脚本は小川英と田波靖男と四十物光男.監督は竹林進.主役はボス. シンコの登場はなし.
午後九時頃,堀川町で男が轢き逃げされ,怪我を負った.翌朝.
七曲署で捜査会議が開かれた.被害者の腕時計は9時15分で止まっていたので,
それが犯行時刻と思われる.男は身分証明書の類を持っておらず,
被害者の氏名,住所,職業,いずれも不明.推定年齢は30歳.
事故現場の金目通りは前後150mに及ぶ直線道路で見通しが極めてよく,
運転者が歩行者に気づかない筈はない.
しかも現場には急ブレーキによるタイヤの跡がなかった為,
歩行者の不意の飛び出し,運転者の傍見,または酔払い運転が原因だと思われる.
だが被害者をはねた後で車が止まった形跡はなかった.
酔っ払いなら後で車を見ればわかるはず.避けきれると過信していたなら,
急ブレーキぐらいかけるはずだ.腕時計から検出された塗料は,
梅田ペイント製のWタイプで色はアイボリーホワイト.
ボスは車の割り出しにかかってくれと命じた.そこへ西山署長がやってきた.
西山「生緩いな,そのやり方は.藤堂君.轢き逃げは凶悪犯罪だ.
人殺しも同じだ.車の割り出しももちろん必要だが,
即刻検挙の気構えでびしばしやらんと,効果はあがらんよ.」
ボスは何も言わなかった.
西山「今の轢き逃げ事件にしても,怪しい奴がいたら,
別件でもいいから即刻逮捕するんだ.捜査は理屈じゃないんだ.いいな.」
西山はそう言って去って行った.
ボス「被害者をはねた車は位置関係から見て,
おそらく右フロントのフェンダーかボンネットに傷がついているはずだ.
その車が修理に出される前に探し出せ.急いでくれ.」
一同,捜査に出動した.
ジーパンが修理工場でその車を見つけ出した.前の晩の夜の十時頃, なじみの客お客さんに頼まれて修理を行なったという.その客の名は, 西山ゆきお.ジーパンは早速ゆきおを引っ張った.
ジーパンから無線で連絡を受けた山さんは戻ってきたボスに報告した.
証拠物件の車も押さえているという.ゆきおは東南大学の学生で19歳.
山さんから西山ゆきおの名を聞いたボスは驚いた.
ボス「何だと? もう一度今の名前を言ってみろ.」
山さん「西山ゆきおです.」
ボス「住所は?」
山さん「それはまだ聞いてません…ボス! まさか!」
山さんもボスが考えている事に気がついた.ボスは早速出て行った.
ボスは署長室で西山と話をした.
西山「倅の車? うん.確か白っぽかったなあ.それがどうしたんだ?」
ボス「夕べ,車はお宅にありましたか? 修理に出していたんじゃありませんか?」
西山「夕べ…藤堂君.」
ボス「西山ゆきおと言う19歳の東南大学の学生が,
夕べの轢き逃げ事件の容疑者として,もうじきこちらに連行されてきます.」
驚いた西山は立ち上がった.
西山「何だと? 馬鹿な! 連行だと.私の息子を犯人に仕立てる気か?」
ボス「いえ.犯人と決まったわけではありません.」
そしてゆきおが連行されてきた.
何も知らないジーパンは乱暴にゆきおを引っ張った.
久美ちゃんがゆきおに丁寧に挨拶するのを見て
ジーパン「それともあんた,お知り合い?」
久美ちゃん「馬鹿ね.署長さんの息子さんよ.」
ジーパンは信じなかった.
ジーパン「署長? これが?」
ジーパンは笑ったが
久美ちゃん「嘘だと思ったら御本人に訊いて御覧なさいよ.」
ジーパン「い,いや…」
ゆきお「本当ですよ.」
西山はイライラしていた.ゆきおが連れて来られてきた.
西山「ゆきお.災難だったなあ.どうしてこんな事になったのか,
わからんがねえ.多分,お前の車と同じ車種の車が事故を起こしたんで,
間違われたんだよな.な,ゆきお.お前が事故を起こしたのはどこだ?」
だがゆきおは何も答えようとしなかった.
西山「ゆきお.どうしたんだ? なぜ黙ってる.」
相変わらずゆきおは無言だった.
西山「ゆきお.これは何かの間違いだ.そうだろう?」
ゆきお「間違いじゃないよ.」
西山「何?」
ボスは西山の顔をじっと見た.
ゆきお「そうだよ.僕が,僕がやったんだ.人をひいて逃げたんだ.」
西山は衝撃を受けた.
西山「ゆきお!」
静けさだけが流れた.
西山「なんて事を.」
ボス「署長.弁護士をお呼びになりますか? 息子さんだからといって,
特別扱いはしません.ジーパン.取調室へ.」
ゆきおを連行しようとするジーパンを西山はじろっと睨んだ.一瞬,
ジーパンの動きが止まったが,すぐにジーパンはゆきおを連れて行った.
西山「藤堂君.」
ボス「は?」
西山「人をひいて逃げるなんて,そんな馬鹿な事をする子じゃないんだ.
魔がさしたというのか,おそらくやってしまった事に逆上して…」
西山は親馬鹿振りを見せた後
西山「いいかね,藤堂君.
私はこの事件は被害者との話し合いで示談にしたいと思っとる.
異論があるかね?」
ボス「私は事実だけを尊重するつもりです.
署長の名誉とご子息の将来のために,それが一番大切な事じゃないでしょうか.」
山さんとジーパンがゆきおを取り調べた.
山さんはまずポケットの中身を出させた.
山さん「住所,氏名,年齢を.」
ゆきお「渋谷区本町1-15-4.西山ゆきお,19歳.」
山さん「事故の様子を詳しく話してくれないか.」
ゆきおは何も言わなかった.
ジーパン「聞こえただろう? ちゃんと話せ!」
ゆきお「新聞に出てたでしょう.あの通りですよ.」
ジーパンは怒って立ち上がろうとしたが,山さんが止めた.
山さん「確か法学部だったなあ,君は.」
ゆきお「ええ.」
山さん「ならわかるだろう.
そういう態度をとっても君に一つも有利にはならないんだよ.」
ゆきお「でも,特に不利にもならないはずです.それに僕は未成年です.
僕をどうするか決めるのは警察じゃなくて家庭裁判所でしょう?
余程のことがない限り,未成年者を罪人にする事は出来ないんでしょう?」
ジーパン「おい.つまらん理屈言うな.正直に何もかも話せばいいんだよ!」
ゆきおは黙ったまんまだ.
ジーパン「恥ずかしくないのか,お前は? あ? 署長の息子のお前が,
人を轢き逃げするなんて.それでいいと思ってるのか?」
だがゆきおは黙ったまんまだ.
ジーパン「おめえ,お前が逃げたのはお前の親父が署長だったからか?
そうじゃないのか? それで親父が責任をとられると思って,
それで逃げたんだろう?」
それを聞いたゆきおは薄ら笑いを浮かべていた.
ジーパン「そうだろう! おい!」
ジーパンは机を叩いた.
ジーパン「何が可笑しいんだ.頭くんな,この野郎!」
ジーパンはゆきおの胸倉をつかんだが,山さんに止められた.
貝のように口を閉じたまんまのゆきおを見て,山さんは何か考え込んでいた.
山さんはボスに,ゆきおが黙秘を貫いている事を報告.さらに
山さん「それより,どうも気になる事があるんです.私の見たところでは,
彼はかなり神経質で頭もいい.ところがその彼が,
重傷の被害者の容態がどうなるかについてまるで気にも留めていない.
傷害と殺人とでは罪状に違いがあるのを知らない筈がないんですがねえ.」
ボス「なるほど.そいつはちょっとばかり妙だなあ.」
その頃,西山は被害者が運び込まれた病院に来ていた.
被害者は面会謝絶の状態.だが西山は患者の容態を確認するため,
病室に入った.被害者はまだ眠っていた.西山の脳裏に,
被害者のひかれる様子が浮かび,さらに
ゆきおの声「そうだよ,僕がやったんだ.人をひいて逃げたんだ.」
またゆきおの言葉が聞こえてきた.
ゆきおの声「そうだよ,僕が,僕がやったんだ.人をひいて逃げたんだ.」
西山の声「ゆきおが人身事故.しかもひいた後,逃げた.署長の息子が…」
西山の家には殿下が来ていた.西山は電話し,妻に話をしようとした. 西山は刑事が来ている事を妻から聞き,心配するなと言った. 殿下はゆきおの行動について訪ねた.大学の講義が休講になったので, 一日中家でぶらぶらし,夕方,晩御飯を食べてから出かけて行った. 出たのは7時過ぎ頃.車で出かけていた.西山の妻は泣き出してしまった.
例の修理工場へ行ったジーパンとゴリさんは,
そこで西山の車を受け取った修理工がジーパンと一緒に出てから,
戻ってきていない事を聞き込んでいた.電話でその事を聞いたボスは,
何かある,と直感した.ボスはその修理工池谷を探し出すように命じた.
まずジーパンとゴリさんは池谷のアパートへ行った.
アパートの壁には池谷がオートレースで優勝した時の写真が飾られていた.
池谷はオートバイの元レーサーだったのだ.ゴリさんとジーパンは,
ゴミ箱からバー桂のマッチを見つけ出した.
ジーパン「ゴリさん,ひょっとするとなじみの女がいるかもしれないですよ.」
山さんはなおもゆきおを取り調べた.
山さん「いいかね.人をはねた者は,はねた男がどうなったか,
いてもたってもいられないほど気になる筈だ.ところが君は,はねた直後,
ブレーキ一つ踏まず,つまり,相手の生死も確かめなかったばかりでなく,
今もなお気にしていない.それはどういう事かね.」
ゆきおは何も答えなかった.
山さん「現に被害者は今も生死の境をさまよっている.
人間一人の一生が終わるかどうかの瀬戸際にいるんだよ.
しかしそう聞かされても君は少しも動じない.つまり君は,
人の心を持たない化け物なんだ.それとも本当は人などはねていないのか.
そのどちらだ?」
ゆきおは何か言いかけたがやめた.
山さん「法律を勉強しても法に反いた人間の気持ちはわからないわけだなあ,
ゆきお君.君はさっきから平気な顔をし続けているがねえ,
罪を犯した人間と言うのはそんな顔をしているもんじゃないんだよ.
泣く奴もいる,わめく奴もいる,笑う奴もいる.肚を決めた人間,
開き直った人間ているはそういう物だ.
平然としている奴はまだどこかに嘘を守っている.」
ゆきおの表情が変わった.
山さん「これは理屈じゃない.長年の私の勘でね.」
ゆきおの顔には脂汗が浮かんでいた.
山さん「汗を拭きなさい.」
ゆきおは顔中をハンカチで拭いた.そして靴で足元の何かを隠そうとした.
山さん「そう.それでいい.いい若いもんが,
暑くもないのに脂汗を浮かべているとしたら,
見てるこっちだって楽しくないからね.」
山さんは立ち上がり,ゆきおのところへ来て言った.
山さん「それで,靴の下に隠したものを見せてもらおうかね.」
それは映画の半券だった.しかも日付は昨日.つまり,事件のあった晩だ.
ジーパンとゴリさんはなじみの女のアパートへ行き,池谷を発見. 池谷はオートバイで逃走.ゴリさんとジーパンは車で追いかけた. だが池谷は階段をオートバイで駆け上がったため,逃げられてしまった.
池谷に逃走された事を報告するジーパンとゴリさんに, ボスは映画の半券を見せた.ゆきおが家を出たのは7時頃. 車なしで帰宅したのが11時.この映画の最終回は7時半から10時10分まで. つまり,ゆきおが犯行時刻に映画を見ていた可能性がある.証拠はない. だがゆきおはその映画の半券を隠そうとした. ゆきおは池谷をかばおうとしたに違いない.そこへ久美ちゃんがやってきた. 事件を聞きつけた新聞記者達が西山署長をつるしあげに来たのだ.
ボスが署長室へ行ってみると西山は新聞記者達につめよられていた.
「署長の息子だけが特別扱いか」と言う言葉を聞き,西山は決断した.
西山「よし.私から話そう.諸君の言う通りだ.轢き逃げ事件の容疑者として,
今取調べを受けているのは私の息子のゆきおだ.」
思わずボスは西山の方を見た.
西山「自分の息子だからと言って,特別に扱うような事は絶対にいたしません.
徒格遠慮がちになる部下の署員を叱咤して苛しく取調べを行ない,
捜査を全うさせるのが私の責任ある態度だとかように判断いたしまして,
そこにいる藤堂君にも厳重に申し渡している次第です.」
記者はなおも詰め寄った.
ボス「署長の今の発表は事実です.確かに我々は息子さんを取り調べている.
しかしこの事は新聞に書かないでもらいたい.」
記者達は怒った.
西山「藤堂君.私をかばってくれる気持ちはありがたいがねえ,
それではかえって私が困る.ここは全てを包み隠さず…」
ボス「署長は黙っててください.ゆきお君の罪は確定した訳ではない.
しかも未成年だ.たまたま父親が警察署長だからといって,
興味本位に書くのはそっちの方が汚いんじゃないのか?」
図星だったのか記者達は大騒ぎした.ボスは断言した.
ボス「どうでもいい.とりたいようにとりたまえ.しかし私は断言する.
この私の要請を無視して記事にした新聞には私は今後一切協力はしない.」
記者「藤堂さん.」
記者「何でそうまで?」
ボス「署長.ゆきお君は逃走の恐れもないんで刑事とともに一応,
身柄を署長に渡します.取調べは明朝九時から再開しますんで,よろしく.」
ボスは去って行った.
ボスが戻ってくるとそこには久美ちゃんしかいなかった.
山さんは病院へ行ったという.被害者の意識が回復したのだ.
他の者は池谷を探しに出たと言う.久美ちゃんは被害者がおかしい事を話した.
記憶喪失でもないのに自分の名前を言いたがらないというのだ.
ボス「ほう.どういうことだ,それは.」
夕方までねばっていた山さんに被害者は「無駄だ」と言った.
何も話したくないからだ.
山さん「その事故のことで無実の若者が罪をとわれていてもかね?」
被害者「無実? そんな事はしらねえなあ.俺はあん時,
相手の顔なんか見なかった.だから帰って下さいよ.ねえ.無駄なんだから.」
山さん「気にすんなよ.俺はこうしていたいからこうしているんだ.」
その夜.西山家では西山と西山の妻がゆきおに事件の事を尋ねていた.
だがゆきおは何も言わなかった.
西山「よし.兎に角,今夜はもう寝なさい.
新聞の方は藤堂君が押さえてくれたんで,助かったしな.
被害者もどうやら命を取り留めたし,
うまく行けば内々で話がつくかもしれんぞ.」
ゆきお「父さん.結局父さんの言いたい事はそれだけなんだね.
どうすればうまくごまかせるか,うまく父さんが傷つかずに済むか,
それだけなんだね.」
西山「何?」
西山の妻もゆきおをたしなめた.だがゆきおは黙って部屋を出てしまった.
西山「なんて奴だ,全く.こんな事を起こしておきながら,親を批判する気か!
私が,私が署長でいるためにどれほど苦労しているか,
何一つわかりもせんくせに!」
西山は力任せに皿を床に投げつけ,割った.
ボスはまだ署に残り,事件の事を考え込んでいた.
西山は家で事件の事を考え込んでいた.
西山の声「辞職.辞職するしかない.」
山さんはまだ病室で粘っていた.
被害者「刑事さん.まだいたんですか?」
山さん「気にするなと言ったろう.あんたは病人だ.寝た方がいい.
ただなあ,胸の中の病気も早く癒したほうがいいぞ.
あんたの歳なら人生はまだまだ長いんだからなあ.」
ゴリさん達は池谷の足取りを追っていた.遂に
被害者「負けたよ,刑事さん.」
山さん「そうか.」
被害者「あれは事故じゃない.俺を殺そうとしたんだ.」
山さん「何故だ?」
被害者「俺は覚醒剤の売人だ.最近取引相手を変えた.
儲けの多い方に乗り換えたんだ.多分,そのためだろう.」
山さん「元レーサーの池谷と言う男を知らないか?
あんたを殺そうとしたのは多分,そいつだ.」
被害者「知らないなあ.しかし薬を渡さんといえば,
殺しぐらい引き受ける若い奴はいくらもいるよ.」
翌朝.池谷が覚醒剤の常習者である事を,池谷の情婦も認めていた.
ボスは狙いを池谷に切り替えることにした.そこへ久美ちゃんが.
何とある新聞が記事を載せたのだ.秘密工作をしたとまで書かれていたので,
ジーパン達は憤った.容疑にあやふやな点があったので公表するなと言ったのを,
秘密工作だと書かれたからだ.
ボス「まあ,待て.俺は約束を守る.この新聞には今後一切協力はせん.
だがな,その前にここを見てくれ.」
その新聞には「一命をとりとめた被害者 犯人の顔はみていないと語る」と,
書かれていた.
山さん「ふーん,さすがだね.俺が駆けつける前にこれだけ取材したらしい.」
新聞を読む限りでは犯人はゆきおに決まったように読める.
ボスはこれを利用する事にした.おそらく池谷はゆきおを消しに掛かるだろう.
ボス「方針を切り替える.全員西山家を張るんだ.」
その頃,池谷はゆきおに電話をしていた.
池谷はゆきおが車を貸した事をなぜ話さなかったのかを訊き,
続けてゆきおを外へ呼び出した.ゆきおを西山が尾行したが,
気づかれてしまい,まかれてしまった.そこへジーパンとゴリさんの車が.
驚く西山.
ゴリさん「息子さんは無実です.」
西山「何?」
新宿駅西口でゆきおは池谷の車に乗った.それを見届け,
ボスと山さん,そして長さんが尾行を開始した.
池谷は多摩川の河原へ連れ出したが,ボス達の車に取り囲まれてしまった.
激しいカーチェイスが繰り広げられた.池谷の車は橋げたに追い込まれ,
川の方に追い込まれ,水溜りの中でエンコ.車を降りて逃走する池谷.
池谷はゆきおを盾に逃走を図った.
ボス「何もかもわかってるんだぞ,池谷.
あの轢き逃げはお前のやった殺人未遂だって事もな.」
真相を聞いたゆきおは驚いた.
ゆきお「殺人?」
池谷はゆきおの顔に拳銃をつきつけなおも逃走を図った.
だが西山が一瞬の隙をついて池谷に飛び掛り,ゆきおを救出.
池谷も逮捕された.
ボス「署長,大丈夫ですか?」
西山「ああ.どうやらな.」
西山はゆきおと対峙した.
ゆきお「父さん,どうしてだい.どうしてそんな危ない事を?」
西山は無言だった.
ゆきお「俺のため? 俺のために?」
西山「ゆきお.お前,この私をどんな怪物だと思ってたんだ.」
ゆきお「そうじゃない.俺,俺はただ知りたかったんだ.
轢き逃げの犯人だと知ったら,親父がどうするか,親父がどんな人なのか,
本当の事が知りたかったんだ.」
西山「ゆきお.確かに私は完全な人間じゃあない.嘘もつく.虚勢も張る.
お前に対しても多分そうだったろう.私に言いたい事があったら,
なんとでも言え.なんとでもののしれ.それが本当の事なら,私も耐えよう.
しかたないよ.それはお前と私の間の事だ.私はお前の父親であると同時に,
警察署長だ.お前が今度した事,黙って許すわけには行かんのだ.
立ちなさい.」
西山はゆきおをぶん殴った.だがゆきおは頬笑んでいた.
父子の断絶はこうして解消された.
西山は辞表を提出しようとしたが
人事部長「辞表か.西山君,今朝の毎朝新聞を読んだかね?」
西山「は? いえ.」
人事部長は笑いながら言った.これだけ書かれれば七曲署の評判も上がる.
かえって表彰したいくらいだ.毎朝新聞にはこう書かれていた.
ジーパン「えー,轢き逃げ事件,署長の活躍で解決.
息子さんの無実を証明.いやあ,ちょっと歯が浮くけど,
今日の記事は随分好意的だなあ.」
実はボスが記者を恫喝し,この記事を書かせたのであった.
そこへ西山が戻ってきてこういった.
西山「おはよう.なんだ.こんな新聞を見て鼻の下を伸ばしてたんじゃ,困るよ.
いいかね.今月こそは絶対に検挙件数で他署に抜かれる事がないように.
わかったな.以上だ.」
そう言って西山は去って行くのであった.
次回は鮫やんの部下が殺される事件が発生. ちなみに鮫やんの部下を演じたのは後のテキサスこと勝野洋さん. テスト出演でありながら,予告編でも使われた絶命シーンは必見です.
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