2002年2月4日

「必殺仕業人」第23話「あんたこの女の性をどう思う」

脚本は安倍徹郎.監督は渡邊祐介.

やいと屋が女郎屋へ仕事でやってきた.ただでいい, と女郎達に誘われたが「今日は仕事」とやいと屋は断った.だが, 一人の女郎(宇都宮雅代)に一目惚れしてしまい,お金を払って抱いてしまった.
やいと屋「やいと屋又右衛門,金を出して女を抱く. こいつはとんだお笑い種だ.」
情事の後,やいと屋は女郎の素性を訊いたが,女郎は話そうとしなかった. その時,女郎屋の女将が女郎を呼んだ.女郎の名前はお絹. なぜか十日に一回しか客を取ろうとしなかった.女将は, その器量ならもっと稼げるので,せめて五日に一度でもいいから, もっと来てくれないか,と言ったが, お絹は何やら事情があるらしく断っていた.

裏からお絹が出ると女衒の仙次郎(峰岸徹)が誘ってきた. だがお絹は今夜は駄目と断ってしまった. そしてお絹は立派な籠に乗り,岡部という旗本の屋敷の中へと消えていった. それをやいと屋はしっかり見て帰った.今回はここでタイトル表示.

翌日.やいと屋からその話を聞いた主水は大笑い. 間部図書と言えば1500石の旗本だ.その奥方が女郎になって客を取るなんて, 狐にでも憑かれたんじゃないのか, と信じようとしなかったが…やっぱり気になるらしく,店の名前を聞いた.
やいと屋「知らねえなあ.狐にでも訊いてみな.」

間部の屋敷の中間の直助(平野康)も奥方が何しに行ったんだと仲間に訊いたが, 仲間は知らぬ存ぜぬを通し,さらに親方にもぶん殴られた. 直助はこの屋敷への奉公に出たばかりで何も知らなかったのだ. 痍だらけになった直助に奥方のお雪が声を掛けてくれた. 自分を気遣って薬を持ってこさせて手当てまでしてくれたので, 直助は喜んだ.さらに直助は出身地をお雪に訊かれた. 直助は越後だと答えた.

相変わらず剣之介とお歌の芸は不評だった.そこへ仙次郎がやって来た. 仙次郎はお歌にいい稼ぎ口があると言ったが
お歌「ヒモは一本でたくさんだよ.」
仙次郎「二本あったって悪かねえぜ.」
だがお歌が頑強に断ったので,仙次郎は諦めて去って行った. 仙次郎はお歌の美貌に目をつけ,体を売るように迫っていたのだ.
剣之介「いいじゃないか.お前が体を売ろうと他の男に抱かれようと, お前の中身まで変わるわけじゃないんだ.俺はかまわんぞ.」
お歌「本気なの?」
剣之介「本気だとも.昔は人並みに焼餅も嫉いたが今は違う. 堕ちるとこまで堕ちてみて,そこで二人の仲が本物だったかどうか, 確かめてみるのも面白え.一つ奴の口車に乗ってみたらどうだ.」
お歌はその言葉を聞き,自棄になって出て行った.
剣之介「お歌,待てよ.冗談だ.」
だがお歌は戻ろうとはしなかった.

さて主水はお絹のことを調べていた.何だかんだ言っても, やいと屋の話が気になったのだ.

一方,間部(川合伸旺)は弓の稽古をしていた. そしてお雪にが出した茶を飲もうとしたが, 湯飲みの中に髪の毛が入っていたので激昂し,間部はお雪にお茶をぶっ掛けた. 中間達は,奥方が可哀想だ,とか,夫婦になれば別だよ,もそっとちこう, こうかい,なんてよ,とあれこれ戯言を言っていた.
直助「よせ.奥方様はそんな人じゃねえ.」
逆に直助は,おめえ,女を知ってるのかい,と返された. さらに21にもなって直助は未だ女を一人も「知らなかった」ことをネタに, 直助はからかわれてしまった.

主水は掛軸の後ろに隠していた臍繰りを二両取り出し, 「医者へ行って来る」と称して出ようとした.
せん「まさか私達に言えないような病気にかかったんじゃないでしょうね.」
主水は,牢屋敷の医者が膈の病らしいと言っていたので念のため診てもらう, と出任せを言った.主水が出て行った後,せんは千勢に膈の病とは何か訊いた. 千勢から癌だと聞いたりつは失神してしまうのであった.

直助は女郎屋に連れて来られていた.ちょうどその頃, 主水はやいと屋と鉢合わせ.主水は職務柄だとごまかそうとしたが
やいと屋「おしいねえ,旦那.かの有名なお絹さん, 一足違いで客がついちまったんだってよ.ま,そう云う訳で.ご苦労さん.」
呆気に取られる主水.その客とは中間の直助だった.驚くお絹いやお雪. お雪は直助に口止めした.さらにお絹は直助に迫り,私はお前の客だ, お前の好きなようになさい,と帯をとき始めた.

翌日.門のそばでお雪は直助を呼び出し,奥へ来いと言った. お雪は間部の家に嫁いで着た時の夜の寝巻きを出し, それを着ながら言った.
お雪「この家の慣しは夫婦の交わりがある時, この着物に妻となった証を記して,お仲人にお届けすることでした. でも私達の間には一度もそのようなことはなかった.嫁いでから20年近く, 一度も.お前の目には婬らな女と写るかもしれない. 世間に良くある男狂いの女と見えるかもしれない. 何と思われてもかまいません.ただ,お前にだけは, ホントのことを知って欲しかった.雪という哀れな一人の女の真実の姿.」
驚いた直助は手をついてしまった.お雪は懐剣を手に取り, 刃を直助に向けて言った.
お雪「お前は私が死ねと言ったら死ねますか?」
直助「死ねます.奥方様のためなら,いつでも.」
お雪「わかりました.」

しばらくして.お雪は間部に新参の若い中間の直助と寝たことを話した.
間部「それで果てたか?」
お雪「はい.」
間部「そうか.それは良かった.」
何と間部はお雪がお絹になって客を取っている事を織り込み済みだった.

剣之介は一生懸命お歌を探していた.その様子をお歌の友達はお歌に見せたが, やーめた,と言ってお歌は去ってしまった.剣之介は仙次郎にも詰め寄ったが, 仙次郎はお歌の行方など知らなかった.

主水はべべを着せられていた. せんとりつが手で匙を持って朝鮮人参の汁を主水に飲ませていた. 主水に死なれると中村家が断絶するからだ. さらにせんとりつは主水が死んだ場合に備え, 千勢に養子まで斡旋してもらっていた.それを聞いた主水は怒るのであった.

その頃,直助はお絹の店へ行ったが,お絹には仙次郎がついていた. その様子を直助が盗み見た.
仙次郎「馬鹿野郎.俺をなめるんじゃねえ.いいか,お絹. おめえみてえなど素人がここで商売できるのは, いってえ誰のおかげだと思ってるんだ? 十日に一回だなんて勝手なことやらしてやってるのも, みんなこの俺がこの辺のおっかねえお兄さん方に頼んでやってるからじゃねえか. 何様のような面するんじゃねえ.おめえはなあ,男が欲しいんだ. おめえの体はなあ,男なしじゃ我慢できないように生まれついているんだよ. おい,欲しいだろう.男が欲しいだろう.俺の体が欲しかったらなあ, 有り金全部出すんだな.」
仙次郎とお絹の情事を直助は盗み見た.お絹は「果てて」いた.
仙次郎「よう,あ.お前がどんな女か俺は薄々見当がついてきたぜ. なあ,だけどなあ,俺は知らねえよ.俺は知りたかねえよ. お前みたいないい女はいねえ.お前は可愛い女だよ. お前みたいな女はなあ,ただじゃ放さねえよ.お前の身元, 黙っててやる代わりになあ,俺は絶対にお前のこと放さねえよ.」

直助は仙次郎を刺し殺そうとしたが失敗し,逆襲されてしまった. そこへ捨三が通りかかった.直助は捨三の助けで何とか逃げることができた. 捨三は直助に仙次郎を殺そうとした理由を尋ねた.

捨三は五両並べた.
主水「おめえもしんどい仕事を請け負ってきたもんだなあ.」
主水は呆れていた.
やいと屋「つまりその仙次郎って色悪を消してくれって頼みか.」
捨三が持って来た五両は直助が苦労して貯めた金だった. 捨三は仙次郎の悪事を調べ上げていた.騙されている女は二, 三人という物ではなかった.その騙し方も非道かった. 勿論,剣之介はそのことを知っていた.
剣之介「女の生血を吸って生きている蛭みてえな野郎だ.」
だが
剣之介「だがな,捨三,これはどう見てもけちな色恋沙汰のもつれだ. それだけで人を殺すわけにはいかねえなあ.」
と乗り気ではなかった.
やいと屋「あたしゃ,そうは思わないね.ここに五両の金がある. 悪い男が一人いる.それだけであたしゃ十分さ.捨三,なんなら, あたし一人でも引き受けていいんだよ.」
やいと屋は乗り気だったが主水の意見は違った.やいと屋が取った金を取り
主水「まあ,待てよ.仲間割れするほどの仕事じゃねえだろう.え. もうしばらく様子見ようじゃねえか.捨三,この銭,けえしとけ.」
捨三「これ返しちゃうんですか?」

直助は,仙次郎のことが我慢できない,と生花をしていたお雪に言った. さらに
直助「奥方様は私一人の物だ.」 だが
お雪「出すぎた真似をおしでない.下郎の分際で何と言うことを.」
直助の一途な思いはお雪には通じなかったのだ. と同時に直助はお雪の女の性を理解できていなかったのだ.
お雪「お下がり.お前の顔など二度と見たくない.」
お雪は直助を枝で打ち据え,去って行った.

その夜.捨三は間部の屋敷へ行って直助に会おうとしたが, 直助はいねえ,と追い返された.不審に思った捨三は屋敷の中に忍び込んだ. すると直助が「奥方様」と呼ぶ声が聞こえた.捨三が声のする方に忍び込み, 覗いて見ると直助は座敷牢に閉じ込められていた.そこへ間部がやってきた. 間部は弓矢を持っていた.
直助「なぜだ.なぜ私は殺されるんだあ.」
間部「お前はのう,この家の秘密を余りにも知りすぎたのだ. 旗本1500石の体面を守る為には, 余り多くを知った者は死んでもらわねばならぬのだ.」
直助「待ってくれ.私はこの御屋敷の為, 奥方様の為に何もかも黙っていたんだあ.」
間部は直助に真実を伝えた.
間部「教えてやろう.雪を岡場所に行かせたのは,この私だ.」
驚く直助.
間部「全て承知の上で雪の好きなようにさせていたんだ.夫婦の間には, お前ら下郎には窺い知れぬ暗い秘密がある.その秘密を知られた以上, 生かしておくわけには行かんのだ.」
直助は間部に何発も何発も弓で射抜かれた.さらに
お雪「直助,お前いつか,私のためなら喜んで死ぬと言いましたね. ですから,今死んでもらうのです.」
激怒した直助が
直助「奥方様.この恨みはきっとあの世で.」
と言うやいなや,直助は間部に射殺されてしまった. 興奮した間部とお雪は情事を開始した.その様子を捨三が盗み見ていた.

剣之介のところにお歌が帰ってきた.
剣之介「やっぱり一人だと不便でいけねえな.」
剣之介から小判を受け取ったお歌は言った.
お歌「仕事?」
剣之介「久しぶりに鰻でも食うか.」
その頃,やいと屋は「戌の日,風辰巳なら吉.辰巳だ.」と占い帳で調べていた. 主水はりつに黙って出て行った.

やいと屋は吉原の街中で仙次郎の首の後ろに鍼を刺した. 仙次郎は震えながら女郎屋の壁に寄りかかった.
女郎「仙さん,何震えてるんだよ.」
女郎達は仙次郎が息絶えているのに気付き,騒いだ.

間部の屋敷の庭でお歌の歌が響いていた. 雨戸を開け,間部とお雪がお歌のところへやってきた.
間部「誰だ?」
お歌「殺された直助の恨みを歌っております.」
間部は刀を抜いてお歌に飛び掛ろうとしたが, 背中に主水の刀をつきつけられ,何度か打ち合った末,主水に叩き斬られた. 逃げるお雪は剣之介に仕置された.

お歌と月を見ながら
剣之介「俺達って一体なんだろう.男と女か.訳がわからなくなっちまった.」
と考え込んでいた.その頃,家に帰ってきた主水はりつの寝顔を見て
主水「この寝顔を見つづけて15年か.こうなりゃ,どっちが先にくたばるかだ. おやすみ.」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp