしい.
マネージャー「黒幕!」
パピヨン「皇国清栄会会長.」
マネージャー「まさか,あのひょうどうが.」
パピヨン「清栄会下部組織には人殺しの正業グループがあって,
片桐は一味の窓口だったんです.」
マネージャー「するとひょうどうは君達が動き出したのを察知して,
先手をうったってわけ? へえ.」
パピヨン「これでターゲットは決まりました.」
マネージャー「ほんじゃ,まあ,よろしく頼みますよ.奥さん.」
パピヨンは去って行った.
蝶の舞うCGが流れた後,衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「Let's go!」
ファルコン「Hanging!」
エジソンとバニーはファルコンの手を叩いた.
エジソンは黒いコートを着用.バニーは銀色の服に身を包んでいた.
そしてハングマンは出動した.
「片桐陽之助氏を忍ぶ会」の会場でパピヨンはひょうどうに声をかけた.
近くに車を回しておいたと言うのだ.
ひょうどう「そうか.こんな別嬪さんのご案内とは.」
ひょうどうはパピヨンにひょこひょこ着いて行った.
だがなんと会場のホテルには雅則も来ていた.
パピヨンを見た雅則は驚いた.
雅則「まさか.」
駐車場でひょうどうは車に乗り,運転手に声をかけた.
ひょうどう「おい.」
ファルコン「はい.」
ひょうどう「なんだ,貴様!」
答えの代わりにパンチが見舞われた.
横浜の隠れ家にいたかよこに手紙が投げ込まれた.
ファルコンの声「本日午後3時.テレビをご覧下さい.
木下代議士を殺害した犯人一味に社会的制裁が下されます.」
崖に下にひょうどうとひょうどうの部下二人が立たされていた.
ガスバーナーに火がついており,周りを銀の管が取り囲み,
ダイナマイトも置かれていた.崖の上には緑美園のワゴンが止まっており,
屋根からアンテナを出した.アンテナの周りには葉っぱらしきものがついていた.
ワゴンの中にはパピヨンとエジソンがいて,テレビに悪党達が映っていた.
映像はバニーが撮影しているもの.ファルコンが無線で合図した.
ファルコン「スタンバイ.」
エジソンがスイッチを押すと青地に「STAND BY」と白字で書かれたランプが点灯.
そしてスピーカーからファルコンの声が響く.
ファルコン「おい,聞こえるか.
お前らの周りを囲ってる線はダイナマイトの導火線だ.
これから火元に点火をする.一刻も速く消さないと,
お前らもろとも吹っ飛ぶことになるぞ.」
ひょうどう「んー,馬鹿な.おーい,くだらん真似はやめろー.」
ファルコン「さて,ダイナマイトゲーム,スタート.」
導火線に火がついた.
ひょうどう「消せ.消すんだ.」
だが悪党達は御互いにばねでつながれていたため,動きが不自由だった.
導火線の火は悪党達の周りを燃えて行き,ダイナマイトは爆発.
部下A(浜田晃)「奴ら,本気ですよ.」
部下B(沖田峻一郎)も驚いた.
ファルコン「導火線を消して欲しかったら,
お前らの悪事を洗いざらい吐くんだなあ.」
部下B「は,吐く.何もかも喋るから消してくれえ.」
ひょうどう「黙れ,黙らんか.」
と叫ぶやいなや,また導火線に火がついた.慌てて消しに行く悪党達.
だがあちこちで火がつき,何発もダイナマイトが爆発.
部下A「喋るー.喋るから消してくれー.」
これを聞いたパピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押すと同時に「ON AIR」開始.
「東京・調布市 丸山哲郎さん宅」のテレビなどに,
悪党達の姿が映し出された.この仕掛けの原型はこれで,さらにその原型はこれだ.そうとも知らずに悪党が叫ぶ.
部下A「会長,会長が悪いんだ―.全部,会長が悪いんだぞー.」
かよこもテレビで悪党達の姿を見た.
部下A「頼む.もうやめてくれー.金で人殺しを請け負ったのは俺達だ.
木下代議士を殺したのも俺達だ.」
ひょうどう「黙らんか.」
部下A「助けてくれえ.このひょうどう会長の命令で俺達がやっただけだあ.」
ひょうどう「黙れー.」
かよこは思わず涙を流していた.
気がつくと,悪党達は真っ暗な部屋にいた.そして縄で縛られていた.
急に明るくなり,薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
ひょうどう「お,お前は!」
パピヨン「またお会いしましたわねえ,ひょうどうさん.」
ひょうどう「貴様,な,何者だ?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.」
ひょうどう「何!」
パピヨン「安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催涙ガスが噴射され,悪党達は再び眠りに入った.
悪党達は渋谷の陸橋の上に簀巻きにされて寝かされていた.
学生服を着たバニーが警官に扮したエジソンに言う.
バニー「お巡りさん.」
エジソン「なんだ,小僧?」
バニー「いいから,ちょっと,ちょっと,早く.」
エジソン「なん,なんだ.」
バニー「見てくださいよ.」
エジソンは簀巻きにされた悪党達を見て,パトカー呼ぶかと去って行った.
バニーも一緒に去った.悪党達の周りに野次馬が群がっていた.
その横をファルコンが歩いて行った.
さて夜遅くに蝶子が帰ってくるとテーブルの上にメモが置かれていた.
雅則の声「明日,部長の付き合いでゴルフに行くことになった.
朝が早いので先に休む.雅則」
メモにはハートマークに矢が突き刺さった絵が描かれていた.
蝶子が寝室を覗くと,雅則はパジャマに着替えていたが,
靴下を履いたまま眠っていた.蝶子は雅則の靴下を脱がせてやるのであった.
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