2002年1月19日

「太陽にほえろ!」第60話「新宿に朝は来るけれど」

脚本は鴨井達比古と小川英.監督は竹林進.主役はジーパン.

七曲署捜査一係室にジーパンがスーツを着て登場.
殿下「馬子にも衣装だなあ.」
ボス「何を着ててもデカに見えるのは妙だなあ.」
憤慨するジーパンに
ゴリさん「だけどな,あんまり珍しいことすんなよ. そうでなくても近頃は天変地異が多いんだから.」
ますます憤慨するジーパン.その時,地震が起きた.地震が収まった後, 一人だけ机の下に潜っていたゴリさんは,地震程怖いものはない,と言い訳. そして長さんがボスに週刊誌の記事を見せた. それは科学技術庁防災対策研究所技官の中原和巳と言う男が書いた記事で, 今東京で大地震が起きたら,死者は推定300万にもなると書いてあった.

中原がエミ(桃井かおり)と言う女に殺された.その死体を七曲署の面々が調べた. 中原が抵抗したあとはなく,財布も身分証明書も免許証もそのまま. 現場で長さんは顔見知りの犯行じゃないかと考えた. 山さんは中原の妻に尋ねたが,中原が恨みを受ける心当たりはなかった. 中原の上司である主任は,中原は新宿でよく呑むくらいで恨みを抱くことはない, と長さんとジーパンに言った.だが事件の直前, 中原は電話で欠勤を申し出ていた.少し身体がだるかったと言う.
中原「主任もどうぞお元気で」
まるで遺言のような話し方をしていたので主任は不思議に思っていたと言う.

中原は虫歯以外に病気らしいものはなかった.中原の死体には口紅がついていた. だが中原の妻の者ではなかった.犯人は女に違いない.殿下は異議を唱えた. 死因はナイフで心臓を一突きされたこと.女が男を一瞬で殺せるだろうか. ボスはこう反論した.ありえないことではない.余程油断していたか, 刺されるのを待っていたか.殿下は納得しなかった.兎に角, 口紅を残した謎の女を調べる必要がある. 山さんとゴリさんは新宿での中原の行動範囲を調べることにした. ボスは長さんと殿下に中原家へ行って様子を探って来いと命じた. シンコとジーパンが残った.ジーパンがボスに気になることを言った.
ジーパン「中原さんって,その口紅の女性を愛していたんじゃないでしょうか.」
ボス「それはお前の勘か?」
シンコもジーパンをじっと見た.
ジーパン「いやあ,自分でも良くわからないんですけど. ただ,新宿って街にはそういう何か破滅的な,それでいて真剣な, (咳払いしてから)そういう若い連中がたくさんいるんです. 俺,あの街が好きだから,なんとなくわかるんです.」
ボス「口紅の女がそういう若い女の可能性もあるっていうのか?」
ジーパン「はい.」
ボスはシンコにジーパンを手伝うように命じた.シンコは怪訝な顔だったが, 命令に従うことにした.

事件の直前,中原は先月末に新宿の行きつけの店のつけを全て清算していた. さらに中原の妻から300万円の定期預金を3日前に解約していたことを, 長さんと殿下は聞き出していた.そして中原の書斎でレコードを発見した. 「男らしいってわかるかい/プカプカ ザ・ディランII」というレコードだ. しかしそれ以上の収穫はなかった. ゴリさんは山さんと一緒にラーメンを食べて情報を交換し合った. 7軒回ってみたが,先月末に清算してから姿を現したことがない以外, 収穫はなかった.そのとき,ゴリさんはカシを変えたんじゃないかと閃いた. 死ぬ前の二日間,気まぐれにどこかに入ったのではないか. 半分素人みたいな娘やフーテンを雇って小父様連中を誘惑するような店だ. 早速山さんはそういう店を当たってみることにした.

山さんとゴリさんがエミの勤めている店にやってきた. 勿論,この時点での二人はエミが犯人だとは知らない. だが中原がその店に現れたことを聞き込んだ. エミは中原が地震の話ばかりしていたと言った. その頃,シンコと組んだジーパンは赤電話から七曲署に定時連絡をした. そういえば,最近赤電話を見かけない.閑話休題. 山さんは中原の書斎で発見されたレコードを掛け, ジーパンに聞かせて調べるように言った. 早速二人で街を歩くジーパンとシンコ.その時, レコードの曲プカプカが流れている店に行き着いた. レコードの曲を弾いていたのは流しの歌手.ジーパンは中原のことを聞いたが, いつもエミと一緒なのでエミに聞けばわかる,と店の主人は答えた.その頃, エミの店のママは,中原を殺したのはエミだと気がついていた. 狙いは300万円ではないだろうか. そのことをエミの店のママは弟で龍神会の組員の野川に話した. そして300万円をエミから奪い取ろうとママは野川に持ちかけた. 一方,ジーパンとシンコのいる店にエミがやってきた.だが, エミは野川達に連れ出されてしまった.ジーパンのテーマが流れる中, 野川に連れ出されたエミを救うため,ジーパンが走って追いかけ, 野川と野川の部下のチンピラを倒し,ジーパンはエミを連れて逃げた. ちなみにジーパンが店から出た時,ゴリさんも店の前にいた. だがジーパンはゴリさんも殴った.これでエミとジーパンは意気投合. エミはジーパンに気をつけるように言った. ジーパンが刑事のゴリさんを殴っていたからだ.
ジーパン「さては何か悪いことしたのかな?」
エミ「人を殺したの.」
エミは大笑い.ジーパンはエミと一緒にパブやエミの部屋で飲んだ.
エミ「純は人を殺したいと思ったことない?」
ジーパン「え?」
エミ「純はさあ,人を殺したいと思ったことないの?」
ジーパン「いや.」
エミ「好きで好きで堪らない人が出来たら,きっとそう思うよ.」
ジーパンは怪訝な顔.
ジーパン「好きだから殺したの?」
エミはうなずいた.
ジーパン「誰殺したの? 恋人?」
エミ「恋人? 何のこと?」
ジーパン「人を殺した話さ.あんた,そう言ったじゃない.」
エミ「馬鹿ねえ.冗談よ.」
エミはお酒のもうと言った.
エミ「明日は明日の風が吹くってさ.だってさあ,大地震が来たらね, みんな死んじゃうんだもんね.そうでしょ.ああ,注いで.一杯.えーと, それじゃあ,ナウな新宿のために,それから,今日のこの日のために,今, この瞬間のために乾杯.」
ジーパンは不思議に思った.
ジーパンの声「こんな娘が人を殺す.こんな娘が?」

翌朝.ジーパンが女と呑んだと聞いたタキは驚いた. ジーパンが他人事のように「人を殺したかもしれないんだ.」と言うので, さらにタキは驚いた.七曲署ではゴリさんがジーパンに向かって怒っていた. 人を殺したと言ったのに捕まえず,しかも自分をぶん殴って逃走を助けたからだ. だがジーパンはやることはやっていた.ジーパンはエミの口紅を持ってきていた. そして鑑識課で調べた結果,中原の遺体についていた口紅はエミの物と一致した.

エミは仲間からジーパンが刑事だと知らされた.その直後, エミは野川にさらわれた.それをエミの仲間から聞いたジーパンは, マカロニのテーマに乗せて竜神会に乗り込んだ.ゴリさんも登場し, 野川の行方を尋ねた.野川は300万円の行方をエミに尋ねたが, エミは知らないと言った.その頃,殿下はママの所に来ていた. 野川はママの弟だった.殿下は野川のことを尋ねていた. そこへジーパンが乗り込んできた.
ジーパン「エミは本当に中原さんを殺したんですか?」
ママ「え?」
ジーパン「どうしてあの娘はそんなことをしたんだ.どうしてだ!」
ママはジーパンの気迫に驚いた.
ママ「待ってくださいな.エミが殺したなんて,そんなこと私は初耳.」
ジーパン「あんた,それ知ってるはずだ. だから弟を使ってエミをさらったんだ.」
ママは白を切ったが
ジーパン「言うんだ!」
殿下はとめたが
ジーパン「なぜエミをさらったんだ.かばうためか.それとも消すためか. どっちなんだよ! 教えてくれ.なあ,言ってくれよ.どうしてなんだ. 言うんだ!」
殿下「やめろ.」
ジーパン「どうしてなんだ!」
殿下はジーパンを強引に外へ連れ出した.そしてママが外へ出たところを, マカロニのテーマに乗せ,殿下とジーパンが尾行した. ママは野川とエミのいる場所へやってきた. そしてママはエミにお金のことに尋ねたが
エミ「知らないものは言えないでしょう.」
殿下とジーパンは様子を伺っていた.殿下は応援が来るまで待てと言ったが, エミの苦しむ声を聞いてジーパンは狂ったようにドアに蹴りを入れたり, ドラム缶をドアにぶつけたりした.殿下は止めたがジーパンは聞く耳持たず, ついに近くに止めてあったショベルカーを使ってドアを破り,中に侵入した.
エミ「純.」
ジーパンは野川達を次々に倒し,殿下は怪我をしながらもママを現行犯逮捕. だがエミはどこかへ消えてしまった.あとからやって来たゴリさん達に任せて.
殿下「あいつ,行かせてやってくださいよ. エミをただの殺人犯とは思ってないんです.」
沈黙が流れた.
殿下「だからあいつは自分で確かめたいんですよ. エミと中原さんの間に何があったのか.何が殺人を引き起こしたのかをね.」

ママはエミがなぜ中原を殺したのかはわからなかった. ママはエミから金を取りたかっただけだったのだ. ゴリさんと殿下は夜の新宿の街で調べていた.長さんは屋台で言った.
長さん「親父.人類なんてどうせ長くはないんだ.楽しまなきゃ損だぞ. 俺なんかなあ,どうせ先行き希望がない.わかった!」
屋台の親父は怪訝な顔.
長さん「こういう気持ちの時,中原さんはエミと出会ったんだ. そして愛し合った.」
ボスはエミの仲間を尋問したが,エミが中原を殺した理由は知らなかった. だが中原が東京に絶望していた,とエミの仲間は言った. 必ず滅びると言っていたのだ.中原とエミを結びつけたのは絶望だったのだ. 死んだ中原は明日に来るかもしれない地震を本当に恐れていたのだ.

ジーパンはエミと出会った店にいた.そこへエミがやってきた.
エミ「飲んでいい?」
ジーパン「俺はデカだ.」
エミ「仲間よ.」
エミはジーパンと一緒に飲み始めた.そしてエミはジーパンの手を掴み, 夜明けの新宿の街を一緒に歩いた.そのあとをゴリさんと長さんがつけていた. いつしかジーパンとエミはあの新宿中央公園へ向かっていた.
ジーパン「教えてくれ.なぜ殺さなければならなかったんだ.」
エミ「楽しかったの.あの人と一緒だった二日間. あの人も本当に楽しいって言ってくれた.こんな思いのため死にたいって. こんな夜明けだったわ.」
あの日もエミと中原は夜明けを見ていた.エミは中原に言った.
エミ「やっぱりおうちに帰るの? あたしのこと置いて.」
中原「そうするしかないんだよ.このまま時間が止まってくれれば別だが.」
中原は立ち去ろうとした.
エミ「おじさん.」
中原が振り返った瞬間,エミが刺したのだ.エミはジーパンに言った.
エミ「どうして.新宿って夜はこんなに怖いのに,朝はこんなに優しいの?」
ゴリさんと長さんがエミとジーパンのところへ近づいた. エミに手錠が掛けられた.一瞬,時間が止まった. 居たたまれなくなったジーパンは走り,狂ったように叫んだ.
ジーパン「馬鹿野郎!」
そしてジーパンは芝生の上で寝転んだ.

300万円は非常食を入れていたリュックサックの中に入っていた. 中原の妻からの電話で七曲署の面々はそれを知った. 地震が起きた時に物を言うのは保存食と現金だ.もっとも, 生き延びればの話だが.やはり中原は地震が本当に怖かったのだ. 重い雰囲気に包まれたので
ボス「どうした,みんな.どんな絶望的な場面になっても, 俺は生きるために闘うぞ.そうでなけりゃ,生まれた意味がないからな.」
山さんは飯食いに行こうと言った.皆一緒に出て行った.
ジーパン「ボス.」
ボス「何だ?」
ジーパン「俺も同感です.飯食ってきます.」
外へ出るジーパンにボスは手を振ってやった.

さて次回もジーパン主役編.準レギュラーのある方が登場します.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp