脚本は安倍徹郎.監督は渡邊祐介.
今回はいきなり仕置シーンから始まる.まずやいと屋が懐中の火種を吹いた.
手に持つ御神籤はその後の運命を暗示するかのように「凶」だった.
やいと屋は御神籤をくしゃくしゃに丸めて捨てた.
もちろん,やいと屋は他にも御神籤を持ってはいたが…
そして標的が籠で帰ってきた.
やいと屋「会津屋さん.」
会津屋「誰だ?」
やいと屋は会津屋を仕置した.
主水はある藩の重役の籠に声を掛けていた.
御付きの侍「何事だ.」
主水「失礼ですが,藩姓名の儀,承りたい.」
籠を開けて重役(永野達雄)が名乗りをあげた.
多門「奥州柴山藩土屋多門.」
主水「御無礼いたしました.どうぞお通り下さい.」
行列が去った後,主水は剣之介とお歌に目くばせ.
そして下谷の柴山藩藩邸に籠が到着した時,お歌が現れ,
なにやら意味ありげに笑った.藩士達の目がお歌にひきつけられた隙を突き,
剣之介は多門を仕置した.今回はここでタイトル表示.
翌朝未明.捨三は首尾を頼み人に報告.
頼み人「そうか,死んだか.おら達が生き延びる道はこれしかなかった.」
捨三は頼み人から金を受け取った.だが4両に値切られそうになった.
奥州柴山藩の山の衆が苦しい生活の中から金を出し合って出していたからだ.
捨三はその願いを跳ね除けた.洗濯屋で捨三はその事をこぼしていた.
やいと屋は山吹色の小判と行きたいねえと言ったが,
剣之介は「贅沢言うな.これでも一両は一両だ.」と意に介さなかった.
主水達は金を分けて帰った.
さて頼み人達は土屋の娘おすみと婿の小十郎(浜畑賢吉)の籠と通り過ぎた.
頼み人「あの人達には罪はねえがなあ.」
さて柴山藩の屋敷では同心の服部(外山高士)が多門殺しのことを,
聞き込もうとしていた.出入りの商人の会津屋も殺された.
多門の死も関係あるに違いない.だが柴山藩士は,
町方には関わりがないと協力しようとしなかった.
そこへ小十郎の籠が着いたとの報せが届いた.藩士達はそっちへ行った.
服部「へ,田舎侍が.」
おすみは多門の遺体を見て号泣した.小十郎は手を合わせた.
江戸家老は小十郎を呼んだ.家老と多門は同年だった.
江戸家老が江戸家老を仰せ付かって以来の付き合いだった.
多門は20年もの間,家老の片腕となってよく働いた.
家老は下手人を捕らえるように小十郎に命じた.小十郎にとっては舅の恨みだが,
事はそれだけでは済まない.留守居役を殺され,出入りの商人を殺され,
しかも下手人を取り逃がしたとあっては柴山藩の面目が立たない.
江戸家老「頼むぞ,小十郎.」
小十郎「神明をとし,必ずや.」
これが小十郎にとっての悲劇の幕開けであった.
まず小十郎は御付きの侍に事件当夜の話を聞いた.その手口から,
小十郎は商売人の仕業だと睨んだ.
小十郎「江戸には金さえ出せば人殺しをする手合いがごろごろいるそうだ.
以前,江戸勤番のおりにそういう話を耳にしたことがある.」
そのとき,侍の一人が会津屋から届けられた御神籤を小十郎に渡した.
会津屋の玄関傍に落ちていたと言う.
小十郎は出入りの口入屋の江戸屋(田崎潤)に捜索を依頼した.
江戸屋は小十郎から御神籤を受け取り,下手人探索の話を受けた.
江戸屋は柴山藩に長年の御恩があるので断りきれなかったのだ.
多門にも何かと目をかけてもらっていた.だが
江戸屋「ただ.」
小十郎「何だ.」
江戸屋「こいつはひょっとすると商売人の仕事だ.」
小十郎「そうだ.俺もそう思う.」
江戸屋「とすると,あっしもその世界には片足突っ込んで生きている男だ.
堅気の衆に話せることもありゃ,一生口をぬぐって,
知らぬ顔の半兵衛を決め込まなくちゃあならないこともある.
その辺のところは一つ.」
小十郎「すると何か.下手人の名は明かせぬこともあるというのか.」
江戸屋「その通りです.」
牢屋敷では銀次がしらみのかけっこの賭けを開いていた.
主水「銀次,てめえ,ここ誰の島だと思ってるんだ.寺銭出せ.」
とせこいことをした後,捨三が外へ姿を現した.
主水は同僚にお茶を取りに行かせ,捨三から話を聞いた.
捨三は江戸屋が会津屋殺しの一件を嗅ぎ回っている事を話した.
主水も捨三もまずいなあと渋い顔.
江戸屋は一声掛ければ江戸中の闇の世界の人間が動くほどの大物なのだ.
主水は捨三に江戸屋から目を放すなと言い,
自分は奉行所の動きを探ることにした.
江戸屋一味の調べは続いていた.主水は会津屋の担当服部に探りを入れた.
服部は,漆を扱う会津屋と江戸留守居役が同時に殺されたので,
漆相場と関係があると睨んでいた.
服部「中村,お前,馬鹿に興味を持っているようだな.」
主水は,自分が興味あるのはこれだけ,と絵草紙を見せるのであった.
剣之介とお歌が飯を食べていると,江戸屋に殺しの口を垂れ込めば十両になる,
との噂を聞いた.その晩,お歌は剣之介が野良犬みたいに斬り殺される夢を見た.
その話を聞き
剣之介「きっと昼間のことが気になってたんだよ.心配いらねえさ.さあ.」
剣之介はお歌を寝かせ,言った.
剣之介「今迄だってこうやって生きてきたんだ.
滅多なことじゃどじは踏まねえよ.そう簡単に死んでたまるか.」
おすみは気分が鬱ぎ込んでいた. 土屋多門の初七日に御焼香にやってきたのはごく僅かだった. 多門は心優しい人だった.この屋敷にも多門の世話になった人は沢山いるはずだ. それなのに手のひらを返したように.小十郎はこう言った. 小十郎とすみは5年余り多門と別れ別れになって暮らしてきた. 江戸にいた多門には江戸の顔があるかもしれないのだ.そのことを忘れるな,と. この言葉の重みを後で小十郎は思い知らされることになるとも知らずに.
多門に同僚は探索をほどほどにしろと言って去って行った.
そこへ江戸屋の使いがやってきた.
江戸屋「土屋さん,わかりましたよ.あれは仕業人です.」
小十郎「仕業人?」
江戸屋「はい.殺しを稼業としている奴らで,その中の一人,
やいと屋又右衛門と言う男がいっちょうかんでるのと,やっと探り出しました.」
小十郎「下手人はその男か.」
江戸屋はこう言った.
江戸屋「さて土屋さん,これから先はあんたがたの仕事だ.
あっし達も仲間を売ると後が恐いんでねえ.」
やいと屋のところでは剣之介がお灸を据えてもらっていた.
やいと屋「へえ,おめえさんも人並みに肩がこるのかねえ.見直しちまったぜ.」
剣之介「随分殺したからな.」
やいと屋「は?」
剣之介「これはただの肩こりじゃないんだ.
死んだ人間達の恨みがこの肩にのしかかってるんだよ.」
やいと屋「ふ,その恨みをやいとで散らそうと言うのかい.
終わったよ.へえ,くだらないねえ.
殺す方も殺された方もいずれは地獄で面つきあわすんだ.
そん時には頭下げて一言すんませんでしたと言やあ,
それで済むんじゃありませんか?」
お灸が終わった頃,小十郎が柴山藩の者を引き連れ,
やいと屋を捕らえにやって来た.剣之介も応戦したが,多勢に無勢で敵わず,
捕まってしまった.やいと屋は一人で逃げ,捨三のところへずらかった方がいい,
とほざいていた.
翌朝.お歌は寝そびれていた.そこへ捨三がやってきた.
捨三「お歌さん.驚いちゃいけねえよ.気を確かに持つんだぜ.」
お歌「死んだの?」
捨三「いや,捕まったんだ.下谷の柴山屋敷だ.」
その頃,剣之介は小十郎によって激しい拷問を受けていた.
水に顔をつけたりあげられたりしていた.
小十郎「どうだ.せめて名前だけでも教えてくれぬか.
やいと屋の他にも仲間はいるはずだ.首謀者は誰だ.誰に頼まれた.」
だが
剣之介「己に訊け.柴山藩に訊け.」
小十郎「おう.こうなりゃお主の体に言わせてやる.」
小十郎は棒で剣之介を打ち据えた.
主水は剣之介を牢屋敷へ連れ込む作戦を発案した.
牢屋敷まで連れ込めば主水の裁量でどうにでもなる.
かつて市松を逃がした時と同じ捨て身のやり方だ.捨三は成功するか危ぶんだ.
主水は服部と一緒に柴山藩の屋敷に乗り込んだ.
服部「我々は藩邸にまで立ち入る気は毛頭ない.
ただ下手人の片割れを捕らえたという聞き込みがあった.」
柴山藩藩士は町方には関係ないと追い返そうとした.
主水「しかし町方にも会津屋殺しを詮議する役がある.
是非とも下手人をお貸し願いたい.」
だが
小十郎「断る.当藩の調べが済むまではお渡しするわけには行かん.
たってというなら,腕ずくで引き取りに参られい.」
こうして主水捨て身の作戦は失敗した.
主水はやいと屋を問い詰めていた.
主水「江戸屋が狙ったのは剣之介じゃねえ.やいと屋,お前だぞ.なぜだ.
なぜだい.なぜおめえの素性が割れたんだ.」
やいと屋にはその理由が判らなかった.
やいと屋「俺がどじを踏んだとでも言いたいのかい.」
主水「だったらどうする.」
やいと屋「掟通り,裁いて貰おうか.」
主水とやいと屋は睨みあった.そこへお歌がやってきた.
お歌「剣之介を見殺しにするんですか?」
捨三「少なくとも今夜は動けねえ.今動いたら,それこそ江戸屋の思う壺だい.
今夜だけは辛抱してもらわねえと.」
お歌「辛抱すれば助かるの? 明日になれば助かるの?」
主水「お歌さん.ここまで来たら下手な慰みは言いたかねえ.
万一の場合の覚悟だけはしといてもらいてえんだ.
剣之介は黙って死んでいくだろう.喋ったところで端っから助かる命じゃねえ.
あいつ一人じゃねえ.これは俺達みんなの定めだ.
ただ遅いか早えかそれだけのことなんだ.」
この言葉の重みを主水は後で思い知らされることになる.
剣之介は火箸で拷問を受けていた.江戸屋は剣之介の顔を見たが,
江戸屋は剣之介の顔を知らなかった.小十郎は他に仲間がいないか聞いたが,
江戸屋は答えの代わりに小十郎に忠告した.
江戸屋「土屋さん,あっしにできることはこれまでだ.
これ以上闇の世界をつっつくと,あっしもあんたも命取りだ.」
小十郎は無言だ.
江戸屋「引き時が肝心ですよ.引き時がね.」
お歌は柴山藩の屋敷に忍び込み,剣之介の閉じ込められている土蔵を発見した.
剣之介は両手に手枷をつけられ,天井から吊るされた状態になっていた.
お歌「あんた.あんた.」
剣之介は声を出そうとしたが出なかった.そしてうなだれてしまった.
お歌は小刀で一生懸命錠前を壊そうとしたが壊すことなどできなかった.
そこへやいと屋登場.やいと屋は火薬で鍵を壊した.二人は中へ入り,
剣之介を助け出した.だがその様子を飯炊き女に見られてしまった.
お歌は剣之介を抱え,一生懸命逃げた.
やいと屋は自分が殿になるつもりだったが,
腕力の弱いやいと屋には荷が重過ぎた.剣之介とお歌は橋の下に隠れた.
だが橋の下からどぶ川に出たところを見つかってしまった.
まずお歌が斬られた.剣之介も応戦しようとしたが,
傷だらけの体では力を出せず,野良犬のように斬り殺されてしまった.
小十郎「引揚げい.」
柴山藩の者はやいと屋を連れて引き揚げた.その後
剣之介「お歌.」
お歌も剣之介も手を伸ばした.だが二人とも力尽き,
手を結ぶことはできなかった.
主水「死んだ.二人ともか.」
捨三「へい.」
主水「やいと屋は.」
捨三「わかりません.また探って来ます.」
主水は剣之介とお歌の死を知り,ショックを受けた.
厠の前で呆然とする主水を千勢が見て,覗かれたと怒り狂った.
せんもりつも中村家の恥だと騒いだが,その声は主水には聞こえなかった.
主水「死んだか.死んだのか.剣之介もお歌も.」
江戸家老は小十郎とすみに捜査の打ち切りを指示した.殿の裁断だと言う. 勘定方が会津屋との帳面を調べた結果,多門の不正が発覚したのだ. 多門は会津屋と組み,漆相場を操って巨額の金を横領していた. 山働きの領民の苦しみは計り知れず, その恨みがこの事件を引き起こしたに違いない. これ以上事を荒立てれば必ず御公儀の問題となり,柴山藩の命脈にも関わる. その理由は女にあった.多門は日本橋に若い女を囲い,料理屋を開かせていた. 金は全てそこに注ぎ込んでいたのだ.
仕方無く小十郎はやいと屋を解放した.
やいと屋「ほう,おめえにもやっと判ってきたのかい.いいだろう.
今日のところはおとなしく出てやってやる.だがな,このままで済むかどうか,
そいつは表出てからの相談だ.邪魔したな.」
こう捨て台詞を残してやいと屋は去った.そのとき,
おすみが自害した報せが小十郎のところに届いた.
捨三はこのまま事を治めるつもりかと主水にねじ込んでいた.
捨三は柴山藩のことを訴え出て刺し違えようと言い出したが
主水「それを奉行所がとりあげるんなら,俺達は飯の食い上げだ.」
そこへ江戸屋の面々がやってきた.
江戸屋「江戸屋源蔵だ.これを小屋の中の方に渡してくれ.
それから,この御神籤はやいと屋又右衛門にけえしてもらおう.
仕業人にしてはどじなことをした,そう伝えてくれ.」
江戸屋が持って来たのは小十郎からの書状だった.
小十郎の声「事の真相を識るに及び只只驚愕仕候.国勢を乱し,
民百姓を途端の苦しみに追いやりたる談,
成敗もまた止むなしと覚悟いたしおり候.但し,舅を失い,
今又妻をも失いたる談,真に無念にて,このまま帰国では侍の一分も立ち申さず,
よって明朝,果し合いを望むものにて御座候.
これはあくまで私の恨みなれば卑怯未練の振舞あるまじく,
曲げて御承引下されたく候.土屋小十郎.」
主水「果し合いか.」
捨三「旦那とサシで勝負しようって言うのですかい.畜生,なめやがって.」
主水は書状を破り捨てた.
その晩.お座敷で
やいと屋「は,は,は.笑わせやがって.何が侍の一分だ.
仕業人が金にならねえ殺し合いをするとでも思ってるのかい.芋侍め.」
主水「俺は受けるぜ.」
やいと屋「なんだと.」
主水「俺にも剣之介とお歌を殺された恨みがある.それを果たすつもりだ.」
やいと屋「八丁堀,おめえ本気でそんなこと言ってるのかい.」
主水は肯いた.
やいと屋「へえ,不思議だねえ.全く侍ってえのはおかしな連中だ.
俺にはとても理解できねえや.」
やいと屋は酒を飲んでから言った.
やいと屋「なあ,主水さん.俺はそんなごたごたに巻き込まれるのはごめんだぜ.
俺は明日にでも上方に行く.江戸もそろそろやばくなったし,
剣之介の言い草じゃねえが俺達は少しやりすぎたようだ.
ま,当分,上方へ行って,やいと屋修行のやり直しよ.
後はおめえさんに任したぜ.」
主水「足抜けか.」
やいと屋「そういうわけだ.」
主水「そいつは掟に外れちゃいねえか.」
やいと屋「掟? じゃあ,おめえの方はどうなんでい.
侍なら掟外れの果し合いも許されるってえのかい.」
しばらくお囃子だけが聞こえた.
主水「お互い様か.」
やいと屋「そうらしいなあ.」
主水は黙って立ち上がり,あの御神籤を渡した.
それを見たやいと屋の顔色が変わった.
やいと屋は御神籤をまたくしゃくしゃに丸めた.
翌朝.小十郎が指定した場所に主水がやってきた.
傍で捨三とやいと屋が見ていた.
小十郎「良く来てくれた.礼を言うぞ.奥州柴山藩土屋小十郎.」
小十郎は刀を抜いた.主水も刀を抜いた.
主水「中村主水だ.」
主水は羽織を脱いだ.そして二人は果し合いを開始した.
二人とも死を覚悟していた.しかし,剣の腕は主水の方が上だった.
主水の胴が小十郎に決まった.
小十郎「こ,これで,これでいい.」
それが小十郎の最期の言葉だった.この結果を主水はどう思ったのだろうか.
やいと屋「恐ろしい男だ.」
主水はやいと屋にも捨三にも何も言わず,羽織を拾い,
朝靄の中へと去って行くのだった.
脚本は上原正三.監督は田中秀夫.
恵子はオーナーとコーチを呼び出した.恵子はオーナーとコーチに, 進学相談で先生から言われたことを話した. このままの成績では中途半端で良くないという.そう言えばもう秋だ. 恵子は令子が監督業を休養することを提案した.コーチも賛成. 令子は乗り気ではなかった.そこでオーナーは, 子供達に相談して決めてもらおうと言った.その案にコーチも令子も賛成した.
トータスは寂しいと言ったが,ジュクは,令子に休養してもらい,恩返しとして, 令子に時間をプレゼントしよう,と言った.スタイルは賛成したが, ノミさんは令子がそのプレゼントを受け取らないだろうと懸念した. そこでオーナーはレッドビッキーズをゴールデンファイターズという名前に変え, 監督はオーナーが代行し,コーチは石黒が留任することを提案. トータスもペロペロも渋ったが,オーナーが付け足した.勿論, 令子の受験が終われば,またレッドビッキーズにチーム名を改め, 令子が監督に戻るのだ.皆,賛成した.
ゴールデンファイターズのユニフォームを着たナインからこのことを告げられ,
レッドビッキーズのユニフォームを受け取った令子は衝撃を受けた.
トータス「監督,僕は…」
ペロペロ「あんまし賛成じゃないんだ.」
だが二人ともユニフォームを渡した.恵子は悲しそうな顔をして見ていた.
オーナーは,ゴールデンファイターズの練習開始,と言い,皆走り始めた.
令子「本当にいいのね.後悔しないのね.レッドビッキーズと別れられるの?
ジュク,ノミさん,カリカリ,ペロペロ,ナッツ,シゲ,ブラザー,センター,
スタイル,トータス.」
みんなの足が止まった.
令子「このユニフォームと別れられるの?」
皆,辛そうな顔をしていた.だがコーチに促され,皆また走り始めた.
そのコーチも後ろを見ながら辛そうに走り去って行った.
それを見た令子はレッドビッキーズのユニフォームを投げ捨てた.
令子「何よ,こんなもの.」
恵子「令ちゃん.」
令子「何がゴールデンファイターズよ.」
令子は部屋に貼ってあったレッドビッキーズに関するものを全てはがした.
みんなで並んで写した写真もしまってしまった.
そこへ恵子がユニフォームを持ってやってきた.ちり紙交換にでも出しといて,
もう見たくもない,という令子に恵子が言った.
恵子「あなたよりねえ,子供達の方がどんなに辛いか.見なかった,
ユニフォーム返す時の子供達の顔.辛そうな目してたわよ.」
令子「でもみんな捨てたわよ.」
恵子「一生懸命勉強してもらいたくて,それで新しいチーム作ったのよ.
お母さんはそう思うわ.」
令子は外へ出ようとした.
恵子「令ちゃん.一生懸命勉強することね.
それが皆さんの行為に報いる一番の方法よ.」
西武線の線路の傍を歩きながら,夕食のカレーを食べながら,
令子は考え込んでいた.恵子は家庭教師についてみないかと言ったが,
令子は断った.翌日.学校の図書館で令子は本を読んでいた.
それを見て友達は,変わったわ,と言ったが,
令子が読んでいたのは野球の本だった.
令子「駄目だわ.私の頭から野球は消えなかった.」
ゴールデンファイターズの練習を遠くで見た後,令子は家に帰った.
そのとき,令子はトータスとペロペロが家の前にいるのをみつけた.
トータス「ねえ,ニューレッドビッキーズ作ってよ.」
ペロペロ「なんか,しっくり来ないんだ,
ゴールデンファイターズのユニフォーム.」
トータス「やっぱり女監督がいい…なあ,トータス.」
ペロペロ「三人で始めようよ.ニューレッドビッキーズ.」
トータス「賛成だって,トータスも.」
だが令子は断った.自分は野球をやめたのだ.
それにトータスとペロペロはゴールデンファイターズのメンバーのはずだ.
がっかりして帰るトータスとペロペロ.
トータス「がっかりだな,トータス.」
それを見て令子は家庭教師に着いて見ようと決心した.
だが家庭教師は怒って一日で帰ってしまった.
令子が野球のスコアブックを見ていたからだ.
それから令子は一人で英語を勉強したが,
頭からレッドビッキーズのことが離れなかった.
トータスの声「がっかりだな,トータス.」
令子はみんなで写っていた写真を見た.それからユニフォームを見た.
そして英会話の練習用テープを切ってベッドに寝転んだ.
そこへトータスとペロペロがやってきた.
ゴールデンファイターズが活動停止したというのだ.
不思議なことにレッドビッキーズのメンバー全員,
レッドビッキーズのユニフォームを脱いでからというもの気合が入らなかった.
石黒もオーナーも他のメンバーも腑抜け状態になってしまったのだ.
石黒は仕事で失敗ばかりで上司に怒られていた.
オーナーも注文の品を間違えてよし子に怒鳴られていた.
その話を聞いた令子はシャドーピッチングをした.
そこへジュクもノミさんもナッツも,そしてカリカリ達もやってきた.
みな生き生きとして素振りしたりキャッチボールを始めたりした.
令子「ねえ,みんな野球やりたい?」
皆,動きが止まった.
令子「やりたいの?」
みな,はい,と答えた.
令子「そう.自分を誤魔化すのやめましょう.みんな,あたしに着いて来て.」
令子はレッドビッキーズのユニフォームを探したが,みつけられなかった.
それを見た恵子はユニフォームを入れた箱を令子に渡してやった.
こうしてレッドビッキーズは復活した.
恵子「令ちゃん.」
令子「お母さん,ごめんなさい.レッドビッキーズは私の青春.
あたしの青春はレッドビッキーズ.勉強だってちゃんとやります.」
ノミさんは恵子に弟の一郎の世話を頼み,練習に出かけていった.
一郎をあやしながら恵子は言った.
恵子「野球と勉強両立するんですって.本当にできるかな.」
ナインはオーナーにゴールデンファイターズのユニフォームを返した.
レッドビッキーズ再結成を知ったオーナーは石黒コーチにも教えてやった.
こうしてレッドビッキーズは再出発したのであった.
次回は幸一郎の計らいでレッドビッキーズに新メンバー加入. 題して「私はピンクのサウスポー」
脚本は高階秋成と小川英.監督は竹林進.主役は長さん.
白昼堂々と光デパートの納品所からウィスキー50箱が盗まれた.
現場を見た長さんは即座に手口を見抜いた.手口はこうだ.
まずトラックが1台入る.そのトラックが積んであったウィスキーを目隠しする.
そこへ別のトラックが入り,最初に入ったトラックの陰に隠れるように駐車する.
そこで2台目のトラックにウィスキーを積み終えてから,
2台目のトラックが発進する.最後に目隠し役のトラックが去り,
気がつくとウィスキーが忽然と消えていた,と言う訳だ.
それを聞いたボンは驚いてしまった.デパートの人も長さんのことを,
凄い方ですね,と驚きながら誉めていた.アルバイトの学生は,
仕事に追われ,トラックの運転手の顔も見ておらず,車種も覚えていなかった.
ゴリさん「こんな窃盗を計画する連中はプロ以外には考えられませんね.」
それを聞き,長さんの顔が曇った.
この手の事件はここ二ヶ月間,都内だけではなく千葉や埼玉でも続発していた.
しかもなぜか木曜日だけに発生していた.長さんはその事件に心当たりがあった.
8年前,長さんが北署にいた時に,そっくり同じ手口の事件が起きていたからだ.
松原昇という男がその事件の犯人で,長さんは3年前に,
松原が真面目に働いていると言う手紙を松原の奥さんからもらっていた.
だがそれっきり連絡を取っていなかった.ボスはボンと一緒に松原を探るよう,
長さんに命じた.出て行く長さんを見て
ゴリさん「気が重そうですね,長さん.」
山さん「刑事なら誰だってそうだよ,こういう時はな.」
ボスは,容疑者は松原だけでない,あらゆる線から探れ,と命じた.
長さんとボンは,工場の仲間から松原(大出俊)がある店の支店長になったと聞き,
その店を訪れた.松原は自分を信用してないのか,と怒った.
長さんはその事を詫び,最近頻発している事件のことを話した.
松原は自分が盗品を買っていると疑っているのかと気分を害した.
そして聞きたいことがあるなら本店へ言って訊いてくれ,
社長には何もかも話してある,と開き直った.
長さんの声「松原,なぜそうつっかかるんだ.」
長さんと松原はしばらく睨みあった.
長さん「松原,奥さんによろしくな.」
松原はしばらく無言だった.それから言った.
松原「文江とは別れましたよ.」
長さんはその理由を尋ねたが,松原はその理由を答えようともせず,
文江がどこにいるのかも知らないと言った.
ボン「長さん,ちょっと酷いんじゃないですか,あの態度.
いくら前科をみんなに隠してるからと言って.」
長さんはただ一言「本店へ行く.」と答えた.
本店の社長(武藤英司)は松原のことを誉めていた.
松原は就職した時に何もかも話していた.松原は支店長になってから半年後,
業績を伸ばしたら売上の5%を松原にあげると社長が言うと,
毎週金曜日にサービスボトルデーを行なって売上を伸ばしていた.
木曜日の次の日だ.長さんは仕入先を尋ねた.社長は納品帳簿を持って来させた.
待つ間
長さん「いやあ,こちらは支店と違って凄い高級店ですなあ.
お店も同じ絨毯でしたが,あまり深く沈むんでのめりそうになりましたよ.」
長さんは白い絨毯を触った.社長は大笑い.そこへ秘書が納品帳簿を持って来た.
だが松原の支店の納品帳簿は別だった.
松原はあれこれ詮索されるので怒っていた.それでも松原は納品帳簿を見せた.
松原「さあ,調べて早く出てってください.あなた疫病神だ.来たら最後,
ろくなことがないんだ.」
その投げやりな態度にボンは憤り,長さんにたしなめられた.
ボンは松原が毎週木曜日の午後にいなくなることを聞き込んでいた.
長さん「何? いや,それは,ただの偶然てことも.」
ボン「長さん.何故です.何故そんなにあの男をかばうんですか?
あんなことまで言われて,何故黙ってるんですか?
何かあるんですか,あの男と.」
長さん「何もありゃせんよ.出かけるぞ.」
その時,長さんは松原の妻の文江の写真を見つけた.
長さんとボンは松原の取引相手である城東商事の事務所へ行ってみたが,
そこは机一つあるだけの空っぽの事務所だった.
事務員らしい女が時折来ているらしいが,架空の会社だった.
雑居ビルなので女の顔を覚えているものはいなかった.
だが長さんは松原を署に連行するのだけはやめて欲しいと電話で懇願した.
ボスはそのことを承知した.
スコッチ「決着は早く着けた方がいいと思いますがねえ.
鑑識を連れてそこへ行きます.」
スコッチらしい言葉を残してスコッチは出て行った.
ボスはゴリさんに不動産屋を当たるように命じた.殿下は本庁に問い合わせて,
ウィスキー窃盗事件を全てリストアップすることになった.
山さん「ボス,長さんには何か虫の報せみたいな物があるのでは…
松原を叩いては行かんという,何か予感のようなものが.」
ボスは山さんの方を見て肯いた.
ボンが戸籍を調べた結果,松原が離婚していないことがわかった.
松原の声「文江とは別れましたよ.」
ボンは幽霊会社の事務員が文江じゃないかと考えたが
長さん「ありえんよ,そんな馬鹿なことは.」
長さんは声を荒げて否定した.長さんは文江を探すことにし,
ボンは署に戻ってボスに報告することになった.
ボスはボンから,松原が長さんに「疫病神」と言った事を聞かされた.
そのことにボンは憤りを覚えていたが
スコッチ「そんなに腹が立つんなら刑事を辞めるか?」
ボン「滝さん.」
ボス「なあ,ボン.デカの仕事ってのはな,
全員の人間に憎まれても仕方がない時ってのがあるんだ.
そういう思いを一度もあじあわずに過ごせりゃ,
そっちに越した事がないんだよ.」
そこへゴリさんが帰ってきた.事務所を借りたのは女だった.
不動産屋は半年前に一度会ったきり.30歳くらいの普通の奥さん風だったと言う.
殿下の調べでは納品書と事件の被害とは完全に一致した.状況証拠は揃ったが
ボス「スコッチ,奴を引っ張るのはもう少し待つ.」
スコッチは怪訝な顔だった.
その頃,長さんは文江(田村寿子)の行方を探し当てていた.
そして文江が入院している大学病院へ御見舞いに行った.
文江は松原が何かしたのではないかと心配したが,
長さんはただの見舞いだと答えた.
長さんの声「松原はなぜ嘘をつく.なぜだ.」
文江は長さんが御見舞いの人がつけるバッジをしていないのを見て,
長さんが警察手帳を見せて入ってきたことを見抜いていた.
長さんは,つい癖で,と誤魔化そうとしたが
文江「あたし,刑事さんが来るような気がしてたんです.」
長さんは二の句が告げなかった.
文江「あの人の給料であたしをこんな個室に入れられるわけがないもの.」
長さん「奥さん,つまらないことは考えないで,早く治す事です.」
長さんは看護婦に呼ばれたので出て行った.
長さんは文江の病気が治る見込みのない肺癌であることを医師から聞かされた. 松原は少しでも設備の良い病院で入院させて欲しいと思い, 二ヶ月前に町の診療所から転院させてきたのだ.差額ベッド代は一日一万円だ.
今日は木曜日.松原が夜にどこかへ消える日だ.
殿下とゴリさんは松原を尾行した.松原はデパートの中に入った.
だが尾行を察知したのか,エスカレーターを駆け上がり,
屋上直通のエレベーターに乗って逃げた.ゴリさんは階段を駆け上がり,
殿下はエレベーターに乗って屋上まで行ったが,見事に撒かれてしまった.
ゴリさんは電話でボスに報告した,早速スコッチが外へ出て行った.
ゴリさんは松原が黒だと睨み,殿下と一緒に松原のアパートへ乗り込んだ.
一方,長さんは病院の面会者名簿を調べていた.
さて松原のアパートに入ったゴリさんは拳銃を向けられたので驚いた.
スコッチ「早かったですね.」
既にスコッチはウィスキーの箱を発見していた.
その頃,松原は文江の見舞いに出かけていた.一方, ゴリさんはウィスキーを持って帰っていた. ボスはウィスキーを鑑識課に回すことと松原を手配することを命じた.
支店に戻ってきた松原をボン達が取り囲んだ.
松原「やっぱりこうなるのか.わかったよ.いいようにすりゃいいだろう.」
取調室で松原はウィスキーなど知らないと答えた.
山さんは松原に,松原がゴリさん達を撒いた理由を聞いた.松原は,
うるさいから撒いた,と答えた.さらに山さんはアリバイを聞いた.
松原はアパートにいたと答えたが,その時刻に松原はアパートにいなかった.
そこへ長さんが帰ってきた.
文江の容態が急変した.長さんは松原が白だと断言した.
松原は毎週木曜日午後1時から3時の間,文江を見舞いに病院へ行っていたのだ.
病院の面会者名簿に記録が残っていたし,看護婦の証言もとれた.
松原が黙っていたのは,一日一万円の差額ベッドに文江を入院させていたため,
かえって疑われると思ったからだった.
ボス「誰かが松原に罠をかけたことになる.」
真犯人は松原の昔の手口を知っていて,
毎週木曜日に病院へ行くことを知っている人物に違いない.
そのとき,病院から連絡があった.文江が危篤だと言うのだ.
松原が着いた時,文江は既に息を引き取っていた.
松原は文江の死に顔を黙って見た.そして物言わぬ文江に向かって言った.
松原「文江,俺,盗みなんてしてないよ.本当だよ,信じてくれよ.文江,俺,
お前が,ダメだってこと,知ってたんだ.
だからここへ野崎さんを来させたくなかった.来ればお前は,
俺が何かやったと疑うだろう.お前に疑われたくなかった.俺を疑わせて,
死なせたくはなかった.」
長さんは「松原」と言うのがやっとだった.松原は長さんをジロッと睨んだ.
長さんは思わず目をそむけた.松原は続けて言った.
松原「俺は,俺はねえ,せめてこいつをいい病室に入れてやりたくて,
必死になって働いたんだ.食費も切り詰めて貯めたんだ.
そんなこと文江に言やあ,きっと心配すると思って,
給料が跳ね上がったなんて嘘をついたんだ.何で,
何でほっといてくれなかったんだい.」
長さんは何も言うことができなかった.
松原「どうせ助かる見込みはなかった.野崎さん,
何でほっといてくれなかったんだよ.」
長さんはうつ向いたまま無言だった.
松原「文江.俺は何にもしてないんだよ.な,聞いてくれよ,聞いてくれ.
俺は何にもしてねえんだよ.俺を疑ったまま死んじまったんだ.
何にもしてねえんだよ.」
松原は号泣した.それを見た長さんは文江の言葉を思い出した.
文江の声「松原は何をやったんですか? あたし,
刑事さんが来るような気がしてたんです.
あの人の給料であたしをこんな個室に入れられるわけがないもの.」
長さんの目が涙で光った.松原はなおも泣いていた.
松原「俺は何もしてねえんだよ,文江.俺は何にもしてねえんだよ.
お前を疑わせて死なせたくなかったあ.」
翌朝.長さんは憂鬱な顔をして座り込んでいた.
ボス「どうした.まだ事件は終わっちゃいねえんだぞ.何よりも先ず,
問題はホシだ.」
ゴリさん「さあ,やるぞう.振り出しからやり直しだあ.」
それを聞いて長さんが言った.
長さん「ああ.文江さんだって浮かばれんよ.そいつら,
一刻も早くぶち込んでやらんとな.」
そこへ殿下がやってきた.
ウィスキーの箱から高級絨毯の糸くずが検出されたと言うのだ.
外国製のかなり毛足の長いものだった.色は黒だった.
長さんは本店にしいてあった絨毯を思い出した.だが色は白だ.
長さん「違うかあ.いえ.松原んとこの社長なんです.
あるいはと思ったんですが,絨毯の色が違います.」
そこへ山さんが入ってきた.
山さん「そうも言いきれんぞ,長さん.」
出た,得意のフレーズ.立ち聞きしていたのだろうか?
山さん「念のためにその湯原社長を洗ってみた.ひどく秘密にしてるらしいが,
銀座の高級クラブのママから金を借りてる.そのママと言うのが,
戸川組幹部の女房だった女だ.」
盗みの手先になる連中は探せば幾らでもいる.
山さん「探す必要もない.バーテンもマネージャーも,
みんな戸川組の息がかかってるよ.」
ボスはその店を当たってみることにした.
予想通り,湯原社長の愛人の店に黒い絨毯があった.
ママ「早くさばいたほうがいいよ.サツがだいぶうるさくなっている.」
そこへ
長さん「さばく必要はないぞ.」
ゴリさん「後は七曲署でさばいてやるよ.心配するな.」
ジーパンのテーマが流れる中,長さんはバーテン達をしこたま殴った.
思わずゴリさんが止めるほど,長さんは一心不乱に殴りつづけていた.
翌日.長さんは湯原社長の部屋に乗り込んだ.
長さん「自分の部下がやったと見せかける.しかも,
その部下の古傷を利用してだ.あんた,それでも人間ですか.
松原夫妻がそのためにどれだけ傷ついたか.」
思わず湯原は手をついて謝った.たった20万円借りたばっかりにこうなったと.
長さん「謝ったって死んだ人は戻って来ない.
絶対にもう取り返しはつかんのだ.」
湯原「え? 別に私は人を殺したわけでは…」
確かに湯原の言う通りだ…
長さん「湯原,窃盗罪で逮捕する.」
ボンが,あんな奴らがただの窃盗罪で済むなんて納得できない,と憤っている頃,
長さんに松原文江から手紙が届いていた.長さんは手紙を読んだ.
長さんの声「野崎様,友達の看護婦に頼んで,
この手紙を出してもらうことにしました.刑事さんが来た時,
本当にドキッとしました.それはやっぱりショックで,
松原を疑ってしまいました.」
長さんは文江の顔を思い出した.
長さんの声「でも,野崎さんを見ていて,ふと考えました.
野崎さんの昔の優しさを思い出したんです.昔のあの優しい笑顔,
優しい目を思い出したんです.松原を更生させるために,
いろいろと助けてくださった,あの野崎さんのことを思い出したんです.
そして今日,お会いした野崎さんは,昔と同じように優しい笑顔だった.
優しい目でした.そう思っているうちに,はっと気がついたんです.」
長さんは文江の顔を思い出し,途中から音読した.
長さん「もし松原が,本当に悪いことをしたのなら,野崎さんはきっと,
病気の私のところへは来ない.信じているから,
松原は何もしていないと野崎さんは信じているから,その裏づけが欲しくて,
私のところへ来たんだ.そう思いました.そう思った時の嬉しさは,とても,
言葉にはなりません.」
刑事一同,緊張して聞いた.
長さん「私は,松原を信じて,死んで行きます.」
手紙を途中まで読んだ長さんは文江の笑顔を思い出し,涙を流しそうになった.
が,気を取り直して大声で読むのを再開した.
長さん「野崎さんが来てくれたお蔭で,むしろ,ここの払いや何か,
心配していたことが,急に消えていきました.野崎さんが松原を信じてる.
あの刑事さんが信じている限り,松原は大丈夫,そんな気がするんです.」
長さんはまた一呼吸置いた.みなの心に文江の言葉が響いた.
ボンは感極まって泣いてしまった.
長さん「ありがとうございます.野崎さん.来て下さって,
本当にありがとう…」
読み終わった長さんも泣いてしまった.
長さん「ボス.これ手紙です.天国からきた手紙です.読んでください.」
ボスは手紙を手に取ったが
ボス「ボン,松原に届けてやれ.」
ボンは外へ出る時,棚に体をぶつけてしまった.
ボス「一番喜んでるのはあいつかもしれんな.」
まだ長さんは涙を流し,鼻をつまらせてしまったのであった.
さて来週は殿下が主役の娯楽編.無線を駆使して活躍します.
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