第十二回

オショウの命を狙う一味の正体を暴く.
タイガーキャップの本拠が襲われる!

脚本:田上雄 監督:後藤幸一

とある造成地でショベルカーが死体を掘り出した. それをNTHの小西和雄アナウンサーがテレビで報じた.
アナウンサーの声「今朝,東京奥多摩の宅地造成現場で, 若い女性の全裸死体が発見されました.遺体解剖の結果, この女性は年齢16歳から20歳,死後1週間ないし10日経っており, 死因は絞殺によるものと判明しました.」
このニュースをオショウは食堂で夕食を食べながら見た.
オショウ「かわいそうに.花も蕾だというのに.南無阿弥陀仏,南無阿弥陀仏.」

そして食堂を出たオショウは3号車に乗って去って行った. それをすぐ近くに止まっていた男達も目撃し,合図を送った. さてオショウがそのまま車を走らせていると前にいきなり車が割り込み, 急停車した.慌ててオショウも急停車.
オショウ「危ないじゃないか!」
オショウは止まって文句を行った.だが車から拳銃を持った男が降りてきて, オショウに狙いを定めながら近づいてきた. そして男はそのままオショウの車に乗り込んだ.無線マイクを抜かせた後,
男「この車,つけろ.」
すかさずオショウは緊急信号を発信. 異状を知ったジャッキーが一生懸命無線で呼びかけたが返事はない.
サファリ「コンピュータで位置を測定してくれ.」

その頃,オショウは前の車について走らされていた.
オショウ「お前さん達の狙いはなんなんだい? 今日の売上金かい?」
男「あんたの命さ.」
サファリとクレイは1号車に乗り,オショウの元へ向かっていた. 男の指示で,オショウは豊海埠頭で車を止めた.オショウは拳銃で頭を殴られ, 気絶させられてしまった.気がつくとオショウの乗る3号車は別の車に押され, 海へ落とされようとしていた.が,間一髪のところでサファリとクレイが到着. 男達を撃退し,オショウ救出に成功した.クレイは男達の落とした拳銃を拾った.

翌朝.タイガーキャブでオショウは襲われる心当たりがないと話していた. オショウを襲った連中はオショウとは初対面にも関わらず, オショウを事故に見せ掛けて殺そうとしていた.
サファリ「奴ら,プロの殺し屋だ. オショウに恨みを持つ連中に雇われたのかもしれんなあ.」
オショウ「俺に恨み?」
突然,オショウは何か思い当たったらしくサファリの肩を叩いた.
オショウ「女の線かもしれんな.」
オショウは病院で一睡もできなかったので自宅に帰って寝ることにした. オショウが出た後,
サファリ「その方がいいよ.何が女だ!」

オショウが頭を押さえながら歩いた途端,
男「今だ!」
前の晩にオショウを襲った男が, ビルの屋上からオショウを狙ってライフルをぶっ放した. 慌ててオショウは物陰に隠れ,タイガーキャブへ戻った. 明らかにオショウは何者かに命を狙われている. サファリ達はオショウを狙う連中を探ることにした.
クレイ「今回はただ働き…かな?」
サファリ「ゴッドには俺の方から話しておくよ.」
これを聞いたクレイは調子よくこう言った.
クレイ「よっしゃ,これで安心して仕事ができるね.大丈夫ね. オショウあっての僕だから.」
そして4人はアジトに入った.手がかりは2つ. まずオショウを狙ったリボルバーは一見3号7マグナムに見えるが, 本物とは銃の先の部分が違っていた.これをサファリから聞いたオショウは, 半年くらい前にこの手の密造拳銃が密輸されたことを思い出した. ほとんどが当局に没収されたが何丁かは高原組と言う暴力団に流れたらしい. だからオショウの命を狙ったのは高原組の人間かもしれない. そこでサファリはクレイに高原組の組長に近づき,それを確かめろと命じた. サファリとジャッキーはもう一つの手がかりを当たってみることにした. 彼らが使っていた車のナンバーは「わ」ナンバー. つまり,彼らが使っていた車はレンタカーなのだ. そこでレンタル会社の貸し出し簿を調べれば彼らの手がかりが得られるだろう. そしてオショウはアジトに閉じこもることになった.
オショウ「汝に安息をか.南無阿弥陀仏でございます.」
そう言いながらオショウは十字を切った.

一人の男(深江章喜)が外車を乗り回していた.
サファリの声「高原組の組長高原しげおは最近結婚した若い女房にベタ惚れで, 毎日自分が経営するクラブへ送っていくそうだ.」
そのクラブに高原の女房が降りた途端,引ったくり(杉欣也)にあった. すかさずクレイが現れ,引ったくりを殴り倒し,鞄を取り返した. これはクレイが高原に近づくために打った芝居だったが, 高原達はまんまと騙されてしまった.立ち去ろうとするクレイに
高原「ああ,ちょっと待ちたまえ.どうだ.一緒に昼飯でも食わないか?」

一方,サファリとジャッキーは例の車を発見した.しばらくして
ジャッキー「大変,大変.お宅の車が燃えてるわよ!」
これに騙されたレンタル会社の職員は消火器を持って出て行ってしまった. その隙にサファリが貸し出し簿を調査.その結果は
ジャッキー「香取えいこ(芦川よしみ).25歳.職業ブティック店員.」
サファリ「さて,いっちょやるか.」

早速サファリが刑事に扮し,そのブティックへ乗り込んだ. サファリは香取えいこに会い,目撃者がいたといい, レンタカーの件を聞いたが,香取は知らないと答えた. そこへブティックのオーナーの西山がやって来た. あの車は西山が香取と夜のドライブへ出かけるために借りたと言うのだ. しかも西山と香取は夜9時に山中湖のホテルで食事をしていたと言う. サファリが去った後
香取「なぜあんな嘘を?」
西山「ドライブに行ったのは事実だろ.」
香取「でも使ったのはあなたの車よ.レンタカーじゃない.」
西山は右手で香取の肩を持って言った.
西山「どっちだっておんなじことさ.僕は潔白だよ.」
香取「そんなこと言って,暴力団の人にレンタカー使わせたじゃない.」
西山は慌ててごまかした.
西山「あれは無理に頼まれて仕方なくやったんだ. まさか人殺しの道具に使うとは思わなかった.」
香取「だったら,どうして刑事さんにありのままを話さなかったの?」
西山「その理由は前にも言ったはずだ.僕は彼らに借りがある. 裏切ることできないんだ.」
香取「じゃあ,あたし達のことは?」
西山「心配はいらないよ. 僕だっていつまでも彼らの言いなりになんかなっていない.」
香取「信じていいのね?」
西山「ああ.」
以上の会話をサファリはしっかり盗聴していた.

クレイは愛人クラブVIVIの黒服に収まることになった. クレイは偉そうに入ってきた男, 特別会員の三上(田島義文)に会員証の提示を求め,一悶着起こした. 慌ててママが登場.
クレイ「失礼致しました.お店の品位を落とすようなお客様はお断りするように, 申し付けられておりますので.」
クレイの慇懃無礼な言葉に三上はますます機嫌を損ねてしまったが, ママがとりなし,スペシャルルームへ入って行った. クレイはスペシャルルームに入り込んだ.だが
高原「何をしてるんだ?」
クレイ「いや,あのう,お店の構造をよく知っておこうかなと思いまして.」
高原「ここは立ち入り禁止だ.あっち行け.」
クレイは退散.高原は唇の形をしたものの中にカードを入れて扉を開け, 中に入って行った.クレイはしっかりその様子を覗き見した.

さてオショウは暇を持て余していた.食事も店屋物ばかり.
ジャッキー「食べて.」
オショウ「はい,はい.後でね,ちょっと一杯引っ掛けに行くから, そのときに何か食べてくるわ.」
ジャッキー「どうぞ.殺されてもいいんなら.」
オショウ「はい,はい,わかりましたよ.あーあ.おいしそうだこと.」
オショウが口をつけた途端,警報が鳴った. タイガーキャブの事務所に誰か来たのだ.監視カメラを見てみたが, 誰もいないようだ.下へ降りてみたが誰もいない.しかし,
オショウ「時限爆弾だ!」
あと30秒しかない.速く配線を切らなければ. しかしどっちを切ればいいかわからない. やけくそでジャッキーが切った線が正解だったらしく,時限爆弾は停止.
オショウ「ああ.こっち切った? ホントはこっちだと思ってたの.」
ジャッキー「こっちでよかったみたい.」
オショウ「はー.うわ.2秒前.出来過ぎ.」

その頃,サファリはブティックに乗り込み,香取を問い詰めた.
サファリ「西山さんが暴力団に借りがあるというのはどういうことですかね?」
香取は白を切ったが,サファリは盗聴機の存在をほのめかし, さらに前の日に殺されかかったタクシー運転手の同僚と改めて名乗った. そして車のことを聞いた.西山に車を借りさせたのは高原組のものらしい. 西山はブティックを開くときの資金の一部を高原組から出してもらったのだ. サファリは西山が裏で高原組とつながっているのではないかと疑ったが, 香取は血相を変えて否定した.そこへ電話がかかってきた.電話は警察からで, 前の日に奥多摩で見つかった死体は香取の妹里子ではないかというのだ. サファリは香取と一緒に警察署へ向かった.霊安室で香取は妹の死体を確認. 号泣する香取をサファリは黙ってみていた.

翌朝. 暇を持て余して腕立て伏せをするオショウはテレビのニュースを聞いていた. ニュースを読んでいるのはNTHの小西和雄アナウンサー.
小西の声「昨日,奥多摩で発見された女性死体の身元が判明しました. 警察の発表によりますと,この女性は東京都中央区に住む短大生, 香取里子さん19歳で10日ほど前にアルバイトが見つかったと言うメモを, 姉のえいこさんに残してマンションを出たきり, 行方がわからなかったとのことです.」
里子の写真を見たオショウは思い出した.
オショウの声「あれは10日ほど前の真夜中だったなあ.」
オショウが客(福地泡介)を乗せて走っていると里子が手を左右に伸ばし, 車の前に飛び出して来た.オショウは急停車して文句を言うと
里子「お願い,乗せて.おじさん,乗せて.」
懇願する里子のところへ
西山「お客を待たせちゃダメじゃないか.さあ,行こう.」
里子「嫌よ.あたし,あんなことは,もう嫌.」
西山「いいから,来なさい.」
里子は西山に連れられ,VIVIに入って行った.
サファリ「その時の娘が香取里子だったって言うんだな.」
だからオショウが狙われたのだ.オショウはピンと来た. 里子はあの直後にVIVIの中で殺されたに違いない. サファリも同意見だった.オショウは状況証拠を握っている. 警察が死体の身元を割り出す前にオショウの命を奪おうとしたのだろう. クレイはスペシャルルームのことを思い出した.

さて里子の身元が割り出されたことを知り,高原は西山をなじっていた. そしてオショウの始末を急ぐように命じた.その頃, クレイはコンピュータ(SHARP製のポケコン)を用いて, スペシャルルームの鍵をあけることに成功した. 一方,ジャッキーがタイガーキャブの事務所を掃除していると, 男達が乗り込んできた.男達はジャッキーに拳銃を突きつけ, オショウの居場所を聞いたが,答えなかった. 男達はオショウが来るまで居座ることにした.

西山はいけしゃあしゃあと香取里子の葬儀に出席.西山が去った後, サファリが現れ,香取に西山の正体を伝えた. 香取里子にアルバイトを紹介したのは西山で, 西山は高原組の資金源を担当していた. 香取は信じようとしなかったが,西山は婦女暴行と結婚詐欺で前科5犯. おまけに高原とは刑務所で一緒になっていた.

夕方になり,タイガーキャブを占拠した男達は焦り始めていた. そこへ電話がかかってきた.男が取ったが
男「違うよ.蕎麦屋と間違えてやがんだ.」
男達はジャッキーを縛り付けていた. 男達が冷蔵庫へ行った隙に隠しマイクのスイッチを押した. アジトにいたオショウはタイガーキャブの異変を知った.
オショウ「こちら本部.1号車,応答願います…1号車.サファリ, 何やってんだ.これ見てくれ,おい…」
だが応答はなし.

その頃,サファリとクレイはラブホテルの中から. スペシャルルームの内部を盗撮していた. 特別会員達は仮面を被り,女子大生達に襲い掛かっていたのだ.
高原の妻「いつもながらよくやるわねえ.」
高原「男ならな,誰でも強姦願望はあるもんなんだ.」
特別会員達の変態プレーをサファリとクレイも見た.
クレイ「レイプを商売にするなんてよ,むかつくぜ.」
サファリ「充分,ハンギングに値するなあ.」
ホテル東京エンペラーを出たサファリとクレイは, ようやくオショウの無線に気がついた. そして3人組が事務所に乗り込んだことを聞いた. サファリは自分達が処理すると答えた.
クレイ「後任せろってどうやるんだよ.ジャッキー,人質になってるんだぜ.」
そのときサファリは顔で合図した.
サファリ「おい.」
人力車を車夫が引っ張ってるのが見えた.
サファリ「あれはカメレオンおばさんだぜ.」
よく考えたら「カメレオンおばさん」という呼び名が登場するのは, これがはじめてだ.それはともかく,
クレイ「このくそ忙しいときによー.」
クレイは憤慨したが,サファリは一計を案じた.
サファリ「そうだ.いい手がある.」
?女がサファリ達のところについた.
?女「ちょっと失礼ですが,旦那,タクシー故障ですか? 良かったら,うちの車乗りませんか?」
クレイ「ギャラくれればね.」
サファリ「我々の報酬ですよ.」
?女は笠を取って言った.
?女「どうしてわかったのかしら? 今日は自信があったのに―.」
?女は懐から包みを出した.
?女「いつものものです.」
サファリは包みを受け取った.
サファリ「どうも.」
?女「じゃ,よろしく.」
立ち去ろうとする?女にサファリが声をかけた.
サファリ「ねえ,ねえ,ねえ.その格好でもう少し走ってみないですか?」
?女「そんなに似合ってる?」
サファリ「え,もう,似合ってますよ.」
?女は大喜び.
?女「わあ,行っちゃおう.」

おだてられた?女はタイガーキャブに乗り込んだ.男達は物陰に隠れ, ジャッキーを拳銃で脅しながら,応対させた.
?女「こんばんは.あのう,こちらにオショウって言う運転手, いらっしゃいますか?」
ジャッキー「ええ.いますけど.」
?女「あ,やっぱり.実はこの先の公園までつれてきたんですけど, 酔いつぶれちゃって動かないんですよー.風邪ひくといけませんからね, 迎えに行ってやってください.」
ジャッキー「はい.」
?女「じゃあ,お願いしますよ.」
ジャッキー「どうも.」
男達は見事に騙され,ジャッキーに公園へ案内させた. そして男達はサファリのサンダーブロウとクレイのボクシングに倒された.
サファリ「緊急指令.殺し屋は片付けた.トラトラトラだ.」
オショウ「あーあ,あ.あ,ご苦労さん.」
タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

VIVIの特別会員の民友党代議士三上大造の事務所にオショウが現れ, 眠らされてしまった.高原はクレイに殴り倒され, 西山はサファリのサンダーブロウに倒された.

里子の遺骨に線香をあげている香取のところへ手紙が投げ込まれた.
サファリの声「あなたの妹さんを死に至らしめ, あなた自身を絶望の淵に追い詰めた,悪人どもをハンギングします.」
日時は10月7日金曜日午後4時から.場所は横浜市高島埠頭.

さて高島埠頭に止められた悪党達は車の中に閉じ込められていた. 車の中のスピーカーからサファリの声が響く.
サファリ「待たせたなあ,諸君.そろそろ始めようか.」
高原「何を始めるつもりだ.」
サファリ「ゲームだよ.レイプごっこより面白い殺人ゲームだ.」
西山「殺人ゲーム!?」
クレーンで車が吊り上げられた.車はどんどん高く上がっていった.
サファリ「そのクレーンは自動操縦で動いてる.地上30mの高度に達したとき, 諸君は車もろとも海中へ落下する仕組だ.」
車はどんどん上がり,窓ガラスも割れてしまった.
三下「やめろ.」
オショウ「やめてほしけりゃ, これまでの悪事を全部洗いざらい白状することだなあ.」
車の中の声,及びサファリ達の話す言葉は, 外のスピーカーから大音量で流されていた. 港の作業員が気がついた.
高原「いいか.何も言うな.どうせ脅かしに過ぎん.」
クレイ「現在,高度15m.」
野次馬が集まってきた.
三下「た,助けてくれえ.何でも話すから,クレーンを止めてくれえ.」
高原「馬鹿.話すんじゃない.」
三下「会長!」
高原「意気地なしめが.」
車はどんどん高く上がって行った.
ジャッキー「高度20m.」
三下「俺たちは何もかも組長の命令で,命令で動いただけなんだよー.」
オショウ「そう.その調子.その調子.さあ,どんどん喋って.」
西山「私達はクラブVIVIで特別会員を集めて若い女性をレイプさせていた. 特別会員と言うのは政治家や大会社の社長や重役達で会費は一人100万円. 犠牲になった女性には金をやったり暴力で脅かしたりして秘密を守らせたんだ.」
これを香取えいこも聞いた.
西山「香取里子を殺したのはここにいる三上代議士だ.」
三上「違う.私には殺す気などなかったんだ.ただ力が入りすぎて, 気がついた時にはもう死んでいたんだよー.」
それを聞いた香取えいこは去って行った.
サファリ「高度28m.」
ついに高原も観念した.
高原「やめてくれえ.俺が悪かった.どんな償いでもするから, クレーンを止めてくれえ.死ぬのは嫌だあ.」
群がる野次馬達.車は上昇を止め,車は陸側に向かって動き始めた. その頃,香取えいこは海を見て涙を流していた.そして車は降ろされて行った.
高原「よかったあ.助かったよ.」
喜ぶ悪党達.だが喜ぶのは少し早かったようだ.
サファリ「ギルティー.」
車はスピードを上げてダンボール箱の上に落下した.気絶する悪党達. パトカーと救急車のサイレンを聞きながら,香取えいこ, そしてハングマンは高島埠頭をあとにした.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp