2002年1月16日

「必殺仕業人」第13話「あんたこの神隠しどう思う」

脚本は野上龍雄.監督は工藤栄一. 牢では囚人達が布団を干し,忠助が盆栽の世話をしていた. そのとき,女牢で病人が出たとの報せが.主水は仮病だと思っていたが, 重病だった.その女お久(志乃原良子)は「かみ,かみ.」と言った. そこで主水がお久女の髪を解くと,小判が.お久は「せんかい.」 「殺して.」と繰り返していた.

主水が帰るとちょうど寺子屋が終わったところ.生徒達が外へ出るところだ.
主水「しっかり勉強しな.怠けてるとおじさんみたいになるぞ.」
そこで主水が風呂場を覗いてみると千勢が入っていた. 千勢は主水が覗いているのに気がついたが,気にもとめない様子. ずっと覗いているとりつが声をかけて主水を部屋の中へ連れ込んだ. 部屋の中ではせんは仏頂面で黙り込んだまんま. 生徒達が中村家には古い物ばかりと言ったので,箪笥でも何でもいいから, 新しいものを買って欲しいとりつは言い出した.だが主水は金がないと渋った. 怒り心頭に達したせんは「馬の耳に念仏とはまさにこのことです」と言い出した.

さてお歌に昔馴染みのお眉(荒砂ゆき)が声を掛けてきた. お眉は剣之介によろしくといい,お歌と再会したことを喜んだ. だがお歌は連れなかった.お歌はお眉の調子のよさが嫌いだった. そしてお眉が昔から鼻つまみ者だったというと
剣之介「鼻つまみ者か.俺達みたいなもんだ.」

その頃,やいと屋はある長屋を訪れていた.皆来なくなったので心配したのだ. やいと屋はお六(三戸部スヱ)の家に上がりこみ,話を聞いた. 玄拓と言う行者から,やいとをやってもその場しのぎに過ぎない, 死ななければ治らない,と聞かされたので, 長屋の連中はやいとをするのをやめにしたのだ. ちなみにお六の娘おとよはやくざと駆け落ちしていた. そしてやいと屋は剣之介の所へやってきて, 玄拓が広めた「死のう教」のことをこぼした. この世の中苦しいことばかりなのでいっそ死んでしまった方がマシだ, というのが「死のう教」の教えだったのだ.

その夜.玄拓(山田吾一)のところから信者が帰った後, 玄拓の情婦お眉はいい鴨がいないのかね,とほざいていた. そして玄拓とお眉は情事を開始.
玄拓「楽しいことも生きていればこそだ.」
言っていることとやっていることが全然違うぞ. 一方,やいと屋はすっかりできあがってしまい, お歌に「このクソ婆.」と絡んでいた.

さておとよ(和田幾子)が長屋に戻ってきた. 駆け落ちしたやくざ伊佐治に死なれたのだ.お六は「父無し子を生みやがって. 出て行っておしまい.」と追い返そうとした.おとよは今更会える義理ではない, とわかってはいたが,赤ん坊に六太郎とつけていた.勿論,お六からとったのだ. それを聞き,お六は六太郎を可愛がった.長屋の連中は皆やいと屋にやってきた. 六太郎を連れたおとよも一緒だ.一方,玄拓は暇を持て余していた. お眉は玄拓にお六が百両持っていることを吹き込んだ. 伊佐治は親分の罪を被って死んだが,香典代わりに百両お六にやったのだ. それを聞いた玄拓は何やら考えるのであった.

玄拓の情婦は長治という男に話を持ちかけた. 何も知らないお六,おとよは幼い六太郎を可愛がっていた. お六とおとよが井戸端で話をしている隙に, 長治は六太郎をさらってお眉に渡した. お眉は六太郎を自分の息子だと言って,お歌に預かって欲しいと頼んだ. 江戸に母親が来るのでしばらく預かって欲しいと言うのだ.

長屋では六太郎が神隠しに遭ったと騒ぎが起きていた.号泣するお六. 目を離したおとよが悪い,とお六はおとよをなじった.そこへ玄拓がやってきた.
玄拓「罰じゃ.罰が当たったのだ.」
そして
玄拓「探しても無駄だ.子供は二度と帰らん.おそらく死んでいようが, 父無し子として一生苦しみ続けるよりも,むしろその方が幸せと言う物じゃ.」
玄拓はこの騒ぎを利用して自分の教えを広めようとしたのだ. 一方,おとよは六太郎が見つかるように一生懸命神に祈った. そしてその晩もおとよは泣いていた.お六も「いっそ死んでしまいたいよ.」と, 泣き出した.外ではお眉と玄拓が見張っていた.お眉の予想した通り, おとよが外へ出てきた.そしておとよは玄拓に首を絞められた. お眉は「じれったいよ.」とほざき,玄拓に石を渡した. 玄拓は石でおとよを殴り殺した.そしてお六のところへ玄拓とお眉は入り, お六も絞殺.百両を物色し,糠床の中から百両を発見した. さらに玄拓はお六を吊るし,首をつって自殺したと見せかけてから, 去って行った.

女牢ではあの病人の様子を主水と忠助が見ていた. 女は夜鷹になる前は下谷の小間物屋の妻だったが,一粒種の息子が神隠しに遭い, 夫が首をくくって「自殺.」しかも夫は「死のう教」を信仰していた. 女はせんかいの仕業だと訴えたが,取り上げられなかったのだ. その足で主水は剣之介のところへやってきた. お歌は「乳を貰い」に外へ出ていた.それを聞き, 主水は遂にお歌に子供が出来たと勘違い.すると寝ていたやいと屋が暴れ, 剣之介の藁葺きのテントは崩れてしまった. やいと屋は夕べ酔っ払って盛んに「死のう教」とわめいていたという. ピンと来た主水は玄拓のところに忍び込み,「せんかいさん」と呼んでみた. 玄拓は思わず声に反応した.そしてお眉に「俺を呼んだか?」と聞いた. 牢屋敷に戻った主水は,忠助から女が苦しんでいることを聞かされた.

主水達は玄拓をやることにした.あれ,今回は捨三が登場しないぞ. それは兎に角,やいと屋は鏡で自分の顔を見て, 鏡に写った顔に紅で大吉と書いた.勝手にやってくれ. さて玄拓のところに現れたお歌はお眉を呼び出した.剣之介はお眉を仕置. そして玄拓はやいと屋の鍼で絶命した…と思ったら, 鍼を抜いた腕をやいと屋の方へ押し,逆にやいと屋を刺そうとした. やいと屋ピンチ…と思ったら,絶命した.芸が細かいぞ,山田吾一さん.

さて長屋の連中は「火事だ」という声を聞いて外へ出た. だが火事など起きていなかった.そのとき,お六の家の灯りがついていることに, 長屋の連中が気がついた.皆が入ってみると六太郎が戻っていた.驚く一同. 長屋の連中は自分達が親代わりになって六太郎を育てると宣言. 「暗闇仕留人」の時に作られた曲に乗せ,主水はその様子を見た. そして主水は安心して帰った.翌朝.また銀次が牢に帰って来た.

「がんばれ! レッドビッキーズ」第31話「しっかりして! キャプテン」

脚本は上原正三.監督は田中秀夫.今回も那須高原での合宿. オーナーはバランスの練習と称して皆をボート遊びへ連れて行った. オーナーとシゲの乗るボートはオール捌きがなっていないのか, 変な方向へ向かっていた.だが一人だけ参加しない者がいた. ジュクはカリカリ達の勧めに従い,ホテルで勉強していたのだ. バッティングセンターでのバッティング練習でもジュクだけが参加せず, バッティングセンターでお勉強.それを見た令子は練習を切り上げた. 皆合宿へ出かけて気が抜けていたのだ. 怒ったコーチはサイクリングコース5周を命じたが, いつまで経っても戻って来ない. 何とメンバーは途中の林でカブトムシやクワガタを捕るのに夢中だったのだ. そこへ健太が声を掛けてきた. お父さんが地元のマキバーズと試合をつける段取りをつけたのだ. 健太の操るりんどう湖ファミリー牧場の馬車に乗って一同は黒磯市のグランドへ. 早速試合が開始された.先頭打者のナッツは
オーナー「ストライク,ナッツアウト.」
ちなみに主審はオーナーだ.オーナーはレッドビッキーズの面々に, 絶好球だぞ,とか言うのでマキバーズの捕手にどやされた. 結局,その回は点が入らず,カリカリで終了.カリカリは,ボールが遅すぎる, と負け惜しみを言った.さらにノミさんは調子が悪く, どんどん撃たれてしまった.代打の健太がへっぴり腰で打った打球はカリカリへ. しかしカリカリはお手玉し,出塁を許してしまった. そして結果は10対2でレッドビッキーズの負け. 怒ったコーチは「やる気のないメンバーを相手してもしょうがない.」と言って, 東京へ帰ってしまった.オーナーも母ちゃんが怖いので, コーチの乗るマイクロバスに乗って帰ってしまった. 見送る令子のところへジュクが出てきた.
ジュク「すいません.キャプテンの僕がもう少ししっかりしていれば.」
令子「でもどうしてかしら.どうしてこうまで, がたがたに崩れてしまったのかしら.」
ジュク「正直言って信じられないんです.東京大会に出られるなんて, みんな夢のようだって言っていました.」
それで令子はピンと来た.
令子「そうね.それで集中力をなくしてしまってるんだわ.」
ジュク「そうだと思います.」
令子「でもね,東京大会は夢じゃないわ. あたし達も戦わなくちゃいけないのよ.」
ジュク「そうですね.」
令子は聞いた.
令子「どうする?」
ジュクは困ってしまった.
令子「オーナーもコーチもいなくなったわ.せめてキャプテンのあなたが, 協力してくれなくっちゃ.そうでしょ?」
ジュク「そうですね.」
令子「兎に角,チームを一本の線にまとめたいの.そのためには…」
ジュク「チームワークですね.」
令子「そうよ.キャプテンを中心にチームをまとめて頂戴.」
ジュク「やってみます,僕.」
令子「頼むわよ.」
ジュク「はい.」
そこへナッツがやってきた.カリカリとノミさんが喧嘩をしていると言うのだ. 二人はカブトムシの取り合いをしていた.カリカリが一番多く捕ったのに, ノミさんが捕ったというのだ.
ジュク「このキャンプのテーマはチームワークです. みんなで仲良くしてくれないと困ります.さあ,仲直りして.」
ジュクはノミさんとカリカリを握手させた.

さてお父さんとお母さんはゴルフをしていた. 令子からマキバーズに負けたと聞いたお父さんは「やっぱり.」と言った.
お父さん「引き絞った弓は矢が放たれると緩む. 今のレッドビッキーズはその緩んだ状態だ. これから徐々に引き絞ってゆけばいい.」
令子「じゃあ,お父さん,チームワークを高める方法はないかしら.」
お父さん「チームワークって言うのは上から押し付けてできるもんじゃない. 内部から盛り上がって結束するもんだ.」

その晩.一人で勉強するジュクのところへ令子がやってきて, もう寝なさいと言った.そして翌日.ジュクは連日連夜の勉強がたたって, フラフラだった.カリカリは心配したが, 遂にジュクは目がかすんで倒れてしまった. ホテルへ帰って休みなさいと言う一同.だがまたノミさんとカリカリが対立. カリカリは頑張って走ろうと言って先頭にたって走って行った. だがノミさんとスタイルは走ろうとしなかった. カリカリはキャプテンではないと言うのだ. 令子は,じゃああたしが命令するわ,走りなさい,と言って二人を走らせた. ホテルに戻れば,ジュクが机に突っ伏して寝ていた. それを見た令子は,練習をサボって宿題をやってるの,と言って怒り, 外へ出て馬に乗って走った.ジュクは謝ったが令子は許そうとしなかった.

翌日.令子はジュクだけに自転車での猛練習を課した. 見かねてカリカリが言った.
カリカリ「もう許してやってよ.」
令子「ダメよ.ジュクは私を裏切ったわ.キャプテンとして, レッドビッキーズを裏切ったわ.」
汗だくになって自転車を走らせるジュク.
ナッツ「可哀想.」
そのとき,ジュクが転倒して倒れてしまった.

ジュクは軽い脳震盪を起こしていたのだ.医者は明日まで眠ればよくなると言い, 帰っていった.
ノミさん「ジュク,なぜ本当のこと,言わないんだ.」
ジュクはごまかそうとしたが,反省したカリカリが話した. 何とみんなは優等生のジュクにみんなの宿題をやらせていたのだ. ノミさんとスタイルはそのことに反対し,カリカリと対立したのだ.
令子「どうして言ってくれなかったの? そうならそうと.」
ジュク「チームワークを作りたかったんです.」
令子「チームワーク?」
ジュク「僕はキャプテンです.キャプテンとしてメンバーの面倒を見れば, 自ずとチームワークを覚える.そう考えたのです.」
令子はジュクの手を握り,泣いた.

そして次の日.荷物を片付けている令子のところへ, お父さんからメッセージが届いた.
お父さん「令子,グランドへ言ってごらん.」
ジュクと一緒にグランドへ行くと,カリカリがみんなにノックをしていた. ノミさんもノックをしていた.
令子「憎いことするなあ,親父.こんなもの残して.」
その頃,お母さんとお父さんは車の中で微笑んでいた.
令子「ありがとう,お父さん.この分なら東京大会も行けそうです.」

次回はブラザーがジュクのいとこに恋をして,東京大会で奮戦…か?

「太陽にほえろ!」第222話「蝶」

脚本は小川英と柏倉敏之.監督は児玉進. 「太陽にほえろ!」のいいところは題名が短いこと, そしてその短い題名が作品のテーマを明白に物語っていることです. やたらと長い題名をつける昨今の二時間ドラマとは大違いです.

男が山道で車を走らせていると後ろからダンプカーが迫ってきた. ダンプカーは車に何度も何度も激突.慌てて男は時速100Km以上出し, ダンプカーを振り切ろうとした.しかしそれも虚しく, ダンプカーは山深い所まで追いかけてきた.遂に男の車は崖から落ちてしまった.

その報せが七曲署に届いた.早速現場へ向かう一係の面々. 車を運転していたのは城東開発経理部の土肥義孝だった. だが車の持ち主は城東開発経理部部長の西沢健二だった. 近くでダンプカーが発見された.だがダンプカーは盗難車. もしかしたら狙われたのは西沢だったのかもしれない,と山さんは睨んだ. その頃,ボンはダンプの運転席で粉のようなものを発見していた. 山さんは鑑識に分析してもらうことと長さんに連絡することをボンに命じた.

西沢(勝部演之)も自分が狙われたのではないかと考えた. 西沢は急用で土地を見に行くことになり, ゴルフへ行くのを土肥に代わってもらっていた. しかも,事件のあった頃,脅迫電話があったというのだ.

長さんは小森が出所してきたことを知っていた. そしてボンと一緒に小森の家へ向かった. 10ヶ月前,足が不自由で蝶が好きだった小森保12歳は, 西沢が運転する車に轢き殺されていた.怒った父親の小森(織本順吉)は, 歩道橋から突き落として西沢を殺そうとした. それを長さんが殺人未遂の現行犯で逮捕したのだ. 情状酌量で軽い刑で済み,小森は出所したばかりだった. 小森の家へボンと長さんが行って見ると,蝶の標本がたくさん並んでいた. 皆小森保の遺品だ.すると小森が現れた.逃げる小森を長さんは追いかけた. 小森を取り押さえる時,長さんは足を捻挫してしまった.最初, 小森は自分は西沢の命を襲っていないと主張した.小森は西沢の事件を, お蕎麦屋のテレビで知った.疑われると思って逃げたのだ. 長さんはそれを信じた.西沢はずっと家で寝ていたという. だが独り暮しだから証明してくれるものは誰もいない…

その晩.長さんとボンはボスに報告した.一係室にはスコッチも座っていた. 長さんは小森が犯人ではないと信じているようにボンには見えた. 長さんは根拠はないが,なんとなくそう思っていると言った. そこへゴリさんが戻ってきた.城東開発の社員の何人かが, 会社の周りを小森らしき男が二,三日前からうろうろしているのを見かけた, と言うのだ.今日も現れて死んだのが西沢ではなかったことを確かめたと言う. それを聞いたスコッチはゴリさんの方を見た.今日の昼休み頃にも現れた, とゴリさんが言うと
スコッチ「ホシもそうするんじゃないですか. 特に間違った相手をやっちまった場合はね.」
緊張が走った.
スコッチ「行って来ます.」
長さん「スコッチ.何故行く?」
スコッチ「小森を参考人として引っ張ってきます.」
スコッチは出ようとしたが
ボス「待て.今のところ状況証拠だけだ.確証を掴むまでは張り込みを続ける.」
スコッチ「わかりました.そういう捜査が七曲署の方針なら.」
そう言ってスコッチは出て行った.苦い顔をする長さん.無言のボス.

ボンと長さんは小森をマークすることにした.公園で小森は蝶を捕まえた.だが, 標本にある種類のものだったので小森は逃がした.それを見ながら, 長さんがボンに小森の事を話した. 小森保は小さい時の怪我が元で足が不自由になった. そして妻にも先立たれた小森は仕事をやめ,スナックを開き, ずっと保のそばにいた.そして保の好きな蝶を捕ってやった. やっと保が見違えるように明るくなった時,保が事故に遭って死んだのだ. 小森は西沢を殺すつもりだったと自供した. だが現行犯逮捕した長さんの目にはそう見えなかった. 小森は西沢をいつでも突き落とせる状態にまで追い込んだ. だが西沢には何の支えもなかったにも関わらず,小森は手を離さなかったのだ.

西沢は電話の声が小森の声だとゴリさんに証言. スコッチが護衛役として西沢に着く事になった. だがなぜか西沢はスコッチの目を盗み,裏口から出て行った. そして西沢はナイフで刺された.西沢は後ろから刺されたので, 犯人の顔はわからないと答えた.ちょうどその頃,小森は出かけていた.

翌日.スコッチが凶器を発見した. 現場から200mほど離れたどぶに捨ててあったが,西沢の傷口と一致した. 鑑識に見せた結果,指紋を拭き取ってあるが,蝶の体液が付着していた. やはり犯人は小森なのだろうか?
長さん「違う.小森は人を刺したりはせん!」
冷たくスコッチが言い放った.
スコッチ「デカの仕事は証拠探しじゃないんですか. 理屈にもならん同情でホシを見逃すのが,あんたのやり方, いや,ここのやり方なんですか?」
ゴリさん「おい,待てよ,スコッチ,お前はなあ…」
長さんはゴリさんを止めた.沈黙が流れた.それに耐え兼ねて長さんが言った.
長さん「小森がやったと言う証拠がどこにある.滝. この程度の証拠で犯人逮捕をやたらと急ぐのは思い上がりだよ.」
スコッチ「違うな.思い上がってるのはあんただ.」
長さんは二の句が告げなくなってしまった.
スコッチ「俺はただ目の前の証拠で動いてるだけだ. 哀れな男を救おうなんていうのは,刑事には必要ない!」
そう言い放ってスコッチは出て行った.
長さん「あいつの言う通りだよ.俺の信じていることには何の証拠もない. 確かに何にもないんだよ.」
長さんも出て行った.気まずい雰囲気が流れる中,皆聞き込みに出かけていった.
ボス「思い上がりか.」

長さんは旅行会社でパンフレットを持っていった人のことを聞いていた. 小森の行先を調べるためにだ.そして聞き込みを続けた結果, 西沢の刺された現場周辺では誰も犯人の目撃者が出なかった. 一方,長さんとボンは小森の家を見張っていた.そこへ小森が帰ってきた. 小森は何か風呂敷包みを抱えていた.そこへスコッチが登場. スコッチは強引に小森を引っ張った.そのとき,小森の手から虫篭が落ちた. 七曲署で
小森「そうです.俺がやりました.」
小森はナイフを拾ったと言い,さらにダンプを近くの工事現場で拾ったと言った. だが長さんは小森の自供が嘘だと見抜いていた.なぜ自供を, というボンの質問に答え,長さんは言った.
長さん「子供のためだ.ボス,私はやっと小森の気持ちがわかりました. あいつは西沢を殺したいんです.本当に心の底から殺したいんです. だが小森にはそれが出来ない.あいつは人を殺せないんです. ナイフで人を刺したりは出来ないんです. だからせめて自分がやったと思い込みたいんです. 十ヶ月前の事件でも本当は殺せなかったのに殺す気だったと言い張ったのも, 同じ気持ちです.死んでしまった子供にしてやれるのは, もうそれしかなかったんですよ.ボス,私はあいつを救ってやりたい. 本当にむごい目に遭ったあの男を今の苦しみから何とか救ってやりたいんです.」
ボス「本人があくまでも自分がやったと主張してもか?」
長さん「そうです.どんなに小森がそう主張してもです.」
ボンは長さんを手伝うと言った.ボスは長さんに調査を許した. ただし送検までの二日間の期限付きで.

長さんとボンは小森の家を家宅捜索した.アリバイさえ証明できればいいのだ. そのとき,長さんは蝶の標本に目をつけた. 「モンキアゲハ♀ S50.7.20 静岡県浜松市」 蝶は種類によっては生息する場所が限られている. 長さんは小森が逮捕された時に持っていた蝶に目をつけた. この蝶がどこで捕れたか調べればアリバイが証明できるかもしれない. ボンはパンフレットの秋吉台のところに丸がつけられているのに気がついた.

小森が捕って来た蝶はナガサキアゲハで主に九州から四国に生息し, 山口県にも生息している.だがこれだけでは証拠不十分だ. 犯行が行なわれた時間, 小森が小森自身の手でこの蝶を捕ったと証明できなくてはいけない. 長さんはブルートレインあさかぜに乗って山口県秋吉台へ向かった. 長さんが足を棒にして調べている最中,ゴリさんとボンは小森を尋問していた. 小森は,秋吉台へ行ってはいない,やったのは俺なんです,と繰り返すばかり. 長さんが足を引きずって調査を続けた.その頃, 西沢が株で失敗したために会社の金を使い込み, 土肥義孝に強請られていたことが判明した. だから西沢には土肥を殺す動機が十分ある.ちょうど出所してきた小森を利用し, 西沢は土肥を殺した.西沢刺殺事件も小森に罪を着せるための, 西沢の狂言かもしれない.そのとき,スコッチが中に入ってきた.
スコッチ「嘘ですね,小森の自供は.ナイフの大きさも知らないし, 拾った場所もくるくる変わる.俺も長さんの読みは正しいと思うんですが.」
ボス「全員一致した以上は一つ勝負してみるか.」

山さんは西沢のところへ向かった.その頃
長さん「ダメか.誰も見たものはいないのか.」
山さんは土肥から西沢が使い込みをしていた話をしたとカマを掛け, さらにゴリさんが,西沢を刺した犯人がいない,とカマを掛けた. 西沢は「小森の顔をはっきりと見た.」と言い出した. ちょうどその頃,長さんに警官が声を掛けた. 蝶を捕っているおじさんを見た少年がいると言うのだ. 長さんが少年に小森の写真を見せた. 少年は写真の男が蝶を捕っていたと証言した. それは西沢が刺された晩の翌朝早くのことだった.

山さんは西沢に警告した.もし小森が無実ならば, 「小森の顔をはっきり見た」と言う証言は命取りになると. そこへボスから連絡が入った.小森のアリバイが証明されたと. 西沢が刺された夜の翌朝早く,小森は山口県秋吉台で蝶を捕っていた. 西沢を小森が刺すのは事実上不可能だ.西沢は逃げようとしたが, 結局逮捕された.

長さんは新宿中央公園で小森にナガサキアゲハを渡してやった. 長さんの提案で小森はナガサキアゲハを逃がしてやった. 小森はやおい中学に標本を全部寄贈することにした. それを嬉しそうに言う長さん.ボスは捻挫は治ったのかと聞くと, 長さんは治ったと飛び跳ねるのだった.

次回はボンが七曲署着任1年を迎え,今までの新人刑事のジンクス通り, 危機に陥る話です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp