ある大学から女子大生の二人組が出てきた.
二人組の男(塩見三省ら)は車の中から様子を探っていた.
男「あのスラックスはいたメガネの方です.」
テニスラケットを持った女はメガネをかけた女野村さえこ(沢田和美)と別れた.
そこへさっきの男が登場.父親が交通事故にあったと称し,
さえこを連れ去ってしまった.
その頃,マイトはテニスコートにやってきた.
マイト「ああ,ごめん,ごめん.遅くなっちゃった.」
さっきのテニスラケットを持つ女子大生を含む女達6人が,
マイトを待っていた.
女子大生達「日下部さん,こんにちは.」
マイト「待たせたね.では早速,お手合わせを.」
女子大生「お手合わせだなんて,私達,まだほんのビギナーなんですよ.」
マイト「いやあ,僕だってビギナーですよ.女子大生を相手にするのはね.
さあ,参りましょう.」
その晩.さえこの父,野村康男(福田豊土)はさえこの帰りが遅くて心配していた. そこへ脅迫電話がかかってきた.脅迫者の男は警察に報せると, その時点で交渉を打ち切ると言って電話を切ってしまった. 電話を取ったしずえは呆然とするばかり.早速,康男達は警察へ報せた. 高森刑事達は東都ガスの工員に変装してやってきた. 刑事達は逆探知用の機器を電話に設置し,電話に張り込むことにした.その頃, 誘拐実行犯は警察が張り込んでいることを見抜いていた.そして翌朝. 誘拐実行犯の一人(塩見三省)は新聞配達員に変装. 新聞と一緒に脅迫状を投げ込んだ.刑事は新聞配達員を職務質問しようとしたが, 車で逃げられてしまった.無線でそれを知った高森が新聞を取りに行ったときに, 本物の新聞配達員がやってきて新聞を届けた. そして高森は偽者の新聞配達員が届けた脅迫状を発見した.要求額は3億5千万円.
マイトはテニスをしていた.テニスボールはマイトの股間に命中.
マイト「君,ボールをボールに当てちゃいかんよ.」
そこへさえこの友人の女子大生がやってきた.
女子大生「日下部さーん.」
マイト「きよみちゃん.どうしたんだい,こんなに早く.」
きよみ「日下部さん.大変なことが.」
マイトはきよみから野村さえこの誘拐事件のことを聞かされた.
マイト「誘拐された?」
きよみ「誰にも喋るなって言われたんですけど,
私,どうしたらいいのかわからなくて.」
マイト大喜び.
マイト「まあまあまあ.冷静に話し合おう.」
きよみ「さっき刑事さんが訪ねて来て,彼女と別れた時間とか,交友関係とか,
日頃の素行とか,私,はじめは冗談かと思ったんです.でも本当なんです.
ホントに彼女,誘拐されちゃったんです.もし,
もしも彼女に万一のことがあったら…」
マイト「で,犯人から何か要求でも?」
きよみ「それが,とっても無理な要求なんです.」
マイト「無理?」
きよみ「3億5千万も払えって.」
マイト「3億5千万?」
きよみはうなずいた.
早速マイトはタミーに連絡を取り,全員集めてくれと命じていた.
妙徳寺の本堂でよね子はエアロビクス体操をしていた.
オショウもエアロビクスをしていた.
よね子「一二三四,二二三四,…」
一生懸命やるよね子.オショウは疲れてやめてしまった.
オショウ「奥さん,ちょっと,もう,一休みしましょう.」
よね子「そんな弱音を吐かないで.」
よね子は続けるが,オショウは体がもう動かない.
オショウ「こりゃ体操と言うより拷問ですよ.」
よね子「オーバーねえ.これはねえ,今流行のエアロビサイズ.」
オショウ「え?」
よね子「とっても効果があるんですって.」
オショウ「なあんに効果があるんですよ.」
よね子「体をシェイプアップしてヤングに負けない体力を作って…」
オショウはいやな顔.
よね子「ねえ,和尚様.あの,青春の情熱をもう一度.」
オショウ「いや,いや.奥さんのお色気は今で十分ですよ.」
よね子「うーん.」
オショウ「あ,そうだ,奥さん.ね,あの,おうすなんてたてましてね,
これ,これ頂きましょう.」
オショウはお供えの羊羹を取った.
よね子「食べることばっかり.」
よね子はオショウを突き飛ばした.
オショウ「あーあ.」
羊羹は畳に落ちてしまった.オショウは羊羹を拾って元に戻した.
よね子は外へ出て行った.
オショウ「う,は,は,は,は,は.外へ行っちゃった.
さあ,体操,体操.」
オショウは羊羹を下に置き,腕立て伏せをはじめた.
腕立て伏せをするたびにオショウは羊羹を舐めた.
タミー「和尚さん.」
オショウ「え?」
タミー「どうかしたの?」
オショウ「おお,タミー.仕事か?」
タミー「マイトから召集命令よ.」
タミーは地下街に置いたゴミ箱(?)の上に座って瞑想するヨガにも,
召集命令を伝えた.その足でデジコンの店へもやってきた.
不精なデジコンはリモコンで鍵を開けた.
タミー「不精は発明の母なりか.」
ゴッドのオフィスに全員集合した.
デジコン「3億5千万?」
オショウ「一桁間違えてんじゃねえのか?」
マイト「犯人は本気で3億5千万の身代金を要求してきたらしい.」
タミー「でも相手は普通のサラリーマンなんでしょう.」
マイト「東亜銀行の総務課長野村康男.年収600万.
億の金を動かせる相手じゃない.」
オショウ「そんなことは犯人側も百も承知だろうに,
ホントの狙いってのはなんなんだい.」
デジコン「で,警察の動きは?」
マイト「当面は犯人側の動きを待って静観するつもりらしい.」
ヨガ「それにしても3億5千万とはなあ.」
デジコン「少なくとも身代金が目当てなら,
もっと現実的な金額を要求してくるはずだ.」
マイト「そこだよ.こいつはただの誘拐事件じゃなさそうだ.
裏に何かありそうだ.ゴッドも同じ意見だった.」
タミー「じゃ,正式な指令が出たわけね.」
マイト「まずは現場の偵察だ.」
マイトとデジコンは野村康男宅周辺を回り,ビデオカメラで撮影した. 刑事の張り込んでいる個所を探ろうというのだ. そして刑事の死角になっているビルの屋上から野村康男宅を見張ることにした. 一方,中央電器工員に化けた刑事が野村康男宅を訪れた. 怨恨の線も交友関係の線からも目星はみつからなかったというのだ. そこへ電話がかかってきた.夜中までに金を用意しろと言うのだ. 康男は,そんな金は用意できない,と答えると,犯人は, 勤務先の銀行から借りろ,と言った. 会話を伸ばせと言う高森からの指示で康男が,さえこの声を聞かせてくれ, と言うと犯人は用意したテープを再生した.そのかいあって, 警察は犯人が電話をかけてきた公衆電話の逆探知に成功したが, 警察が駆けつけたときはもぬけの殻だった. 高森も犯人の狙いが別のところにあるのではないかと睨んでいたのだが, 今の電話では本気で金を要求しているようだ.高森は康男に, 勤務先の銀行で一時的に用立ててもらえないかと頼んだ. しずえの頼みもあって,康男は承諾した. 銀行へ向かう康男の車をタミーが尾行した.高森はタミーの尾行に気づいたが, タミーに代わって途中でヨガがつけたので思い過ごしかと考え直した. ヨガは車が東亜銀行に入るのを見届けた.
康男と高森は東亜銀行頭取の岩淵洋介に3億5千万の融資を頼み込んだ.
岩淵は渋ったが,人命救助も大事だと特別決済で用立てた.
康男は土下座して礼を言った.一方,マイト達はヨガから報告を受けていた.
タミー「東亜銀行.野村って人が勤めてる銀行でしょ.」
ヨガ「ああ.」
マイト「なるほど.そういうことだったのか.
犯人が身代金を吹っかけてきたのは,
銀行から金を引き出させるつもりだったんだろう.」
オショウ「馬鹿な話だよ.銀行が身代金を融資するなんて聞いたことねえや.」
マイト「いやあ,無関係な人間だったら話は別だが,
野村は東亜銀行の総務課長だからなあ.
身内から頼まれればむげなく断れなかったんだろう.」
デジコン「犯人が捕まれば金は返って来るんだし,銀行とすれば実害は何もない.
むしろ,いい PR になるんじゃないのか.」
オショウ「いや,それにしたって3億5千万って金をだよ,
右から左へ融通するなんて,なあ.」
マイト「まあいずれにしても,人質の命は銀行が金を出すかどうかにかかってる.
念のために確かめてみようか.」
そこでデジコンは東亜銀行を電話局の人間と称して訪れ,
頭取室にかかる電話を盗聴できるように細工した.
野村康男の家に3億5千万の入ったアタッシュケースが4つ到着した.その頃,
岩淵は富岡産業開発の社長に電話していた.
岩淵「身代金は用意できたよ.」
富岡「そうですか.後のことはお任せください.」
それを盗聴したマイトとデジコンは怪訝な顔.
マイト「いったい,これはどうなってんだ?」
デジコン「妙な雲行きになってきたなあ.」
マイト「富岡産業開発か.」
その晩.ヨガが富岡産業開発の事務所に潜り込んだ.
そして書類の中から岩淵と富岡一郎が取り交わした念書を発見した.
オショウ「念書?」
デジコン「富岡は岩淵から5億円の融資を受けていた.闇でな.」
マイト「つまり,不正融資ってことか.」
デジコン「ああ.ところが,返済期限はとっくに切れてるんだ.
別の書類を見ると5億円のうち,返済がすんでいるのは1億5千万.」
オショウ「差し引き3億5千万が焦げ付いてるってことか.」
マイト「これで辻褄があったぞ.
奴らはその穴埋めをするために今度の誘拐事件を仕組んだんだ.」
オショウ「なんてこった.相手は自分の銀行の従業員の娘だよ.
まともな神経じゃねえよ.こりゃ,急がねえとやばいことになるなあ.」
マイト「今度の事件の唯一の証人は人質の娘だ.
奴らが生かして返すとは思えねえなあ.」
タミーとヨガは実行犯に盗聴機をつけた.マイトの懸念通り,
富岡はさえこの始末を命じていた.その頃,
刑事達は札束のナンバーを控えていた.そこへ犯人からの電話がかかってきた.
車のカーラジオを FM の 78.5MHz にセットし,
稲城街道を府中へ向けて野村自身の運転で向かえというのだ.
犯人は野村一人で車に乗れと言って,電話を切ってしまった.
早速野村は車を走らせた.高森達も尾行する.その頃,
さえこは殺されようとしていた.そこへマイトとタミーが現れて,
さえこを救出した.野村が運転していると犯人からの指示が入った.
犯人は一方通行を逆送させて尾行を察知.
そして警察の車の前にダンプを止めて尾行を妨害してしまった.
さらに野村の車を止め,野村を降ろして車ごと身代金を奪ってしまった.
アジトに戻った誘拐犯.
犯人「柴田さん,うまくいきましたぜ.」
男の声「御苦労.」
扉が開いて現れたのは柴田…ではなくマイトだった.
犯人「貴様.何者だ.」
マイト「名乗るほどじゃねえが,人呼んでトンビマンよ.」
犯人は唖然とした.
犯人「トンビマン!?」
マイト「横から油揚げをさらうトンビのトンビマン.
さあ,身代金を渡してもらおうか.」
犯人はマイトに飛び掛ってきた.すかさずマイトが合図すると,
オショウとタミー,そしてデジコンとヨガが登場.犯人達は捕まってしまった.
オショウ「さあ,残りは大物二匹だ.」
マイト「岩淵と富岡をハンギングだ.」
翌朝.犯人に逃げられ,身代金を奪われてしまった野村康男は落胆していた.
その時,呼び鈴が鳴った.康男は玄関に出たが誰もいない.が,
郵便受けに手紙が入っているのを発見した.それは黒い封筒に入っていて,
導火線に火のついたダイナマイトを手に持ち,
葉巻をくわえたギャンブラーが描かれたシールで封をされた手紙,すなわち,
マイトからのハンギングパーティの案内状だった.康男は案内状を読んだ.
マイトの声「野村康男様 本日,午後1時新宿中央公園においで下さい.
お嬢さんの身柄をお引渡しするとともに誘拐一味とその黒幕に対して
審判が下されます.」
康男はしずえに案内状を見せ,さえこの無事を報せた.
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.
富岡のところにダイナマイトで脅された柴田から電話がかかった.
富岡「あ,君か.連絡がないので心配していたところだ.」
柴田「それがその,サツを巻くのに手間取ってしまって.」
富岡「で,金はどこにあるんだ.」
柴田「ちゅ,中央公園の東門のふちに黄色のワゴン車が止まってます.
指示はその車の中に.うわ.」
富岡「で,車のキーは?」
柴田「とにかく,そのう,車のそばに来ていただければ,わかります.」
富岡「わかった.早速頭取に連絡して取りにいこう.」
富岡は電話を切った.爆発する恐怖で柴田は叫んだが
マイト「花火だよ.ご苦労さん.」
新宿中央公園ではヨガとデジコンが網を仕掛けて待っていた.
誘拐犯は車の中に縛られ,猿轡を噛まされて後部に転がされていた.
黄色いけれど,ワゴン車じゃねえぞ.それはともかく,岩淵と富岡がやってきた.
車からタミーとさえこが出て様子を伺った.
岩淵「なんだ,お前達は.」
富岡「どうしたんだ.」
誘拐犯は縛られ,猿轡を噛まされているので喋ることができない.
富岡「おい,金はどうした.」
犯人は公園の方を向いた.
岩淵と富岡はアタッシュケースを一つずつ拾っていった.
そして最後の一つを拾い,喜んだ.
すると「ごくろうさま!! バカ!!」という紙が置かれているのが見えた.
岩淵「ごくろうさま,バカ.なんだこりゃ.」
と叫ぶと同時に岩淵と富岡は網をかぶせられ,そのまま吊るされてしまった.
野次馬が周りに集まってきた.「助けてくれえ」と叫ぶ岩淵と富岡.
そこへ野村康男としずえもやってきた.
康男「頭取.」
岩淵「あ.」
そこへさえこが駆け寄ってきた.
さえこ「お父さん.お母さん.」
康男「さえこ.」
三人は抱き合って喜んだ.
康男「よかったなあ.おい,さえこ.これはどういうことなんだ.」
さえこ「あたしを誘拐した犯人は捕まったわ.
それに,犯人を影であやつってたのはあの頭取だったの.」
さえこは岩淵達を指差した.
康男「まさか,頭取が?」
さえこはうなずいた.
岩淵「いやあ,わしは知らん.わしはなんにも知らないんだ.
全てはこの富岡がやったことなんだ.わしは一切関係ないことなんだ.」
パトカーのサイレンが聞こえてきた.
富岡「頭取.なに,いまさらとぼけちゃいけませんよ.
あんたが張本人じゃないですか.私は無理矢理やらされただけなんだあ.」
岩淵「何を言うんだ,この恩知らず.いや,ホントなんだ.」
だがこの言い訳は康男には通じなかった.康男は岩淵に詰め寄った.
そこへ高森がやってきて,康男を制止した.
さてテニスコートで.
マイト「悪いねえ.いつも待たしちゃって.」
きよみ「日下部さん.グッドニュースがあるのよ.」
マイト「グッドニュース?」
きよみ「さえこが無事に戻ってきたのよ.」
マイト「そりゃあ,良かった.」
きよみ「それにもう一つ.」
マイト「もう一つ.」
きよみ「あたし,新しいボーイフレンドができちゃったんです.」
マイト「そう.そりゃよかった.」
きよみ「としひこさん!」
このバッドニュースにはマイトは複雑な表情.
マイト「君,テニスできるの?」
きよみ「彼,インターカレッジのチャンピオンなんです.」
としひこ「よろしくお願いします.」
きよみ「行きましょう.」
きよみはとしひこを連れてコートへ行ってしまった.
マイト「何がインカレだ.淫乱男.俺の立場はどうなるんだ,俺の立場は.」
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