第一回

賭博で中小企業社長をはめて乗っ取る一味の悪事を暴く.
船上トバクでまる裸にされる!

脚本:中村勝行 監督:西村潔

結城五郎帰還

久しぶりに結城五郎は日本に帰国した.木所から託された洋介は, どうなったのだろうか? そんなことを思う間もなく, 結城が車を走らせていると後ろからジープが追いかけてきた. 前からもジープがやってきて結城は挟み撃ちになった. 何とか結城はジープ二台をかわそうとしたが, 今度はヘリコプターも飛んできて機銃掃射を加えたので, 結城は車を止めざるを得なかった. 車から降りた結城をジープから降りてきて迷彩服を着た男達が襲った. 元傭兵の結城はナイフを手にした彼らを相手に善戦した. が,ヘリコプターから降りてきた, マシンガンを手にした男達に狙われたので彼らの手に囚われてしまった. 男達は結城の両手を縄で縛り,結城をヘリコプターに乗せ, どこかの埋立地へと連れて行った.そして結城を車のドアの柱に縛り付け, 中に閉じ込めた.その様子を一人の紳士が別の車の中から見ていた.
結城「いったい,何者なんだ,貴様達は?」
しかし男の一人はそれに答えず,こう言った.
男「1分後に爆発する.」
男は時限爆弾のスイッチを押した.男達は去って行った. 結城は腰のベルトに閉まっておいたナイフを取り出し,縄を切った. ただし時間が無いので両手は縛られたまま. そして車から脱出することに成功した.

栗原美津代そして神山玄蔵登場

結城は伊豆の海岸を車で走った. そして「神山」という表札のかかっている屋敷の入口に車を止めた. 入口に監視カメラがあったので結城は生垣から中に侵入した. 屋敷の中に入った結城.書斎に入ると背の高い椅子の向こうから, 煙が立ち昇るのが見えた.結城がナイフを手に椅子を返すと, それは灰皿に置かれた葉巻から立ち上る煙だった.と,突然,部屋のドアが開き, 拳銃を手にした中年の女が入ってきた.
女「お待ちいたしておりました.」
結城「いったいどういうことなんだ,これは.」

女は拳銃を結城の背中に突きつけながら,結城を庭園へと案内した. 庭園の池では立派な和服を着た紳士, つまりこの屋敷の主人の神山が鯉に餌をやっていた.神山は振り返った.
結城「あんた…」
神山「君なら必ずここを突き止めると思ったよ.ふ,ふ. 車のナンバーを見逃す筈はないからなあ.」
結城「あんたは誰なんだ.」
結城は男のところへ近寄った.女は拳銃を突きつけながら結城の後を追った.
結城「何のためにこんなことを?」
神山「君を試してみたんだよ.」
結城「試した?」
神山「ま,飯でも食いながらゆっくりと話そう.おう,そう,ちょうどいい. 今朝ねえ,四国の名産が届いたばっかりだ.うまいよ,これは.ふふ. それじゃ.」
神山は女にステッキで指示をした.

神山は結城を食堂へ通した.結城は腕組みをしたままだ.
神山「ニューカレドニアの休暇は楽しかったかね?」
神山はナプキンをしながら質問したが,結城はそれに答えなかった. そこへ女が食事をワゴンに乗せて運んできた.御馳走らしく,蓋がしてある.
神山「おお.焼きあがったか.」
女「はい.」
女が蓋を開けると出てきたのは焼いた鰯が皿に盛られていた.
神山「土佐のフルメ鰯だ.」
神山は舌鼓を打ちながら何匹か取った.
神山「さ,遠慮なくやりたまえ.」
神山の指示により,女は男のところから結城のところへ皿を運んだ.
女「はい.どうぞ.」
結城は1匹だけ取った.
神山「さて,本題に移ろうか.私の正体は明かすわけには行かんが, まあ日本の民主主義の発展のために少なからず貢献してきた男とでも, 言わしてもらおうか.」
結城は胡散臭そうに神山を睨んだ.
神山「ところでだ.これは私の杞憂に過ぎんかもしれんが, 今や日本の民主主義は危殆に瀕している.」
結城は無言で聞いていた.
神山「繁栄の陰の退廃,富裕の陰の貧困,合法の陰の非合法.つまりだ. そうした,陰の部分が民主国家の根底を揺るがしつつある.まあ, 平たく言やあだなあ,法律の網の目をくぐって民主国家の土台を食い荒らす, 性質の悪いねずみが増えすぎたってこったなあ.」
結城はまだ無言だ.神山は笑った.
神山「ところで君に頼みがあるって言うのは,鼠退治をしてほしいんだな.」
結城「なぜ,それを私に?」
神山「君のことは全て調査済みだよ.栗原君.」
女「はい.」
女の名前は栗原.栗原はファイルを神山に渡した.神山はファイルを見た後, 結城にファイルを渡した.
神山「傭兵として中東や北アフリカで活躍していたことや,その後, 世に言われるハングマンの一員として暗躍していたこと.ふふ. 全て調べはついとるんだ.ただねえ,あたしゃ,ひどく猜疑心の強い男でねえ, 君がどれほどの人物か確かめてみんことにはどうにも信用できなかった. そこでああいう手荒なことをして君を試してみたんだが,いやあ, たいしたもんだなあ,君はさすがに鍛えられとる. 何よりも君の強靭な集中力と精神力が気に入った.うん.結城君.そこでだ. 君は一つリーダーになってだねえ,もう一度ハングマンを結成してみんかね? ん? メンバーの人選は君に一任する.うん.報酬も十分に払う. それ以外の条件があれば何でも聞き入れよう.」
結城「つまり,今回はあなたがゴッドの役割を担うことになった, そう理解すればいいんですね.」
神山「そのとおり.早い話,ゴッドが代替わりしただけのこったよ.」
神山は大笑した.
結城「わかりました.お引き受けしましょう.」
神山「うん.栗原君.」
栗原「はい.」
栗原は封筒を持ってきた.
神山「それじゃあ,早速,この事件を洗ってもらおうか.」
神山は封筒から新聞記事や写真を取り出し,封筒ごと,結城に渡した.
神山「このところ中小企業の倒産が相次ぎ, それが原因で自殺と心中が後を絶たんのだよ.どうやら, 一連の事件の裏には暴力団矢代興業が動いているようだ.いっぺん, その辺を洗ってもらおうか.」

竜村新兵登場

結城はあるバーで水割りを頼んだ. そこでやくざ(亀石征一郎)がホステスに因縁をつけるのを目撃した. 見かねて立ち上がった結城を
バーテン「お客さん.」
バーテンが止めた.バーテンはやくざに声をかけた.
バーテン「お客さん,もうその辺で勘弁してあげなよ.他のお客さん, 迷惑するぜ.」
だがやくざは聞き入れなかった.
バーテン「ここは堅気の店なんだからさ,やるんなら表でやろうよ.」
やくざ「ほう,威勢のいいガキじゃねえか.行儀をおせえてやんな.」
やくざは部下のチンピラにバーテンとの対戦を命じた. チンピラ達はバーテンと一緒に外へ出た.結城も外へ出て盗み見ることにした. 行儀を教えようとしたチンピラは逆にバーテンに行儀を教わってしまった. バーテンはボクシングの名手らしく,チンピラを全員殴り倒してしまった. その様子を結城も物陰から見ていた.

翌朝.結城はトレーニングに励むバーテンに声をかけた.
結城「現役でもまだ十分にやれそうだな.夕べはナイスファイティングだった.」
バーテン「見てたのか.」
結城「ああ.何年ぶりかで必殺のドラゴンパンチを見せてもらったよ.」
バーテン「あんた,俺のこと知ってんのか.」
結城「元インターカレッジ,ウェルター級チャンピオン竜村新兵. 初防衛戦で挑戦者を殺してしまい,それ以来, ぷっつりとリングから姿を消してしまった.あれから,もう4年になるかなあ.」
竜村「よく覚えてんなあ.俺でさえ忘れちまったことをよう.」
結城「調べたのさ.」
それを聞いた竜村は振り返った.
結城「君は警察学校の幹部候補生だった. 順調に行っていれば今ごろ警部補くらいにはなっていたかもしれん.」
それを聞いた竜村は驚いた.
結城「もったいないなあ,君のような男を盛り場の用心棒にしておくのは.」
竜村「あんた,いったい,何もんなんだよ.」
結城「ハングマンさ.」
竜村「ハングマン? 冗談よしてくれよ.あんなもんはマスコミのでっち上げだよ. ネッシーとかUFOとかと一緒だよ,あんなもんはよ.」
だが結城は大真面目でこう言った.
結城「俺の冗談に付き合ってみないか. 少なくともネオン街でよたっているよりは面白いし,金にもなる.」
竜村「それほど俺は根アカじゃないんでね.」
竜村は去る振りをし,振り返って結城にパンチをお見舞いしたが, パンチは全て空を切った.そして竜村の右手は結城の手につかまれてしまった.
竜村「今まで,このパンチかわした奴は誰もいなかったぜ.」
竜村は脱帽した.そして結城はにやりと笑った.上記のシーン,どこかで見たような気がするぞ.

辻雄太郎登場

浅草寺の門前で,あの辻雄太郎が托鉢を行なっていた.そして屋台で「煮込み, 冷奴,飯大盛り」を頼むと結城が声をかけてきた.
結城「オショウ.身過ぎ世過ぎも楽じゃないなあ.」
辻は怪訝な顔だったが,結城を見て, 植木等さんが「シャボン玉ホリデー」で見せていたような独特な笑い方をした.
辻「なんだあ,お前さんかあ.」
結城「オショウ.」
辻「まだ生きてたのか,この野郎.相変わらず女泣かしてるんだろう, この野郎.」
結城「奇遇だねえ,こんなところで会うなんて.」
だが辻は見抜いていた.
辻「奇遇? そらぞらしい,このう.ずっとつけてたんだろう.」
結城「ばれたか.」
辻「ところで,仕事の方,なんかうまい話ないのかよ.」
結城「ある,ある.」
辻「ある!」
結城「うん.」
辻は上機嫌.
辻「よーし,前祝だ.お姐さん,一本つけて.」

ハングマン組織とりあえず結成

結城は竜村と辻のファイルを持ってゴッドの屋敷を訪れた. ファイルを見たゴッドは
ゴッド「ふふ.なるほど.二人ともしたたかな面構えだねえ.うーん, 気に入ったよ.ふふ.よし.コードネームをつけてやろう.君はサファリ, もう一人はオショウだな.それから元ボクサーはモハメッド・アリ,つまり, カシアス・クレイのクレイ.ふ.座りたまえ.」
サファリ「サファリね.」
サファリはそう言いながら椅子に座った.
サファリ「じゃあ,我々の報酬と経費を.」
ゴッド「そのことなら心配はいらん.必ず君たちの手元に届くよう, 手配してある.あ,それとね,カモフラージュのために会社を作っといたから. 今後はそこを君達のアジトにしときたまえ.」
サファリ「会社?」

その会社「タイガーキャブ」へサファリはオショウとクレイを連れてやってきた. 会社のマークは虎で,業務はタクシー.車は3台あった. 3台とも,虎のシールがボンネットに貼られ, 虎のエンブレムが屋根に載せられたスポーツカーだ.1階が事務所になっていて, 虎の絵の目に仕込まれた隠しスイッチを操作すると, 部屋の一角にあるエレベータの扉が開くようになっていた. 3人はエレベータに載って2階に設けてあるアジトに入った. アジトには重火器や最新式のOA機器が揃っていた.驚くクレイ.突然, オショウは一角に座った.
オショウ「ここがなあ,運転席だよ.は.このスイッチ, パッと押すと3時間半で月到着だよ.」
クレイ「ホントですか?」
オショウ「いや,嘘に決まってるじゃないか.」
クレイ「んなの,わかってますけど.」
クレイは車を使う会社なので技術スタッフが必要じゃないかと言い出した. サファリもそれに同意した.オショウは心当たりがあるという. 水木という男でオショウとは警官時代の同僚. 今は定年退職して自動車の修理工場を経営している.

水木義男そして水木梓登場

早速オショウは水木の修理工場へ行った. するとバイクに乗った若い娘が中から飛び出すのに出くわした.
オショウ「ああ,どうも.」
娘「はやくどいてよ.」
オショウがどくと娘はバイクで出て行った.そして中から男が出てきた.
男「梓.」
だが娘の梓は男を無視して行ってしまった.オショウは男に声をかけた.
オショウ「水木さん.」
水木「あ? いやあ,辻さんじゃないですかあ.」
水木はオショウを一目見て辻雄太郎だと気がついた.おい, オショウはハングマンになったときに死人になり, 顔も整形して変えたんじゃなかったのか? まあそんなことを言っているとドラマが成立しないので,無視しよう. 水木とオショウは挨拶を交わした.
オショウ「しばらくですなあ.お元気そうで.」
水木「いやあ,ぼちぼち.」
オショウ「は.あれ,今のお嬢さん,お宅の?」
水木「いやあ,とんだところをみかけて…私の娘なんですよー.」
オショウ「あ,そうですかあ.お元気なお嬢さんで結構なことですなあ.」
水木「いや,いや,いやあ.元気すぎて手を焼いてるんですわ. 2年前に母親を亡くしてからねえ,どうもうちに落ち着かなくなってねえ, 不良仲間に入って後はご覧の通り,バイク1日乗り回してるんですよ.」
オショウ「不良仲間?」
水木「私の言うこと何にも聞かないしねえ,もうお手上げですわ,あの子には.」
オショウ「いやいやいやあ,今は男も女も元気に限りますよ.」
二人は笑った.
水木「あれ,ところで今日は何か?」
オショウ「ええ.」
オショウは本題に入った.

矢代興業の事務所では井原という男が組長(亀石征一郎)に, 借金の返済を待ってくれと頼み込んでいた. ちなみに組長は部下と麻雀をしていた.井原の負けは1億5千万円にもなっていた. 組長の調べでは井原の会社の財産は1億数千万円. 組長はそれを整理しろと迫っていた.

しばらく経ったある日.井原が遺書を残し, 「排気ガスを車の中に引き込んで自殺」しているのが発見された. 組長は常伸不動産で男(小林勝彦と有馬昌彦)にそのことを報告. 男(小林勝彦)は組長に借用書の有無を確認し, 別の男(有馬昌彦)は登記を開始することにした.

アジトにハングマンが集結した.オショウの調べでは, 過去の事件には共通点があった. 倒産した会社は全て常伸不動産に吸収合併されていたのだ. 社長の阿久津そういちというのは, 土地転がしで何度も警察につかまっている業界でも札付きの男だ. クレイは井原の交友関係を調べていた.すると女が浮かび上がってきた. リーベというクラブのホステスで,リーベは矢代興業の息がかかっている. おそらく彼女は鴨を捕まえるための餌だったに違いない. それを聞いたオショウは自分が囮になって彼女に近づく作戦を発案した.
水木「辻さん,私が囮になりましょう.」
みんな,驚いて水木を見た.
オショウ「水木さんが?」
水木「是非,やらしてください.私なら怪しまる心配ないでしょう.万一, 素性を調べられても正真正銘自動車修理工場の親父なんですから,俺.」
オショウ「しかし,これは危険な仕事ですから.」
オショウは躊躇したが
水木「いや,いや.まあ,私だってねえ,昔は警察官ですよ. 滅多にどじを踏みやしませんよ.」
サファリは決断した.
サファリ「じゃあ,お願いしようか.」

水木義男の死.そして水木梓ことジャッキー加入

水木はリーベで例のホステスに接触.早速組長が水木の素性を調べ上げた. 組長は例のホステスに水木を誘うように指示.

さてサファリがタクシーに女を乗せて走らせていた. 女は変わったタクシーねと言った後,男前のサファリを誘惑し始めた.そこへ
オショウの声「1号車,1号車,業務連絡聞こえますか?」
サファリ「はい,こちら1号車.」
オショウ「トラトラトラだ.」
それを聞いたサファリは車を止めた.
サファリ「お客さん,あのう,申し訳ないんですが, 他の車に乗り換えてくれませんか?」
女「ええ? どういうこと.こんなところで降ろすつもり?」
サファリ「すいません.あのう,ガス欠なんで. ここまでの料金は結構ですから.」
女「そんなこと言ったってえ.せっかくデートに誘おうと思ったのにー.もう.」
サファリはタクシーを拾ってやり,謝った.
女「まいっちゃうわねえ.いい男はこれだから嫌よ.」
そう言って女はタクシーに乗って去って行った.

タイガーキャブでオショウがサファリに説明した.
オショウ「水木さんの連絡では女から電話があってなあ, 秘密カジノに誘われたそうだ.」
クレイ「秘密カジノ?」
サファリ「なあるほど.そういうからくりになっていたのか.」
オショウ「水木さんには隠しマイクを渡してあるわ.」
サファリ「よーし.クレイ,出かけるぞ.」
クレイ「OK!」
そこへラーメン屋の出前持ちのおばさんが現れた.おばさんは度の強そうな, 牛乳瓶の底のように厚いレンズのメガネをかけていた.
おばさん「毎度ー.お待たせいたしました.ラーメン2丁.はい,どうも.」
オショウ「ラーメンなんか頼まないよ.」
おばさん「いえ,いえ,いえ.確かに承りました.」
そう言っておばさんは「蘆花」と書かれた岡持ちから封筒を出した.
おばさん「皆さんのギャラと経費でございます.」
みんな呆気に取られてしまった.
サファリ「あれ,あなた.」
おばさんはメガネを取った.
?女「栗原美津代でございます.先日は失礼をば.」
サファリ「何ですか,この格好は?」
?女「誰かに見られたらまずいでしょう.」
サファリ「でもそんなに凝らなくても…」
?女「いいえ.お金の受け渡しは絶対に人に見られてはいけません. ハングマンの存在は人に知られてはいけないんです.よろしく.」
そう言って,?女はメガネをかけた.
?女「どうも.毎度ありがとうございましたー.」
クレイがサファリに聞いた.
クレイ「なんだい,あの女?」
サファリ「ふん.ゴッドの使いのものさ.」
オショウは封筒の中身を改めていた.そして札束を取り出して
オショウ「ご無沙汰.」
オショウは相当長い間,金に不自由していたらしい.お尋ね者だったから仕方がない.
サファリ「オショウ.」
サファリはオショウから札束を取り返し,封筒に入れなおした.

その晩.水木はホステスと組長達に連れられ,カジノへ向かった. 後をサファリとクレイの乗る車が追いかけた.なんと, 秘密カジノは海の上に浮かぶ船の中にあった.
水木「これは驚いた.秘密カジノってのは船の中だったんですか.」
話の一部始終を隠しマイクを通じて, 岸壁に止まる車の中にいるサファリとクレイも聞いていた.
組長「ええ.海の上なら警察に嗅ぎつけられる心配はありませんからねえ. ま,ごゆっくり.」
水木「あ,どうも.」
水木はカジノに潜入した.カジノにはぼろ負けして3千万円貸してくれと頼む, 初老の男もいた.その頃,組長は船員に水上警察の動きを確認していた. 警察無線を傍受していたのだ.とそのとき
ホステスの声「ねえ,社長さん, よそ見なんてしていないで早く始めましょうよ.」
水木の声「うん.じゃあ,とりあえずね,偶数に10枚だ.」
という声が無線機から聞こえてきた.
組長「どういうことだ,これは.」
異変に気がついた組長は水木とホステスをカジノの外へ連れ出した. そして組長は水木を身体検査し,隠しマイクを発見. 隠しマイクを踏んづけて壊した.
組長「これはいったい,何の真似だ.」
水木は無言だ.組長は水木を殴った.
組長「とんだ客を連れてきてくれたなあ.」
秘密カジノに誘えといったのは自分だということを棚に上げ, 組長はホステスを問い詰めた.

車の中でサファリとクレイは隠しマイクの異状に気がついた. そこでサファリはクレイに中で待機するように指示. 自分はアクアラングに着替え,海の中に潜って船の中に忍び込んだ. そして壊された隠しマイクの破片をサファリは発見した.

水木とホステスの黒木由香は海岸で「心中」したことになった. これを報じる新聞記事を読んだ水木の娘梓は
梓「嘘.父さんが心中するなんて.嘘.あいつ.」
そして喪服を着たまま梓はバイクに乗り,タイガーキャブへと向かった. タイガーキャブに入ってきたオショウは, 梓がファイルを見ているところに出くわした.
オショウ「あ,水木さんのお嬢さん.」
梓はナイフを握り締めてオショウに向かって突進してきた. 慌ててオショウはかわした.
オショウ「どうしたって言うんだよ.なんだい,こりゃ.」
怒りに燃える梓は絶叫する.
梓「とぼけんじゃないわよー.」
梓はまたオショウに飛び掛ったが,オショウにかわされた.
オショウ「ちょっと待ちなよ.」
梓「父さんは毎日死んだ母さんの写真にお線香あげてたのよ. 一日も欠かさずにね.そんな父さんが他の女と心中するはずないじゃない. 父さんを殺したのはあんたでしょう.」
オショウ「違う.これにはわけがあるんだ.」
梓「しらばっくれてもわかってるのよ.これは何なのよ.」
梓はファイルを手にとってなおも言う.
梓「父さんのこと,こんなに調べ上げて.あんた達,一体,何を企んでるの?」
梓はオショウにファイルを投げつけた. ファイルをぶつけられたオショウは無言だ.
梓「どうせろくなことじゃないわ. 父さんを殺して修理工場を乗っ取ろうとしたんでしょう.そうなんだろう.」
梓はオショウに突進.オショウはナイフを持つ梓の手をつかんだ.
オショウ「やめろ.」
オショウは梓の手からナイフを取り,投げ捨てた.
梓「畜生.」
オショウ「おとなしくしてろ.わかった,わかった.何もかも話するから, おとなしくするんだ.」

その頃,サファリは三ツ星建設営業部の吉村と名乗って, 社長と面会しようとしたが,受付で社長はゴルフに出かけて留守だと聞かされた. 弁護士の北条と一緒だという. そしてクレイと一緒にサファリがタイガーキャブに戻ると, 見知らぬ女が自動車の整備をしているところに出くわした.女は梓だった.
サファリ「なあんだ,君は.」
梓「メカ係の水木梓です.よろしく.」
サファリ「え,なんだって.」
そこへオショウが笑いながら現れた.
オショウ「わけは俺から話すわ.」
アジトの中でサファリとクレイは梓の件をオショウから聞いた.
サファリ「つまり,水木さんの代わりに娘さんが仲間に加わるというのか.」
オショウ「どうしても親父さんの仇討ちたいって言ってるんだよ.」
クレイが異議を唱えた.
クレイ「でもよー,こんなやばい仕事, 女なんかにやらせるわけにはいかんでしょう.」
すかさず梓が反論した.
梓「ちょーっと,女なんかとは何よ,女なんかとは.」
クレイ「ああ,ああ,ああ.驚いた.これは大したツッパリだよ.」
オショウはみんなに頼み込んだ.
オショウ「まあ,まあ,まあ,まあ.俺が親父代わりになるから,一つ頼むわ.」
サファリ「わかった.君の加入については承認しよう. コードネームは…ジャッキー.車の整備係だ.」
ジャッキー「任しといて.これでも私,車のメカには滅法強いんだから.」
サファリ「よーし,仕事の話に移ろう. ターゲットは常伸不動産社長阿久津宗一と弁護士の北条,そして矢代興業の磯崎. この3人だ.」
クレイ「磯崎は俺にやらしてくれ.」
タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

磯崎が部下を引き連れて西新宿の街を歩いているところへクレイが登場した. 磯崎の部下はクレイがあのときのバーテンであることに気がついた. クレイはグローブをはめながら言った.
クレイ「あんた達よう,負けっぱなしじゃ気分悪いだろう. リターンマッチのチャンスを与えてやろうかなって.」
そして磯崎達はまた負けた.そして磯崎はクレイの車で運び去られた. 北条と阿久津にはサファリが近づいた. まずサファリはハングガンから煙幕弾を発射.二人が降りたところを殴り倒した.

磯崎,阿久津,北条の3人は縄で縛られて椅子に座らされた. 椅子の向こうの壁には赤と黒が互い違いに塗られた円盤がつけられていた. ここは新宿中央公園.野次馬が大勢集まってきた. スピーカーからサファリの声が響いた.
サファリ「さて,これから諸君の後ろの円盤が回転する.」
円盤が回転を始めた.3人の体にはダイナマイトがくくりつけられていた.
サファリ「止まるまでの時間はおよそ2分. 矢印の位置で諸君の運命が決まる仕組になっている. 赤で止まればダイナマイトの起爆装置に電流が流れて爆発する. 確率は二分の一だ.死にたくなければ貴様達の悪事を全て告白するんだ. その時点で起爆装置の電源を切ってやる.」
北条「社長!」
阿久津「うろたえるな.こいつはただの脅しだ.何も喋るんじゃないぞ.」
北条「いやあ,しかし…」
そのとき
磯崎「と,止まるぞー.」
北条「うぇー.助けてくれ.お願いだ.助けてくれえ.」
磯崎「喋る.何もかも洗いざらい喋るから電源を切ってくれえ.」
阿久津「磯崎!」
磯崎「俺達は秘密カジノで客を鴨って会社を乗っ取ってたんだあ.」
阿久津「黙れー.黙らんかー.」
磯崎「聞いてくれえ.俺達はこの阿久津社長の言いなりに動いてたんだあ. 張本人はこの阿久津だあ.」
阿久津「何を馬鹿な.わしは何も知らん.何もしとらん. 人殺しをしたのはみんなこの磯崎だあ.」
磯崎「冗談じゃねえ.それもこれもあんたの差し金じゃねえか.」
この醜態をジャッキーも見た.そして円盤が赤で止まった. 北条も磯崎も叫び声を上げ,阿久津も体がこわばったが…何も起こらなかった.
磯崎「ちっきしょう.騙しやがったなあ.」
サファリのところにハングマンが集まった.
クレイ「どうする?」
サファリは右手を握り,親指を下に向けた.
サファリ「ギルティー.」
サファリのリモコン操作により,悪党達は椅子ごと穴の中に落とされた. 叫び声をあげる悪党達を鼠がかじった.パトカーが駆けつけ, 悪党達は担架で運び出された.
オショウ「さあ,行こうか.」
ジャッキー「はい.」
オショウとジャッキーは去って行った.そしてクレイとサファリも去って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp