第四回

拳銃を暴力団に横流しして儲ける悪徳署長の悪事を暴く.
署長が押収拳銃を売りとばす!

脚本:中村勝行 監督:前田陽一

拳銃発砲事件が相次いだ. 城西署署長(草薙幸二郎)は取締りが手緩いと訓示を述べていた.
署長「取締りが手緩い.暴力団対策も大事であるが, それ以前に銃器類の不法所持を取り締まっておれば, このような事件は起きんのだ. 諸君の日頃の捜査活動に手抜かりがあったことは否めん. 今からでも決して遅くはない.拳銃の密売ルートを突き止め, 巷に出回ってる銃刀類を片っ端から押収するんだ. 例え弾丸一発でも暴力団の手に渡らぬように, 心して捜査に当たってもらいたい.」
というわけで取締りが強化された.一人のチンピラが逃げ,偶然通りかかったサファリのタクシーを止めて強引に乗り込み, 逃げた.パトカーに追いかけられるサファリの車. サファリは隙を見て発信機のスイッチを入れた. タイガーキャブで1号車の動きを見たジャッキーは
ジャッキー「何よ,この運転.」
ジャッキーはサファリに無線を入れた.
ジャッキー「1号車,1号車,無謀運転は止めてください,どうぞ.」
サファリ「こちら1号車.鬼ごっこの好きなお客さんを乗せてしまったんで, やめたくてもやめられないんだ.どうぞ.」
ジャッキー「サファリ,真面目に答えてよ.」
チンピラは無線機をサファリから取り上げた.
チンピラ「うるせえ.女は黙ってろ.」
それを聞いたジャッキーは驚いた. 結局サファリの車が行き止まりに突き当たってしまったので, チンピラは車を降りて逃げたが,警官に捕まってしまった.
ジャッキー「1号車,1号車,聞こえますか?」
サファリ「はい.こちら1号車.」
ジャッキー「鬼ごっこは終わったようね.」
サファリ「ああ.お陰で水揚げがふいになっちゃったよ.」
ジャッキー「ご心配なく.次の仕事が入ってるわよ.」
サファリ「次の仕事?」
ジャッキー「ゴッドがお呼びです.」
サファリ「ゴッドが?」

調査開始

ゴッドの屋敷でサファリは素麺を振舞われた.
ゴッド「味どうかね?」
サファリ「ええ.結構なお味で.」
ゴッド「うん.播州名産手延素麺だ.」
サファリ「ほう.」
サファリは素麺をすすった.
ゴッド「仕事の話に移ろうか.」
ゴッドはテーブルの上に乗っていた封筒から紙を出してサファリに渡した. それは拳銃の銃撃事件をコピーしたものだった.
ゴッド「虫けら同士が殺し合いをしようと何をしようとわしは一向に構わん. しかしな,何の関係もない一般市民が巻き添えを食うのは, 断じてわしは許せんのだ.無論,一連の抗争事件に関しては, 警察も積極的に動いてはいる. だが,いくらチンピラどもをあげたところで根本的な解決にはなりゃせん. 問題はむしろ別のところにあるとわしゃ睨んどるんだ.」
サファリ「というと?」
ゴッド「拳銃の出所だよ.そいつを探って拳銃の入手ルートを断ち切れば, こういう事件は再発せんよ.」
サファリ「わかりました.早速,調べてみましょう.」
サファリは立ち去ろうとしたが
ゴッド「どうだね,気に入ったかね.」
突然,ゴッドが別の話を始めたのでサファリは怪訝な顔.
サファリ「え?」
ゴッド「いや,手延素麺だよ.」
サファリ「はあ.そりゃ,もう.」
ゴッド「うん,ああ,そうか.それじゃあ,他の連中にも持っていきたまえ.」
ゴッドはサファリに手延素麺を風呂敷に包んで渡した.
サファリ「それじゃあ,遠慮なく頂きます.」

アジトで風呂敷を開けてみると中に入っていたのは「揖保乃糸」だった.
ジャッキー「手延そうめん揖保乃糸.」
オショウ「ふーん.」
クレイ「揖保乃糸? 何これ?」
オショウは適当なことを言った.
オショウ「いや,まあ,その,イボをね,糸でこう巻いて, こう取るのは取り易いと,こういうことじゃないの.」
クレイ「じゃあ,この素麺とイボというのはどういう関係が.」
そこまでオショウは考えていなかった.
オショウ「いや,まあ,その…長引きそうだから仕事の話行くか.」
サファリ「ふん.」
オショウ「それからにしよう.」
というわけでサファリは仕事の説明をした. 最近になって暴力団銀竜会に拳銃が流れ,発砲事件が相次いでいた. 厳しい取り締まりの目をくぐって彼らはどうやって拳銃を手に入れたのか? クレイは改造拳銃や密造拳銃だったら簡単に手に入るだろうと言ったが, 彼らが手に入れている拳銃は外国製の密輸拳銃だった.
オショウ「特殊ルートだな.」

夜のクラブ.一人の男(浜田晃)がやってきた. プライベートルームでオーナーと男は会い, 男は600万円でオーナーから拳銃を買った.翌朝, 松本興業事務所の前で藤原というチンピラが捕まった. その事件を新聞記事でハングマンも知った.サファリは新聞記事を見て, 藤原が持っていた拳銃がサファリを脅したチンピラが持っていたものと, 全く同じ物であることに気がついた.なんと,種類だけではなく, 全く同じ個所に全く同じ傷がついていたのだ. 警察に押収された拳銃が銀竜会に流れるはずがないとクレイは反論したが, サファリはなおも疑問に思っていた.
サファリ「よーし,銀竜会の組長を洗い出してみよう.」
サファリ,クレイ,オショウは出動した.サファリは銀竜会の事務所を見張り, 組長が出てきたのを見て組長の車を追いかけた. だが,乗せろと女がやってきて強引に乗り込んでしまったため, 見失ってしまった.
ジャッキー「2号車,2号車.」
クレイ「はい,こちら2号車,どうぞ.」
ジャッキー「サファリがお客乗せちゃったのよ.バトンタッチしてくれる?」
クレイ「現在位置は?」
ジャッキー「山手通りを恵比寿に向かってるわ.」
クレイ「了解.」
というわけでクレイが追跡を続行. 組長(浜田晃)の車は「ビリヤード住吉」というプールバーに入っていった. 組員が組長に昇竜会との交渉が決裂したことを伝えた. 組員は拳銃があれば昇竜会の出鼻をくじくことができると言った. 組長は拳銃の手配を承諾した.早速クレイは連中の写真を撮影した.

その頃,オショウは屋台のラーメン屋で聞き込みをしていた.そして, 銀竜会の組長を六本木のロワールというクラブの前で拾った, タクシーの運転手がいたことを聞き込んだ.アジトではクレイとサファリが, 写真に銀竜会系の暴力団武村組の組長武村芳春が写っていることに気がついた. 最近,縄張り争いで武村組は関西系の暴力団昇竜会と争っていたのだ. それで武村は銀竜会組長の岩佐と会ったのだろう.
ジャッキー「きっと連中は動き出すわよ.ねえ,あたしにも何かやらしてよ.」
クレイ「じゃあ,一つだけお願いしちゃおう.」
ジャッキー「なあに?」
クレイ「お茶.」
ジャッキー「ちょっと馬鹿にしないでよ.」
そこへオショウが帰ってきた.オショウは, 岩佐が六本木の会員制のクラブロワールの会員になっていることを報告した.

というわけでクレイがロワールを見張っていた. なんと城西署の署長がオーナーと会っていた.オーナーは署長に金を渡し, 5丁ほど拳銃を都合してほしいと頼み込んだ. さらにオーナーは署長にバニーガールを紹介した. 署長は彼女を連れてホテルに入っていった.それを見たクレイは
クレイ「ああ,うらやましいなあ.ちきしょう.」
そこへ男と女が青山まで乗せてくれとクレイに話し掛けてきた.
クレイ「ああ,ダメだ.これ,お客さん待っちゃってるの.」
男「待ってる? それにしちゃ,待ちメーターついてねえじゃねえかよ.」
クレイ「あ,忘れちゃった.」
女「とぼけちゃってえ.きっと足元見てボルつもりよ,この運ちゃん.」
クレイ「あのねえ,あんまり俺を怒らせない方がいいんじゃないのかなあ, ホテトルのお姐さん.」
女「何よー.」
男「おいおい,行こう,行こう.」
男と女は去って行った.
クレイ「図星ね.」
さて署長はバニーガールと情事を繰り広げた.クレイは自宅まで署長を尾行し, 署長の正体を確かめた.

次の日.署長は吉野という部下に押収した拳銃を持ってくるように命じた. 吉野の娘は私立大学に通っており,学費が莫大な金額になっていた. それを盾に取られたのだ. 吉野はこれまで30丁も持ち出したことを理由に躊躇したが, 署長は人事権を握ってることに盾に取り, さらに1500丁押収したうちの30丁や40丁くらい流れたってどうってことはない, と言い放った.吉野は押収物保管室の係長だったのだ.だが吉野は要求を飲まず, 帰ってしまった.自宅で黙りこくった吉野を見た娘のみち子は心配して, どうしたのかと聞いた.吉野は警察を辞めるつもりだと答えた. みち子は理由を聞いたが,吉野は, このまま今の仕事をしていたら恐ろしいことが起きるとしか答えなかった. 吉野は自宅のマンションを出て, 会社を経営している学生時代の友人のところへ行こうとしたが, 車に跳ねられて死んでしまった.

この事件をハングマンは新聞記事で知った. 早速サファリは城西署交通課の本間と称して吉野の家を訪ねた. そしてみち子から吉野が仕事を辞めたいと言ったこと, 再就職先を探すために学生時代の友人のところへ出かけようとしたこと, そして,このまま今の部署に入ると今にきっと大変なことが起きる, と話していたことを聞き出した.そのことから, サファリは城西署から銀竜会に拳銃が流されたと睨んでいた. 吉野の部署である押収物保管室といえば, 警察の証拠物品や押収品を保管する場所だからだ. 当然そこには押収された銃器類が大量に保管されているはずだ. そこで裏をとるために署長と例のクラブとの関係を洗ってみる必要がある.
サファリ「ジャッキー,お前さんの出番が回って来たようだぜ.」
ジャッキー「本当?」
サファリ「六本木のロワールに潜入だ.作戦はクレイと相談してくれ.」
ジャッキーは大喜び.
ジャッキー「了解!」
クレイはジャッキーにバニーちゃんになるんだよと言い, さらにクレイはジャッキーにイヤリングを渡した. クレイって趣味がいいのねと喜ぶジャッキーにクレイは
クレイ「いやあ,僕はむしろ,悪趣味な方だと思うけどねえ.」
そのイヤリングは小型盗聴機だったのだ.早速バニーはロワールに潜入した.

署長は野崎という署員に目をつけた.女性関係でいざこざを起したことと, 野崎が最近マンションを購入してローンの支払いが苦しいことを盾に取り, 吉野の後釜に据えようとしたのだ.一方, オショウはラーメン屋の出前持ちに扮して城西署に乗り込み, 後釜が決まったことを聞き込んだ.その晩,岩佐がロワールに現れた. ジャッキーは水割りを渡し,ついでに岩佐の席に盗聴機を仕掛けた. 岩佐はオーナーと吉野の始末がついた件と吉野の後任が決まった件, そして拳銃を手に入れる目処が立ったことを話していた. クレイが盗聴し,録音したテープをサファリとオショウも聞いた. サファリはまず城西署の鳥羽山署長から処理することを指示した.

鳥羽山は野崎から拳銃を受け取り,野崎に金を渡した.その頃, サファリの車の前に行商のおばあさんが飛び出してきた.
サファリ「おばあちゃん,危ないじゃないですかあ.」
?女「ええ.」
実はこれは?女の扮装だった.
サファリ「これ回送車なんですがねえ.」
?女「そんなこと言わねえで乗っけてくれや.おらあ,急ぐだでよう.」
サファリ「どこ行くんですか?」
?女「上野だでえ.なあ,このとおり.このとおり,おねげえしますだあ.」
?女が土下座して頼み始めたのでサファリは慌てた.
サファリ「いやあ,おばっちゃん,おばあちゃん,そんな,わかりました. 上野ですか?」
?女「ええ.」
サファリは?女の背中から荷物を降ろし,車に乗せてやった.
?女「いやあ,助かっただあ.あんちゃん,無理言って済まねえなあ.」
サファリ「いや,どういたしまして.」
?女「まあ,ほんの気持ちとしてえ,ほれ,芋でも持っててけろな.」
?女は懐から包みを取り出してサファリに渡そうとした.
サファリ「芋? いやあ,結構です.」
?女「そんなこと言わねえで受け取ってけろや.」
サファリ「いや,おばあちゃん,そんな気を使わなくても.」
?女「なんの,なんの.この芋はただの芋じゃねえだで.」
サファリ「え? ま,まさか?」
やっとサファリは正体に気がついた.
サファリ「や,やっぱり.」
?女は口調を変えてこう言った.
?女「ギャラと経費をお届けにあがりました.よろしく.」
?女はそう言って去って行った.

鳥羽山をオショウの車が拾った.鳥羽山は六本木へ行くことを指示. オショウはしばらく六本木に向かって車を走らせていたが,突然, 横道にそれて止まった.そして一服すると称し, 眠り薬を噴射して鳥羽山を眠らせてしまった.
オショウ「はい,事務所.おい,事務所.こちら3号車,どうぞ.」
ジャッキー「はい,こちらジャッキー.3号車,どうぞ.」
オショウ「ああ.緊急指令トラトラトラだ.」
サファリもクレイも指令を受けた. タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

ロワールのオーナーはオショウに脅された鳥羽山に5号埠頭に呼び出された. 鳥羽山は岩佐も連れてくるように指示した. そしてロワールのオーナーと岩佐は5号埠頭にやって来た. そこへサファリとクレイが登場.
チンピラ「なんだ,お前ら?」
サファリ「清掃局員さ.お前らのようなドブネズミを片付けるために来たんだ.」
岩佐達はサファリとクレイの敵ではなかった.銃を向ける岩佐に, サファリはサンダーブロウをお見舞いした.弾の中身はベビーパウダーだった.

さて吉野の娘みち子のところにハンギング・パーティーの案内状が届いた.
サファリの声「あなたのお父さんを殺害した犯人に審判が下されます. 是非ご出席下さい.」
日時は10月12日金曜日午後2時から.場所は今は亡き二子玉川園.

ここは二子玉川園.悪党達縄で縛られたまま, メリーゴーランドに乗せられていた.野次馬が集まる中, サファリが今回のゲームを説明した.
サファリ「さて,ゲームを開始しよう.ロボットに固定されたライフルは, 正確にメリーゴーランドの一点に照準が合わされていて, 諸君がその位置に回ってくる度に銃弾が飛び出す仕組になっている.」
ブリキのおもちゃのロボットがライフルを握り,メリーゴーランドを狙っていた.
サファリの声「時間はおよそ3分. それまでに諸君の犯罪行為を全て打ち明けてもらおう.まずはリハーサル.」
ライフルがぶっ放され,オーナーが掛けていたメガネが吹き飛んだ. 驚くオーナー.
オーナー「組長!」
岩佐「こいつははったりだ.こんな脅しに乗るんじゃねえ.」
オーナー「いやあ,奴ら本気ですよう.」
二発目が撃たれて岩佐のそばの馬に命中した.三発目は鳥羽山のすぐそばに命中. 岩佐は平然としていたが,鳥羽山とオーナーは恐怖に顔が引きつっていた.
サファリの声「では,本番と行こう.」
鳥羽山「止めろー.」
岩佐「署長,落ち着くんだ.」
だが
オーナー「組長,こうなりゃ,吐いちゃいましょう.」
鳥羽山「止めろ.何もかも喋るから,止めろ.押収拳銃を銀竜会に渡したのは, この俺だ.」
岩佐「俺は知らねえぞ.ハジキなんて受け取った覚えはねえ.」
鳥羽山「頼む.止めてくれえ.」
サファリ「管理課長の吉野氏を殺したのは誰なんだ?」
鳥羽山「松田だ.松田が部下に命じてやらしたんだ.」
それを聞いたオーナーの松田はこう反論した.
松田「冗談じゃねえ.俺は署長に頼まれてやっただけだあ. 署長の命令で動いただけだあ.」
鳥羽山「俺は知らん.松田が勝手にやったんだ.」
松田「畜生.人のせいにしやがって.この野郎.」
鳥羽山「そんなことより,早く止めてくれえ.止めてくれえ.」
この叫びをみち子も聞いた.
鳥羽山「何もかも喋ったんだ.止めてくれえ.止めてくれえ.」
岩佐「止めてくれ.やめろー.止めてくれえ.」
松田「止めてくれえ.やめろー.」
それを大勢の野次馬も聞いた.
サファリ「さあて,みんな,どうする?」
コーヒーカップに乗っていたオショウとジャッキーは
オショウ「全部ゲロすりゃそれでいいってわけじゃあないからなあ.」
ジャッキー「そうよ.」
ゴーカートに乗っていたクレイは
クレイ「ギルティー,ギルティー.」
それを聞いたサファリは
サファリ「やってみましょう.」
サファリはスイッチを操作した.メリーゴーランドは急停車し, その反動で悪党達は外へ倒れこんでしまった. そしてそのままメリーゴーランドが動き始めたので, 悪党達は地面を引きずられてしまった.野次馬ははやしたて, みち子は無言で悪党達を睨んだ.二子玉川園を去るハングマン. 途中,二子玉川園へ向かうパトカーと救急車とハングマンはすれ違った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp