2002年4月3日

「がんばれ! レッドビッキーズ」第42話「石黒コーチの縁談」

脚本は上原正三.監督は畠山豊彦.

珍しく令子がノックをしていた.だが令子のノックは相変わらず下手糞. 外野へ球が飛ばないので太郎は飽きてしまって次郎と一緒におにぎりを頬張り, センターもトータスも座り込んでしまった.
トータス「トータス,球が全然来ないねえ.」
なぜこうしていたかというと,前の晩に令子がコーチから電話を貰い, 所用で練習に出られないと聞いたため.そこへオーナーがやってきた. オーナーはコーチの「所用」の真相を聞き込んでいた. 昨日の昼頃にコーチは作業中に怪我したと言うのだ. 大藤電器へ出前に行き,その事を聞いたと言う.

令子とオーナーとジュクは病院へ駆けつけた. 妹のみゆき(女鹿智子)が令子達を出迎えた.コーチは積荷を降ろしそこね, 足を怪我してしまったのだ.その時, 令子は他に女(野川愛)がいるのに気がついた.彼女の名前は上田幸子. コーチはお見舞いに来たものだと思っていたが, みゆきの話だと実はお見合いだと言う.さらに母親も上京すると言う. 令子はみゆきに幸子の印象を聞かれ,口を濁した.ちなみにコーチの年齢は26歳. 結婚適齢期だ.

令子が家でその話をしていると, みゆきがコーチの母親(佐々木すみ江)を連れて来た.
母「あんたかね,うちの正人をたぶらかしているのは.」
不意にそんなことを言われた令子は驚き,みゆきは母をたしなめた.だが
母「あたしはねえ,親の許しも得ない結婚なんて許しませんよ.」
恵子「あのう,何か勘違いしてるんじゃございません? 令子はまだ高校生ですのよ.」
それを聞き,さらに「行く行くどうのという話」もないと聞き, コーチの母は一安心.いくら見合いの話をしても, コーチが突っ返したりするなど乗り気でないため, コーチの母は心配していたのだ.
令子「石黒さんはコーチ.私は監督.ただそれだけの関係ですわ.」
コーチの母は幸子の見合い写真を持ってきていた. 母は令子のことがはっきりしたと聞き,コーチを田舎へ連れて帰ると言った. それを聞く令子は複雑な思いで頭を垂れた.

コーチは田舎へ帰ることを渋っていた.田舎へ帰ろうと言う母や妹に向かって, コーチはバットを持って素振りをした.思い余ったみゆきは令子に言った.
令子「コーチを辞めて欲しい?」
みゆきはコーチの未練がましい姿を見ているのが堪らなかったと言う.
みゆき「兄は過去にしがみついています.栄光の日々が忘れられないんです.」
令子「あたしにはそんな風には思えませんけれど.」
みゆき「コーチを辞めたら決心がつくと思うんです,田舎へ帰る.」
令子がそんなこと言えないと言うと,さらに
みゆき「じゃあ,はっきり言います.兄さんはあなたが好きなんです.」
令子「みゆきさん…」
みゆき「だから誰にも振り向こうとしない,きっとそうなんだわ.」
令子「まさか.」
みゆき「いいえ.それ以外に考えられない,理由なんて.」
令子は絶句してしまい,首を左右に振るのがやっとだった.

その晩,令子は恵子に昼間のことを話した. 令子はそんなこと考えたことないととまどっていた. 果たしてそうなのだろうか?
恵子「淋しいのよ,お母さん.石黒さんと一緒に暮らしたいのよ. わかるわ,お母さんの気持ち.」

さて翌日.ジュリがノックを打っていた. だが打ちすぎで手の豆を潰してしまった. 駆けつけたナインは令子にコーチが辞める話が事実かどうか尋ねた. 太郎がコーチの縁談の話を聞きつけていたのだ.

ジュク達はコーチが辞める事に危機感を抱いていた. その時,ブラザーがとんでもない作戦を思いついた.
ブラザー「こういうのはどうだ.監督とコーチが結婚するんだ.」
カリカリ「馬鹿な!」
ブラザー「監督が上さんじゃ,逃げようがないぜ.」
ペロペロ「生まれた子供もレッドビッキーズだ.」
子供らしい飛躍した発想だ.
ブラザー「そうだよ.レッドビッキーズは永延に不滅だよ.」
ジュク「卓抜なる発想ですね.」

作戦は実行に移された.ペロペロは令子が公園で待っていると称して, コーチを公園へ行くように言った.令子はトータスから, コーチが公園で待っていると聞いた.物陰から覗くジュク達. シゲがラジカセから鳥のさえずりの音を流したりするなど, ムードを出そうとした.令子とコーチはすぐに作戦に気がついた. 令子とコーチはブランコに乗った.
ジュク「♪風に揺れて〜いる〜かしら〜あの白いブランコ〜ってとこですかな.」
随分ませた子供だ.閑話休題.
令子「でも折角会ったんだから,聞いちゃおうかしら.」
コーチ「なんだい?」
それを見て
ブラザー「あたしのこと,好き? 愛してる?」
馬鹿なことを言ったブラザーはカリカリに頭をはたかれた. ブラザーは口笛でコオロギの真似.ムードミュージックを流そうとして, シゲ達は四苦八苦.なぜかブラザーが発情したのか,変なポーズを取り
カリカリ「お前は気持ち悪いんだよ.」
と怒られた.その頃
令子「あのね,どうしてお見合いに応じないかって事.」
それを見て
ジュク「核心に触れてきました.」
コーチは困っていた.
コーチ「どうしてって言われてもなあ.」
令子「じゃあ,どうしてここにいるの?」
それを見て
ブラザー「君を愛してるからだよ.」
慌ててノミさんがブラザーの口を塞いだ.
コーチ「そうだよ.どうして俺はここにいるんだろう?」
コーチも答えが見つかっていなかった.
令子「お母さんはねえ,一緒に暮らしたいのよ.」
コーチ「うん.それは良くわかってるんだ. でも俺の中でどうしても踏ん切りがつかないんだなあ.何故だろう?」
そこへ岡持ちを持ってよし子登場.
よし子「シゲ,出前手伝っておくれ.今とっても忙しいんだよ.」
これにより,ジュク達の存在がばれてしまった.
ペロペロ「結婚ってとっても難しいんですね.」
去っていくジュク達を見て
令子「引き止めたいのよ.」
コーチは踏ん切りをつけなくちゃなあと考えた.

コーチは久し振りに練習に出た.その日のコーチの打球は強かった. ナッツが足にボールを当て,シゲは頭にコーチの打球を当ててしまった. 親馬鹿なオーナーはコーチをなじった.令子はこう言った.
令子「自分のイライラを子供たちにぶつけるのはやめて欲しいわ.」
コーチ「加減がわかんなかったんだよ.」
令子「そうかしら.一度御見合いでもした方がいいんじゃない.」
コーチ「田舎へ帰れって言うのか?」
令子「うじうじ考えてるよりは,その方がいいと思うわ.」
この言葉に衝撃を受け,コーチはバットを放り投げて去ってしまった.

コーチは荷物を持ってワゴンに乗った.車を発進させようとした時, コーチは脳裏に甲子園で活躍した日の事を思い浮かべていた. そしてコーチは令子に電話した.
コーチ「俺,帰ることにしたよ.」
令子「そう.」
コーチは公衆電話ボックスから去って行った. 令子は黙ってコーチと一緒に写った写真を見ていた.

翌日.気丈にも令子は石黒が帰る事にしたことをナインに話した. ナインは追おうとしたが
令子「行っても無駄よ.」
その頃,背広を着て,バスを母とみゆきと一緒に待っていたコーチは, しばらく待ってくれ,と言ってグランドへ行った.コーチの登場に皆,大喜び. 皆,コーチの周りに集まった.
コーチ「皆にお別れ言うの忘れてたんだな.」
ジュク「じゃ,もう…」
コーチ「うん.」
ジュク「そうですか.」
その時,シゲが言った.
シゲ「残念だな.昨日のお返ししようと思ったのに.」
コーチは思わずシゲの方を見た.
シゲ「今日ならうまく捕って見せるぜ.」
カリカリ「俺も受けたかった,鬼コーチの殺人ノック.」
皆,コーチのノックを受けたいと言った.
コーチ「本当に思うか,お前達.」
シゲ「勿論さ.」
コーチ「よーし,置土産にしごいてやる.」
皆,大喜び.令子もコーチがノックするのを見て頬笑んだ.さらに
母「まあ,またやってるよ.」
みゆき「兄さーん.」
令子は二人が見に来ている事に気付き,コーチに声をかけた. だがコーチは一心不乱にノックを打っていた.
みゆき「兄さん,令子さんが好きだと思っていた.でも間違っていた. 兄さんが好きなのは野球よ,野球なのよ.」
コーチも同じ事を考えていた.
コーチの声「体の底からこみ上げてくる涙の意味がやっとわかった. 今はじめて判った.俺が東京へしがみついているのは, この燃える瞳の少年達がいるからだ.俺が青春の全てを注ぎ, 体と心で覚えた技を,熱情を,俺は彼らに伝えたい.」
コーチ「そうだ.そうなんだ.」
コーチの母は決断した.
母「汽車に遅れるよ.」
みゆき「兄さんは?」
母「正人があんなに生き生きしてるなんてねえ.高校時代もああだった. 朝早くから夜遅くまで練習,練習.でも一言も言わなかった, 疲れたなんてねえ.」
なおもコーチはノックを続けていた.
母「まるで高校時代に戻ったみたいだよ.」
みゆきは肯いた.そしてコーチの母とみゆきは黙って去って行った.
令子「いいの?」
コーチ「俺のふるさとは,ここだ.このグランドだ.」
レッドビッキーズのナインは喜んでいた.それを見て令子は頬笑んでいた. コーチはやっと目標を見つけたのだ.

次回はサードのポジションを巡り,シゲとカリカリ, オーナーとカリカリの父,そしてよし子とカリカリの母も大喧嘩. なぜかペロペロがサードに入ります.

「太陽にほえろ!」第233話「狙撃」

脚本は鴨井達比古と小川英.監督は澤田幸弘.主役は殿下.

夜の新宿.タクシーから降りた外国人が車に轢き逃げされて殺された. 一度跳ね飛ばしてから,もう一度引き返し,また跳ねたのだ. 早速山さん達,七曲署の面々が捜査に出動したが夜間の為,目撃者もいなかった. スコッチはタイヤの跡等から,一度跳ね飛ばしてから,もう一度引き返し, また跳ねた,と推測した.明らかに殺意があったと言う事だ. ゴリさんの調べでは,被害者は殺害現場の近くのマンションに住んでいた貿易商. 名前はライ・ソムジッド.アジア人らしい名前だ.ボンはタバコを拾っていた. 見慣れない種類のものだ.山さんは,犯人が現場で待ち構えた時に落とした, と睨んだ.そこへ車がやってきた.車に乗ってやってきたのは, 本庁外事課の刑事達(龍虎ら)だった.二人は,ちょっと気になってやってきた, と言ってすぐに立ち去ったが,山さん達は何かあると睨んだ. 外事課の刑事とくっついてきた背の高い刑事(龍虎)は本庁の警備課の刑事だ. それを聞き,背の高い刑事が緑色のネクタイをしていたことを, ゴリさんは思い出した.そのネクタイは GP のトレードマークなのだ. GP とは重要人物ボディーガード専門の刑事でエリート中のエリートだ. なぜ GP がわざわざやってきたのだろうか? とりあえず山さんと殿下は被害者の部屋を調べ, ゴリさんとスコッチとボンは目撃者を見つけ出す事にした.

翌日.捜査会議が開かれた.なぜかボスの姿が見えない. それは兎に角,ゴリさんは大使館へ行ってみたが, ソムジッドなる人物は知らない,来た事も無いとの一点張りだった. だがスコッチの調べによると,タクシーの運転手は, 大使館から出てきたところでソムジッドが拾った,と証言していた. そこへボンが戻って来た.ボンが,ボスはどこにいると聞くと, 長さんが,署長室へ呼ばれている,と答えた.解剖の結果, ソムジッドの死因は内臓破裂に頭骸骨骨折だと判った. 何が何でも殺そうとしたに違いない.そこへ内線電話が. 電話はボスからのもので,全員会議室へ集まれと言うのだ.

ボス「紹介しよう.本庁警備課,通称 GP の堀田警部だ.」
ボスに紹介されたのは昨日来た背の高い刑事だった.堀田が一礼すると,一同, 堀田に一礼し,ボスに促されて席に着いた.
ボス「実は今朝本庁から重要人物警備の要請があった.明日の夜, ある外国政府高官が極秘の内に来日する.滞在時間は約24時間. ところが,その高官の命を狙う暗殺計画があることが判明した.」
ここでアングルが変わり,ボスの目線で絵が映された. 向かって左側には手前から山さん,長さん,ゴリさんが座り,右側には殿下, スコッチ,ボンが座った.これが序列通りの座り方だ.それは兎に角, スライドも交えて説明が行なわれた.
ボス「これが狙われている人物,東南アジア某国の副首相(有馬昌彦). 元空軍少将で7年前クーデターで政権を握った.肩書きは副首相だが, ナンバーワンの実力者だ.」
ここでスライドが変わった.一組のカップルが映されていた. 二人とも白衣を着ていた.
ボス「副首相の一人娘マリア(関谷ますみ)と婚約者の高木修一. 二人とも東都大学医学部の学生だ.彼女は父親の強い反対を押し切って, 高木と結婚する事になった.結婚式は二日後に行なわれる.」
スライドが変わった.
ゴリさん「じゃあ,副首相はその結婚式に出席するために.」
ボス「そうだ.」
スライドに私学会館という建物が映し出された.
ボス「結婚式はここで行なわれる.暗殺者が狙うとすればここだ. つまり我署の管内で暗殺が行なわれる可能性が強いってわけだ.」
またスライドが変わり,一人の男が映し出された.
ボス「暗殺計画の主役,通称カルロスと呼ばれる男だ.去年, 副首相がインドネシアを訪問中に狙撃され, 重傷を負わされると言う事件が起こったが, その時のホシもこの男だと言われている.」
またスライドが変わった.
ボス「殺されたソムジッド.」
ここでスライドの上映は終了.窓のブラインドが上げられた.
スコッチ「ソムジッドを殺したのもカルロスですか?」
ボス「まあその一派であることは間違いない. 実はソムジッド氏は政府側の情報部員.もう一つ厄介な事がある. これは副首相の意向でもあり,先方政府の意向でもあるのだが, 今度の副首相の来日は極秘で行なわれる.」
皆驚いた.
ボス「例え娘の結婚式とはいえ,あの国では今,反日感情が高まっている. そんな時にだ,副首相の来日が公表されてみろ.」
皆納得した.ボスは補足する事はないかと堀田に確認したが, 堀田は「別に」と答えた.
山さん「街中の結婚式場が危険だと言う事はわかりますが, そこへ着くまでの道中の安全は?」
堀田「それは我々 GP が責任を持ちます.」
この官僚的な言い方を聞き,七曲署の面々はいい気持ちがしなかった.
ボス「当面カルロスの捜査と暗殺阻止の二面作戦だ.」
堀田「言うまでもないが,失敗は絶対許されない.藤堂さん,誰か一人, あたしに助手をつけて下さい.」
ボスは殿下を指名した.堀田は殿下に式場へ案内してもらおう,と言って, 殿下と一緒に出て行った.
ゴリさん「ふう.体もでかいけど態度もでかいですねえ.」

私学会館を殿下と堀田は訪れ,周りをチェックした. 近くには工場があるらしく,煙突から煙が出ていた. また建設中のビルの工事現場も近かった.堀田は殿下に命じ, 車を降りてから歩いて玄関に入るまで何秒かかるか測らせた. 殿下の計測では「ゆっくり歩いて15秒」だった. そして堀田と殿下は近くのビルに登った.
堀田「(私学会館まで)200mか.狙撃するには絶好の場所だな.」
殿下「ええ.しかし,この距離からやるとなると, 相当腕に自身のある奴ですねえ.」
堀田「カルロスがジャカルタで副首相を狙撃した時の距離が250mだ. 心臓を外れていたが腹には命中している.奴の腕はオリンピッククラスだ.」
殿下「じゃあ,ゴリさんといい勝負だなあ.」
思わず堀田は殿下のほうを見た.
殿下「ああ,うちの石塚刑事の事です. 彼ならこの距離でも一発で心臓を撃ち抜きます.」
堀田はこう言った.
堀田「ほう.そら大したもんだね.どこの署にもいるもんだ. 自称射撃の名人って者は.」
殿下はこう言った.
殿下「向こうのビルへ行ってみましょうか.」
堀田「いや,この後の下見は俺一人でいい. 君は東都大学へ行って副首相の娘と会ってくれ.」
殿下は東都医科大学へ行く事にした.

マリアは副首相が来る事を信じようとしなかった.その理由は
マリア「だってパパは,あたしたちの結婚,最初から反対だったんです. 日本人との結婚,許せない,すぐ学校を辞めて帰って来い, ずっとそればっかりで.」
高木は殿下が訪ねて来た理由を尋ねた.殿下はその理由を包み隠さず話した.
殿下「実はお父さんが狙われる可能性があるんです.」
マリア「パパが?」
殿下「ええ.あなた方の結婚式を一時延期して頂くか, あるいはもっと警備のしやすい式場に変更して頂ければ, 危険度はかなり減るんです.」
だが答えは
マリア「そんな必要ありません.」
殿下は困ってしまった.
マリア「例え日本に来ても,あたし達の結婚式,来ません.あたしの国,今, 反日感情,とっても強いんです.国民の気持ち,大事にするパパが, こんな時に日本人と結婚するあたし,お祝いに来るでしょうか?」
殿下はこの問いに答えられなかった.
マリア「あのう,何か,目的があるんだと思います.」
殿下「わかりました.では,一応出席者全員をチェックさせて頂きたいが…」
高木は承諾した.そして出席者のリストを出した.そのとき, 殿下はあの轢き逃げ現場に落ちていたタバコが灰皿にあるのに気がついた.
殿下「珍しいタバコですね.これ,あなたの?」
高木「いえ,違います.これはリンさんのでしょう.今朝来ました.」
殿下「リン?」
高木「はい.この名簿に書いてある,マリアと同じ国の留学生です.」

早速殿下はこのことをボスに報告した.タバコは鑑識に回していた. 問題の留学生の名はリン・シャオ.留学して来たのはマリアと同じ時期だったが, 最近は学校にはあまり姿を現していなかったと言う. そこへゴリさんが戻ってきた.カルロスの足取りは掴めなかったと言う. ゴリさんは堀田の居場所を聞いた.署長室から電話していると聞くと, ゴリさんは電話するにも署長室かなど色々陰口を言った.そこへ堀田登場. 堀田は殿下に結婚式の出席者の名簿を見せろと言った.
堀田「(ゴリさんに)君,全員チェックをしてくれたまえ.高木の家族も含めて, 全員漏れなくだ.」
ゴリさん「はい! ボン.おい.」
ボン「はい!」
ゴリさんとボンは出て行った.堀田は結婚式延期の首尾を殿下に聞いた. 殿下は式場変更の件も含めて断られたと言った.そして
殿下「堀田さん,副首相が式に出席するのは確かなんでしょうか? マリアさんはまるで信じてないんです.」
堀田の答えは
堀田「来たまえ.私が本人に話す.」

車の中で堀田はこう言った.
堀田「結婚式に出席するかどうかの確認は未だとっていない. しかし来る以上,出席する可能性は高いんだ.」
殿下「それではマリアさんは納得しませんよ,絶対に.」
堀田はこう答えた.
堀田「よーし,私学会館に回ってくれたまえ.」
殿下「何をしに行くんですか?」
なんと
堀田「彼らが中止させなければ,式場の方を中止させるまでだよ. 強行すれば血が流れると言や,一も二も無いだろう.」
この答えに殿下は納得しなかった.
殿下「堀田さん. 副首相に結婚式の出席を思い直してもらえばいいんじゃないですか?」
堀田「副首相の意思を曲げる事は出来ん.それは我々の仕事じゃないんだ.」
堀田の言う事は一理ある.だが
殿下「しかし,無理矢理結婚式を潰されたら,あの二人はどうなるんですか?」
そう.殿下の言う事にも一理ある.
堀田「命令するのはあたしだ.会館へ行きたまえ.」
殿下は車を止めた.
殿下「お断りします.」
堀田「何?」
殿下「あの二人は国籍の違いを乗り越えてやっと結婚にまでたどり着いたんです. 誰にも邪魔する権利はありません.」
堀田「君!」
堀田は車を降り,タクシーを拾って行ってしまった.

その頃,例のタバコの吸殻から採取した唾液の血液型が, ソムジット殺しの現場に落ちていたものと一致する事が判った. ボスは山さん達に電話でリンの処置を一任した.そこへ殿下が戻って来た. ボスは殿下に戻って来た理由を尋ねた.
殿下「申し訳ありませんが,あの人とはつきあいきれません. 誰かと交代させてください.」
後から戻って来た堀田も同じ事をボスに命じていた.
堀田「彼は私に協力的ではない.もしものことがあれば, 日本の政府は大変な事になるんですよ.」
ボス「是が非でも結婚式を中止しようというあなたの意見は聞きました.」
堀田「藤堂さん,外国要人の極秘行動ほど厄介なものは無い. 非公式だから大っぴらな護衛は困る.それでいて, 万一何かあれば全て我々の責任になるんです.」
ボス「だから安全のためには手段を選ばない.」
堀田は無言だ.
ボス「あんたはたった一つだけ忘れてる事がある.人間は将棋の駒とは違う. 要人警護のためなら他人に傷をつけても構わないと言うあなたの方針なら, うちの連中は誰も協力しませんよ.勿論,私もだ.」
思わず,堀田はボスを睨みつけた.
堀田「わかりました.島君を変えてくれと言う申し立ては引っ込めましょう. しかし,藤堂さん,あなたも一つだけ忘れてる事があります. 例えそれが親の仇であっても,我々は守れと命令されたら, 命懸けで守らなければならないんです.GP の仕事は, 将棋の駒になりきらなければできないんです.」
そう言って堀田は去って行った.

翌日.リンの車から採取した血液はソムジットの血液と一致した. ボスはスコッチと山さんにリンの逮捕を命じた. リンは逃げようとしたが,結局逮捕された. スコッチはリンを取り調べた.リンは犯行を否認した. カルロスのカの字もリンが喋らないと聞き
堀田「私が尋問する.」
堀田は取調室に乱入し,リンに詰め寄った. あのスコッチが思わず堀田に掴みかかって止めるほど, 堀田の取調べは強引だった.
ゴリさん「スコッチ,お前でも止めに入る事があるんだなあ,え.」

一係室では
堀田「あと6時間で副首相は着く. しかし我々には未だカルロスの所在一つつかめていない. 藤堂さん,あの男を釈放してください.責任は私が持つ.」
沈黙が流れた.
山さん「誰も驚かないところを見ると, どうやら全員同じ事を考えていたようですなあ.」
ボス「泳がせてみるか.カルロスと接触してくれる事を祈ってな.」

リンを殿下と堀田,スコッチと山さんが尾行した.そのとき,堀田が気がついた. ビルの屋上に狙撃手がいたのだ.殿下は無線で山さん達に報告した. 殿下はリンを保護.堀田,山さん,スコッチはビルの屋上へ向かった. 狙撃手は挟み撃ちにあい,逃げられないと見るや自殺してしまった.
スコッチ「カルロスじゃなかった.」
堀田「敵はカルロス一人じゃないって事だ.」

その夜.副首相が来日した.堀田と殿下は副首相がホテルに入った事を確認. 早速会議が開かれた.副首相は結婚式には個人の資格で出席するつもりだ, とボスが言った.つまり,ガードも不要と言う事だ. 堀田はガードを中止する訳には行かんと主張.ボスも同意見だった. 結婚式に出席するとすればやはり私学会館が一番護衛困難な場所になる. 堀田は地図にコンパスで私学会館を中心とする円を描いた.
堀田「カルロスが使うと思われるウェザBロングライフルの射程距離が, およそ250m.つまり,この円内だ.この範囲内で狙撃可能な個所と言えば, 土木工業ビル,高層アパート,建築中のビル,つまりこの3箇所だ.」
ゴリさんが異論を唱えた.
ゴリさん「ここに6階建ての雑居ビルがある.」
堀田「300m以上ある.」
ゴリさん「ロングライフルなら300mでもその照準は狂わない筈です.」
堀田「当たる筈が無い.」
ゴリさん「当たります.」
殿下がゴリさんの意見に異議を唱えた.
殿下「当たる当たらないは別として実際にはそのビルからの狙撃は不可能です.」
ボス「なぜだ.」
殿下「ここに建築会社の分室があって一日中煙突から煙を吐いてます. したがってこのビルからは実際には煙が邪魔になって私学会館は見えない.」
長さん「いやあ,しかし,もしも風が吹いて煙を吹き飛ばしたら…」
ゴリさん「それは大丈夫な筈です.それだけの横風が吹けば, 300mの距離じゃとても命中しません.狙撃のプロだったら, そのくらいの事は先刻承知でしょう.」
堀田の意見は一味違っていた.
堀田「確かに,そうは言える.しかし念のため, 君は式場の屋根の上で待機してもらおうか. 300mあっても君なら撃てるんだろう.」
ゴリさんは堀田をしばらく見てから
ゴリさん「わかりました.」
ボスは決断した.
ボス「よし.警備の対象はこの三つのビルに絞られる.」
山さんは高層アパートが問題だと考えた.6階以上ならどの階からも狙撃可能だ. ボスは全部の部屋をチェックする事にした. その頃,副首相はホテルからマリアの所へ電話をかけていた. マリアは驚いていた.ボスは結婚式は翌日の午後三時からだと念を押し, 全員解散した.

そして結婚式当日.ボスと堀田は車の中で,ゴリさんは私学会館の屋根の上で, 他のメンバーはそれぞれのポイントで待機していた. 殿下はマリアの部屋へ行った.
マリア「刑事さん,パパから電話あったんです.許してくれました. あたし達の結婚.」
殿下「そうですか.」
マリア「パパは,あたし達の式に出席するために,本当に日本へ来たんです. 父親として,一人の父親として,おめでとうって言いたいために,来た. パパ,そう言いました.」
殿下「良かったですねえ.ガードは私達の方に任せておいて下さい. きっとお守りします.」
マリア「お願いします.パパが,撃たれたら,あたし,あたし…」
マリアは感極まって泣いてしまった.殿下は大丈夫だと慰めるのであった.

殿下はボスと堀田のところへ行った.今のところ何の動きもなかった.だが
堀田「式場周辺でのボディーガードは一切近づけるなって言ってきた. 一人娘の結婚式を警官に囲まれてやりたくないって言ってきたんだ.」
殿下「副首相の肩書きを外さなければ,おめでとうとは言えない立場なんです.」
堀田「こっちはそうは行かないんだ.人の気も知らないで.」

副首相がホテルを出発した.ボスが無線でその事を報せた.皆に緊張が走った. 山さんと長さんはアタッシュケースを持った怪しい男を取り押さえた. だが盗品のセールスマンだった.結婚式の出席者が続々と到着した. 新郎新婦も到着した.副首相の車が私学会館へと向かう.そこへトラックが到着. 殿下が中を見てみたが,何も積んでいなかった.そのとき, トラックに男が強引に乗り込んだ.そして公衆電話から男が七曲署の署員と称し, 工場へ電話をかけていた.時限爆弾が仕掛けられたので暖房を止めて退避しろ, と言うのだ.これにより,工場の煙が止められた. カルロスはゴリさんが懸念していたあのビルの屋上へと登り, ライフルの準備をした.煙が止まった事に殿下が気づいた. 殿下からその事を知らされたボスはボンに雑居ビルへ走るように命じ, さらにゴリさんに雑居ビルを注意するように命じた. カルロスの銃口が副首相を狙った.だがゴリさんがカルロスの肩を撃ちぬき, カルロスはボンに捕まった.一安心する一同.だがボスは
ボス「ゴリ,ボン,気を緩めるんじゃないぞ.」
ボスの懸念が的中し,トラックが猛スピードで私学会館へ近づいてきた. 間一髪,殿下がトラックのタイヤを撃ちぬき,トラックは止められた. だが敵の作戦はこれで終わりではなかった. 運転手(佐藤京一)が副首相へ近づくのを堀田は見逃さなかった.堀田の手により, 運転手は逮捕された.本物の運転手は車のトランクに閉じ込められていたのだ. マリアと副首相は抱き合った.こうして無事に副首相は結婚式に出席した.

堀田「後は我々が.」
堀田とボスは握手した.
堀田「この事件のことは忘れませんよ.」
殿下は堀田と握手した.そして堀田は一礼して去って行った. ボス達も引き揚げていくのであった.

次回は山さんが殺し屋を追跡.だが殺し屋の銃口は隆にも向けられた…

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp