第二十五回

覚醒剤殺人の裏に潜む官民癒着の実態を暴く
連続麻薬殺人 ポルノ女優を救え

脚本:田上雄 監督:小西通雄

女優のまり(水島美奈子)がCMの撮影を行ない,帰った. マネージャーと別れようとしたまりのところへ通り魔が襲い掛かってきた. 通り魔はまりをかばったマネージャーを刺し, さらに暴れまわってまりを追い掛け回すのであった.

さてまりがベッドでよがるビデオをデジコンの店にヨガが持ってきて, デジコンに見せていた.
デジコン「どこでこんなもの手に入れた.」
ヨガ「市販のビデオテープさ. 味も素っ気もないコンピュータの画面よりは面白いだろう.」
デジコンはこう言って反論した.
デジコン「お前もマイトみたいに見境がなくなってきたな.」
さらにヨガが反論した.
ヨガ「そういうなよ. いずれこの女優と付き合うことになるかもしれないんだから.」
デジコン「え?」

仕事開始

さてゴッドのオフィスにハングマンが集結した.
オショウ「おととい殺人事件が発生した. 被害者は芸能プロダクションの社員で加藤みちお25歳. 彼は今売り出し中のポルノ女優田代まりのマネージャーだった. 今写っているのは加害者だ.中本たけし32歳. 元パチンコ屋の店員で現在は無職だ.警察の調べによると, 中本は重症の覚醒剤中毒で今回の殺しもヤクのせいだと言ってる.」
デジコン「覚醒剤中毒かあ.それじゃあ,送検は無理だなあ.」
タミー「鉄格子のついた病院に閉じ込められる程度ねえ.」
オショウ「ところで最近,覚醒剤中毒が原因の殺しが連続して起きてる. 今映っているのが最初の被害者,建設会社黒田組の総務部長飯塚じろう45歳だ. 犯人はクラブの従業員で十日前に病院を退院したばかりだ.えー, 次の被害者は毎朝新聞の社会部の記者で佐々木りょういち35歳. 犯人は中小企業を首になった男だが, 前回同様被害者とは面識もなければ殺しの動機もない. 一見偶発的な通り魔の犯行に見えるが, これらの事件には実は一つの共通点がある. それは逮捕された三人がいずれもサラリーローンに多額の借金がある, ということだ.しかも,同一の会社にな.これがその会社の女社長(中原早苗)だ. そこで今回の任務だが,それぞれの事件を独自に洗いなおし, 関連があるかどうかを突き止めて欲しい. もしかすると計画的な連続殺人かもしれないからなあ.」

マイトは問題のサラリーローンであるサラリーローン金成へ向かった.
従業員「いらっしゃいませ.」
マイト「ちょっと金貸してくんねえ?」
従業員「いかほど?」
マイト「うん.3千万.」
マイトは真顔で言った.
従業員「え?」
事務員「お客さん.」
マイト「ん?」
事務員「うちは銀行じゃないんですよ. そんなにたくさん借りたら返済に困りますよ.」
マイトは手を振って答えた.
マイト「返すつもりなんて全然ないの.」
事務員「何ですって! あんた冷やかしに来たんですか?」
マイト「平社員じゃ話になんないの,平社員じゃ.責任者呼んでくれない, 責任者を.(右手の親指を立てて)これ,これ,これ.」
そのときドアが開いて
女社長「責任者ならここにいますよ.社長の金成ますえです. お話は私が伺いましょう.」
マイトは社長室に入った.
金成「おかけ下さい.」
マイトは椅子ではなく,机の上に座った.
金成「まだお名前伺っておりませんでしたねえ.」
マイト「草野幸平,職業はギャンブラー.」
金成「ギャンブラー? するとお金はその方面で.」
マイト「察しがいいねえ.このところツキに見放されてるんでねえ, 3千万貸してくれたら何でもするぜ.」
金成「何でもと仰いますと?」
マイト「あらゆることをね.殺しも含めてね.」
それを聞いた金成は苦笑した.
金成「殺し?」
マイト「俺は昔シャブをやってたから, 心神喪失状態を装うことぐらい朝飯前だ.」
金成「仰ることの意味がわかりませんけれど.」
マイト「とぼけんなよ.中本って男から聞いたぜ. この会社ではローンの返済を殺しで埋め合わせできるってなあ.」
金成は110番に電話した.
金成「もしもし警察ですか.こちらサラリーローン金成ですが, 至急パトカー派遣してください.覚醒剤の中毒で, 妄想にとりつかれてる人が来てるんです.はいわかりました. 三分以内に到着ですね.」
金成は電話を切った.マイトは金成が電話している間にメモを書いていた.
マイト「何かあったら,ここへ連絡してくれ.じゃな.」
マイトは金成にメモを渡して去って行った.

一方,飯塚部長のおじと称してオショウが黒田組の社長を訪れていた. 飯塚が殺されたのは仕事上のトラブルで殺されたんだという電話がかかってきた, とオショウは言ったが社長はとぼけた.さらにオショウは, 飯塚が事件当時どんな仕事をしていたのかと聞いた.すると社長は, 飯塚が閑職についていたと答えた.飯塚が重役会の決定に逆らったからだ. 詳細は業務上の秘密に関わるので話せない,と社長は話した.

田代まりにはデジコンが保険会社の調査員と称して接触した.
デジコン「加害者は最初あなたに向かってきたんですねえ.」
まり「そうなの.凄く恐かったわ.一時はもう駄目かと思った.」
デジコン「そこへ加藤さんが飛び込んで身代わりになってくれた.」
まり「ええ.さあ,どうぞ.」
まりは椅子に座るように勧めた.二人とも椅子に座り,話を進めた.
まり「彼がいなければ間違いなく私が死んで. 加藤ちゃんには気の毒なことをしたわ.ね,お願い.保険金, いっぱい払ってあげてね.」
デジコン「わかりました.しかし意外だなあ.」
まり「何が?」
デジコン「映画スターって言うのは, もっとわがままで気位が高いのかと思ってました.」
まり「あたしは普通の女よ.ただ,ちょっとだけ運がいいのと, 自己顕示欲が強いのを別にすればね.」
まりもデジコンも微笑んだ.そこへノックの音がした. やってきたのは金成だった.
金成「失礼.まりちゃん,ちょと.」
まり「はい.今行きます.」
不思議に思ったデジコンは聞いてみた.
デジコン「あの方,確か…」
まり「あら,うちの社長さん,ご存知なの?」
デジコン「サラリーローンを経営している人に似ているけど.」
まりは笑った.
まり「よく知ってるわね.あの会社, 離婚したご主人に慰謝料代わりにもらったと言ってたわ.」
それを聞いたデジコンは金成をじろっと見るのであった.

タミーとヨガは毎朝新聞の佐々木記者が殺された現場を検分していた. 現場は彼が通勤に使っていた通り道で自宅からは 500m くらい. 人通りが少なくて待ち伏せにはもってこいだった.代官山の踏み切りの辺りだ. タミーは記者仲間と称して,佐々木の未亡人を訪れた.タミーは, 取材ノートを見せて欲しいと頼んだが,未亡人は, 葬式後に仕事関係の書き物が一切なくなってしまったと答えた.タミーが, 佐々木が亡くなる前に佐々木がどんな仕事をしていたのか,と訪ねると, 未亡人は建設省と業者の癒着に関する取材を行なっていたらしいと答えた.

その晩.自分のマンションの部屋で,まりは参院選出馬が噂される, 建設省のエリート村野秀一に関する週刊誌の記事を見ていた. そこへ電話がかかってきた.電話は村野からのものだった. 村野はいつものホテルの915号室で会いたいと言った. 喜んでまりはタクシーで向かった.その後をデジコンが追った. デジコンは915号室にまりが入るのを見届けた. まりは金成に村野と会うなと言われていたのだが, 村野にまりを紹介したのは金成だった. シャワーを浴びながらまりと村野は抱き合った.

その頃.マイトを恐い4人組が取り囲んだ.
マイト「金を融通してくれるといったのはあんたか?」
男(森幹太)「ああ,俺だ.」
マイト「ありがてえ.早速お願いしましょうか.」
男は金の代わりにパンチをお見舞いした. マイトはわざと男のなすがままにされていた.男はパンチの後, 身体検査をしたが馬券しか出てこなかった.さらに男は
男「おい.おめえ,毎朝新聞の佐々木って男の連れだろが.」
マイト「俺を怒らすと怪我するぞ.」
その言葉通り,男達はマイトにコテンパンにやられて怪我してしまった.
マイト「お前にはまだ用があるんだ.」
マイトは車の中に金成がいるのを発見した.すかさずマイトは金成に近寄った.
マイト「女社長さんよ.俺が貸してくれって言ったのは3千万. こんなゴリラの子分じゃねえぜ.」
金成「わかったわ.2,3日待って.必ず連絡するわ.」
マイト「なるべく速くお願いしますよ,社長さん.」

今週のよね子

さてオショウが妙徳寺に戻り, 本堂に入るとよね子が注射を打っているのが見えた.
オショウ「何やってるんです?」
よね子は慌てて注射器を隠した.
オショウ「隠しても駄目です.見せなさい.見せなさいよ. あーあ.なんてことを.奥さん.こんなものどっから手に入れたんです?」
よね子「お隣りの奥様から.あたくし,煩悩に負けてしまったんです.」
オショウ「なんてことを.覚醒剤なんてのはねえ,中毒になるんですよ.」
よね子は怪訝な顔.
よね子「和尚様,それ,間違いですわ.」
オショウ「何が間違いです.ふとした出来心が一家の破滅. 総理府のコマーシャルでもやってるでしょうが.」
よね子「でも,これはただの強壮剤ですの.」
オショウ「え? 強壮剤!」
いやーな予感がするぞ.
よね子「ええ.ですから中毒になんか…」
突然,よね子の様子が変わった.
よね子「あーあー.う.」
オショウ「どうしたんです?」
よね子がオショウをみつめた.
オショウ「どうしたんです,奥さん.」
よね子はしゃっくりをした.
よね子「ふ.薬が効いて来ましたの.」
オショウ「もう効いてきたんですか!」
よね子はオショウに抱きついた.
よね子「和尚様.」
オショウ「ちょっと.ちょっと.落ち着いて.奥さん,落ち着きなさい.」
よね子「和尚様.ヒック.」
オショウ「ああ,殺される.殺される.ああ.」
そこへ運良く電話がかかってきた.
よね子「和尚様〜ん.」
オショウ「あ,電話.電話ですよ.」
オショウは電話に出た.
オショウ「はい,もしもし.妙徳寺ですが.」
それでもよね子はオショウに抱きついた.
オショウ「え.」
よね子はしゃっくりした.
オショウ「何?」
よねこはまたしゃっくりした.
オショウ「うん.」
よね子はまたまたしゃっくりした.
オショウ「別に何でもないよ.ちゃんとしてるから.」
よね子はまたまたしゃっくりした.
オショウ「すぐに行くから.はいはい.」
オショウは電話を切り,よね子はまたしゃっくりをした.
オショウ「落ち着いて.落ち着いて.私出かけますからねえ.」
しゃっくりするよね子を置いてオショウは出て行った.
よね子「和尚様.」
よね子は鐘を叩く棒の丸い部分をなで,その後で力いっぱい, 鐘を叩くのであった.

オショウがガソリンスタンドへ行くとタミーがいた. ゴッドの観測が的中したのだ.一連の殺人事件は, 建設省と業者の癒着をごまかすために,仕組まれたものだったのだ. 毎朝新聞の佐々木記者は事実をスクープしようとしていた. 黒田組の飯塚部長は社内告発に踏み切ろうとしたので, 黒田に抹殺されたに違いない. そして田代まりは建設省エリートの村野秀一の愛人.

早速デジコンが再度まりに接触した.
デジコン「昨日はどうも失礼しました.お休みのところ大変恐縮なんですが, もう一度お話を伺いたいと思いましてね.」
デジコンは一連の殺人事件が計画的な犯罪らしいという話をした. まりは驚いた.
まり「計画的な犯罪ですって!」
デジコン「ええ.覚醒剤の中毒患者なら実刑を受けずに済む. 法の盲点を突いたうまいやり方ですよ.」
まり「それが本当としても私には殺される理由がないわ.」
デジコン「ところがあるんです.あなたは自覚してないかもしれないが, あなたの存在そのものが邪魔になるという理由がね.」
まり「どういうこと?」
デジコン「あなたの恋人は特定の建設会社と癒着してるんですよ.」
まり「え?」
デジコンは懐から手帳を取り出した.
デジコン「建設省局長村野秀一.東大法学部出身. 父親は元衆議院議員で入閣3回.エリート中のエリートですねえ.」
まり「そんな人,あたしは…」
デジコン「知らないとは言わせませんよ. 昨日,ホテルであったのは確認してるんです.」
まり「あなた,誰なの? 保険会社の調査員だなんて.いったい何者なの?」
デジコン「僕の素性なんかどうでもいい. それより誰の紹介で村野氏と付き合うようになったのか, そのわけを知りたいのだが.」
まり「言いたくないわ.」
デジコン「口止めされてるのか?」
まりは無言だった.
デジコン「どうやら図星らしいなあ.」
まり「それがどうしたって言うの.紹介者が誰だろうとあたしは, あたしの意思で交際してるのよ.」
デジコン「愛してるのか,村野を?」
まり「ええ.愛してるわ.」
デジコン「気の毒に.君は利用されてるだけなんだぜ. 建設事業の落札を狙う黒田事業が村野のご機嫌を伺うためにね.」
まり「嘘よ.そんなこと嘘に決まってるわ.」
デジコン「ホントにそう思ってるのか?」
まり「もうやめて.私,あの人を信じてるわ. あんな立派な人が汚職や人殺しに関係してるなんて.あなた酷い人ね. もう顔も見たくない.帰って頂戴.」
デジコンは立ち去った.デジコンと入れ替わりに金成がやってきた. 金成は新しいマネージャーを連れてきたのだ.

保険会社の調査員と称する男がまりに近づいたことを金成は黒田に報告した. 黒田と金成は料亭で村野と会い,まりを始末することを示唆した. 村野はまりを本気で愛しているのでやめろと言った. だが黒田は,一度まりを始末しようとしたこと, そして黒田組の総務部長殺しや佐々木殺しも黒田の仕業であることを告げた. 金成は佐々木の取材ノートに, 村野とまりの関係が書いてあることもほのめかした. 村野は驚いた.全てを知った村野はまりの始末に同意した.

早速マイトが呼び出された.
マイト「わざわざ呼び出したからには共同経営の話に乗ったんでしょうなあ.」
金成「その前にあなたが本当に信用できるという証拠を見せて頂戴.」
マイト「つまり,殺しをやれってことですか.」
金成「ええ.この女を消してくださらない?」
金成はマイトにまりの写真を見せた.
マイト「どっかで見た顔だなあ.あ,何とかというポルノ女優だ.」
金成「方法はお任せしますよ.」
マイト「これだけの美人なら恋人もいるだろうに.」
金成「お心遣いはご無用です.恋人も承知の上ですから.」
マイト「ほう.恋人もねえ.」

その晩.帰ってきたまりをマイトの車がはねようとした. すかさずデジコンがやってきてまりを助け起こした.
デジコン「大丈夫か?」
まり「もう少しで死ぬところだったわ.」
そこへマイトが現れた.
マイト「刺激がちょっと強すぎたかなあ.」
デジコン「ああ.ちょっと手加減すべきだったかもしれんなあ.」
マイト「女社長の身内が見てるとやばいからなあ.」
まり「どういうことなの?」
デジコンが事情を説明した.
デジコン「彼は俺の友達でねえ,君の殺しを頼まれたんだ.」
まりは驚いた.
まり「誰に?」
マイト「あんたの社長さんに.君の恋人も承知してるらしい.」
そしてまりはついに真相を喋った.
デジコン「君を村野に紹介したのは金成ますえなんだなあ.」
まり「恩義のある人だから,一晩だけ付き合ってあげてって言われたの. もちろん,はじめは断ったわ.そんなコールガールみたいな真似いやだもの. でも,会うだけあってみてって拝み倒されていってみたら.」
マイト「結構うまがあったってわけだ.」
まり「ええ.今まで会ったことがない素敵な人だったわ. それで一緒にお食事して,お酒を飲んで, ベッドに行ったのも自然の成り行きだった.」
マイト「役人に女を世話して仕事を回してもらう.良くないことだなあ.」
まりは泣き出した.
まり「どうせ,私は馬鹿な女よ.お願い.もう,出てって. 私,一人になりたいの.」
マイトとデジコンはマンションを出た.
マイト「気になるのか,一人にしてきたのが.」
デジコン「ああ.何とか立ち直りのきっかけを…」
マイト「そいつは間違いだぜ,デジコン.俺達にやれることは一つしかねえ. やわな気持ちを捨てなきゃな.」
デジコンは笑ってうなずいた.
マイト「よーし,ハンギングだ.」
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

金成の事務所で.
金成「そろそろ帰ってくる頃よ.手筈はわかってるわね.」
男「ええ.今度こそ隙を見て,へ,へ,へ.後は車ごと海へ.」
そのとき.
マイト「そんなことだと思ったよ.」
マイトとヨガがドアを開けて入ってきた.
マイト「殺しはやめた.」
マイトは机に飛び上がってしゃがんだ.
マイト「地獄へ行ってもらおうか.」
男はヨガに倒された.金成は
マイト「おねんねしてもらうよ.」

屋敷に帰ってきた村野にデジコンが声をかけた.
村野「誰だね,君は.」
デジコンは答えの代わりに麻酔銃を撃って村野を眠らせた. そして黒田をオショウが出迎えた.
黒田「君は飯塚君の…」
オショウは笑いながら変装を解いた.
オショウ「飯塚さんなんて知りませんね.」
黒田「なんだと.」
すると黒田の背後からタミーがやってきた.
タミー「あたし達は闇の死刑執行人. 今回の任務は官民癒着の実態を暴露すること.」
黒田はオショウとタミーに倒された.

その頃.田代まりは村野の写真を切り裂いていた. そこへ青い封筒に入っていて蜘蛛が描かれたシールで封をされた手紙, すなわち,デジコンからのハンギングパーティの案内状が届いた. まりは案内状を読んだ.
デジコンの声「明朝8時,連続殺人及び殺人未遂の真犯人に対する審判が 行われます.場所は下記の地図を参照すること.追伸. 君はまだ若い.希望を持って人生を再スタートさせてください.」
場所は晴海通りの万年橋脇の公園.今度はデジコンは漢字を勉強したようだ. もっとも,私も誤字脱字が多いのだが…

さて金成,金成の部下,黒田,そして村野の4人は, 黒いカーテンで四方を覆われた部屋の中で縄で縛られ,手錠をはめられ, 椅子に座らされていた.彼らの前にはテーブルが置かれていた.そこへマイト, タミー,ヨガ,そしてオショウがやってきた.
マイト「お待たせいたしました.皆様おそろいですね. それでは始めましょうか.」
オショウ「どうも.」
村野「お前達は何者だ.」
黒田「いったい,何を始める気だ.」
4人は注射器を取り出した.
部下「か,覚醒剤か?」
金成達4人の悪党は口を開けてパクパクさせた.
マイト「そのとおり.純度90%の極上品だ.」
オショウ「一発打てば幻覚と幻聴の世界を行ったり来たりで実にどうも.」
悪党達は恐怖のあまり叫び声を上げた.
タミー「ただし30分以内にお医者さんにかからないと中毒になるわ.」
ヨガ「下手すればあの世行き.」
金成「いやよ,そんなのやだわ.やめて.やめてえ.」
タミー「やめてほしければ何もかも白状することね.」
タミーはテープレコーダーを置き,スイッチを入れた. だが悪党達は喋らない.
マイト「よーし,打たせてもらおう.」
悪党達はやめろと叫んだが,結局「覚醒剤」を打たれてしまった. その頃,デジコンは機器室にいた.そこへタミーとヨガが戻ってきた.
デジコン「注射は?」
タミー「打たせてきたわ.4人ともすっかりその気になってるみたい.」
ヨガ「うまく行ったなあ.」
デジコン「ちょっと強烈だが,要はただの幻覚剤だ.」
幻覚剤の効果はてきめんだった.
マイト「だいぶ効いてきたようだ.」
オショウ「うーん,この手のヤクは効き目に個人差があってねえ.」
オショウは黒田を指差した.
オショウ「うーん,ぼちぼちかなあ.」
次に村野を指差した.
オショウ「今一息ね.」
金成をさして
オショウ「ああ.順調だね.」
最後に金成の部下をさして
オショウ「あ,効いてきてるわ.」
デジコンが怪しげな音楽を流した.
マイト「ほーら,いろいろな色が見える.赤―,ピンクー,グリーン,ブルー, きれいだ,きれいだ.」
オショウ「黄色は注意だよ.青は進め.赤は止まれね.音楽がいいなあ. シンセサイザーが活きてる.フワンフワン.ぺペーってなあ.」
4人は幻覚に陥った.オショウは懐からナイフを取り出した.
オショウ「ああ,ここにナイフがあるから,これで好きなように遊びな.」
オショウはテーブルにナイフを2本置いた.
マイト「さ,そろそろ引き揚げるか.」
マイトとオショウは外へ出て行った.音楽はなおも鳴りつづけた. ついに金成の部下がナイフを取ろうとした.黒田が妨害したが, 金成の部下と金成がナイフを取った.金成は黒田にナイフをむけた.
黒田「ますえ,私を殺す気か?」
金成「そうじゃない.でもあなたには私の命が.」
村野「そんなものは捨てろ.な.内部分裂してるときじゃないんだ.」
黒田「やだ.お前達の言いなりにはならねえ.」
部下「おおい,医者を呼んでくれ.何もかも話をするから.」
黒田「おい.やめろ.」
部下「頼む,医者.」
黒田「おい,やめんか.」
ついに部下が叫んだ.
部下「聞いてくれえ. 黒田建設の飯塚部長と毎朝新聞の佐々木記者を殺させたのは俺たちなんだあ. ここにいる金成ますえの命令で麻薬中毒患者にやらせたんだあ.」
金成「違いますう.あたしは黒田さんの命令を伝えただけ. 責任はありません.」
黒田「な,何を言うんだ.お前だってさせてたくせに, 俺だけを悪者にするなあ.」
村野「私は殺人事件とは無関係なんだ.おい.ちょっと,ちょっと. 私は無実なんだよ.解放してくれえ.おーい.」
部下「何をいいやがる.おめえだって黒田社長に賄賂をもらったり, 女を紹介してもらったじゃねえか.エリートだからっていい子ぶるんじゃねえ.」
部下はナイフを振り回し,村野は悲鳴を上げた.
デジコン「よーし,いまだ.」
デジコンが音楽を止めた.と同時にカーテンが開き, 村野達悪党は野次馬にさらされた.マイトの声がスピーカーに響いた.
マイト「皆さん,この4人は芸能プロマネージャー,建設会社部長, 新聞記者を殺した極悪非道の犯人です.犯人の顔をとくとご覧下さい.」
黒田の声「私じゃない.」
村野の声「私は殺人事件とは無関係なんだ.」
部下「嘘をつくなあ.お前は政治家のくせに, 若い女を騙しては俺達に殺しを命令したじゃないか.悪いのはこいつだあ. こいつが一番悪いんだあ.」
この醜態を田代まりも見た.そして田代まりは去って行った. 入れ替わりに野次馬が,そしてパトカーがやってきた. デジコン,タミー,ヨガも去って行った.

そして

撮影所で明治時代を舞台にしたドラマが撮影していた.
女優「吉太郎さん.ホントに,ホントに来てくれたのね.」
男優「みつこさん,僕は絶対嘘は言わないよ.」
相手の男優は「僕は絶対嘘は言わないよ.」を言うときになまってしまったが, 監督はOkを出し,次のシーンの準備を, 松井(当時演出助手だった松井昇さんのことか?)達に命じていた. それを見ていたマイトとデジコンは
デジコン「吉太郎さん.ホントに,ホントに来てくれたのね.」
マイト「みつこさん,僕は絶対嘘は(わざとなまって)言わないよ. 言わないよ,だって.ねえ,最近の俳優,なまってるなあ. 質の低下だよ,芸能界の.」
デジコン「いや,ホント.」
マイト「よし,俺出してもらうからよ.」
デジコンは止めたが
マイト「監督さん.僕,俳優になれませんか.俳優に.」
だが監督の言葉は
監督「何を言ってるんだ,君達は.」
監督はデジコンを指差し
監督「いいねえ,あなた.甘い,そのマスク.将来の大スターだよ.」
デジコン「いやあ.」
監督はマイトを無視してデジコンと話していた.
監督「俳優さんになったら.推薦しますよ.」
デジコンは大喜び.監督はやっとマイトに話し掛けた.と思ったら
監督「それにしても,君.何のとりえもない顔だねえ.」
マイトはずっこけてしまった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp