2002年2月6日

「必殺仕業人」第25話「あんたこの毒手をどう思う」

脚本は國弘威雄.監督は松野宏軌.

やいと屋が呉服屋の美濃屋へやって来た. やいと屋は下女のおのぶ(新海なつ)と挨拶をかわした後, 奥方のおみち(服部妙子)の部屋へやってきた.おみちは子供を産んだばかり. 主人の太助(水上保広)は番頭の彦三(岡崎二朗)と一緒に釣りに出かけたという. さて主人と彦三は釣り場を変えることにした.だが主人は足を滑らせてしまい, 川へ落ちた.彦三も川へ飛び込んだが二人とも溺れてしまった. そこへ助け舟が.二人とも船頭(江幡高志)に助けられた. そして鮟鱇鍋をご馳走になった. 船頭の妹(桜井浩子)は近いうちに河豚をご馳走しようといった.

さておのぶが願を掛けているところにやいと屋が現れた. 下女は何か悪いことが起きるんじゃないかと心配していた. 仕事もよくやる彦三が悪そうな奴(船頭達)に金をやっているのを見たからだ. やいと屋は考えすぎだよと一笑に付した.

その頃,呉服屋に帰ってきた太助は川に落ちたことをおみちに話した. 彦三がいなかったら,今頃土左衛門だと太助は笑うのであった. 今回はここでタイトル表示.

さて矢場で船頭の仙八と仙八の妹お咲は彦三と会っていた. 実は川に落ちた件は彦三が仕組んだもの.お咲はこの矢場の主人だ. 彦三は主人と奥方の信用を得たことを喜んだが, と同時に彦三は奥方の世話をするおのぶが自分を疑っていることを懸念していた.

捨三の洗濯屋にやいと屋が現れ,彦三とお咲ができているらしいので, 調べてくれ,と頼んだ.捨三は手を出したが,やいと屋は金を出さず, 手を叩いただけで去っていった. それでも捨三はお咲と彦三が一緒にいるところを見て来た.

さて彦三はおのぶに声を掛け,「船宿」に連れ込んだ.それを捨三は目撃. その頃,仙八は河豚の白子や真子を手に入れていた. そして鮟鱇鍋と称しておのぶに食べさせた.何も知らず,美味しい, と喜ぶおのぶ.彦三達はどんどん河豚の真子や白子を食べさせた. そしておのぶは土左衛門になってしまった.厚化粧させられていたので, 夜鷹と間違えられていた.死因は河豚に当たったことが原因らしい.

何と今日はせんの誕生日.主水が鍋料理でもてなした.だが
主水「あ,今朝方,川原に夜鷹の土左衛門があがりましてなあ.」
りつ「まあ,あなた,お食事時に.」
主水「あ,は.それが医者の診立てによると, どうも河豚に当たって死んだらしいですなあ. 贅沢なもんですね,夜鷹分際で河豚を食うとは. 私達はせいぜい贅沢をしてこの鱈ちりどまり.もっともですね, うちでブラブラしてる母上と違って, 別に河豚を食って精をつけることもありませんが.」
これを聞いたせんは機嫌を悪くした.だが気を取り直して食べようとしたが
主水「河豚の素人料理というのは一番危ないらしいですなあ. 特に菜種時の河豚は気をつけろと言いますからなあ.」
これを聞いたせんとりつは動きが止まってしまった.
主水「その中でも一番危ないのは真子とか肝とか言う奴ですねえ. つまり,生半可な通に限って素人料理をやりますからなあ. そういう連中はあっという間にころっと.」
せん「婿殿,これは鱈でしょうね.」
りつ「あなたに作って頂きましたが,まさか間違って河豚を買って来て…」
主水は,当たるならそのうち痺れてくるでしょう,と言い, ますます座を白けさせるのであった.

さて美濃屋の太助とおみちはおのぶが二日も現れないので心配していた. おみちはおのぶから,彦三が店の金を持ち出し, 岡場所や矢場に出入りしている事を聞かされていた. だが幼い頃から一緒に育った太助はその話を信じようとしなかった. 太助が出た後,やいと屋が現れた.おみちからおのぶが現れなかった事を聞き, やいと屋はおのぶが二日前に彦三と一緒に鍋を食べた話をした.

やいと屋はおのぶの件を仕事にしようとしたが,皆乗り気じゃなかった. 主水はやいと屋にお灸を据えてもらっていた. 剣之介は雨続きで芸が見せられないと嘆いたが, 主水は内職の傘が売れるので婆が大喜びだと言った. やいと屋は土左衛門のことを主水から聞いて,彦三の仕業に違いない,と言った. 捨三は彦蔵達が鮟鱇鍋だと言っていたと言った.剣之介は馬鹿馬鹿しい, と去っていった.だが主水は,美濃屋が殺されるなら別だが下女じゃな, と乗り気じゃなかった.帰ろうとする主水にやいと屋は治療代を請求したが, 主水は,足代で相殺だ,と払わずに帰った.
やいと屋「吝嗇だねえ.安い藻草使っといて良かったよ.」
剣之介はお歌と相合傘で帰って行った.

美濃屋の太助は川端で鍋を食べるにはいい天気だと言ったが, おみちは反対した.だが太助は彦三を信じきっており, 彦三の誘いに乗って出かけて行った.やいと屋が来た時は一歩遅かった. 慌ててやいと屋は川縁を走った.だが彦三と太助は船の中. そして籠の中で太助は突如苦しみだし,医者を呼べと言った. 奥方は番頭の茂七から話を聞き,失神してしまった. 結局美濃屋は死んでしまった.白々しく彦三は自分のせいだと叫び, 奥方に謝った.

美濃屋が死んだ話を聞いた主水はおかしいと言った. 彦三も河豚を食べた筈なのに死ななかったからだ.それを受け, やいと屋は持論を力説.夜鷹はおのぶだ. 河豚の試し食いをさせられたに違いない.夜鷹なら,お上の取調べは厳しくない. そこへ捨三が戻って来た.美濃屋に船を出した漁師はいなかった. 潜りで商売したのだろう.主水は船頭も仲間だと睨んだ.
やいと屋「乗りかかった船だ.こいつはどうでも彦三の皮ひんむいて, 仕事にしなきゃ,おのぶ婆さんの霊も浮かばれねえぜ.」
だが
主水「やいと屋.依頼人は誰なんだ.いるのか,いねえのか?」
まだ乗り気ではなかった.

彦三は仙八達にしばらく会わない方がいいと言っていた. 万が一と言うことがあるからだ.お咲は,美濃屋の身代が手に入るんだろうね, とか,美濃屋の奥方に手を出すな,と言い,仙八にたしなめられた.

さて牢屋敷に千勢がやってきた.主水は驚いたが, 千勢は以前牢屋を見学したいと言ったのだ.主水が千勢を案内していると, 女の囚人が産気づいたと大騒ぎ.千勢を見かけた銀次は新入りと勘違いし, 牢屋も楽しくなる,と千勢を追い掛け回そうとした.

さて美濃屋にお咲が現れた.慌てて彦三が相手をした. 彦三はお咲に来るなと言っただろうと追い返した.それを捨三が見ていた. 彦三達が何かを企んでいることは間違いない. だが証拠が揃わなければ主水も剣之介も納得するはずがない.

美濃屋の四十九日の法要の日.捨三は外から様子を伺った. 美濃屋太助の跡取り清太郎は生まれたばかり.そこで親戚の川津屋は, 清太郎が成人するまで後見を彦三がするべきだと言った. 奥方のおみちはしばらく里へ帰りたいと言っていたのだが, 彦三を主人に向かえた方が言いと川津屋は言い出した. 白々しく,彦三は慇懃にその話を受けることにしたと言った.だが
おみち「嫌です.お前と一緒になること,私は嫌です.」
おみちは清太郎を連れ,太助の墓へ行き,泣いた.

一方,彦三は矢場へ現れた.お咲は大喜び. 彦三は仙八達に美濃屋を継ぐ事になった話をした.大喜びする仙八達. それを天井裏から捨三が覗いていた.

その夜.正体を現した彦三はおみちを犯そうとした.
おみち「指一本触れて御覧.あたしは知っている.旦那様を殺したのはお前だ. 可哀想におのぶまでも.」
だが彦三は開き直り,おみちを犯した. 犯されるおみちの方を清太郎が向いていた.

翌日.川端でおみちにやいと屋が声を掛けた.
やいと屋「御新造さん.」
おみちはやいと屋の方を向いた.
やいと屋「諦めちゃいけませんぜ.」
おみち「やいと屋さん.」
やいと屋「貴方にも見当はついていると思いますが, ご主人を殺したのは彦三です.」
おみちは泣いた.
おみち「彦三が憎い.旦那様の恨みを,恨みを晴らしたい.」
やいと屋「恨みを晴らす手立てがないわけじゃありません. 世の中のためにならねえ許せぬ奴らを始末してくれる,裏稼業のあるのを, あたしゃ知ってますよ.」
おみちは金を出した.
おみち「これでお願いします.」

こうしてやいと屋の思惑通り,仕事になった.やいと屋が三両取るのを見て
主水「おい,なんだい,そりゃ.」
やいと屋「今回,だいぶ元手が掛かってるんだよ.」

出かけようとしたやいと屋は下駄を履き損じたので
やいと屋「畜生,縁起でもねえ.」
そこで碁石を取り,良い,悪い,良い, と碁石占いを始めた…馬鹿馬鹿しい(剣之介談).

彦三は美濃屋で大騒ぎしていた.彦三が席を外した時,反物が落ちた. それはやいと屋がわざと落とした物.彦三はやいと屋の鍼の餌食になった. 仙八は屋台で呑んでいた.そこへ主水がやって来た. 主水は同心達が通り過ぎた後,仙八が屋台を離れたところを叩き斬った. お咲をやるのは剣之介だ.まず捨三がわざとお咲を狙って射つ. お咲の注意が捨三に向けられている隙を突き, 後ろから剣之介が襲い掛かり,お咲をやった.

仕事終了後,主水は家に帰ってきた. りつは戸締りをしっかりするようにと言うのであった.

「がんばれ! レッドビッキーズ」第34話「倒せ! ビューティスターズ」

脚本は上原正三.監督は奥中惇夫.

次の試合は準決勝.あのビューティースターズが相手だ. 小杉ユリカ(神亜子)のユリカボールは冴え渡り,三振の山を築いていた. さて練習に明け暮れるレッドビッキーズのところへユリカがやってきた. ユリカはアメリカ製の痛み止めのスプレーをノミさんに渡したが, ビューティースターズ監督の美鈴(森田あけみ)に咎められ, 去らざるを得なかった.

夕食の時も令子はユリカボール攻略法のことを考えていた. 生憎幸一郎は出張中だった.さてノミさんの家ではお母さんが肩当てを作った. 弟の四郎はもう頭も座っていた.その翌日. ノミさんはビューティースターズの練習を見に行った. そしてノミさんはユリカに肩当てをプレゼントした. だが美鈴は肩当てをビリビリと破いてしまった.
美鈴「こんなものを作る時間があるなら, ユリカボールを打つ練習をすることね.」
ノミさんは馬鹿野郎と叫びながら自転車を走らせ,川原で寝ていた. そこへ令子がやってきた.令子は元気のないノミさんを見て心配した. ノミさんの脇にはあの肩当てが置いてあった.ノミさんは泣くのであった.

令子は美鈴に肩当てを破った件をねじ込んでいた. ビューティースターズはエリートスターズの対策練習をしていた. サウスポーを打つ練習だ.まるでレッドビッキーズなど眼中にない様子. だが美鈴はユリカの精神状態を懸念していた. 5ヶ月前にレッドビッキーズと対戦した時, ユリカはレッドビッキーズのチームカラーに触れた為に心を乱し, 打ち込まれてしまったからだ. だから美鈴はレッドビッキーズのメンバー全員とユリカが会うことを恐れたのだ.

令子から美鈴の話を聞いたナインは怒った. レッドビッキーズを無視し,サウスポー対策をしていたからだ. ノミさんはコーチや令子にカーブの投げ方を教えてくれと頼んだが, 令子は変化球は肩や臂を痛めると言って反対し, コーチも短期間では無理だと教えようとしなかった.

ジュクはユリカボールの投球を盗み撮りし,パラパラ写真を作ってくれた. ノミさんはパラパラ写真を見てユリカボールを習得した. そしてカリカリ達にも投げてやった.だが投げすぎて臂を痛めてしまった. ユリカがくれたスプレーで臂を冷やしたが痛みは取れなかった. 痛みはひどく,ボールが握れないほどだった.

そして試合の日.なんとピッチャーはナッツ.それを知った美鈴は怪訝な顔だ. ちなみにショートはブラザーでレフトはペロペロ,そしてノミさんは補欠だ. ナッツは令子やジュクのサインに従い,初回表は三者凡退に抑えた. だが裏の攻撃でもレッドビッキーズはユリカを打ち崩せなかった. そして試合は投手戦の様相を見せてきた.ナッツの球速の遅さが幸いし, ビューティースターズの打者はタイミングが合わなかったのだ. 余談だが,パリーグ時代の星野伸之はこの原理でパリーグの打者を翻弄した. 阪神に行ってからはさえないが,タイミングを外すことも投球には大事なのだ. 閑話休題.ナッツもユリカもバッターを抑えていった.そして向かえた最終回. ビューティースターズは1アウト2,3塁のチャンスを迎えた. ナッツにへばりがでてきたのだ.そして遂に二死満塁のピンチを迎えてしまった. そしてレフト線の3塁打を打たれて3点取られた.さらに二塁打が出て, 最終的に4点取られてしまった.次の打者はユリカだ.そのとき
ノミさん「僕,投げます.大丈夫です.」
令子はブラザーをベンチに下げ,ナッツをショートに入れた. バッティングはペロペロの方が上だったからだ.痛みを我慢し, ノミさんは2ストライクを先行させた.そして最後のボールは何と
ノミさんの声「インコースのストレート待ちだな.よーし,ユリカボールだ.」
驚いたユリカは空振り三振.
ユリカ「どうして.どうしてユリカボールを.」
美鈴「ユリカボールを覚えられた.」
そして裏の攻撃.レッドビッキーズは先頭打者のセンターが出塁. シゲは凡退したがカリカリがユリカボールを打って出塁. チャンスを迎え,バッターはノミさん.
ノミさんの声「ユリカボールで勝負しろ.」
ユリカは握りを見せてからユリカボールを投げた. ノミさんはユリカボールをジャストミート. 唖然としてユリカは打球を見送った.この一打でレッドビッキーズは2点返した.
美鈴「ユリカボールが打たれた.」
続くペロペロも大飛球を打ったがセンターのファインプレーに阻まれてしまった. 試合はビューティースターズが勝った.一同は握手した.
令子「おめでとう.」
美鈴「ありがとう.強くなったわ,レッドビッキーズ.」
令子は苦笑した.
令子「そうかしら.」
美鈴「センターのファインプレーがなかったら,どうなってたか.」
令子「頑張ってね,優勝戦.」
美鈴は肯いた.ノミさんはユリカに, お母さんに縫い直してもらった肩当てをプレゼントした.
ノミさん「がんばれよ,優勝戦.」
ユリカは肯いた.試合には負けたが,令子の気分はさわやかだった.

次回は大学受験を控える令子を気遣い,ナイン達が別チームを結成. 果たしてレッドビッキーズは本当に解散なのか? 令子やナイン達との絆の強さが描かれます.

「太陽にほえろ!」第225話「疑惑」

脚本は小川英と四十物光男.監督は斉藤光正.主役はスコッチ.

スコッチはあの事件を思い出し,悪夢を見ていた. スコッチと先輩刑事の倉田は犯人を追いかけた. だがスコッチが拳銃を撃つのを躊躇した隙を突き,犯人は倉田を射殺.
スコッチ「先輩,先輩,先輩…」
寝ていたスコッチは電話のベルの音で目を覚ました. 電話は宿直のボンからのもの. 矢追町5丁目のスカイマンションで殺人があったのだ.被害者は江本康造. コーヒーにいれられた毒による毒殺と思われた.江本は出版社の編集長. 江本は仕入れた情報をネタに強請を働いていた. だから江本に恨みを抱いている者は多い筈だ.そこへスコッチがやって来た. スコッチは江本の出版社が城北署の管内にあったので江本のことを知っていた. スコッチは何か考え込んでいた.
山さん「何かあったのか.この江本と.」
スコッチ「別に.」

死亡時刻は前夜の8時から9時までの間.一人暮らしの江本は, 夕食には必ずコーヒーを飲んでいた.だから犯人はそれを知っていて, インスタントコーヒーの中に毒を入れたのではないだろうか. ボンは江本が死亡した頃に江本を訪ねた人物を洗えばいいと言ったが, 山さんはそれを否定した.江本は毒殺されたからだ.毒殺の場合, 犯人が毒を入れてから被害者が毒を飲んで死ぬまで時間がかかる場合がある. 江本が一昨日にコーヒーを飲んだ時は無事だった.だから, 一昨日から昨日にコーヒーを飲むまでの間に江本を訪れた人物を, 当たる必要があるのだ.アリバイを証明するのは楽じゃないぞとぼやくゴリさん. ボスはスコッチに城北署へ行き,捜査記録を調べるように言った. 恐喝事件などで江本とスコッチに面識があったからだ.

城北署でスコッチは倉田良平が持っていた手帳はないかと尋ねた.
ボン「倉田刑事? 滝さんが一瞬拳銃を撃つのを躇った為に死んだって言う, あの.」
そんなものあったかなあという刑事にスコッチは, 警察手帳とは別にプライベートな手帳に江本の事をつけていたと言った. プライベートな手帳なら倉田の奥さんが持っている筈だと刑事が答えた. スコッチはボンを連れて倉田の家を訪れた.倉田の妻(安田道代)は懐かしがった. スコッチは線香をあげた後,倉田の持っていた緑色の手帳がどこにあるか尋ねた. 倉田の妻はしばらく考えた後,確かお棺の中に入れた,と答えた. そこへ倉田の遺児次郎(松田洋治)が帰ってきた.スコッチは一郎に声を掛けたが, 一郎がスコッチを見る眼は冷たかった. それを見てスコッチは倉田の葬儀の日のことを思い出し,心を痛めた. あの時一郎がスコッチを見る眼も冷たかったように思えた.

長さん達の聞き込みで犯行可能な24時間の間に男が5人, 女が1人,江本を訪れていたことがわかった.男5人の身元はわかったが, 女の身元はわからなかった.女が訪れた時刻は午後4時頃. 部屋の番号を知っているらしく,真直ぐ江本の部屋に向かって行った. 管理人と江本と同じ5階に住んでいる女が見ていた.ちらっと見たので, 背格好と身なりくらいしかわからなかった. 久留米絣を上品に着こなしていたと言う. 女は和服を着ていたが水商売風ではなかった. その時,スコッチもボンもあることを思い出した.
ボン「滝さん,倉田さんの奥さんの着物,ああいうのを久留米絣って…」
珍しくスコッチは激昂し,ボンの胸倉をつかんで言った.
スコッチ「言葉に気をつけろ! あの奥さんが人を殺すか!」
そしてスコッチは出て行った.

倉田の妻加代は古美術商に勤めていた. ゴリさんとボンは加代に江本を知っているかどうか尋ねた. 加代は江本のことを知らないと答えた.その日の午後4時に何をしたか尋ねた. 加代は日本橋の客へ届け物をしに出かけ, 用事を済ませた後は大丸デパートにいたと答えた.
ゴリさん「それから,滝がここに来ませんでしたか?」
加代は来なかったと答えた.加代は気がついていなかったが, スコッチは加代を一人で見張っていた.
スコッチの声「奥さんが納めた物の中に緑色の手帳などなかった. 俺ははっきり覚えている.」

山さん達が聞き込みを続けている間も,スコッチは車で加代を尾行していた. 山さんは及川光雄という政治家のところを訪れていた. 及川は1年前に人身事故を起こしていた.山さんは及川が江本に強請られ, 毎月30万円江本に口止め料を支払っていたことを調べ上げていた. 及川はあの日にマンションに行った事を認めたが, 入れ替わりに背の高い男が江本の部屋を出るのを見かけたと答えた.

なおも倉田の妻を尾行していたスコッチに無線が入った.
ボス「江本が死亡した時刻に部屋から出た若い男がいる. 特徴から見て情報屋の黒沢と思われる.」
藁をもつかむ気持ちでスコッチは尾行をやめ,黒沢のところへ急行.
スコッチの声「奥さんは白だ.奥さんは白だ.」
スコッチ達は黒沢(阿藤快)を捕まえた.だが黒沢は犯行を否認. 黒沢が訪れた時には江本は死んでいたのだ. それでもスコッチは強引に詰め寄った.黒沢が情報を売りに訪れた時, 鍵は開けっ放し.江本はずぼらだったので黒沢は特に驚きもしなかった. 中に入ってみると江本は既に死んでいた.驚いた黒沢は100万円を持ち逃げし, その場から逃げ去ったのだ.黒沢は2万円を使ってしまったが, アパートのベッドの下に金を置いたと証言.山さんは釈放を決意した.

黒沢の供述通りに98万円の札束が発見された. さらに札束から加代の指紋が発見された.
スコッチ「何ですって.奥さんの指紋ですか.」
驚くスコッチ.ゴリさんは加代が倉田を知らないとはっきり証言したことを, スコッチに言った.なぜ知らない男のマンションを訪ねるのだろうか.
ボス「スコッチ.倉田加代を重要参考人としてこっちへ連れて来い.」

スコッチは殿下と一緒に倉田加代のところへ行った.
スコッチ「署まで同行願います.江本康造殺害事件の重要参考人です.」
沈黙が流れた.
加代「わかりました.」
取調室でも加代は何も話そうとしなかった.
スコッチ「江本康造とは会った事はない.ではどうして, 江本の部屋にあった百万円にあなたの指紋がついてるんですか?」
加代「知りません.」
スコッチ「知らないはずはない.」
沈黙が流れた.
スコッチ「指紋は嘘をつかないんだ,奥さん.」
思わず殿下はスコッチの方を見た.
スコッチ「なぜ嘘をつくんです.一体何を隠してるんです.」
加代「では,言い方を変えます.話したくありません. 容疑者にも黙る権利はあるんでしょう.」
スコッチ「その通りですよ,奥さん.あなたはもう殺人の容疑者だ. こうなった以上,徹底的に追及します. もうあなたの知ってる滝だと思わないで下さい.」
スコッチは取調室から出て行った.加代はいつ出られるか聞いていた. 殿下は加代の協力次第だと答えた.加代は一郎のことを心配していた.

山さんとゴリさんの調べで,約1年前,倉田が殉職して間もない頃, 加代が江本に金を払っていたことがわかった.200万円だ. しかも加代には預金が1000万円もあった. それはスコッチにとって悲しい事実だった. さらに山さんの調べで11月10日に加代が200万円を下ろし, 同日,江本の口座に加代から200万円振り込まれていることがわかった. 山さんは加代にその理由を尋ねた.だが加代は何も話そうとしなかった.
山さん「奥さん,あなた,何かで江本に強請られていたんじゃないですか?」
その時,スコッチが入ってきた.
スコッチ「江本なんて男は知らないって言いましたね.嘘だ. 12月4日,ホテルニューポートのロビーで江本と会ってる. はっきりとあなたの同窓生の一人がそれを見てるんです.奥さん, 金の出し入れのデータ−もありませんが, あなたが1千万近い預金を持っていることも確認しました. あの金なんですか.あなたと江本の間には一体何があったんです.」
加代「言えません.言えないんです,滝さん.」
スコッチは興奮してその理由を尋ねたが,殿下や山さんに外へ出された. それでもスコッチは「奥さん,それでも倉田先輩の奥さんか.答えろ, 奥さん.」と怒鳴っていた.

屋上で煙草を吸った後,スコッチは出ようとした.その時, ボスが屋上に現れた.
ボス「どこへ行く.」
スコッチ「聞き込みです.倉田さんのお子さんが何か知ってるかもしれません.」
ボス「話すと思うか,お前に.子供だってな,心を開かない相手には, 決して正直には話したりせん.信じたい相手なら,信じたらどうだ. 心を開きたい相手なら,心を開いたらどうだ.」
スコッチは無言でボスを見た.そして出て行った.

一郎は何も話そうとしなかった.諦めたスコッチがボンに電話し, 一郎の話相手を変わろうとした時,一郎がスコッチに言った.
一郎「帰っちゃ嫌だ.帰っちゃ嫌だ.どうして帰るんだよ.」
スコッチ「おじちゃんのこと,嫌いなんだろう.」
一郎「どうして.前はあんなに遊んでくれたじゃないか.」
思わずスコッチは一郎を見つめた.
一郎「おじさん,どうして遊んでくれなくなったんだよ. お父さんが死んでから,ずーっと,ちっとも遊んでくれなくなったじゃないか. ずーっと.」
スコッチは姿勢をただした.
スコッチ「お前,それでずっと怒ってたのか.おじちゃんが, 昔と同じおじちゃんだったら…」
一郎「どうして遊んでくれなくなったんだよ.」
そしてジーパンのテーマのスローバージョンが流れる中, スコッチは一郎と一緒に遊んだ.
スコッチ「そーら.それ.うぉーし.これ,お父さんの大事な総監賞だぞ.」
一郎を肩車した時,一郎が表彰状の入った額を取った. だめじゃないかと言ったスコッチは,表彰状の額に手をやった.その時, スコッチはあの緑色の手帳を発見した.なぜかあるページだけが破られていた.

手帳にはここ3年の江本の犯行が克明に記されていた. その中には倉田加代よりも強い動機を持つものが4,5人は記されていた. スコッチが疑問に思ったことがあった.なぜ手帳のページが破られたのだろう.
スコッチ「表彰状の裏に隠したのが倉田さんだったとすると, 破ったのも倉田さんだったことになります.」
さらに山さんが疑問に思った事があった.これだけの証拠を握っておきながら, 倉田はなぜ江本を逮捕しなかったのだろう.
スコッチ「江本には散々逃げられてます. 今度こそ絶対に逃げられない証拠をと思って慎重に構えてたんだと思うんです.」
一応,山さんはうなずいた.とりあえず七曲署の面々は. 倉田の手帳に書かれている人物の中で, 疑惑の強い人物を洗い出すことにした.こうして加代の疑惑は晴れた. スコッチは加代を家へ送ってやった.加代は本当に, 棺の中に手帳を入れたものだと思っていた,と言った.
スコッチ「そしてこれで何もかも終わりならいいのですが…」
スコッチは翌日も加代をマークし続けていた.

山さんとボンの調べにより, 真犯人はある大学病院の松永だとわかった. 二年前,松永の執刀した手術で患者が死亡した事故があった. そのときの遺族の代理人が江本だった.病院側は非を認めなかったが, 翌月から毎月10万円ずつ江本の口座に支払われていた. 松永には助教授昇進の話があった.そこで江本は松永と闇取引をした. さらに江本は金の値上げを要求していた.さらに一週間ほど前, 青酸カリが持ち出されていた.そこまで山さんが話した時, 松永は膝をつき,犯行を認めた.こうして事件は解決した.だが…

スコッチは加代の元を訪れた.
スコッチ「手帳のお蔭で事件は解決しました.犯人は松永ひろし,外科医. しかしこれで何もかも終わったわけじゃない.あなたが江本に払った300万. 預金の1千万.あの犯罪に関係ないプライバシーに干渉する権利も,興味も, 我々にはありません.ですが,奥さん.あなた, なぜご主人の手帳のあるページを破ったんですか? 額の裏に手帳を隠したのは倉田さん自身だと私は係長に報告しました. しかしあの手帳には埃がついてなかった.まるで隠されたばっかりのように.」
加代は真実を話した.1千万は退職金や警察の恩給などを預金したものだった. 加代は自分が死んだら全額慈善団体に寄付するつもりだった. そうしようと思ったのには理由があった. その理由を加代は言いたくなかったので,取調べの際, 加代はずっと黙っていたのだ.
加代「倉田は江本からお金をもらいました.」
スコッチ「倉田さんが江本から金をですか.」
スコッチは驚いた.倉田が汚職刑事と言われてもどうしようもないだろう. だがそれには理由があった.その理由を加代は泣きながら話した. 加代の弟は会社の金を使い込んでしまっていた. もしそれが表沙汰になったら倉田が刑事でいられなくなる. そのとき,江本は金をポンと出してくれたのだ.その金を返すために, 江本に金を渡していたのだ.生命保険の中から200万, あとの100万円を返すのに1年間かかった. 倉田は毎日毎日金を返すことを考えながら死んでいったのだ. だが倉田が江本を憎む気持ちに変わりはなかった. だからこそ倉田は江本を逮捕すべく手帳をつけていたのだ. だから警察から貰った金を加代は全部返すつもりでいた.
スコッチ「奥さん.倉田さんは立派な刑事でした.今でも私はそう思ってます.」
スコッチはそう言って車で去った.

倉田の墓詣をしているスコッチのところにボスが現れた.
ボス「倉田刑事は立派な刑事だと言ったそうだな. 世間が何と言おうと,少なくともお前と俺だけがそれを知っている. それでいいじゃないか.」
スコッチ「ボス.」
ボス「お前にそう言われて,ボスらしい気分になったのははじめてだ.は,は. おう,モーニングコーヒーとでも行くか.」
スコッチ「いや,紅茶頂きます.」
ボスは頭をかいて言った.
ボス「じゃ,まあ,モーニングチーとでも行くか.」
ボスはスコッチの背中を叩くのであった.

次回は長さん主役編.白昼高級ウィスキーが盗まれる事件が発生. それがきっかけで過去の事件と対峙せざるを得なくなります.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp