2002年6月1日

「太陽にほえろ!」第80話「女として刑事として」

脚本は柏倉敏之.監督は澤田幸弘.主役はシンコ.

新宿駅西口で強盗事件が発生した.現場に七曲署捜査一係の面々がやってきた. ガードマンが撃ち殺され,犯人が逃げた後だったが, ボスは逃げたばかりだと見抜き,後を追うように命じた. 地下駐車場を調べていたシンコは犯人の一人(小野進也)と遭遇. しかし犯人の着けていた異様な仮面を見てひるんでしまい,見逃してしまった. 三人組の犯人の乗った車が発進しようとした瞬間,ジーパンがやってきた.
ジーパン「シンコ,どうした.」
シンコ「犯人が…」

事件が起きたのは三光商事.給料9千万円が盗まれた. 新聞記者達はシンコを質問攻めにしようとしたが, ジーパンは記者からシンコを庇って一係室へシンコを連れ込んだ. 新聞記者はシンコのミスだと責めていた. 一係室の中ではジーパンはモンタージュ写真をボスに渡した. 一足先に山さんと殿下はモンタージュ写真を持って三光商事へ行っていた. ボスはゴリさんと長さんにモンタージュ写真を持って調べるよう命じた. 朝飯抜きだから腹減ったなあ,と言うゴリさん.久美ちゃんはジーパンに, 焼芋食べるか,と聞き,ジーパンは,食べられるか,と答えていた. 活気がみなぎる中,一人シンコだけが元気がなかった.それを見て
ジーパン「シンコ,お前,何する?」
食欲のないシンコは首を左右に振った.ちなみにゴリさんは食欲旺盛で, きつねうどんの大盛り一つとざるそばを二枚注文していた. ジーパンはシンコを気遣ってこう言った.
ジーパン「腹が減っては戦が出来ないって言うだろう.」
返事はなかった.
ジーパン「元気出せよ.あの場合はさあ,しゃあないんだよ. シンコは女だしさあ.な.」
シンコ「女だから?」
ジーパンは絶句してしまった.それを見たボスは心配した. そこへ山さんから電話が掛かってきた. シンコが見かけた男は元三光商事社員の中村こうじと判明.
ジーパン「おう,モンタージュ写真の男ですか.」
ボス「そうだ.」
ジーパン「シンコの手柄ですね.こんなに早く割れたのは. (シンコの方を向いて)やったぜ.」
シンコは頬笑んだが,どこかぎこちなかった.中村は二年前に愚連隊と喧嘩し, 会社を辞めていた.当時は寮にいたが今の居場所はわからない. ボスはゴリさんと長さんに中村の交友関係をあたれと命じた. ゴリさんは「また飯食いそこなっちゃった.」と呟きながら出て行った.
ボス「あ,シンコ.お前,ここに残れ.」
シンコ「ボス,お願いです,あたしも…」
だが
ボス「兎に角ここで待機しろ.いいな.ジーパン,行くぞ. そろそろ解剖の結果が出る頃だ.病院だ.」
シンコは独り取り残されてしまった.

長さんとゴリさんは競馬場で清水ゆきお(手塚茂雄)というノミ屋を捕まえた. 彼は中村の知り合いだった.清水は犯行を否認.その代わり, 中村の恋人が田宮ゆかりであることを話した.

早速殿下と山さんが田宮ゆかりと接触した. 田宮ゆかりは一年前に中村と別れていたと言う. 遊んでばかりの中村に嫌気がさしたからだと言う.

独り一係室に残るシンコ.久美ちゃんはシンコを慰めようとしたが, シンコは落ち込むばかり.
シンコ「ねえ,久美ちゃん,どう思う? やっぱり,女に刑事は無理なのかしら?」
久美ちゃん「そんなことないわ. シンコさんだって負けないでちゃんとやってるじゃない.」
シンコ「だけどボスはそう思ってないわ.」
久美ちゃん「そうかしら.」
シンコ「女の刑事なんて役に立たないと思ってるのね,きっと. だからあたしを捜査から外したんだわ.あたしねえ,それが悔しいの.」
久美ちゃん「大体男って女を馬鹿にしてるわよね. 女はお茶汲みぐらいしかできないと思ってるんだから. 女には女しかできないことってあるじゃない. だから女の刑事だって必要なのよ.」
そのとき電話が鳴った.意を決してシンコは電話を取った. それは三光商事の事件についてのたれこみ電話. 男はシンコが出たので本物の刑事を出してくれと言った. シンコが女でも自分は刑事だというと,やっと男は話し始めた. 男は手配写真とそっくりの男を見たという.

シンコが出て行ったと聞いたジーパンは慌てて後を追いかけた. シンコは安宿,食堂などを回り,中村の手配写真を見せた. だが「女なんかにデカが務まるわけないじゃないかよ.」と言われてしまった. ジーパンは公園で落ち込むシンコを見つけ,声を掛けた.
ジーパン「こんなとこにいたのか.随分探したぞ.中村こうじはみつかったか?」
シンコは首を左右に振った.
ジーパン「よし.じゃあ,今度,俺が代わるよ.」
シンコ「どうして?」
ジーパン「ん? どうしてって…」
ジーパンは絶句してしまった.
シンコ「そう.女には無理だと思ってるのね.」
ジーパン「そういうわけじゃないけどさ.ボスも心配してるぞ.」
シンコ「ボスだって同じよ.私なんか役に立たないと思ってるんだから.」
ジーパンは言った.
ジーパン「違うんじゃないかな,それは.」
シンコ「でも,あたし,あたしねえ, どうしても自分の手で犯人を捕まえたいのよ.」
ジーパン「その気持ちはわかるけどさ, 女には女にふさわしい捜査の仕方があるんじゃないかなあ.」
沈黙が流れた.ジーパンは焼芋屋を見かけ,焼芋をシンコに買ってあげた. 久美ちゃんが旨そうに食べ,そんなもん食えるかって自分が言っていた焼芋をだ. 芋を食って旨いと言うジーパンにシンコはこう言った.
シンコ「あたしのことなら心配しないで.ジーパン君,先に帰ってください.」
歩いていくシンコを見ながら
ジーパン「随分,意地っ張りだな,お前も.」

遂にシンコは中村を見つけた.それをジーパンも見た.逃げる中村. 中村を追いかけるシンコ.シンコを追いかけるジーパン. 遂にシンコは中村を工事現場に追い詰めたが,中村は拳銃を構えた. そしてシンコを庇ったジーパンは腕を撃たれてしまった.
ジーパン「俺は大丈夫だ.速く奴を.奴を…」
シンコ「しっかりして.」
だが,その隙に中村は逃げられてしまった.

手術室の前でシンコはうなだれていた.そこへボスとたきがやってきた. うなだれるシンコ.
たき「心配しなくていいのよ,シンコさん.純はね, 子供の時から丈夫な子でしたからね.こんなことぐらい,大丈夫よ.」
手術室からジーパンが運び出されてきた.ジーパンに着いて行くたき, そしてシンコ.

その夜.山さんから電話が入った. さらに長さんとゴリさんが鑑識課の結果を報告. ジーパンを撃った拳銃はガードマンを撃ち殺した拳銃とは別のものだった. つまり犯人は二丁以上の拳銃を持っていることになる. ボスは引き続き拳銃の線を当たってくれと長さんとゴリさんに命じた. 長さんはジーパンの傷の具合をボスに尋ねた.
ボス「ああ.」
ボスは何か考え込んでいた.
長さん「何か?」
ボス「いや,命には別状ないそうだ.まあ,ジーパンのことだ. こんなことでぶっ壊れる奴じゃないよ.」

翌日,シンコがジーパンの病室に入ろうとした時, ジーパンは撃たれた右手でスプーンを握ろうとしていた. だが右手の感覚は通常ではなく,握る事がなかなかできなかった.それを見て, シンコは一瞬入るのを躊躇した.ジーパンはシンコを呼び,もう大丈夫だ, と力説した.たきも中に入ってきてシンコに挨拶した.

シンコは必死に捜査を続けた.そしてシンコは田宮ゆかりのアパートを訪れた. シンコは田宮ゆかりがシャツにアイロンをかけながら涙を流しているのを見た. 早速シンコはボスに報告した.殿下と山さんが, 田宮ゆかりなら自分達も追っているが,とっくに中村とは別れたらしい, と言った.しばらく殿下達が見張ってみたが, 連絡を取っている様子がなかったからだ.だが
シンコ「あの人,今でも好きな人がいるような気がするんです.」
殿下はそりゃいるだろうと言っていたが
シンコ「そうかしら?」
シンコは田宮ゆかりの涙を不審に思っていた.
シンコ「ボス,もう少し田宮ゆかりを調べさせてもらえないでしょうか. まだ,自信はないんですけど,やってみたいんです.ボス,お願いです. 是非やらせてください.お願いです.」
ボスはその意見を採用した.連絡を忘れずにとボスは言い,シンコは出て行った. 無駄だと思うという殿下に
山さん「いいじゃないか,無駄でも.これでシンコが立ち直れば.」
ボス「いやあ,わからんぞ,殿下.女の勘と言うのは馬鹿にならんからな.」

シンコは田宮ゆかりをずっと見張った.勤め先のガソリンスタンド, アパート,公園のそば.その時,シンコは坊やが転ぶのを見かけ,助け起こした. その間にシンコは田宮ゆかりを見失ってしまった.必死に探すシンコ. シンコは田宮ゆかりをみつけて一安心.そしてシンコはホテルの前で, 田宮ゆかりがタクシーを止め,中の男と話をしているのを見た. そして中の男の手に傷がついているのも見た.
ゆかり「警察よ.速く逃げて.」
タクシーは発進.シンコはタクシーを拾って追いかけようとしたが, ゆかりがタクシーの前に飛び出したために追いかけることは出来なかった. シンコは中村の追跡を諦め,歩いて逃げるゆかりと話をした.
シンコ「ゆかりさん,待って.あの人中村ね.そうでしょう.」
ゆかり「誰の事言ってるの?」
シンコ「タクシーに乗ってた人よ.」
ゆかり「知らないわ,そんな人.」
シンコ「だって,あなた,あたしが追おうとしたら, 自分の体まで投げ出して助けようとしたんじゃない.ゆかりさん, 人の命ほど大事な物はないのよ.」
田宮ゆかりは立ち止まった.シンコはゆかりの膝がすりむいていることに気づき, 手当てをしてやった.それを見たゆかりは心を開いた.
シンコ「二年前,あなた,夜道で愚連隊に乱暴されそうになったわねえ. その時,通りかかった中村に助けてもらったんでしょう.それからね, あなたがあの人と親しくなっていったの.だけど,中村はその時, 愚連隊に手を刺されて車の運転も出来なくなった. 会社を辞めてからは苦労したんでしょうね.あなたの為なのよ. そんな人と簡単に別れられる? 出来る筈ない.だから, あなたは自分を犠牲にしてまで中村を助けようとしたんだわ.」
ゆかりは肯いた.
シンコ「だけどねえ,中村は犯人よ.その上,刑事まで撃ったのよ. その刑事,もしかしたら腕が不自由になるかもしれないのよ.」
ゆかり「その人もあなたを庇おうとして撃たれたの?」
二人はお互いの気持ちを理解したのだ.

その頃,ボスはジーパンを見舞っていた.大丈夫だというジーパン. 無理するなと言うボス.ボスはジーパンに, シンコが田宮ゆかりを追って頑張っている事を話した.

シンコは田宮ゆかりの尾行を続けていた.その頃, 無理矢理ジーパンは病院を抜け出し,一係室に顔を出していた. そこへ長さん登場.拳銃の売人の大川と言う男を引っ張ったという. ゴリさんと山さんは大川を取り調べた.その結果, 大川が拳銃を売った相手が判明した.一方,シンコの尾行は未だ続いていた. ゆかりはガソリンスタンドの店員とデパートでデートをしていた.そこで, ゆかりが突然店員と別れて出て行ったのを見た.さて, 山さんは大川が町田と滝に拳銃を売った事をボスに報告していた. 二人とも三光商事の社員だ.これで中村とのつながりがわかった. 主犯は町田に間違いないが,大川は町田の住所を知らなかった. そこへシンコから電話が.シンコは横浜にいた. 田宮ゆかりの様子が変だというのだ.中村に会いに行くに違いない. ボスは言った.中村は拳銃を持っているから気をつけろと.

シンコは田宮ゆかりが横浜港の第三埠頭まで来た事を確認. ボスに報告するように電話した.第三埠頭にはあの時の車が駐まっており, 中には町田(木村豊幸)と滝と中村がいた. 町田は中村にゆかりを呼ぶように命じた.渋々出て行く中村. 町田は中村と田宮を始末するつもりだった. 刑事に目をつけられているのはあの二人だけだ.だから二人を始末すれば, もう安心だ.田宮ゆかりは中村と抱き合った.だが中村は言った.
中村「ゆかり,逃げろ.」
それを遠くから見た町田は中村が逃げる事を見抜き,車から降り, 二人を追いかけた.シンコはそれを物陰から見た. 中村とゆかりを捕まえた町田と滝を見て,シンコは町田達の車を乗っ取った. そして追いかけ,町田達を中村と田宮ゆかりを救出. さらに町田達の車からキーを抜き取った.
中村「ゆかり,逃げよう.逃げる手筈は済んでるんだ. 外国へ逃げれば何とかなるさ.」
だが
ゆかり「駄目,こうじさん.あの刑事さんが助けてくれたのよ. そんなことできないわ.」
中村「ゆかり,俺はもう…」
ゆかり「自首して.」
中村「自首?」
ゆかり「あたし達,もう一度やりなおしましょう.」
町田達はシンコに向かって拳銃をぶっ放した.逃げるシンコ.車を奪い返し, 町田達は逃げようとしたが,キーがない.そうこうしている内にボス達が到着.
ボス「町田.拳銃を捨てて出て来い.」
銃撃戦の末,町田達の拳銃の弾は尽き,町田達は逮捕された. ボスは札束が入った革鞄を発見.その頃
ジーパン「シンコ.大丈夫か.」
シンコは黙って立ち上がり,中村と田宮ゆかりの前まで行った. 中村は黙って両手を差し出した.シンコは中村に手錠をかけた. 山さんに中村が連行されるのを見てジーパンはシンコを右腕で軽く叩いた. シンコはジーパンに言った.
シンコ「腕.」
ジーパン「あ.治っちゃったよ.」
シンコ「良かったじゃない.」
ジーパン「馬鹿.痛いんだよ,少し.」

事件解決し,殿下は脱帽していた.中村と田宮ゆかりが別れていなかった事を, シンコが見抜いていたのに自分は見抜けなかったからだ.
久美ちゃん「女の気持ちは女にしかわからない.」
シンコはジーパンを連れ出してパトロールへ出て行った. 言い争いながら外へ出て行くシンコとジーパンを見て
ゴリさん「あの二人はああどうして仲悪いんでしょうね.」
山さん「いや,ひょっとすると…(廊下を歩くシンコ, 離れて歩くジーパンが映った後で)ひょっとするかもしれんぞ.」
ゴリさん「なんすか,そのひょっとするってのは.」
山さん「ゴリさん一人になるかもしれないって事だ.」
ゴリさん「もう一人いますよ,独身会会長.」
皆,新聞で顔を隠すボスを覗き込むのであった.

次回は長さん主役編.反抗期を迎えた長さんの息子が長さんと一悶着起こします. そしてジーパンと長さんの息子俊一との交流と, 俊一と長さんとの和解とが描かれます.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp