第三回

学院を食い物にする悪徳理事長の悪事を暴く.
女学生を喰らう大学理事長

脚本:鴨井達比古 監督:小澤啓一

ある山の中.東都学院大学建設予定地として更地になっている真中に, 木が伐採もされずに林になって残っている場所があった. そこは水野(山本亘)の土地だった. 水野の元を男が二人(中田博久ら)訪れ,土地を売るように頼んでいた. だが水野は自然の中の生活を大切にしたいといい, さらに徳大寺に今の東都大学を母校とは思っていないと伝えろと付け加えた. 男達は後悔しますよと言って去って行った.

徳大寺(南原宏治)は激怒.最後の手段を取るよう命じた. その晩,水野は徳大寺の部下である不動産会社社長(中田博久)に襲われた. 血が飛んだのを見た社長は水野の家を焼き払うように命じた.

デジコンの店

しばらく経ったある日. デジコンは「哲学の再発見」という水野信太郎の書いた本を読みながら, テープに録音された野鳥の囀る音を聞いていた.そこへタミーがやってきた. タミーは水野の件で動き出したことをデジコンを伝えた. それを聞いてデジコンは驚いた. 水野はデジコンの店の客でデジコンとも仲が良かった. 今聞いているテープは水野が録音したものだった.

今週のよね子

弁当に手をつけようとしたオショウはよね子に手をはたかれた.
よね子「和尚様,わたくしがせっかくこうしてお弁当を作ってまいりましたのに, どこ行ってらしたんですか?」
オショウ「ですから今日は中村さんで法事がありまして.」
よね子「法事?」
オショウ「はい.」
よね子「法事って一日中かかるものなんですか?」
オショウ「いやいや,ですから,あのう,法事の後ですねえ, あのう,息子さんの進学のことでいろいろと相談を受けまして.」
しつこいよね子に閉口したオショウは鐘を叩いてごまかそうとした.
よね子「何の相談だかわかるもんですか. 大体あの家の女房は亭主が死んでから男と見たら見境がないんですから.」
自分を棚に上げてよね子は言いたい放題だ.
オショウ「そういう言い方は失礼じゃないですか. 中村さんの奥さん,あれでなかなかしっかりした方でねえ.」
よね子「まあ和尚様,あの女をかばうんですの? 悔しい.」
よね子は怒り狂ってオショウをはたこうとした.
オショウ「落ち着いて,落ち着きなさい.」
よね子「和尚様,ねえ.」
(勝手に)嫉妬に狂い狂乱するよね子.その時,オショウは何かの気配を察した.
オショウ「誰だ,今頃,鐘なんかつくやつは.怪しい奴だ. ここを動いてはいけませんよ.」
よね子はうなずいた.
オショウ「そのまま.そのまま.」
オショウは出て行った.よね子は本当にそのまま固まり,じっと動かなかった.

鐘をついていたのはヨガだった.
オショウ「あ,お前さんか.ああ,やれやれ.いいとこへ来てくれた. いやあの女のしつこいのには本当に参った.なんて格好してるんだ?」

ダイナにて

女の二人組(春やすこ・けいこ)の一人が, スロットマシンが出ないと文句を言っていた. わきではタミーがスロットマシンを動かしていた. タミーがコインをたくさん出すのが見えると二人組の一人が「あの女, 男に縁がないんとちゃうか.」などと悪口を言いたい放題言っていた.
タミー「もしかしてそれ私のこと.」
女「そうや,あんたのことや.それがどないしたんや. え,やるんか,ほんまに.」
そこへマイトがやってきた.
マイト「シャラーップ! 女同士の喧嘩はあんまりみっともよくありませんよ.」
タミー「別に喧嘩してるわけじゃないけど, 私って男に縁のない顔してるって本当?」
マイト「言えてますね.」
女「言えてる,言えてる.」
マイト「君ほどじゃないけど.」
女は黙ってしまった.相方は冷笑した.
女「気分悪い.帰ろう.」
二人組は帰っていった.
マイト「全くこの三人は嫁にいけないね.」
この言葉を聞いたタミーは機嫌を悪くしてしまった.
タミー「今夜0時,ゴッドの部屋に集合よ.」

調査開始

ゴッド「表の商売はそれぞれみんなうまくいってるらしいな.結構なことだ.」
オショウがこぼした.
オショウ「いや,それがあんま結構じゃないんですよ. どっか他の寺,世話してもらえませんかねえ.」
ゴッドは大笑い.
ゴッド「日本中どこを探したって檀家に一人も女がいない寺なんてないぞ.」
マイトはにやりとし,オショウは首をすくめた.
ゴッド「さて,仕事の話を始めよう. 一月前に八王子の郊外の人里離れた山の中が火事で全焼した. それが今度の事件の発端だ.さあ,タミー, 始めてくれ.」
タミー「はい.林の中の一軒家だったため通報が遅れ, 消防車が駆けつけた時はもう手遅れだったそうです. 放火の疑いもあるが出火の原因は不明. この家に住んでいたのは元東都学院大学文学部長の水野信太郎58歳. 有名な哲学者です.4年前に大学を辞めて以来, 土地つきの農家を買ってこの地に移り住み, 動物や野鳥を相手に悠悠自適の一人暮らしだったそうです.」
オショウ「水野信太郎なら名前だけは聞いてる.焼け死んだのか?」
タミー「それが,焼け跡から死体は発見されず, 水野氏の行方はわかっていません.一人娘水野杏子(桂木文)23歳. 一年前からパリのソルボンヌに留学.火事の一週間後に急遽帰国しました. 杏子を呼び戻したのは竹内和彦32歳.東都学院大学文学部講師. 水野信太郎の弟子であり,杏子の婚約者でもあります. 杏子と竹内は水野信太郎の捜索願を出しましたが,未だに行方不明のままです.」
オショウ「行方不明ってのはどういうことなんだろうね.旅行に出てたとしても, 自分の家が火事になればニュースを見て帰ってくるだろうに.」
ゴッド「すでに殺害されてるかもしれん.」
マイト「何のために? 一人暮らしの老哲学者を殺して利益を得る人間がいるんですか?」
当然のマイトの疑問に答えるため,ゴッドが説明を加えた.
ゴッド「この地図を見てもらおうか.この真中の赤く塗ってある部分が, 水野氏の所有の300坪だ.ところが,その周辺の青線で囲まれた部分は, すでに全て谷村商事と言う不動産会社が買い占めてしまっている.」
水野の土地の周りは谷村商事が買い占めた土地に囲まれていた.
オショウ「ああ,まるで陸の孤島だなあ.しかし何の目的で土地の買占めを.」
タミー「東都学院大学は都心からこの土地へ移転してくる予定らしいわ.」
マイト「なるほど.今流行している大学の郊外移転か.」
ゴッド「その通り.ところが水野氏は頑強に土地売却を拒否していたらしい. つまり,水野氏一人の抵抗で, 総予算100億以上と言われる東都学院大学の移転計画は, 暗礁に乗り上げていたと言うわけだ.」
デジコン「しかし,なぜですか.水野さんにとっても東都大学は母校なんだし.」
ゴッド「たしかに奇妙だ.だからこそ, 今度の火事騒ぎと今度の失踪事件の背後に, いったい何があるのか探り出してもらいたい. もし水野氏が殺されているとしたら,その犯人を突き止め,裁きを加える. それが今度の仕事だ.」

焼け跡を杏子が訪れていた.そこへデジコンがやって来た. デジコンは写真を見せてもらったと言い,声をかけた. 杏子はデジコンと水野が仲良くしていたことを手紙で知っていた. デジコンは杏子に水野が録音したテープを聞かせた. そして杏子に水野の行き先に心当たりはないかとデジコンは聞いたが, 杏子は心当たりのある場所はすべて当たってみたがみつからなかったと答えた. さらにデジコンはふらっと外国へ行ったりしたのではと言うが, 杏子は水野がパスポートを持っていなかったことや飛行機嫌いであることをあげ, それはないだろうと答えた. 杏子はこれから大学へ寄ると言うのでデジコンは車で送ることにした.

杏子は徳大寺理事長のことを話した.徳大寺は参議院議員で, 大学は事業だと平気で言うような人物だった.生徒を増やし,授業料を上げ, 挙句の果てが移転話.水野は徳大寺のやり方に反対し, 良心的な教師たちと一緒に反対したのだが,皆大学を追い出されてしまったのだ. 大学につくと杏子はデジコンに例を言って中に入っていった. デジコンはタミーに杏子をマークするように無線で連絡した.

その晩,谷村商事をマイトとオショウが見張っていた. 社長の谷村(中田博久)と専務の大川が出てくるのを,社員の木田と村井が出迎え, 車に乗せた.彼らはヤクザじゃないが, 総会屋紛いのことをして飯を食ってきたらしい. 早速マイトとオショウは谷村達を追いかけ, ヨガが谷村商事の事務所に盗聴機を仕掛けた. そしてファイルを見つけて写真撮影した.その頃, 谷村はSMクラブで徳大寺と会い,土地の話をしていた. 鞭うたれたりロウソク攻めされたりしていた女性は東都学院大学の三年生だった.
マイト「谷村の奴,やけに凸凹してるなあ.何者だ,あいつ.」
オショウはSMショーに夢中になっており,マイトの話を全然聞いていなかった.
マイト「オショウ,どこ見てんだよ.仕事,仕事.」
オショウは谷村の相手,すなわち徳大寺を写真撮影した. そして徳大寺はSM嬢を連れて外へ出て行った.

ホテルでは杏子が竹内と会い,水野のことを心配していた. 杏子は水野が死んだんじゃないかと考え始めていた. 竹内は移転反対派の講師の連盟で徳大寺に質問状を出すと言った. そして帰ろうとしたが,杏子は行かないでと竹内に抱きついた. その様子を隣りの部屋でタミーとデジコンは盗聴していた.

ハングマンは水野が死んだことは間違いないと睨んだ. そして水野の死体をどうやってみつけようかと悩んでいた. 移転候補の土地のどこかに埋めてあるはずだ. ヨガは谷村商事の奴を痛めつけようかと言うが, オショウは確証をつかんでからだと言う. そしてオショウはヨガが撮影してきた書類,土地売買契約書を見せた. その中に水野のサインした書類もあったが,土地は150坪しかない. 3ヶ月ほど前に土地の半分の名義が杏子のものになっていたのだ. おそらく杏子は知らされずに行なわれたに違いない. 連中はすでに杏子に触手を伸ばしていた. そしてオショウは谷村商事が設立されたときの登記書類を見せ, 発起人の中にあのときのSMクラブのママ倉本ようこの名前があることを報告した. ようこの兄倉本コウジは東都学院大学の事務局長だった.つまり, 谷村商事は徳大寺が政治献金を得るためのトンネル会社だったのだ. マイトはデジコンに水野が講演した模様を録音したテープを渡し, コンピュータで水野の声を合成できないかと頼んだ. 早速作業を開始するデジコン.

次の日,谷村商事を杏子と竹内が訪れていた. その模様をデジコンとオショウが盗聴した.杏子は土地の売買を断り, 帰っていった.すかさずオショウが電話をし, デジコン合成の「水野」の声を聞かせた.
水野の声「もしもし.私が誰かわかるかね.」
電話を取った社員は驚いた.そして谷村と電話を代わった.
谷村「もしもし.」
水野の声「私だよ.わかるかね.」
谷村も驚き,一瞬,受話器を耳から話した.
水野の声「どうした.水野だよ.何とか言いなさい.」
谷村「み,みずの?」
水野の声「いろいろ世話になったな.いずれ,お礼はさせてもらうよ.」
電話は切れてしまった.
社員「社長.」
谷村「どうなってるんだ,これは.」

SMクラブでその話を聞いた徳大寺は一笑にふしたが, 谷村は本人の声としか思えないと答えていた.その頃, マイトはSM嬢さとみに近づいていた.
マイト「ほう,現役の学生さんとはねえ.」
さとみ「誰よ.」
マイトは一万円札(当時は聖徳太子の絵柄だった)を一枚出し, さとみのブラジャーに突っ込みながら言った.
マイト「君のショーがあんまり魅力的だったのでね. 酒をおごりたくなったのさ.」
さとみ「ありがとう.でも,あなたも渋くていい男よ.」
マイトはもう一枚一万円札を出した.
マイト「ありがとう.趣味があいそうだねえ.」
マイトはもう一枚,一万円札を突っ込んだ.
さとみ「お酒に付き合うだけでいいの?」
マイト「その先は飲みながら話し合いすればいい.」
さとみ「名案ね.私,乱暴なのは嫌よ. あのショーはお金のためにいやいややってるの.」
マイトはにやりと笑った.
マイト「わかってるよ.」

次の日.徳大寺は倉本から公開質問状を受け取っていた. そこへ電話がかかってきた.電話を取った倉本は驚いて徳大寺に受話器を渡した.
徳大寺「もしもし.」
水野の声「久しぶりだね,徳大寺君.私だよ.」
徳大寺「え? 水野!」
水野の声「そう.水野だ.」
徳大寺「き,誰だ.き,貴様は誰なんだ.」
水野の声「水野だよ.近いうちに会いに行くからな.」
電話は切れてしまった.
倉本「理事長.」
徳大寺「うろたえるな.誰かのいたずらに決まっている.」
倉本「誰かのって,誰ですか?」
徳大寺「竹内かもしれんなあ.」
倉本「まさか竹内が…」
徳大寺「いやあ,そうでなくとも, 奴は何とかしなくてはいかんと思ってたんだ.公開質問状くらいなら屁でもない. あやつはマスコミに働きかけて騒ぎに火をつけようとしている. 火事はぼやのうちに消さんとなあ.命取りになるからなあ.」

その晩.竹内は杏子と腕を組んで道を歩いていた. 竹内と杏子をつけていたタミーはライトをつけずに車を走らせていたので, 警官の職務質問にあってしまった.その隙を突かれ,竹内は車にはねられ, 杏子はさらわれてしまった.杏子は滑車に吊り下げられ,谷村達の拷問を受けた. そこへマイトとヨガがガスを噴射し,ガスマスクをして現れた.
マイト「ショーには観客が必要だろう.」
谷村の部下「誰だ,手前ら.」
マイト「少なくとも友達じゃなさそうだなあ.」
マイトとヨガは部下を殴り倒した. そして水野信太郎の死体の在り処を聞いたが部下の木田は何も知らなかった. 羽で散々くすぐっても木田は勘弁してくださいと言うばかり.
マイト「本当に知らねえようだなあ.となると谷村だ.」
ヨガ「電話作戦ですね.」
マイト「よし.」

マイトは木田に電話をかけさせた.
木田「理事長,水野は生きてます.会ったんです.」
徳大寺「なんだと! おい.」
電話は切れてしまった.徳大寺は谷村に死体を確かめろと命じた. 谷村達は水野の死体を掘り出して確認.すかさずオショウが写真撮影した.
マイト「そこまで案内してくれてありがとよ.」
谷村達は逃げようとしたが,タミーとヨガに行く手を阻まれた.

次の日.谷村から連絡が来ないので徳大寺はいらいらしていた. そこへマイトが強引に理事長室に乗り込んだ.
倉本「君,誰が入っていいといった.」
マイト「まあ,まあ,まあ. 私を追い返すと先生は世間に大恥をさらすことになりますよ.私はね, さとみの代理で来たんだ.」
徳大寺「さとみ?」
徳大寺はの時のSM嬢のことを思い出した.
マイト「どうやら思い出したらしいようですなあ.ここに一本のテープがある. 女子大生さとみの衝撃の告白って奴でねえ.」
マイトはテープを再生した.
さとみの声「私,東都学院大学文学部の学生で石田さとみです.実は私, うちの学院の徳大寺理事長に酷い目にあわされたんです.というのは, たまたま私がアルバイトしていた六本木のお店のママさんが, 倉本ようこって名前なんだけど,理事長の愛人だったんですよね.」
徳大寺「やめろ!」
さとみの声「それで私…」
倉本がテープを止めた.
マイト「テープのコピーはちゃんと取ってあるよ.そいつはまあ, 宣伝用ってとこだ.」
徳大寺「何が欲しい.金か.」
マイト「さすが徳大寺先生,頭がいい.わかったらさとみに会ってやってくれ. 時間と場所はここに書いてある.」
マイトは倉本に紙を渡した.
マイト「お前さん達二人で来るんだぜ.それから,小切手帳を忘れずに.」

指定された場所である倉庫の中に徳大寺と倉本がやってきた.
マイト「よく来たなあ.徳大寺隆三.」
現れたのはマイト,オショウ,タミー,そしてヨガ.
徳大寺「誰だ,お前達は.名乗れ.」
オショウ「どうも,どうも.水野信太郎さんに頼まれましてね. 地獄へご案内したいんですわ.」
徳大寺「水野だと?」
タミー「ちょうどニュースの時間よ.マイト,見せてやったら.」
マイト「よーし,いいだろう.」
マイトはテレビをつけた.
アナウンサー「次のニュースです.一ヶ月ほど前から行方不明になっていた, 元東都学院大学教授で哲学者の水野信太郎さんが, 八王子市郊外の造成地で死体となって埋められていたのが発見され…」
徳大寺「知らん.俺は何も知らんぞ.」
マイトの操作により,上から落ちてきた網で徳大寺と倉本は捕まってしまった.

同じ頃,杏子もニュースで水野の死体が発見されたことを知った. 驚いた杏子は手に持っていたジュースのコップを落としてしまった. 悲しみにくれる杏子. すると青い封筒に入っていて蜘蛛のシールで封をされた手紙,すなわち, デジコンからハンギングパーティの案内状が届いているのを見つけた. 杏子は案内状を読んだ.
デジコンの声「午後三時に下記の場所へおいでください. 父上とあなたの恋人を死に追いやり, あなたまで殺そうとした悪党をご紹介します.水野信太郎の友人より.」
パーティーの行なわれる場所は八王子市北高尾橋3丁目.
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

東都学院大学建設予定地.屋根にスピーカーのついた車が止まっており, その前へハングマンに徳大寺と倉本と谷村が手錠でつながれて, 連れて来られていた.
オショウ「さあどうかな.何もかも喋る気になったかなあ.」
徳大寺「馬鹿なことを言うな. こんなことをしてお前達,どうなるかわかってるのか.」
マイト「何もわかっていないようだ.」
徳大寺「何をするつもりなんだ,貴様達は.」
マイト「この辺りもやがて整地されて東都学院大学の新しいキャンパスになる. その地面の下に埋められりゃ本望だろう.え?」
徳大寺「なあんだとう!」
徳大寺は強がったが,倉本と谷村は顔面蒼白になった.
タミー「三人ともそんな顔することないでしょう. 水野先生と同じ運命をたどるだけよ.」
徳大寺「待て.何が欲しいんだ.金か.」
オショウは冷笑した.
デジコン「残念だが,金に不自由はしてないんでね.」
オショウ「乗り物はお好きでしょう.さ,どうぞ.」
ハングマンは三人を車に押し込んだ.
オショウ「静かにしろ.いくら騒いでも中から開かないようになってんだ.」
マイト「さあ,行くか.」
ハングマンは車を押し,急坂を下らせた.車は途中で引っかかってしまった.
徳大寺「何をしてんだ.」
デジコン「車の中の無線は警察無線と同じ周波数にセットしてある.」
マイト「徳大寺,もう一度言う.命が惜しかったら今のうちだ. 洗いざらい喋ろ.」
徳大寺「貴様らあ.今に後悔するぞう.」
ハングマンは立ち去った. と同時にマイトの運転するブルドーザーが車めがけて土砂を投げ落とした.
谷村「やめろう!」
倉本「助けてくれえ.」
だがなおも土砂が落とされる.オショウのダンプカーも土砂を落とし始めた.
谷村「おーい,喋るからやめてくれえ.」
徳大寺「黙れ.馬鹿もん! これは脅しだ.」
倉本「しかし,理事長,このままじゃあ.」
徳大寺「うーるさーい!」
デジコン「徳大寺.水野信太郎を殺して埋めた報いだ. そのまま土砂に埋もれて死んじまえ.」
ヨガのショベルカーも加わり,どんどん土砂が落とされた.
谷村「やめろう.」
倉本「助けてくれえ.」
徳大寺は平気な顔だが,谷村と倉本はビビリまくっていた.
倉本「わかった.もう何もかも話す,話すよう.」
谷村「喋るからやめろう.俺は理事長の命令で水野を殺して埋めたあ.」
徳大寺「なあにをお! 出鱈目をぬかすな.」
杏子もやってきて谷村達の自白を聞いた.
谷村「出鱈目じゃねえ.水野を襲って家に火をつけ, 死体をここに運んで埋めたのはこの俺だあ.」
谷村達の自白を造成地の作業員も聞いていた.
倉本「理事長, あんたは自分の政治資金を作り出すために東都学院の移転を計画した. だから,それに反対した水野を消す必要があったんだ.」
徳大寺「黙れ.最初に水野を消せとけしかけたのは倉本,お前だぞ.」
泣く杏子の後ろにパトカーが近づくのが見えた.
倉本「理事長,あんたはきたねえ.あたしはただ, あんたの言いなりになって来たんだ.」
谷村「俺だってそうだ.あんたに散々利用されてきたんだ. あんたが一番の悪党だ.」
そしてハングマンは立ち去った.

デジコンは自分の店でタバコを吸いながら杏子のことを思い出していた.
杏子の声「加納さん,ホントにいろいろありがとうございました. 私はまたパリへ戻ることにしました. いつかまた新しい幸せがみつかったら日本へ帰ってくることがあると思います. またお会いできる日まで,お元気で.さようなら.」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp