ゴッドのオフィスでゴッドが指令を説明していた.
ゴッド「日本にあるアメリカ極東空軍の基地には,
アジア各国に点在する米空軍基地からの連絡便や輸送機が,
毎日のように飛来している.もちろん,
これらの米軍機の行動は日本政府の関知するところではない.
こうした米軍機に便乗して正規の入国手続きを経ることなく,
日本にやってくる人物があることは諸君も聞いたことがあるだろう.
例えばマスコミには絶対に知られたくない,
プライベイトな目的で日本を訪れるアジア各国の要人達は,
この方法を使うことが多い.昨夜,この方法で一人の人物が密かに入国した.
日本でも有名な人物だが,あえて名前も国名もゆうまい.アジアの,そうだなあ,
仮にA国としておこう.そのA国の現職大統領だ.
そして事件は空軍基地から都心のホテルへ向かう途中で起こった.」
車に乗った大統領(山内明)が火炎瓶などで襲われ,さらに銃で狙われたのだ.
運転手は死んだが,大統領は無事だった.
ゴッド「これまで毎年一度か二度,
全く極秘のうちに日本へやってきていたそうだ.そのことを知っているのは,
本国では大統領の側近の一部と日本では極少数の内閣調査室のメンバーだけだ.
大統領の身代わりで殺されたのは在日大使館の元館員で,
これまで大統領のプライベイトのボディーガードをつとめていた人物だ.」
タミー「大統領がそんなにこそこそ日本へ来る?」
ゴッド「ああ.この娘に会うためだ.」
ゴッドが写真を取り出した.
パン「この人と大統領とはどういう関係なんですか?」
ゴッド「血を分けた娘だ.」
ブラック「で,我々の任務は?」
ゴッド「彼の命を守ることだ.
警察も政府も彼が日本へ来ていることさえ知らない.
しかも暗殺計画は未だ動き始めたばかりだ.」
マイト「しかし誰が何の目的で襲撃したんですか?」
ゴッド「死んだ二人の犯人は総会屋松沢の配下だ.
しかもこの事件の背後にはある商社が動いているものと思われる.」
その頃,背後で糸を引いていると思われる菱星商事では, 倒産の危機を救うために,そしてカナダと中近東での失敗を取り戻すため, 副社長(田中明夫)が起死回生の手を打とうとしていた.それが大統領暗殺だった. 菱星商事にとっては政情不安がつけこむチャンスだったのだ. そこへ松沢から電話がかかってきた. 副社長は松沢に大統領の件はこちらで処理すると伝えた.その後, 副社長は専務(中井啓輔)に大統領の様子と例の二人のことを聞いていた.
副社長の車をつけたマイトとバイクは, 副社長が菱星流山工業多摩工場に入り込むのを見届けた. そこは小型の銃器を製造しているところだった. 副社長は新型ライフルの調子を見ていた. なぜこんなものをと疑問に思う社員に対して, 副社長は注文通りに作ればいいんだと言って何も答えようとしなかった.
一方,テニスクラブで大統領の娘にはブラックとタミーが接触していた. 娘にはやすおという恋人がいた. やすおは菱星商事の社員で英会話の訓練のために中座した. タミーは娘を送っていった.タミーは娘に家族のことを聞いた. 父親は「小さいときに死んでいた」ため,母親と二人暮らしだと言う. そのとき,タミーはタミーの車を誰かがつけていることに気がついた. タミーはスピードを上げて巻こうとしたが, 結局娘の自宅まで車はついてきてしまった. タミーはその車のナンバーを確認した.
バイクは大統領の泊まっているホテルに潜入した.
バイクはルーム係を張り倒して自分がルーム係に化け,
大統領の部屋に入り込んだ.
そこへ高山という男(垂水悟郎)から電話がかかってきた.
大統領は高山からの電話を待ちかねていたのだ.
高山は大統領の日本留学時代からの親友で医者だった.
大統領の元恋人沢田孝子(谷口香)は在日大使館に通訳として勤めていた.
彼女はやがて妊娠し,一人の女の子を生んだ.
もちろん彼はこの母と子を本国へ連れて行き,正式に結婚する気だった.
だが彼が帰国してまもなくクーデターが起こった.
クーデターにつぐクーデターで多くの血が流され,
その混乱の中で民主派のホープとしてのし上がった彼は大統領となった.
正式な妻と子もいるのに日本に隠し子がいるとは発表できない.
だから年に一度か二度会うのが精一杯だったのだ.
マイト「一つだけわからねえことがあるんだよ.」
ブラック「何?」
マイト「菱星商事がなぜ大統領の命を狙うんだ?」
ブラック「うん.あの国の憲法では何らかの形で大統領が急死すると,
自動的に副大統領が大統領に昇格することになっている.
ケネディ暗殺と同時にジョンソンが大統領に昇格したようになあ.」
マイト「そこで菱星商事は副大統領に食い込んだってわけか.なーるほど.」
ブラック「こいつは厄介な仕事になりそうだぜ.」
そこへバイクから,高山らしい男が大統領の部屋を訪れたと言う報告が入った.
高山は娘が白血病だと大統領に伝えにきたのだ.
その晩,パンは石焼芋屋に化け, 沢田家の前に張り込んでいた菱星商事の手の者に近づいた. そして芋を押し売りするふりをして隠しカメラで写真を撮影した.
ブラックはホテルのレストランで大統領に近づいた.
ブラック「お願いがあります.すぐに日本を発ってお国へお帰りください.
あなたの暗殺計画はすでに実行に移されております.
あなたはアジアの平和のためにはなくてはならないお方です.ですから,
すぐに.」
大統領「人間違いだか存じませんが,あなたは何か勘違いをなさっている.
私の名前はロバート関口.ロスで貿易会社を経営しております.」
ブラック「おとといの晩の事件を思い出していただければ,
私の言っていることが冗談ではないことがわかっていただけると思いますが.
Mr. President.」
大統領「ロバート関口です.」
大統領へ電話がかかってきたため,大統領は席を立った.
ブラックはバイクに合図し,電話を立ち聞きさせた.
そのことを聞いてゴッドはブラックを叱った.
ゴッド「馬鹿な! 血で血を洗う権力闘争を生き抜いて,
国民の英雄にまでのし上がった男なんだぞ.
それが非合法で日本に潜入してるんだ.いきなり,
president ですかと言われて,はいそうです,と答えるとでも思ったのかい.
いいか.簡単な仕事だったら初めからお前達には頼まない.
警察も政府も動くことのできない極秘の仕事だから頼んでるんだ.彼が死んで,
あの国に再び軍事政権が生まれたら東西の関係は一気に緊迫した関係になる.
一番影響を受けるのは日本の経済なんだぞ.とにかく,
何が何でも彼の命を守るんだ.いいな.」
続いてパンが写した写真をゴッドは取り出した.
ゴッド「パンが写したこの二人なあ,身元がわかった.
二人ともアメリカのCIAのエージェントとして中近東で動いていたらしいが,
前歴は不明.おとといのBA機でドバイから帰国している.」
そのころ,大統領は孝子と会っていた.二人は抱き合った.
その二人をバイクとジャガーが見張る.
孝子「あのとき,私があなたに恋をしなければ….
あの子を生むのが間違ってたの.」
大統領「孝子.そんな風に自分を責めるのはやめなさい.あんたはこの二十年間,
自分ひとりの力であの子を育ててきたんじゃないか.」
孝子「そうよ.育ててきたわ.世間の人たちに後ろ指を指されながら,
精一杯育ててきた.それなのに,なぜ今になってこんなことに.」
その大統領を銃で狙うものがいた.とっさにバイクは大統領をかばったが,
孝子が足を撃たれてしまった.
タミーが大統領の娘の真由美を高山の病院へ連れてきた. 大統領と高山にブラックは在日大使館時代の写真を見せ, 大統領に即刻日本を去るように言ったが,大統領は拒否した. 真由美が白血病で残り少ない命なので帰れないと言うのだ.
その晩,副社長と専務は真由美の恋人北村やすおに話を持ちかけた. 翌日,病院へやすおから真由美に電話を入れ,真由美を呼び出した. やすおは専務達に渡したが,理由は聞かされなかった.
孝子を迎えに行こうとする大統領に電話が入った.その後, 大統領が部屋へ戻ろうとしたのでマイトは不審に思った. そしてブラックに連絡を取った.
その晩,とある酒場で前祝だと称して酒を飲んでいるやすおにマイトが近づき,
無理矢理連れ出した.するとガラの悪そうな男が絡んで来たのでマイトは撃退し,
逃げようとするやすおをタミーが捕まえた.
やすお「僕は,僕は何も知らないんだ.」
タミー「あなたにとって女は真由美さん一人じゃないかもしれない.
でも彼女はあなたを愛しているわ.よーく聞いて.
これは真由美さん本人も知らないことなんだけど,彼女は大変な病気なの.」
驚いたやすおは思わずタミーの方を向いた.
タミー「長くてあと4,5年の命よ.」
やすお「ええ.そんな.」
ブラック「嘘じゃない.白血病がどんな病気か知ってるだろう.彼女が今,
もし怪我でもしたらすぐ病院でも担ぎ込んで血小板でも輸血しない限り,
彼女は血が止まらなくなって死んでしまうんだよ.」
大統領の部屋に電話がかかってきた.一人で引き取りに来いというのだ.
孝子はハングマン達に助けを求めましょうと言ったが,大統領は,
あの子の命を大事にしてやりたいんだよ,と言って,
自分ひとりで行く覚悟を決めた.その会話を盗聴したパンは
パン「そりゃそうだよ.大統領だって人の親だ.」
翌日,大統領はタクシーを拾って指定された場所へ向かった. ブラックのワゴンがタクシーをつける.タクシーは港についた. そこへ車がやってきた.真由美は来ないでといったが, 大統領はゆっくり歩いていた.そこへハングマンがガスを発射. その隙にハングマンは大統領と真由美を救助したが, 一味の者は事故死してしまった.
早速真由美は救急車で高山病院へ運ばれることになった.
しかし高山にも菱星商事の手がのびていた.
高山と専務はブラックと大統領を冷凍室に入れた.
しかし高山達も冷凍室に閉じ込められてしまった.
ブラック「ほう,どうやらあんた達のボスは,
あんた達まで見殺しにするつもりらしいな.」
マイナス25度の環境で凍える一同.
拳銃も使い物にならないので高山は拳銃を投げ捨ててしまった.
ブラック「マイナス25度か.何時間持つかなあ.」
ブラックは盗聴機を仕掛けた.
大統領「高山君,私は死を恐れない.
大統領になったときから,いつでも死ぬ覚悟はできていた.
だが私にはわからない.なぜ二十何年の友人の君がこんなことを.」
高山「金だ.」
大統領「金?」
高山「そうだ.株に手を出したのが失敗だった.
この五年間で三億.病院も私の家も抵当に入ってしまっている.
もうどうにもならないところまで来てしまっているんだ.」
ブラック「そっちはどうなんだ.誰に命令されてやった.副社長の片桐か.」
専務「お察しの通りさ.馬鹿みたいなもんだ.
会社を救うにはこれしかないと言われて…何が会社だ.何が菱星商事だ.
ちきしょう.おーい,開けろ.片桐よ出て来い.
菱星商事の副社長がどうやって殺人を企んでいるか,
全部喋ってやる.開けろ.開けろ.」
扉が開けられると片桐が立っていた.片桐の背中にはダイナマイトがついていた.
片桐と入れ替わりに大統領とブラックが出た.
片桐達は冷凍倉庫に閉じ込められたまま.そして専務と高山が片桐をなじり,
片桐が開き直る様子がそのまま外へ流された.
ブラックのワゴンの中で大統領がブラックの話を聞いていた. 実は真由美は新宿で200ccの血液を献血していたのだ. つまり真由美は白血病なんかではなかったのだ. そのことをやすおから聞いたハングマンは高山の正体に気がついたのだ.
その晩,沢田の家で大統領の誕生パーティが開かれた.
そして大統領は米軍基地から本国へ帰っていった.
ブラックの持つラジオが本国でクーデターが起きたことを報じた.
タミー「彼はそれを知った上で,飛行機に.」
ブラック「うん.多分.」
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