深夜のスクラップ置き場.
男が車でやってきて黒木(長塚京三)に書類を渡していた.だが車でやってきた男,
島野は黒木の欲しがっていた SD350 の製造マニュアルを持ってこなかった.
島野が持ってきた書類程度の情報をすでに黒木は握っていたのだ.
そのことを黒木が詰問すると,島野は自分が収集できる情報はこの程度だと言い,
さらに危ない橋を渡るのはもう嫌なので手を切りたいと開き直った.
黒木「あんたは知りすぎたようだ,我々の仕事を.」
黒木の部下は島野にガソリンをかけ,島野に火をつけてしまった.
たちまち島野は火ダルマになり,のた打ち回って死んでしまった.
さてデジコンの店でマイトは競馬中継を見ていた.
デジコンの予想では確率 88% で 4-5 が来るはずだ.
マイト「(無茶苦茶,力を込めて)来た,来た,来た,来た.4-5,4-5,4-5!
行け.突っ込め,突っ込め.そう,そう,そう,そう,そう.そこだ.
倒せ.倒せえ.」
各馬,ゴールイン.
デジコン「当たり?」
マイト「(力なく)外れ.(力を込めて)冗談じゃないよ.
4-5,88%当たるって言ったじゃないか.見てくれ,これ.特券.10万.」
デジコンは開き直った.
デジコン「大体ねえ,コンピュータに競馬の予想させようなんて言う,
その不純な発想が良くないんだよね.」
マイト「何が不純だよ.君の方がよっぽど不純じゃないか.知ってるぜえ.」
デジコン「何?」
マイト「この,アホコンが!」
マイトはコンピュータのディスプレイを叩いた.すると
コンピュータ「アホハ,オマエダ.」
デジコンは大笑い.
マイト「なんでい,何がお前だよ.」
そこへ電話がかかってきた.
デジコン「あ,もしもし.ああ,タミーか.」
マイト「何がタミーだい.」
タミーはゴッドのオフィスにいた.
タミー「デジコン.ゴッドから召集命令よ.ねえ,ねえ.
マイト,どこにいるか,知らない?」
デジコン「ああ.ここでふてくされてるよ.コンピュータにおちょくられてね.
ふん.え? 集合? ああ,わかった.」
マイトはデジコンから受話器を取り上げ,鬱憤を晴らそうとした.
マイト「オカチメンコ.ブス.何?」
さてオショウが妙徳寺に帰ってくると,
本堂から騒々しい音が響いてくるのが聞こえた.
本堂にいたよね子がカラオケで「別れても好きな人」を歌いながら,
木魚を叩いていたのだ.
よね子「あら,和尚様.」
オショウ「なーにをやってるんですか.お寺の中で大きい音で歌,
歌ったりなんかして.檀家の人が聞いたら何だと思います.」
それでもよね子はへこまない.
よね子「今度の日曜日にうちの町内でカラオケのコンクールがあるんですの.
それに和尚様とデュエットで出演しようと思いまして.」
オショウ「あたしとデュエット? とんでもない話ですよ.
あたし,歌なんか駄目ですよ.」
だがよね子はカラオケのスイッチを入れた.
よね子「そんなご謙遜なさらないでーん.」
オショウ「何を歌うんです?」
よね子「はい.これ.」
よね子はオショウに歌詞カードを渡した.
オショウ「え? 『一本刀土俵入り』いいですねえ,これは.」
よね子「いやーん,こっちよ.」
オショウ「別れても好きな人」
オショウは溜息をついた.
よね子「いくわよ.♪別れた人にあ〜った.はい.」
オショウ「♪別れた渋谷であ〜った.」
よね子「一緒に.」
よね子とオショウ「♪別れたときとおんなじ雨のよ〜る〜だ〜った」
そこへちょうどいい具合に電話がかかってきた.
続きを歌っているよね子をほっといて,オショウは電話に出た.
オショウ「はい.妙徳寺でございますが.」
タミー「随分にぎやかなお経ね.」
オショウ「あ,いやあ,今ちょっと取り込み中でございまして.」
タミー「すぐに集合よ.」
オショウ「はい.承知いたしました.」
オショウは電話を切った.
オショウ「奥さん.急に葬式,できましたんで,私,ちょっとでかけます.」
よね子「うーん.せっかくムードが盛り上がってきましたのにー.」
オショウ「一人で盛り上がってください.それじゃ.」
よね子「そんな,和尚様.もう.」
よね子は木魚を力いっぱい叩いた.
ゴッドのオフィスでマイトは新聞を見ていた.
マイト「また役人の汚職ですか.」
マイトは「財務省で再び汚職事件!!」という記事を見ていた.
ゴッド「その下の方の記事だよ.」
ゴッドが言う記事は「会社員が焼身自殺」という二段抜きの小さな記事だった.
マイト「ああ,これか.」
オショウ「全身にガソリンを浴びて焼身自殺か.かわいそうに.」
ゴッド「問題はその男の身元なんだが…あ,デジコン,スライド.」
デジコンの操作により,男の写真が映し出された.
ゴッド「名前は島野たかお.32歳.東亜工業大学電子工学科を主席で卒業し,
光進電機に入社.以来,コンピュータの技術開発一筋に打ち込んできた
エリート社員だ.」
デジコン「光進電機って言うのは,最近 350 Kbit という,
驚異的な記憶素子を持った超 LSI の開発に成功したそうで,
一躍コンピュータ業界の脚光を浴びている会社だ.」
ゴッド「私が疑問を抱いたのもそこだ.
画期的な技術開発を成し遂げた会社のエリート技術者が自殺する.
どうも裏に何かがあるような気がしてならんのだよ.」
マイト「つまり,これは偽装殺人と言うことですか.」
ゴッド「私はそう睨んでいるんだが,断定するだけの証拠は何もない.」
マイト「なるほど.エレキとなるとデジコンの仕事ですよ.」
ゴッド「デジコン,光進電機の技術開発部を当たれ.」
さてその頃.地下駐車場で黒木がある会社の専務(佐原健二)と会っていた. 専務は人殺しの件を懸念したが,黒木は専務に心配する必要はないと答えた. 専務はさらに例の品物がいつ手に入るのかと聞いた. 専務は本社からせかされていた.光進電機に先駆けて, どうしても今月末には SD350 を商品化したいというのだ. 事は専務の進退問題に発展していた. 黒木は光進電機の技術開発部長(塚本信夫)に目をつけていた. 光進電機の技術開発部長は酒も女もやらない堅物だったが, 一つだけ弱点があると言うのだ.
さて黒木が目をつけた男,中沢は新聞記事で例の事件を知った. そして病院へでかけようとしていた. そこへデジコンが雑誌社記者に化けてやってきた. デジコンは中沢に取材を申し込むが, 中沢は外出するので日を改めて連絡をくれと答えた. そこでデジコンは中沢に見本として雑誌を渡した. 中沢はよほど急いでいたらしく,受付嬢に自席へ運ぶように命じて出て行った. タクシーで外出した中沢を見送ってからデジコンは自分の車に戻った.
中沢は膠原病を患っている妻を見舞いに行ったのだ.妻は, せっかく家ができたのに,と悲しそうな顔. 中沢は中学生の娘とともに妻を励ました.そして医師に病状を聞きに行った. 病状は余談を許さなかった.ラジウム鉱泉が効き目があるというが, 治療には一年以上はかかる.医師は費用がかかるので無理には勧めないが, と言うが,中沢は何とか温泉へ行かせると答えていた.
病院から戻った中沢は常務に会い, 妻の治療費に少し借用できないかと金策を願ったが, 常務は住宅建築に用立てたばかりなのでそれはできないと答えた. 続けて常務は島野の件を中沢と話し合った. SD350 の資料が複製されて外部へ持ち出された形跡があるというのだ. その件と島野の自殺が関係あるのではないかと常務は睨んでいた. 警察に報せようと言う中沢を常務は制止した.自分達の責任問題になるからだ. 続けて常務は外資系の IEI 国際電子産業が血眼になっているらしいと告げ, 身辺に気をつけろと警告した.とここまでデジコンが盗聴したところで, デジコンが雑誌の見本に仕込んでいた盗聴機を中沢が発見した. 中沢は盗聴機を灰皿で叩き壊した.
早速,茶室でデジコンはゴッドに報告した.
ゴッド「産業スパイ?」
デジコン「ええ.島野は超 LSI に関する情報を他社に流していて,
口封じのために消されたんです.」
ゴッド「そうか.となると問題は情報を盗もうとした企業だが,
何か目星でもあるのか?」
デジコン「コンピュータ業界でシェア第1位を占めているのは,
外資系の IEI 国際電子産業です.
もし光進電機が SD350 の企業化に成功すれば,
IEI はトップの座から滑り落ちるのは確実です.」
ゴッド「なるほど.しかし,企業ぐるみか,それとも,
ただの産業スパイの仕業か.」
デジコン「殺された島野の交友関係を洗ってゆけば,
彼に接触した人物が浮かび上がると思うのですが.」
ゴッドはうなずいた.
翌朝.学校へ送る車の中で光進電機部長の中沢民雄は娘のけいこに話をした.
中沢は家の前で車を止め,しみじみと言った.
中沢「けいこ,あのうち,売るかもしれんぞ.」
けいこ「え? 建てたばっかりなのに.」
中沢「ママを温泉に行かせるには,凄いお金がかかるんだ.」
けいこ「そうね.仕方ないけど,でもママ,悔しがるだろうなあ.
自分の夢が叶って建てたばっかりに入院しちゃったんだもん.
毎日,退院してあのうちで暮らす夢ばっかり見るんだって.」
中沢はしばらく無言だったが
中沢「パパには,それしか方法がないんだ.」
けいこ「あたしはいいわよ.家よりママのが大事だもん.」
それを聞いて中沢は安心し,車を発進させた.
と同時に一台の車が中沢の車を尾行した.中沢がけいこを降ろすやいなや,
その車から黒木の部下が降りて,相談したいことがあると言った.中沢は,
用なら会社で,と言うが,部下は,奥様の病気を治す方法についてです,
と言った.中沢は部下についていった.部下は500万円を渡し,
協力すれば中沢の妻の治療費を全て負担すると言った.だが中沢は協力を断った.
部下が SD350 の費用を狙っているのが明らかだったからだ.部下は,
妻を温泉へ行かせれば1日最低でも1万円,人を雇えば1ヶ月100万円かかるだろう,
と言い,あなたの給料では負担しきれないことを指摘.
けいこの声「毎日,退院してあのうちで暮らす夢ばっかり見るんだって.」
だが中沢は協力を拒絶した.中沢は島野を操ったのが彼らであることも見抜いた.
そして部下の乗る車のナンバーを確かめようとしたが,
部下「ナンバーを見たって無駄ですよ.これはレンタカーですから.」
部下は悠々と去って行った.
早速黒木は中沢が金を受け取らなかったことを専務に報告.
専務は本社から期限を3日間と言う期限を切られていると言い,
非常手段を取ると言う黒木に一任した.
その頃,タミーは島野の家を当たった.
独身の島野のマンションにはもう別の人物が入居していた.
だが管理人からタミーは有力な情報を聞き込んだ.
島野は銀座のクラブに好きな女がいて,頻繁に出入りしていたと言うのだ.
マイト「これは女が絡んでいるな.俺の仕事だ.」
その晩.早速マイトはヨガを連れ,
島野が出入りしていたクラブ「ビルトモア」へやってきた.
ホステス「へえ.こちら,ヨガの先生.」
ホステス「ホント? ねえ,ねえ.ヨガやると本当やせられるの?」
マイト「美容にはテキメン.
それによがるって言うし.」
ホステスは大笑い.
マイト「ツービートのもう一人のほう,よくないからね.
俺,今引っ張られてるの.」
ここでマイトは本題に入り,島野のことを聞き込んだ.
いつも黒木という男と一緒だったと言うのだ.だが黒木は最近顔を見せなかった.
ホステスは黒木のことならエミというこに聞けと言った.
エミは1ヶ月前にこの店をやめていた.
その頃,車を運転していた中沢はエミを轢きそうになった.
中沢はエミをエミのマンションまで送った.エミは礼を言い,
中沢にコーヒーを勧めた.エミは中沢のコーヒーに眠り薬を入れた.
そしてエミは外の車の中にいた黒木と黒木の部下に合図を送った.
中沢は眠り薬入りのコーヒーを飲んでしまった.エミは中沢の持っていた,
「T. N. 」というイニシャルの入ったライターのことを聞いた.
このライターは社長からご褒美に中沢がもらったものだったのだ.
突然,エミは中沢を誘惑し始めた.エミはブラウスを脱ぎ,ブラジャーも脱ぎ,
中沢に迫った.
中沢「馬鹿な真似はやめなさい.」
思わず中沢はエミを突き飛ばしてしまい,
エミはテーブルに頭をぶつけてしまった.
そして中沢は眠り薬が効いて眠ってしまった.
すかさず黒木と部下がエミの部屋に入ってきた.
エミ「うまくいったわ.案外堅くってねえ,
あたしが裸になっても帰るって言うの.」
だがエミは黒木にスパナで頭を殴られて死んでしまった.
黒木は例のライターを取り,
部下は中沢とエミが倒れこんでいるところを写真に撮った.
夜中の3時になって気がついた中沢はエミが死んでいるのを発見.
さっき突き飛ばしたときに死んだものと早合点してしまった中沢は,
逃げ帰ってしまった.
翌朝.ゴッドのオフィスで.
デジコン「黒木?」
オショウ「なにもんだ,そいつは?」
マイト「ライバル企業に雇われた産業スパイかもしれん.」
タミー「で,何か手がかりでも?」
マイト「女の住所は聞いてきた.」
ヨガが紙を出した.紙には「東京都新宿区戸山町 2-16-1 プリンス マンション
高瀬 栄美子」と書かれていた.
オショウ「高瀬栄美子.」
マイト「あの店のホステスだ.どうやら黒木とできてたらしい.」
オショウ「よし.今度は俺が当たる.」
オショウはエミの部屋へ向かった.呼び鈴を鳴らしてもでない.
ドアに鍵がかかっていなかったので入っていくと,部屋には誰もいなかった.
その頃,中沢は新聞を隅から隅まで読み,
「自分が犯した殺人」が報道されていないかどうか確認していた.
中沢「まだ発見されてないか.」
中沢はあのときのことを思い出していた.そしてあることに思い当たった.
中沢「睡眠薬か.」
中沢はポケットを探った.
中沢「ライターがない.まさか,あの女の部屋に…」
そこへ黒木から電話がかかってきた.
黒木「あなたのライターを拾ったものです.」
中沢「ライターを.どこで見つけたんですか?」
黒木「あるマンションの一室でねえ.」
中沢は驚いた.
黒木「女の死体と一緒に.」
中沢は絶句した.
黒木「まずいですねえ.殺人現場に証拠を残していっちゃ.
しかし,まあ,ご心配にはおよびません.死体は始末しておきましたし,
部屋の中のあなたの指紋もきれいにふき取っておきましたからね.」
中沢「あんた,いったい,何者なんだ.」
黒木はその問いには答えなかった.
黒木「それより,取引がしたいんですがねえ.」
中沢「取引?」
黒木「あなたのライターと引き換えに
SD350 の製造マニュアルを頂きたいんです.」
中沢「なんだって!」
黒木「返事は明日の12時.ライオンズホテルのロビーでお聞きしましょう.」
そう言って黒木は電話を切ってしまった.
中沢「罠だ.罠にはめられたんだ.」
エミの死体は多摩川の小田急の鉄橋近くで見つかった.
デジコンの店にオショウが苦虫潰して登場した.
オショウ「おそらく,この女も何らかの形で奴らと関わりあったんだろうな.」
デジコン「うーん.オショウ,奴ら,
この女を使って島野以外の人物にも接近しようと.」
オショウ「金で動かん奴は色仕掛け,な.」
デジコン「なるほど.」
デジコンとヨガは中沢を尾行した.そして中沢が Lions Hotel Shinjuku で
黒木と会うところをビデオ撮影した.
黒木「断る?」
中沢「私はまんまと罠にはめられたんだ.」
黒木「しかしあなたは現実に女を一人殺したんですよ.」
中沢「あの女はグルだったんだ.死んだまねをして私を脅迫する.
それが,あんた達が書いた筋書きだったんだ.」
黒木「中沢さん.新聞をご覧になっていないようですね.
あの女は本当に死んだんですよ.あなたに突き飛ばされてね.」
黒木は死体発見を報じた新聞記事を見せた.
黒木「そこまでは私の筋書きにもなかったんです.とんだハプニングでしたよ.」
中沢は驚いた.
中沢「いや,あれは過失だったんだ.女は勝手に倒れて.」
黒木「見てくださいよ,この写真を.」
それは黒木の部下が撮影した,エミと中沢が一緒に倒れている写真だった.
中沢は驚いた.
黒木「女はブラウスを脱がされて胸もあらわな姿で死んでたんですよ.
いったい,どんな過失があったと想像しますかねえ.」
中沢は震えが止まらなかった.
中沢「これははめられた何よりの証拠だ.」
黒木「こんな言い訳が通ると思いますか.奥さん病気なんでしょう.
お嬢さんはまだ学校だ.そんな二人を厳しい世間に放り出して,
いったいどうなるとお思いですか.」
ついに中沢は脱帽した.
中沢「負けたよ.あんたの要求を飲もう.」
ヨガは黒木の後をつけ,黒木の車が IEI (International Eletrical Industry)
の社屋に入るのを見届けた.
デジコンはビデオテープをコンピュータにかけ,
中沢と黒木の会話を全て解析した.ゴッドのオフィスで,
ヨガを除く4人のハングマンとゴッドが解析結果を聞いた.
マイト「つまり,この男は中沢部長に殺人の濡れ衣を着せ,
問題の技術情報をゆすりとろうとしていたんだな.」
オショウ「裏に誰かいるなあ.」
そこへヨガから電話がかかってきた.
デジコン「あ,もしもし.ヨガか.うん.何? IEI へ?」
ヨガ「ああ.そこの重役の佐原と言う男と一緒にクラブで飲んでる.」
デジコン「佐原か.よし,そのまま張り込んでいてくれ.」
デジコンは電話を切って電話の内容を報告した.
デジコン「やっぱり,黒木を影で操っていたのは IEI の佐原って男だ.」
オショウ「IEIってなんだい?」
マイト「国際電子産業.外資系のトップ企業だ.」
オショウ「やり方がきたねえなあ.」
タミー「罠を仕掛けるために人の命を奪うなんて,人間のすることじゃないわ.」
ゴッドは決断した.
ゴッド「よし.今回は佐原と黒木.この二人をハンギングだ.」
クラブで佐原に黒木が首尾を報告.二人は乾杯した.二人はハイヤーで
帰ることにした.そのハイヤーを運転していたのはデジコンだ.
佐原「君,道が違うんじゃないか?」
デジコン「そうですか? 戻りますか.」
黒木「戻る? 何をふざけたこと言ってるんだ.」
突然,デジコンはハイヤーを止めた.
黒木「おい,どうしてこんなとこ,止めるんだ.おい.」
そこへガスマスクをつけたオショウが登場し,催眠ガスを噴射した.
オショウ「大成功.」
翌朝.
黒木の要求を飲んだ中沢は SD350 の製造マニュアルを複写していた.
そこへ青い封筒に入っていて蜘蛛が描かれたシールで封をされた手紙,
すなわち,デジコンからのハンギングパーティの案内状が届いた.
中沢「なんだ,これ.」
そう言いながらも中沢は案内状を読んだ.
デジコンの声「本日午後2時,下記の場所へおいでください.
貴方を脅迫し,SD350 の技術情報をゆすり取ろうとした犯人に,
審判が下されます.」
地図が示す場所は新宿コマ劇場の前.
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.
マイト「はい.お目覚めの時間ですよ.」
マイトは佐原の鼻をつまみ,顔を叩いて佐原を起こした.
佐原も黒木も頭に銀色のヘルメットをかぶせられ,首に銀色の紐がかけられ,
さらにヘルメットには鎖がついていた.
またヘルメットには銀色の角のようなものがついていた.
黒木「おい.ここはどこだ.ここは.」
扇のような看板に「クイズ」「電気ショック」と書かれているのが見えた.
オショウ「おはよう.おめざめかな.」
佐原と黒木の頭の上には目盛りの描かれた板がくくりつけられており,
板の上の方に銀色の球がついていた.
黒木「なんだ,お前達は.」
マイト「我々はクイズ番組を制作しているハングマンユニオンのスタッフです.」
佐原「ハングマンユニオン?」
マイト「はい.」
タミー「まず,ルールのご説明から.
このスピーカーから出題者の声が流れてきます.」
デジコン「解答がなかったり,嘘の答えをした場合,
頭の上の鉄の球が一目盛りずつ降りてくる.」
マイトは見本のマネキンを指差した.
マイト「いいですか.その鉄の球が下がりきって,
解答者のヘルメットの電極板に接触すると…」
マイトとデジコンはサングラスをかけた.
デジコン「こういうペナルティが科せられますよ.」
デジコンがリモコンスイッチを押すと,鉄球が電極板に接触し,
高圧電流が流れて火花が飛んだ.火花の威力は凄まじく,
佐原が思わず頭を後ろへそらし,
黒木が恐怖で脂汗を浮かべて口をパクパクするほどであった.
デジコンがスイッチを切り,マイトとデジコンはサングラスをはずした.
オショウ「ご覧いただけましたね.あなた方が座っている椅子と,
このモデルが座っている椅子,これは構造は全く同じ.どうぞご安心下さい.」
デジコン「ちなみにただいまの電圧は1万ボルト.」
マイト「面白い趣向のクイズでしょ.
名づけてクイズ(デジコンと一緒に)で〜んきショック!」
マイト「さあ本番参りましょうか.」
マイトとデジコンはどこかで聞いたことのあるようなクイズ番組の節に合わせて,
題名を唱えた.田宮二郎さんも山口崇さんも満足していることだろう.
マイト達は去って行った.その際,デジコンは佐原のヘルメットを叩き
デジコン「よろしく.」
佐原「何をするつもりだ.」
マイト「クイズ.」
佐原「おい.」
黒木「おい,待て.待ってくれよ.」
佐原「いったいここはどこなんだ.」
光進電機を出ようとした中沢のところへ娘のけいこがやってきた.
けいこ「パパ.」
中沢「おう,けいこ.」
けいこ「ママがね,パパに話があるんだって.」
中沢「は?」
けいこ「うすうす,あのうち売ること感づいたみたいよ.」
中沢は時計を見た.
中沢「パパなあ,どうしても,この目で確かめておきたいことがあるんだ.
それを済ましたら病院へ行く.」
中沢は駆け出したが,ふと何かを思い出し,立ち止まって言った.
中沢「あ,それからね,ママに言っとけ.何を心配することはない.
今は病気を治すことだけを考えろって.いいね.」
そう言って中沢は走り去った.
「クイズ!? 電気ショック」の出題が始まった.
マイト「あなたの心臓に挑戦するクイズ電気ショック.まず一問目はこれから.
あなたは光進電機が開発した超 LSI の技術情報を盗もうとしましたね.
Yes か No か,答えてください.」
チッチッチッチッチッと時計の音がした.
佐原「こんな子供だましにはひっかからんぞ.」
黒木も無言だったのでブザーがなった.鉄球が一目盛り降りた.
それを見た黒木は顔をこわばらせながら
黒木「せ,専務.」
マイト「では,二問目.あなたは光進電機の島野という男をそそのかし,
情報を持ち出させようとしましたが,成果が得られず,彼を殺害しました.
Yes か No か.」
またチッチッチッチッチッと時計の音がした.
佐原「黒木.何も言うな.わしらは何も知らん.
こんな子供だましの脅しにはひっかからんぞ.おい,聞いてるのか.
どこにいるんだ.」
佐原の叫びはスピーカーを通じて大音量で外へも流された.
そしてデジコンが録音していた.ブザーが鳴り,鉄球が一目盛り下がった.
黒木「ちょっと.ちょっと待ってくれよ.」
黒木が解答者用の早押しボタンを押した.
マイト「はい,黒木さん,どうぞ.」
黒木「Yes.島野を殺したのは俺だ.」
マイト「正解です.」
佐原「黒木,何を言う.喋んな.」
黒木「しかし…」
マイト「では三問.
あなたは光進電機の中沢部長に殺人の濡れ衣を着せようとして,
高瀬栄美子と言う女性を殺害しました.Yes か No か.」
またまたチッチッチッチッチッと時計の音がした.
佐原「答えるんじゃない.」
だがブザーが鳴り,鉄球がまたまた一目盛り降りると,
佐原「ああ.」
佐原は舌の根も乾かないうちに解答者用の早押しボタンを押していた.
佐原「言う.言うよ.」
マイト「はい,佐原さん,どうぞ.」
佐原「み,みんな,君の言う通りだよ.」
黒木「俺は関係ないぞ.
島野殺しも,栄美子殺しもみんな専務の差し金なんだあ.」
佐原「黒木! 裏切るのか.」
その瞬間,壁が開いた.実は佐原と黒木はトラックの荷台に載せられていた.
そしてトラックは新宿コマ劇場の前に止められており,
野次馬がトラックの周りに群がっていた,
タミー「ただいまの解答者の答えを繰り返しお聞かせします.」
マイトの声「では,二問目.あなたは光進電機の島野という男をそそのかし,
情報を持ち出させようとしましたが,成果が得られず,彼を殺害しました.
Yes か No か.はい,黒木さん,どうぞ.」
黒木の声「Yes.島野を殺したのは俺だ.」
マイトの声「正解です.」
黒木「専務.何か言ってくださいよ.何とか言ってくださいよ.」
その様子を中沢も見ていた.
マイトの声「では三問.
あなたは光進電機の中沢部長に殺人の濡れ衣を着せようとして,
高瀬栄美子と言う女性を殺害しました.Yes か No か.
はい,佐原さん,どうぞ.」
佐原の声「み,みんな,君の言う通りだよ.」
黒木の声「俺は関係ないぞ.
島野殺しも,栄美子殺しもみんな専務の差し金なんだあ.」
佐原の声「黒木!」
ハングマンは立ち去った.入れ替わりにパトカーがやってきた.
さてデジコンの店で懲りずにマイトは競馬中継を見ていた.
デジコンの予想では確率 75% で 3-7 が来るはずだ.
マイト「(無茶苦茶,力を込めて)来た,来た,来た.2-4,2-4! ほら行くよ.」
デジコン「コンピュータ,3-7 の 75%.」
マイト「(無茶苦茶,力を込めて)そんなの当たるわけない,3-7なんて.いいぞ.
ほら見ろ.来た,来た,来た,来たあ!」
各馬,ゴールイン.
デジコン「何が?」
マイト「(力なく)3-7に抜かれた.」
デジコン「ああ.コンピュータが 3-7 だって教えてたのに…ああ.
馬鹿だねえ.」
デジコンは頭を抱え,マイトは外れ馬券を放り投げた.
マイト「この,アホコンが!」
またマイトはコンピュータのディスプレイを叩いた.すると
コンピュータ「アホハ,オマエダ.」
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