2002年5月8日

「がんばれ! レッドビッキーズ」第47話「成るか?! 決勝進出へ」

脚本は安藤豊弘.監督は田中秀夫.

トータスは愛玩していた亀をエリートスターズの連中にとられ, いじめられていた.それを見かけたペロペロが助けに入ったが
小森「へん.青蛙さ.」
栗山「青蛙?」
小森「赤蛙の補欠だから青蛙じゃないか.」
大笑いするエリートスターズの連中.ペロペロは怒ってつかみかかった. だが小森に突き飛ばされてしまった.
小森「お前らがな,いくら張り切ったって, エリートスターズにはかなわないのさ.この亀と同じよ.手も足も出ない.」
エリートスターズの連中は大笑い.小森は亀を放り投げて帰った.
ペロペロ「畜生.」

次の練習の時,トータスは上の空だった.一方, エリートスターズのピッチャー栗山の調子は良かった. バッティング練習の時,ペロペロは大振りし過ぎで調子が出なかった.

ペロペロ「トータス,俺,やっぱり青蛙かなあ.」
と落ち込むペロペロ.トータスはペロペロを慰めた. そこへエリートスターズの連中がやってきた.栗山も一緒だ.
小森「おい,青蛙.」
怒ったペロペロは栗山につかみかかった.栗山は大袈裟に痛がった.
小森「ようよう.うちのエースを下敷きにして, 試合に勝つつもりか.」
ペロペロ「違う.そんな.」
小森「どうしてくれるんだよ.おい.」
小森はペロペロをこづいた.トータスが庇って謝ったが
小森「よし,おい,青蛙.栗山に謝れ.土下座して謝れよ.」
ペロペロは無言だ.
小森「お前ができなければ監督呼び出して謝らせるぞ.」
仕方なく,ペロペロは土下座した.
小森「よし,許してやらあ.」
栗山「じゃあ,試合を楽しみにしてやるぞ.」
小森「そんなに口惜しがることないだろう.」
エリートスターズの連中「そんなに口惜しきゃ,栗山の球を打つんだな.」
栗山「無理無理.きりきりまいして三振するのが落ちだ.こんな青蛙. お前のような駄目な奴がいて, よくレッドビッキーズがここまで来れたもんだなあ.」
そう言い放ってエリートスターズの連中は去った.
ペロペロ「畜生.打ってやる.あいつのボールを打ってやる.」

次の練習の時.遂にペロペロは来なかった.令子はトータスに理由を尋ねたが, トータスは「知らない.」と答えた.だが令子は見た. ペロペロの特訓をトータスが手伝っているのを. ペロペロは秘密にしてくれとトータスに頼み込んでいたのだ. 令子はペロペロに理由を尋ねた.
ペロペロ「俺,チームが馬鹿にされたことがたまらなかったんだ. それにチームの重荷になりたくなかった.」
栗山の声「へ.お前のような駄目な奴がいて, よくレッドビッキーズがここまで来れたもんだなあ.さあ,行こうぜ.」
ペロペロ「俺,口惜しくて.だから試合に出るまでに, 秘密特訓しておこうと思って.」
令子「そう.でも言われた事を気にすることはないのよ. ペロペロがどんなにチームのために尽くしたか.自信持って.頑張るのよ.」
ペロペロ「でも駄目なんだ.焦れば焦るほど打てない.俺,駄目だ.」
令子「弱音をはいちゃ駄目よ.まず相手に勝つより先に,自分に勝つ事ね.」
ペロペロ「自分に勝つ事?」
令子「そう.」
ペロペロ「自分に勝つ事か.」

ペロペロの話を令子から聞いたオーナーはナインに檄を飛ばした. ペロペロが馬鹿にされた事はチームが馬鹿にされた事と同じだと. ナインもそれに応え,練習終了後も自主トレーニングに励んだ.なお, シゲの特訓中,オーナーはよし子に怒鳴られてしまった. 令子は張り切りすぎてペースを乱す事を心配していた. それを令子から聞いた恵子は,大丈夫よ,そんなに頑張ってるなら, 試合に勝ってね,と言っていた.ちなみにその日の夕食をトンカツ. 「敵に勝つように」と縁起をかついだ,と令子は見ていた.

そして対決の日がやってきた.CMが明け,プレイボール.先発投手はジュリだ. だがジュリはコントロールを乱し, 先頭打者にストレートのフォアボールを与えてしまった. 二番打者は初球を送りバント.打席には栗山が入った.
ペロペロ「ジュリ,頼む.三振奪ってくれ.打たせるな.」
だが栗山は初球をジャストミート.一点入った.小森も続き,二点目が入った. エリートスターズの監督はジュリが緊張していると見た. 令子はノミさんをウォーミングアップさせた.

裏の攻撃では皆大振りが目立ち,三振ばかり.四回表にも1点入り, 四回裏の攻撃.四番のカリカリはピッチャーゴロに倒れたが, 太郎が二塁打を放った.ペロペロが素振りを開始した.が
令子「ジュク,軽くミートするのよ.」
ジュク「判ってます.」
と言いながらもジュクは大振りして三振.ペロペロの素振りを見て
コーチ「監督,珍しくペロペロに気合が入ってるぞ.ペロペロ使ったら?」
令子はタイムを掛けた.だが
令子「北原ジュリに代わってピンチヒッター片瀬.」
これを聞いたペロペロはがっかりして素振りをやめ,ベンチに下がってしまった.
令子「ノミさん,大振りは駄目よ.」
ノミさん「判ってます!」
令子「その力みがいけないのよ.」
ノミさん「はい.」
ノミさんは打席に入った.令子は心配そうにノミさんを見た.
ノミさんの声「くっそう. ペロペロとトータスを馬鹿にした奴の球を打ってやる.」
が,その心とは裏腹にノミさんは凡打を打ってしまい,攻撃は終わった.
令子の声「心配した通り,みんな張り切りすぎて自分のペースを乱してるわ. 何とかしなければ,このままでは負けてしまう.」

遂に七回表.エリートスターズ三点リードのまま,二死満塁のピンチを迎えた.
ノミさんの声「もう一点もやらないぞ!」
ノミさんは力みすぎてボールを連発. すかさずエリートスターズの連中は「♪ビッキー,ビッキー,青蛙. は〜ねる力も持たないか!」と囃し始めた.それを見たジュクはタイムを掛け, ノミさんに言った.
ジュク「ノミさん,僕達,少し力みすぎてはいませんか?」
ノミさん「え?」
ジュク「少し力を抜きましょう.」
二人とも肯いた.
令子の声「やっと判ってくれたのね.」
こうしてノミさんは三振を奪った.

令子は檄を飛ばした.
令子「さあ,最終回よ.みんな,今までの事を思い出して. レッドビッキーズは今迄一人の力ではなく, みんなの力を集結してここまでやってきたわ.勝とうと思わないで. 力を合わせて.いいわね.」
皆,おう,と応えた.
ブラザーの声「みんなの力を集結してか.よーし.」
ブラザーはヒットで出塁.ナッツも続き,二,三塁のチャンス. 続くセンターはフォアボールで出塁.無死満塁のチャンスでシゲに巡って来た.
オーナー「シゲ,ナイスだ.チャンスだあ.男になるんだぞ.」
だがシゲはポップフライを打ち上げてしまった.
オーナー「おかしいなあ.腰は入ってたんだがなあ,入れ過ぎかなあ.」
次は四番のカリカリだ.だがここで令子はカリカリにお願いした.
令子「ペロペロに代わってお願い.」
カリカリは難色を示した.コーチも難色を示したが,構わず, 令子はペロペロをカリカリの代打に出した.
令子「ペロペロ,特訓を思い出すのよ.」
ペロペロ「はい.」
ペロペロはトータスにキャンディーを渡し,打席に入った.
栗山の声「へ,青蛙か.」
ペロペロは思い出していた.
栗山の声「へ.お前のような駄目な奴がいて, よくレッドビッキーズがここまで来れたもんだなあ.」
ペロペロの声「くっそう.」
だがペロペロは気合が空回りし,二球連続空振り.
オーナー「あーあ.これじゃあ,絶好のチャンスもふいだなあ.」
令子はタイムを掛け,ペロペロに言った.
令子「ペロペロ.焦っては駄目.怒っても駄目.自分に勝つのよ. 相手はペロペロと同じように足も手も目も口も鼻も同じように持ってるわ. ペロペロと同じ人間が投げていると思えばいいのよ.」
ペロペロ「同じ人間?」
令子「そう.頑張って.」
ペロペロ「はい.」
令子「(ペロペロキャンディーを手に持ち)舐める?」
ペロペロは喜んでペロペロキャンディーを舐めた. ペロペロは打席に入った.
ペロペロ「おや?」
ペロペロは気がついた.
令子の声「相手はペロペロと同じように, 足も手も口も耳も目も鼻も同じように持ってるわ.」
思わずペロペロは笑ってしまった.それを見て栗山は怒った.
栗山「何がおかしい.くっそう,この一球で片付けてやる!」
平常心を失った栗山の球は真中に入り, リラックスしたペロペロにジャストミートされてしまった. サヨナラホームランだ.次々とホームに帰る走者達,そしてペロペロ.
ペロペロ「監督,俺,打ったあ.」
令子は拍手した.
令子「ペロペロ,見事よ.」
ペロペロの目から涙がこぼれた.そしてペロペロは胴上げされるのであった.
ナレーター「長い間ベンチを暖めたペロペロにも, はじめてレッドビッキーズの一員であると言う自覚が胸の中にこみ上げてきた. チームワークを守りつづけた令子に,また一人,心強い戦士が誕生した. そしていよいよ.全国少年野球大会への出場を賭けて, 宿敵ビューティースターズを迎える事となった.」

次回は感動の最終回.宿敵ビューティースターズとの対戦です.

「太陽にほえろ!」第238話「東京上空17時00分」

脚本は小川英と櫻井一孝.監督は櫻井一孝.主役はゴリさん.

ヘリコプターが海上を飛んでいた.歌手の石井あかりが歌を歌っていた. それをラジオで聞き,ボンはカーラジオのボリュームを上げた. 殿下はボンに好きなのかと訊いた.ボンは石井あかりのファンだった. その頃,ヘリコプターは神津島上空を飛んでいた. 給油の為に大島に着地する予定.ヘリにはゴリさんが乗っていた. 容疑者の倉田(風間杜夫)を護送していたのだ. 倉田は石井あかりの歌をラジオで熱心に聞いていた. 一方,七曲署捜査一係の面々はゴリさんは今どこを飛んでいるだろう, と夢想していた.倉田は給料強盗をして三千万円奪ったのだが, 島に半年間も潜伏し,捕まった時は一銭も持っておらず, 所持品はトランジスタラジオだけだったのだ. 七曲署の面々は島に潜伏していた理由と金の行方を不思議に思っていた.

ゴリさんは倉田に,島にいた理由と金の行方を訊いた. ゴリさんは倉田にヘリを操縦したいかと訊いた. 倉田はヘリのパイロットに成りたかったのだが, 実地訓練に時間を取られ,職場を転々とする羽目になったからだ.

石井あかりのマネージャー(蜷川幸雄)は,その日の予定をあかりに伝えていた. そして事務所である斉村プロダクションに電話し,倉田の足取りを聞いていた. 社員(中村孝雄)はなぜか倉田の乗ったヘリの足取りを把握していた. 昼過ぎに大島で給油.「後の連絡は未だ」だという. 石井あかりは車で移動していた.

七曲署では殿下とボンがボス達に報告していた. 倉田と同じ秋田出身のクラブのバーテンに訊いてみたのだが, 彼は倉田の恋人の話になると口をぱたりとつぐんでしまったと言うのだ. 何か訳がありそうだ.はじめは逃亡先の手がかりになる為とボンは考えたのだが, 倉田が捕まっても彼は倉田の恋人について話そうとはしなかった. 倉田は恋人と前の年の7月頃には別れたらしい.倉田が事件を起こす少し前だ.
スコッチ「女と別れて自棄っぱちでやったのかもしれませんねえ.」
ボスはしばらく黙っていた.そこへゴリさんから連絡が入った. 大島で給油を終え,芝浦ヘリポートに2時20分に着くと言う. その時の時刻は1時48分.その通信を斉村プロダクションの社員が盗聴して確認. 狙撃手に連絡した.

ヘリは芝浦ヘリポートに近づいた.石井あかりは歌を歌っていた.
倉田「きたねえな,東京は.海もきたねえ.街もきたねえ.何もかもきたねえ.」
そういう倉田をゴリさんはじっと見た.その頃, ボンと殿下は芝浦ヘリポートに着いていた.ヘリが着陸しようとその時, ヘリのパイロットが狙撃された.
倉田「操縦桿引けえ.操縦桿だよう.操縦桿引くんだあ.しっかり引くんだあ. 離すなよ.離すなよ.」
さらに倉田は手錠を外すように言った. ヘリコプターの操縦には両手両足が必要だと言うのだ. ゴリさんは倉田の手錠を外す事を決断した.倉田が操縦席に着き, 墜落の危機は免れた.ゴリさんはボスにこの事を報告した.

管制官は大井13号埋立地に着陸するように指示した.だが
倉田「皮肉だなあ.」
ゴリさん「何?」
倉田「いつもシミュレータの操り人形だった俺が, 何もかもだめになっちまった今,こうして操縦桿を握ってる.」
ゴリさん「降りないつもりだな.逃げる気だな.逃げてどうなるんだ,倉田. 優秀なパイロットを見殺しにして,この俺を突き落として,貴様, 平気で生きて行けると思ってるのか.」
倉田は何も応えなかった.
ゴリさん「降りろ,倉田.」
ヘリのプロペラ音だけが響いた.
倉田「わかったよ.だけど,降りたからって何もかも自供する気はないぜ.」

その頃,殿下は狙撃現場を特定していた. ボンも近くの喫茶店にゴルフバッグを持った男がいたことを聞き込んでいた. それを聞いたボスは無線盗聴だと見抜き,これからは連絡を電話ですると言った.

斉村プロダクションの社員は狙撃手をなじっていた. 本当の狙いは倉田の殺害だったからだ.

丁度その頃,石井あかりは倉田の乗ったヘリの変事を知った. 警視庁は報道管制をしいたと言う記者達の話を立ち聞きしてしまったのだ. あの辺りなら大井13号埋立地に降りるだろう.

ヘリが13号埋立地に近づいた.ヘリが着陸しようとしていた. 埋立地には七曲署の面々,消防隊員,そして石井あかりが来ていた. ヘリは着陸した.救急隊員はパイロットを運び出した.一安心する倉田. だが倉田は見てしまった.石井あかりが来ているのを. ゴリさんも石井あかりが来ている事に気がついた. 倉田と石井あかりはしばらく見つめあった.そして突然, ヘリが急上昇を始めた.ゴリさんはヘリに飛びついた. 追いかけるスコッチとボン.だがヘリは見る見るうちに上へ行ってしまった. 心配そうにみつめる石井あかり.

ゴリさんは強引にヘリに乗り込んだ.
ゴリさん「着陸するんだ,倉田.馬鹿な真似はやめろ.」
倉田「やだ.俺は飛ぶんだ.このまま燃料が無くなるまで, どこまでも飛ぶんだ.」
ゴリさん「あの女,誰だ?」
倉田「女? 女なんか知らねえよ!」
倉田は自棄に興奮して否定した.だがゴリさんは見抜いていた.
ゴリさん「とぼけるな.なぜあの女を見て急に飛び上がった.なぜだ.」
倉田「ほっといてくれよ.でないと,このまま墜落させるぞ.」
倉田は無線機を壊してしまった.そしてヘリは東京上空を飛びつづけた.

山さんは石井あかりが来ていた事をボスに報告した. ファンのボンが間違いないと言っていたのだ. ボスは大至急石井あかりを当たる事を指示した.さらにボスは, ヘリの燃料があと二時間足らずで尽きる事も告げた.

ゴリさんはどうする気か訊いた.燃料が尽きれば街のど真ん中に落ちる. それでも平気かと.
倉田「ああ,平気さ.あのきたねえ街のど真ん中に落ちてやるよ.」
ゴリさん「無理するのはよせ.二度も人の命を救ったお前に, そんなことが出来るはずがない.」
倉田はゴリさんの方をちらっと見たが,またそっぽを向いてしまった.
ゴリさん「逃げたあの島でお前が何をしたか,俺は知っている.」
戸島浦津村駐在所の若い巡査がゴリさんにこう言っていた. 一ヶ月くらい前,若い子供が心臓の手術をした.その時血が足りないので, 倉田は輸血を申し出たのだ.だから島の若い巡査, さらに島で倉田を知っている人間は皆,倉田は善人だと言っていた.
倉田「駄目だ.もう俺は駄目なんだよ.」
ゴリさん「何が駄目だ!」
倉田「このまま着陸して,あんた達に調べられたら, 破滅するのは俺だけじゃない.彼女の一生まで滅茶滅茶になっちまうんだ.」
ゴリさん「彼女? さっきのあの女だな.」
倉田は答えなかった.ゴリさんはあの女(石井あかりのこと)の素性を訊いたが
倉田「言えない.どんなことがあってもそれだけは言えないよ.」

ボンのテーマの変調曲が流れる中,ボンは倉田の友人のバーテンから, 倉田の別れた恋人が石井あかりである事を聞き出そうとしていた. その頃,スタジオでは石井あかりのグラビアが撮影されていた. だが石井あかりは泣いてばかりでなかなか笑顔を見せなかった. その時の時刻は3時25分.頑強に否定するバーテンを連れ, ボンは屋上に上がった.
ボン「見ろ.倉田と僕の先輩刑事があのヘリに乗っているんだ. 5時になったらなあ,燃料が無くなるんだよ.」
ボンはバーテンに自分の腕時計を見せた.時刻は3時半.
ボン「倉田の秘密が判らない限り,もう我々にも手の打ちようがないんだよ. なあ.」
遂にバーテンは折れた.倉田は石井あかりをスターにするために身を引いたのだ. 二人はバーテンの店で知り合った.二人とも夢を持っていた. 倉田は,二人のうち一人でも夢が実ればそれでいい,俺は踏み台になるんだ, と言ってすぐに,強盗を行なったのだ.

石井あかりのマネージャー斉村は,石井あかりが13号埋立地に来た筈がない, と山さんに向かって否定していた.スコッチは石井あかりに言った.
スコッチ「石井あかりさん.倉田せいじが乗ったヘリの燃料は, あと約1時間半で無くなります.」
石井あかりは驚いて口を開けた.それを長さんも見逃さなかった.

倉田は頑強に石井あかりの事を話そうとしなかった. あと1時間15分で燃料が尽きる.倉田は1時間15分飛び続けると宣言していた. ゴリさんは海へ行けと言ったが
倉田「やだね.撃つかい,俺を? 撃ったって俺は操縦桿離さないよ. 撃ったら,この街へ落ちて.このきたねえ街へなあ.」
倉田は大笑いしていた.

西山署長は他のヘリを飛ばして追跡させる事をボスに命じていた. ボスはそれを辞めさせるように頼み込んでいた. 倉田がヘリを飛ばしつづけるのには何か理由があるはずだ. それが判れば,それに応じた措置がとれるはずだ.

スコッチと長さんの必死の頼みもあり,石井あかりは話そうとしていた. だが斉村は,BBS 放送の4時50分の生番組は石井あかりがスターになっても, 続けたい番組だろう,と言って出ようとした.そこへ山さんが登場.
山さん「斉村さん.あなたのプロダクションはかなりの借金をお持ちですなあ.」
斉村は口を開けてしまったが
斉村「大した事はない.借金なんて直返せますよ.」
山さん「そう.金の卵の石井あかりさんが, このまま順調にスターの道を歩めば,ですなあ.」
斉村の顔色が変わった.
山さん「ところで,倉田が盗んだ3千万円ですが, どこへ消えたかがやっと判りました. あなたが暴力金融に借金3千万円を返したのが, あの強盗が起こった直後だったそうですなあ.」
思わず石井あかりは斉村の方を見た.スコッチも長さんも山さんも斉村を睨んだ.
斉村「知らん.そんな事は私は何も知らん.警察のでっち上げだ.」
だが石井あかりは一人で出て行ってしまった.山さんは斉村を遮った.
山さん「まだ話が残ってるんですがねえ.」

スコッチは石井あかりの尾行を続けていた.倉田はヘリを飛ばしつづけていた. ゴリさんは倉田を見た後,下を見た.
倉田「馬鹿だなあ.みんなあくせく一生懸命働いて.馬鹿だなあ.」
ゴリさん「確かに馬鹿かもしれん.だがな,倉田. ああやって馬鹿みたいに働いて,働いて働いて, それでやっと自分の物にするのが,本当の夢じゃないのか?」
倉田「待てないんだよ,刑事さん.そんなもん待てないんだ.」
ゴリさん「倉田.」
倉田「死んだ方がいいんだ.みんな,俺みたいに苦しんでる連中ばかりだ. 死んだ方がいいんだよう.」
ゴリさん「倉田.おい,しっかりしろ,倉田.」

午後4時25分.あと35分しかないと言うアッコにボスは返す言葉がなかった. スコッチは石井あかりの尾行を続けていた. 山さんと長さんは斉村の尋問を続けていた.ボスは考え込んでいた. 斉村プロダクションの前にボンが到着.社員と狙撃手は盗聴を続けていた. スコッチに殿下が合流した.ボスは考え込んでいた.

遂に
倉田「あかり.」
ゴリさん「あかり? 石井あかりか.」
倉田「知ってるだろう,刑事さん.毎日4時50分,BBSのヒット歌謡. ずっと彼女がディスクジョッキーやってきたんだ.俺,ずっと聞いてたんだけど, 今日は無理かもしれないなあ.」
倉田は操縦桿を離したが,ゴリさんが無理矢理握らせた.
ゴリさん「倉田.あかりさんのためにも思い直せ.死んでどうなるんだ, 馬鹿野郎.」
倉田「あかりは未だ何にも知らないんだよ,刑事さん.でも, 俺が何もかも喋ったら,あかりはスターじゃいられなくなるんだ.」
ゴリさん「いいか,倉田.俺は死なんぞ.死んでたまるか. 海に不時着してお前を助ける.」
倉田は無駄だと言ったが
ゴリさん「やってみせるさ.お前とあかりさんのためにもなあ.」
ゴリさんは汗だくになりながら操縦桿を動かし続けた. それを倉田はじっと見た.

ボスは自ら出動し,ボンに無線で連絡した.その最中, ボンのところに長さんがやってきた.それをボンから聞いたボスは, そのまま斉村プロダクションに踏み込めと命じた. 斉村と倉田の関係を立証するためだ.ジーパンのテーマが流れる中, パイロット殺害未遂犯人は,殺害未遂と電波法違反の疑いで逮捕された.

ヘリの中では
ゴリさん「それでお前は好きなあかりさんのために3千万を使ったんだな. だからそれを自供できないって言うんだな.」
倉田「そうだ.その金さえ作ればあかりにヒット作曲家の曲を吹き込ませるって, 斉村プロダクションの社長がさあ.だから俺は金を作った. あかりとは別れて金を作ったんだ.」
4時50分になった.
ゴリさん「倉田,彼女の放送の時間だ.」
ゴリさんは強引にラジオをつけた.ラジオから流れたのは
ボスの声「倉田.お前は必ずこの放送だけは聞くと聞いた.」
倉田は逆上した.だが
ボス「倉田,死ぬのはよせ.石井あかりさんはもう全て知ってしまった.」
倉田は逆上した.ゴリさんは聞けと言った.それを知ってか知らずか, ボスは言った.
ボス「もう一度言う.石井あかりさんはもう全てを知ってしまった. 斉村もお前を殺そうとした殺し屋も,もう逮捕した. だから,あかりさんは石井あかりの名もスターの座も全てを捨てた.」
興奮する倉田.
ボス「お前のために,お前の為に全てを捨てたんだ.」
それを聞いた倉田ははっとして,暴れるのをやめた.
ボス「今彼女は車で最も海に近い大井の13号埋立地に向かってる. お前が無事に着水あるいは着地できることだけを祈ってだ.判るか,倉田. あかりさんはな,お前の無事だけを祈ってる. そんなあかりさんの気持ちをお前は踏みにじることが出来るのか. あかりさんはお前の為にもう一度やり直すと言っている. 今度は本当の自分の力でもう一度歌で行きたいと言っている.倉田, 彼女ともう一度やり直せ.まだ決して遅くはない.」
倉田は黙ってそれを聞いていた.
ゴリさん「大井13号埋立地だ.飛ぶんだ,倉田.もう一度しっかり着地するんだ. いいな.」
倉田はゴリさんの方を見た.ゴリさんは倉田から手錠を外した. ゴリさんは言った.
ゴリさん「さあ,行こう.」
ヘリは13号埋立地へと向かって行った.スコッチと殿下は, 石井あかりを13号埋立地へと連れてきた.
あかり「刑事さん見て.来ます.こっちへ来ます.」
ヘリが飛んできた.スコッチが時計を見た.五時五分前.
スコッチ「あと五分遅れたら…」
殿下「遅れたって時間の方が延びてくれるさ. あれだけみんなで頑張ったんだからなあ.」
倉田は石井あかりの姿を確認した.
倉田「あかり…」
そして倉田はヘリを埋立地へ着地させようとしていた. ボスは時計を見てから言った.
ゴリさん「御苦労だった,ゴリ.」

次回は殿下主役編.

「2002年5月」へ 「テレビ鑑賞記」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp