第二十二回

航空機汚職事件担当検事に仕掛けられた罠の真相を暴く
裸女の死体と心中した検事

脚本:鴨井達比古 監督:児玉進

航空機汚職事件の裁判は大詰を迎えていた. 検察側は強気で弁護側は必死の防戦を行なっていた.そんなある日. 担当検事秋山の娘和美(戸川京子)の誕生パーティが行なわれていた. 検事は忙しく,妻の洋子を含め,家族3人で外食するのも半年ぶり. さらに15歳になった和美の年を14歳と間違える始末. そこへ秋山に電話がかかった. 秋山が呼び出しに応じて江川真由美のマンションを訪れた. だが呼び鈴を何度も押しても応答がなく,ドアをノックしても応答がない. そこで鍵のかかっていないドアを開けてみると, テレビがつけっ放しで真由美が全裸で死んでいた.するとドアが閉められた. そして誰かが催眠ガスを噴射.秋山は110番へ電話しようとしたが, 電話のコードは切られていた.そして秋山はガスにやられ, 椅子で窓ガラスを叩き割ろうとして倒れてしまった. そして催眠ガスを噴射した男は秋山に剃刀を握らせ, 秋山のもう片方の手首を切った.

この事件は「秋山検事 愛人と無理心中」として報じられた. カジノ「ダイナ」で新聞を読んだマイトは怒り狂った.
マイト「何が正義の味方だ.これは重要な裁判なんだ.」
さとみ「どうしたんですか,マスター.」
マイト「裁判だよ,君.」
さとみ「裁判?」
マイト「ああ.」
さとみ「とうとう訴えられたんでしょう,結婚詐欺で.」
マイトは新聞を置き,さとみを抱き寄せようとした.
マイト「さとみちゃんねえ,僕は今まで女にねえ…」
さとみ「あ.」
マイト「結婚してくださいって言ったことは一度もないよ.」
死んだ妻の順子にはどうやってプロポーズしたんだ? それは兎に角,さとみは重要なことを思い出していた.
さとみ「大変,電話,電話.」
マイト「早く言いなさい.」
マイトは電話に出た.
マイト「Hello. This is Kusano speaking. なあんだ,お前さんか.」
マイトへの電話をかけてきたのはオショウだった.
オショウ「なんだ,お前さんか,とはご挨拶だなあ. お前さんみたいになあ,酒と女と博打に明け暮れてるとろくな死に方しないぞ. たまには寺へおいで.ありがたーいお経聞かせてやるから.あ? 集合命令だよ. 今夜0時.タミーにも連絡頼むぞ.はい,じゃあ.」

今週のよね子

さてオショウが電話を切って寝転ぶと, テニスの格好をした女が障子を開けて本堂に入ってきた.
オショウ「あ!」
オショウが驚いて飛び起きると,それはよね子だった.
オショウ「ははあ.これは,これは,奥さん. いやあ,本日はまたイマいスタイルで.」
よね子「何を言ってるんです.テニスコートで1時間も待つ身になってください.」
オショウ「今日はテニスなんてやる約束しましたかね?」
よね子「まあ,悔しい.いつだって和尚様はそうなんだから. プールもゴルフもダンスだって,何を約束したって, いつもそうやって忘れた振りばっかり.」
オショウは怪訝な顔.
オショウ「いや,忘れたふりじゃなくて本当に忘れるんですよ.」
よね子は逆上した.
よね子「もう,悔しい.」
よね子はオショウをはたいた.オショウは痛がった.
よね子「もう,今日という今日は和尚様.」
よね子がチョッキを脱ごうとしたので
オショウ「ああ.脱いじゃいけませんよ.」
オショウはチョッキを元に戻した.
オショウ「人が来たらどうするんです.」
よね子はオショウを背後から抱きしめた.
よね子「和尚様.」
オショウ「よしなさい.」
よね子「和尚様.今日はもう話しません.いやーん.」

さてデジコンは金魚鉢の中に釣り竿の先についた金属の塊をおろしていた. そこへタミーとヨガがやってきた.
タミー「なにやってんの?」
デジコン「魚を釣る研究.」
ヨガ「へえ.この丸いの何,餌?」
デジコン「極弱い高周波の電波を発信してるんだ. 魚の食欲を掻き立てるはずなんだがなあ.」
タミー「魚の食欲?」
ヨガは金魚鉢を覗き込んだ.
デジコン「うん.こいつが成功すれば魚は 100% 釣れる. 釣りの大革命ってわけだよ.そしたら, 一晩にして俺は億万長者ってわけだよな.」
タミーは失笑した.
ヨガ「億万長者.すげえなあ.俺,一口乗った.」
タミー「それで,成功しそうなの?」
デジコン「今日で十日目だが,金魚の奴,見向きもしねえ.」
ヨガがデジコンの方を向いた.
タミー「呆れた.男の人の頭の中ってどうなってるんだろう.」
ヨガ「あ!」
タミー「仕事よ,仕事.」
デジコン「おいおい.食いついてきた.」
タミー「え?」
ヨガも目を丸くしたが
デジコン「あ,違うなあ.」

仕事開始

ゴッドのオフィスで.
デジコン「開始以来6年目を迎えた航空機汚職裁判は, いよいよ正月開けに検察側の論告求刑が行なわれる予定になっている. ところが先月の末,この裁判で検察側の陣頭指揮を執っていた, 東京地検の秋山検事正が奇妙な死を遂げた.」
マイト「秋山検事愛人と無理心中.これはどうもできすぎてるなあ.」
タミー「でもマンションの借主も秋山検事の名義になってるし, その真由美って女性も確か検事の愛人でしょう.」
マイト「今の女,一年前に地検の事務員を辞めてホステスに転身してるんだ.」
オショウ「ま,いずれにしても汚職追放のエースと言われた, 秋山検事の今回の事件は検察側のイメージを決定的にダウンさせたな.」
デジコン「被告も被告なら検察も検察だ.」
オショウ「被告側はさぞかし喜んでいることだろう.」
マイト「罠か.」
オショウ「ゴッドはそう見てるよ. 敵の中心人物を倒して検察側のイメージダウンを謀り,我が方有利に展開する. こりゃ必殺の罠だ.」
マイト「とんでもねえ.勘弁できねえな.」
タミー「罠だという根拠は?」
オショウ「この写真を見てくれ.」
オショウは週刊誌を取り出した.
オショウ「スクープ専門のカメラマンが軽井沢のゴルフ場で撮ったもんだが, 西原被告とその側近達だ. これが西原被告の弁護団長で元東都大学法学部長の吉津りへい(田中明夫). 日本の法曹界の超大物だ.ところがこの隅にいる女な, これが問題の江川真由美だ. もちろんこの写真のことは警察もマスコミも気づいちゃいない.」

マイトとタミーは秋山検事の家族の転居先のアパートを見張っていた. 法務省の官舎を追い出されて今では親子で寂しくアパート住まいだったのだ. 和美は前日も早退していた.母子は週刊誌の記者に追いかけられる毎日. 下校する和美にも週刊誌の記者が何人も群がった. 見兼ねたタミーが和美を車で連れて行った.その頃, 洋子は田沢に警察に再捜査をするように頼んでいた. だが田沢は秋山が密かに吉津と接触していた形跡があるらしいと話し, もうこれっきりにしてほしい,と話して去って行った. その会話をマイトがしっかり聞いていた.

オショウ「国会のそばの三宅坂会館. 西原はこの8階を借り切って事務所にしている.そして毎週1回, ここで公判の打ち合わせをやる.」
デジコンの車の中にオショウがいた.そこへデジコンが戻ってきた. 西原の事務所の周りには私設ガードマンや警視庁警防課の人間が大勢いて, 近づける状況ではなく,盗聴機を仕掛けることなどできそうになかったのだ. 吉津弁護士の方から突破口を見つけないと無理だ.

吉津のところに毎朝新聞社会部の記者日下部と称してマイトがやってきた. 吉津はマイトに,裁判のことだったら一言しか言わない,我々は勝つ, 無罪を勝ち取る,と言った.マイトは,そのことではなく, 秋山と吉津が会ったことについて聞きたいと話した.吉津は肯定し, 一杯やりながら話そうと答えた.マイトが案内した店で吉津が話した. 秋山が死ぬ3ヶ月前に自宅へやってきて, 1千万円貸してくれと頼みに来たというのだ. 貸してやったのかというマイトに吉津は, いくら大学の教え子だからと言って立場の問題があるから断ったと答えた.
吉津「で,記事にするのかね,君,これ.」
マイト「もちろん書きますよ.ちょっとしたスクープですからねえ. 早速明日の朝刊に.」

デジコン「江川真由美は3ヶ月前までこの店に勤めていた.ごく普通のバーだが, これまでに管理売春で営業停止処分を二度受けている.」
そのバーを田舎のおじさんに扮装したオショウが訪れた. オショウは二月くらい前に街で真由美に声をかけられて, 一晩三万でどうだと言われたとホステスに話した. だがホステスは真由美は足を洗うためにこの店をやめたと言った.さらに
オショウ「なしてあんなパトロンがいて, 街で客なんか拾わなくちゃならなかったかねえ.」
ホステス「パトロンって何とか検事のこと?」
オショウ「ああ.新聞にはそう書いてあったなあ.」
ホステス「でもさあ,全然検事のことなんか聞いてなかったんだよねえ. あたし達,真由美さんの彼氏は辺見さんだとばっかり思っていたからさ.」
オショウ「辺見?」
ホステス「うん.司法試験浪人とか言ってたなあ. 真由美ちゃんは将来の弁護士夫人を夢見てせっせと貢いでたけどさ,ま, ヒモみたいなものだと思うよ.」
オショウ「ふーん,で,辺見って男はさあ…」
ここまで話したところでバーテン(山西道広)がやってきて, オショウをたたき出してしまった. そして歩いていたオショウのところへ暴漢達が現れた.
暴漢「おっさん.」
オショウ「なんだ?」
暴漢「待ってたんだよ.」
オショウ「あ,は,は,は,は,は.さっきの店のお兄さんね. あたしも待ってたんだよ.」
オショウが口笛を吹くやいなや,ヨガが登場.暴漢を撃退してしまった. オショウはバーテンを写真に撮った.

翌朝.吉津の事務所ではバーテンの写真が投げ込まれていた.
吉津「平田の奴,へまをやらかしたな.」
毎朝新聞には日下部に話した話が一行も出ていなかった. 吉津の部下の金子弁護士(小林勝彦)は毎朝新聞に電話した. そして金子は吉津に日下部という記者がいないことを報告した. さらに平田から電話がかかってきた. 電話を受けた辺見は平田の店で真由美のことを嗅ぎまわった男がいたことを, 吉津に報告した.吉津は,平田の店をしばらく閉めるように平田に伝えろ, と金子に命じた.さらに吉津は辺見に,真由美の件を漏らしていないだろうな, と念を押した.辺見は漏らしていないと答えたが, 吉津が秋山のスキャンダルを作るだけではなく, 真由美を殺していなかったことをなじっていた. 辺見の司法試験合格に手心を加えてもらうために, 真由美は司法試験の責任者を何年も務めた吉津に差し出されたのだ.

平田をデジコンとヨガが尾行していた. そして金子と平田が会う様子をヨガがカメラに収めた.
デジコン「金子弁護士と話しているのが平田たけし35歳. 江川真由美が働いていた売春バーのオーナーだ.5年前, 傷害事件を起こしたとき吉津,金子両弁護士のお世話になっている.」
オショウ「さて秋山検事が真由美と本当に関係があったかどうかという点だが… タミー」
タミー「確かにマンションの借主は秋山になってるけど, 不動産屋に行って契約したのは秋山と同じぐらいの年齢の中年の男というだけ. それにマンションの住人も何回か秋山の姿を見たというけど, はっきり顔を見たわけではなくて,ただ真由美がその男を検事さんと呼んでいた, というだけ.」
マイト「同年輩かあ.弁護士の金子は元秋山の同僚だし, 真由美も一年前は地検の事務員だった.」
オショウ「秋山が吉津弁護士と会っていたというのは?」
マイト「会ったかもしれない.だがそうだとしても秋山が 望んであったわけではない.まあ,これを聞いてみてくれ.」
マイトはテープを再生した.
テープの声「秋山君はねえ,潔癖すぎるほどの性格ですからねえ, 今度の裁判が始まってからは同窓会にも一度も来てませんよ. 来れば吉津先生に会わなければならないからって.」
マイトはテープを止めた.
マイト「同窓会の幹事をやっている東都大学の助教授がこう言ってるんだ.」
オショウ「バーの女の話によると真由美の彼氏は辺見だといってる. デジコン,ちょっと頼む.」
デジコンの操作で辺見の写真がスクリーンに映し出された.
オショウ「これが辺見じろう26歳. 真由美に貢いでもらいながら司法試験を目指してる男だ.」
マイト「どっかで見たことあるなあ,こいつ.」

さて辺見は泥酔しながら歩いていた. するとオショウがおでん屋の屋台を開いていた. 水商売風の女に扮したタミーが辺見を無理矢理屋台に連れ込み,酒を飲ませた.
タミー「あたし,寂しいんだ.」
辺見「そんなのはお互い様だよ.」
タミー「だってさあ,あたしの男死んじまったんだよね. 散々あたしに貢がせといてさあ.」
辺見「貢がせてかあ.」
タミー「そう.ねえ,あんた.恋をしたことある?」
辺見の顔色が変わった.
タミー「あるよねえ.」
辺見「あるさあ.」
辺見は真由美のことを思い出していた.
辺見「女かあ.」
タミー「そう.男と女よ.」
突然,辺見は倒れてしまった.タミーは目配せした. とどめとばかりにオショウは「ちゃんと濃くしてあげるからねえ」 と眠り薬入りの日本酒を飲ませた. そして倒れてしまった辺見をデジコンとヨガが連れ去った.

さて真由美の部屋で辺見は裸にされてタミーと一緒のベッドに眠らされていた. そして気がついた辺見にタミーは抱きついて
タミー「恐い.ねえ,恐いの.引っ越してきたばかりなんだけど, 毎晩恐い夢ばかり.きっと幽霊がいるのよ.人に聞いたら, この部屋で男の人が女の人を殺して自殺したんだって.ね,聞こえるでしょう. 女の人が泣いているような,叫んでいるような.いや.恐い.殺さないで. お願い,いや.」
と言って立ち去ってしまった. 置いてけ堀の辺見にも女のすすり泣く声と怪しげな電子音が聞こえてきた. そして白い煙が辺見の周りを覆った.これは全てデジコンの仕業で, しかも辺見が先程飲まされた薬には情緒を不安定にする成分が入っていたのだ. デジコンはヨガに真由美の映像を映させた.
辺見「やめろ.やめてくれえ.」
だが真由美の姿は消えなかった.
辺見「許してくれ.」
ついに真由美が左胸から血を出し,胸を押さえる映像を見るに至って
辺見「やめてくれ.許してくれ.吉津先生がお前を殺すとは知らなかった. 許してくれえ.頼む.許してくれえ.」
辺見は半狂乱の状態で気絶してしまった.

翌朝.吉津の事務所で辺見は寝かされていた. 吉津は真由美の部屋へ行った理由を辺見に尋ねたが辺見は何も答えなかった. そこへ電話がかかってきた.金子が取り,吉津に代わった. 電話はマイトからのものだった. 吉津が辺見があのマンションに行ったことをしらされたのもマイトの差し金. さらにマイトは辺見の背中にテープがついていると言った. 吉津は金子に確かめさせた.たしかにテープが貼り付けてあった. そしてテープを再生してみると
辺見の声「俺はまさか真由美が殺されるなんて思わなかった. 吉津先生が命令してやらせたんだ. 金子も手伝って秋山検事を罠に陥れたんだあ.」
吉津はテープを止めた.
吉津「貴様,いったい,何が目的だ.金が欲しいのか?」
マイト「よくわかるなあ.そのテープのコピーはたくさんあるんだ. 何本かは言えないがねえ.」
吉津「どうしろというんだね.買えばいいのか.」
マイト「そのとおり.一本最低百万.それもキャッシュだ. 全部まとめて売るわけにはいかんがねえ.一本ずつ.そう,一本ずつだ.」
吉津「なんだと.」
マイト「明日までに百万円の札束をできるだけ用意しろ.それに自転車二台, リュックサック,トランシーバーもだ.わかったな.明朝また電話する.」

その頃,下校する和美のところへ小さな子がやってきて, 車に乗った女の人から言付かったと言って手紙を渡していた. それは桃色の封筒に入っていて, 赤いキスマークがされた黄色い紙が壁に留められた様子が, 描かれたシールで封をされた手紙,すなわち, タミーからのハンギングパーティの案内状だった. 和美は自宅で洋子と一緒に案内状を読んだ.
タミーの声「和美さん,お母さん.秋山検事に卑劣な罠をかけて殺し, 法と正義を踏みにじろうとした男達に裁きが下されることになりました. 明朝9時にタクシーを差し向けますので下記の場所へおいで下さい.」
ハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

さて吉津と金子は自転車に乗っていた. 金子は札束の入ったリュックサックを背負っていた.そしてタクシーの中で
オショウ「あの自転車の男を追えばいいですか?」
洋子「ええ.お願いします.」
オショウはタクシーの運転手に扮装し,洋子と和美を迎えに来たのだ. この経験が後にタイガーキャブで活かされた(嘘)
マイト「ご苦労さん.今から徐々に指令を出していくから, それに従うように.まずお堀端の和気清麻呂の銅像へ行ってもらおうか.」
吉津と金子は銅像の前についた.
マイト「銅像の下を探せ.」
吉津と金子は台座にテープがあるのを発見した.
金子「間違いありません.」
吉津「金はどうする?」
マイト「そのままでいいから,次は虎ノ門の歩道橋に向かってもらおうか.」
吉津と金子は虎ノ門の歩道橋へ向かった.
マイト「歩道橋を登って正面の水銀灯を探ってみろ.」
吉津と金子は歩道橋を駆け上がり,水銀灯を探した.
吉津「あった.」
金子「ありました.」
吉津「金はいいんだな.」
マイト「調子に乗るな.さっきの金を合わせて300万,歩道橋から投げろ.」
吉津「300万,投げろだと?」
マイトからの応えはなかった.
吉津「くー.おい.」
吉津は金子から300万を受け取り,歩道橋から投げた.野次馬が集まってきて, 金を拾い出した.
マイト「次の場所を指示する.早く歩道橋を降りて自転車に乗れ.」
オショウ「なにやってるんですか,あの人たちは?」
吉津と金子は自転車を走らせた.
マイト「次は晴海埠頭の公園だ.」
ヨガがバイクでやってきた.吉津と金子は息が上がってきた. そしてゴミ箱の中からテープを見つけた.
吉津「金はどうする?」
マイト「200万でいい.」
吉津「200万? ど,どうするんだ.」
マイト「海へぶち込め.」
吉津「海? 200万をか?」
マイト「そうだ.」
指示通り,吉津と金子は海へお札を放り投げた. 野次馬が勿体ねえなあと言う声が聞こえた.その様子を洋子と和美も見た. こういう具合に吉津と金子は都内をあちこち回らされた.マンションの屋上, どぶ川の淵.そして東京タワーのふもとなど.
マイト「さあ,ラストスパートだ.頑張っていこう.」
金子は下水の中からテープを拾い出した. そしてビルの屋上から現金を投げた.
マイト「次は三宅坂会館へ行ってもらおうか.」
吉津と金子は三宅坂会館の近くまで来た.
マイト「会館の前に自転車を置いて階段を一気に駆け上がれ.」
指示に従い,吉津と金子は会館の中に入った. その後ろには自転車に乗った警官もついていた.さらに
洋子「すいません,ちょっと待っていてください.」
オショウ「はい.」
洋子と和美も三宅坂会館に入った.オショウはデジコンに合図した. 吉津と金子は階段を駆け上がり,屋上へ.
吉津「ああ,あった.おい,金子.あったぞ.」
金子は倒れこんでしまった.そこへ
警官「おい.君達.無断で屋上へ上がって何をしてるんだ.」
吉津「なんだと.なんて口のきき方だ.わしは弁護士だぞ.」
警官「弁護士? いい加減なこというな. たった今,お前達が西原のテープを売りに歩いているという通報が入ったんだ. そのリュックの中身を見せなさい.」
警官と吉津,金子がもみ合ううちに札束とテープがリュックからこぼれ落ちた.
警官「おい.」
吉津「触るな.触るな.」
警官「この金はどうしたんだ.」
吉津「おい,おい,金子.何をしとるんだ.」
金子は立ちすくんだままだった.そして
金子「やだ.もうやだ.」
そう言って金子は座り込んでしまった.
吉津「何をしとるんだ.金子.何のつもりだ.」
金子「もう,もうやだ.テープなんてもうどうだっていい.」
この会話をデジコンも聞いていた.デジコンはスイッチを切り替えた. 途端に三宅坂会館に設置されたスピーカーから吉津と金子の声が流された.
吉津「どうして,どうして,金子.テープを回収しなけりゃ, みんなばれちまう.」
屋上へ三宅坂会館の職員が集まってきた.
吉津「俺たちの裁判はどうなるんだ.え? 俺たちはどうなるんだ.」
金子「知っちゃいないよ. 秋山検事と江川真由美を平田に殺させたのはあんたじゃないか.」
吉津「何を言うか.今度の計画を立てたのはどこのどいつだ. え? お前じゃないか.お前がわしをそそのかしたんだぞ.」
金子「嘘だ.秋山検事と真由美との関係をでっちあげたのはあんたじゃないか. あんたが張本人だ.」
吉津「黙れ.黙れ.黙れ. 秋山がわしのところへ1千万円借りに来たっていうデマを作り上げたのは, どこのどいつだ.」
金子「あれはそうさせろとお前に頼まれて.」
そのとき,警官がテープを再生しようとした.
吉津「ああ,やめろ,やめろー!」
辺見の声「俺はまさか真由美が殺されるなんて思わなかった. 吉津先生が命令してやらせたんだ. 金子も手伝って秋山検事を罠に陥れたんだあ.」
警官に襲い掛かる吉津,それを押さえる金子. そんな彼らの醜態を洋子と和美も見た.パトカーが三宅坂会館にやってきた. 去ろうとするマイトにオショウが声をかけた.
オショウ「お客さん,お客さん.乗っていきませんか?」
マイト「運転手さん,悪いですねえ. 私の顔には私の顔に合う車があるんですよう.」
マイトは自分の車を指差した.
マイト「運転手さんにはこの車,とてもよく似合いますねえ.」
オショウ「そのうち女に寝首かかれるよ.」
オショウは去って行った.マイトは車に乗ろうとしてこけてしまった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp