2001年12月30日
「特捜最前線」#81「女逃亡犯25時!」
脚本は本田英郎.監督は天野利彦.偽装自殺をしてまで逃亡する女(町田祥子).
女を追いかける所轄の刑事権藤(潮健児).権藤の暴走を抑える橘.
実は女の逃亡の裏には意外な事実が隠されていた…最後,
女逃亡犯の手から手錠が外されるシーンは必見.
他の話よりは少し落ちる話ですが,見て損はありません.
「特捜最前線」#82「望郷殺人カルテット!」
脚本は大野武雄.監督は村山新治.雪深い東北の寒村出身の5人組の悲劇.
そのメンバーは将来を嘱望された医者(夏夕介),
医者の元恋人で元看護婦,元看護婦の弟,自衛官,そして彼らの幼馴染の女.
寒村を建て直すため,そして医者を守るために仲間の4人が行なった事は,
見事に医者に裏切られた.医者は寒村の医師になる道ではなく,
大都会の大病院の院長へ伸し上がる道を選んだのだ.
それを元恋人は許すが,残りの3人は許さなかった.
遂に医者もその報いを受けて…ラスト,
自分も裏切られた事を知って医者が自殺する場面は必見.
ちなみに主役は医者と大学のラグビー部で一緒だった津上です.偶然にも,
津上殉職後,入れ替わりに夏夕介さん演じる叶が特命捜査課に入ります.
「特捜最前線」#83「凶悪のラブハンター!」
脚本は塙五郎.監督は村山三男.主役は吉野と橘.
吉野の真向かいに住む女(結城しのぶ)は清楚な感じのする真面目な教師.
吉野は彼女に心引かれてしまった.その頃,連続女性殺人事件が起きていた.
調査に当たる吉野の前に彼女の真の姿が露になってきた.それは吉野にとっても,
情夫と一緒に家を出た女(絵沢萌子)を母に持つコンプレックスから,
殺人を行なっていた犯人(寺泉憲)にとっても,驚愕すべき事実だった.
やっぱりこの話も最後の場面は必見です.
「特捜最前線」#84「記憶のない毒殺魔!」
脚本は塙五郎.監督は天野利彦.主役は久々に登場の高杉.
地下鉄新御茶ノ水駅のホームで一人の男(井川比佐志)が毒入りジュースを飲み,
死にかける事件が発生した.同じ頃,
娘と妻を連れて後楽園遊園地に来ていた高杉は,
男の子がジュースを飲んで死んでしまったところに遭遇.
その瓶には,新御茶ノ水駅で死にかけた西井せいいちの指紋がついていた.
両方とも毒は青酸カリ.西井の持っていた袋の中には,
男の子の瓶の王冠が入っていた.西井の容疑は濃厚だ.西井は暴力団員だったが,
3年前にある事件が元で足を洗っていた.
そして西井の妻きょうこ(赤座美代子)は,
久保という男(杉江廣太郎)が営む印刷所で働いていた.
西井が足を洗った事件とは,久保の印刷所に置かれていたコンテナの中に,
西井の息子が閉じ込められて事故死したと言う事件だった.
それからの西井はコンテナのあった場所に座り込んで腑抜けのようになり,
麻薬に手を出して記憶喪失性になってしまった.その贖罪のために,
久保がきょうこを雇ったと言うわけだ.西井を疑う高杉は,
麻薬中毒を直すために西井が入院した病院の病室に一緒に泊り込んだり,
西井と一緒に歩いたりした.だがその内に,本当は西井が犯人ではない,
と高杉は確信するようになった.そして犯人は意外な人物で,
その殺人事件の裏にはある秘密が隠されていたのであった.この話も必見.
「特捜最前線」#85「死刑執行0秒前!」
脚本は長坂秀佳.監督は天野利彦.主役は船村.
話は秩父の山の造成地から白骨死体が発見されたところから始まる.
これを知った船村は狂喜し,ある死刑囚を訪ね,
君の死刑執行を止める事ができる,と言った.
彼は昭和39年8月29日の夜に起こった殺人事件の被疑者だった.
被害者は世田谷の高利貸し阿久根とうごろう,
妻の幾,長男のひろし,そして三男の努だった.
凶器は被害者宅に置いてあった出刃包丁.
当局は翌日に社会運動家崩れで素行も悪く,家族といさかいの絶えなかった,
次男の阿久根稔を逮捕.尊属殺人にとわれて一審で求刑通り判決は死刑.
上訴したが却下され,阿久根の死刑は確定した.だが船村は捜査当時から,
阿久根の無罪を信じていた.担当検事の須藤(菅貫太郎)は推測に過ぎない,
と船村のあげた事実をことごとく否定し,今日まで至っていたのだ.
船村は死体が一つ足りない事に不審を抱いていた.
当時用心棒として雇われていた暴力団崩れの宍倉文三の行方が不明だったのだ.
発見された白骨死体が宍倉文三のものなら,これを突破口にする事ができる.
だが同時に船村は拘置所の所長から驚くべき事実を伝えられた.
4日前に法務大臣が彼の死刑執行命令書にサインしていた.
5日以内に死刑執行をしなければならないので,死刑執行は翌日の午後3時.
つまり,残された時間はあと26時間しかないのだ.特命捜査課に戻った船村は,
白骨死体が14年前に行方不明になった宍倉文三と判明した事,
また拳大の鈍器であばら骨を砕かれた痕が見つかった事を神代から聞かされた.
早速船村は真犯人と思われる,法律専門古書店「燭在堂」当主,
君塚(桑山正一)を緊急逮捕した.令状がないことなどを盾にした,
須藤の妨害を何とか退け,14年間こつこつと集めた状況証拠や証言を元に,
船村はアリバイを崩し,君塚を尋問.だが君塚は自白せず,夜が明けてしまった.
翌朝.疲れきった君塚のために船村はお茶を入れてやった.
そのお茶は自宅からわざわざ取り寄せたもので,船村が正月と盆にしか飲まない,
特別なお茶だった.その頃,船村は自宅で君塚の妻(月丘千秋)の願いで,
倉庫を見に行った.それは君塚「逮捕」の後,もしやと思って妻が見つけたもの.
倉庫は仏像で一杯だった.全て,罪の意識に苦しんだ君塚が贖罪の為,
14年間彫り続けた仏像だったのた.それを見て長女の明美(朝加真由美),
また,弁護士を目指し,法律を勉強中の次女の恵(清水めぐみ)も見て驚いた.
君塚の妻はアリバイ協力の罪を認めた.
だが恵が「令状もなしに緊急逮捕」した件で須藤に通報.
令状なしで緊急逮捕した場合,一般人でも現行犯逮捕できるのです.
この場面だけでなく,君塚が緊急逮捕される場面でも,
恵と特命捜査課刑事との法律論争が見られます.閑話休題.
やってきた須藤は特命捜査課全員を現行犯で逮捕する事を宣言し,
神代に手錠をかけた.そのとき,君塚は「自分の意思でここへ来た.」と言った.
遂に罪の意識に苦しんでいた君塚は自白したのだ.だが,
物証がなければ阿久根の死刑を阻止できない.残り3時間.
秩父の山へ君塚と船村を乗せたヘリが飛ぶ.君塚が犯人でなければ知りえない事,
すなわち,宍倉の死体を埋めた場所を正確に覚えていなければ,
君塚を犯人と断定できないのだ.だが,
そこは造成地なので14年前とは地形が変わっている.
果たして君塚は誰の力も借りず,客観的かつ正確に場所を特定できるのだろうか.
阿久根が13階段を昇り,首に縄がかけられ,死刑執行官がレバーに手を掛けた.
死刑執行0秒前…私,番組終了後に思わず泣いてしまいました.
フィクションだと判っていても,感動してしまいました.
勿論,阿久根の無実は証明され,君塚は逮捕されます.
どうやって君塚が場所を特定したのかは見てのお楽しみです.焦って
「この辺です,と言ったらどうですか.」と短絡的なことをいう吉野や津上を,
船村と橘が制止し,じっと動かないところもリアリティのあるところです.
そんなことをすると警察が誘導尋問した事になるからです.さすが長坂脚本.
そして君塚が場所を特定できた瞬間,君塚も,船村も,阿久根も膝をつき,
喜びました.君塚は弁護人として未だ弁護士になっていない恵を指名.
船村は弁護側の証人として法廷に立つことを君塚に約束して終わります.
「特捜最前線」#86「死んだ男の赤トンボ!」
脚本は長坂秀佳.監督は佐藤肇.主役は紅林.
上野の西郷さんの銅像の前で特命課の面々は張り込みを行なっていた.
そのとき紅林は童謡「赤トンボ」の歌声を聞いた.
そして特命課は麻薬取引の現場を押さえた.犯人は拳銃をぶっ放したが,
二人とも逮捕に成功.一安心した紅林達だったが,
一人の浮浪者(西村晃)が撃ち殺されているのを発見.
流れ弾に当たったのだろうか? だが弾は見つからなかった.さらに変な事に,
彼の羽織っていたレインコートは汚く,彼は裸足だったが,
シャツやズボンは高級品だった.現場に急行した神代を追いかけ,船村が来た.
日本を代表する大財閥富士光建設の鬼社長五條彦八郎が行方不明になり,
本庁が大騒ぎだと言うのだ.お抱え運転手(相馬剛三)の証言では,
五條は上野の辺りで突如車を止めさせ,慌てて外へ出て行ったという.
何かを追いかけているか,何かから逃げているように見えたという.
その直後,5千万円を要求する電話が掛かって来たが,
専務の応対は素っ気無かった.不審に思う橘達だったが,
やがてその理由がわかった.五條のところには脅迫状がたくさん届き,
脅迫電話もたくさんかかっており,そんな電話は日常茶飯事だったのだ.
そのとき,社長室で五條の肖像画を見た神代はピンときた.
上野で死んだ浮浪者は五條彦八郎かもしれないと.
五條の妻に面通しさせた結果,神代の勘が正しかった事が証明された.
五條彦八郎は父親が事業に失敗して自殺したため,
子供の頃は貧困生活を送っていた.だが,その後強引なやり方で事業を伸ばし,
一代で財をなしていったのだ.そのため,彼の評判はとても悪かった.
ある会社を合併した時,反対する労働組合幹部のところに単身乗り込み,
ドスを机に刺して一喝.命を賭けているという.
また組合幹部全員の為に土地や家を用意していると言い,組合幹部を懐柔.
一夜にして組合の方針を反転させた.だが,合併するやいなや組合幹部を解雇.
幹部の一人が自殺した.さらに,自殺した幹部の遺族に慰謝料を出してはどうか,
と専務が進言すると,自殺するようなクズにはびた一文出すな,と言って一喝.
彼は自殺が嫌いだったのだ.また新社屋予定地にある孤児院を,
容赦なくぶっ壊した事もあった.現在の妻の「連子」の正道もいじめまくった.
実子である娘チズルが「正道に人形を壊された」ので泣いていると,
罪を認めない正道を散々ぶん殴り,左の耳を不自由にさせてしまった.
だから五條の評判は悪かった.怨恨による誘拐殺人かもしれない.
葬式の時も涙を流して泣いたのはチズルだけだった.
紅林はチズルにハンカチを渡してあげた.そのとき笑い声が聞こえた.
社員「あの鬼社長がな.」
社員「正直言ってざまあみろだな.」
社員「世の中には万歳をして喜んでいる奴がたくさんいるぜ.」
社員「さしずめ,あの犯人は鬼退治の桃太郎ってとこ…」
社員達はチズルがいるのに気がつき,退散していった.
紅林「気にすることはないよ.」
チズル「お父さんは鬼なんかじゃない.」
チズルは火葬場の煙突を見上げながら言った.
チズル「刑事さん,調べてくれますね.お父さんが,
あんなところで何をしていたのか.調べてくれますね.でなきゃ,
かわいそうです.あんなに痛そうに.」
チズルは解剖された五條の遺体を見てそう思ったのだ.
紅林「約束するよ,チズルちゃん.どうしてお父さんがあんなことになったのか.
必ず調べてあげるからね.」
そして五條の過去が明らかになるにつれ,
鬼社長とは別の五條の面が明らかになっていく.
その過程で五條を罵倒する吉野に紅林が言った台詞がこれだ.
紅林「我々が今まで知ることが出来たのは五條の上辺だけの姿だけだ.
もし彼の心の奥にある秘密さえわかれば…」
その鍵を握る人物は五條の前妻,
五條誘拐殺害を図ったが未遂に終わった組合幹部の息子飯倉和夫(堀礼文),
五條のお抱え運転手,五條の菩提寺の住職,五條の妻(榊ひろみ),
五條の妻の「連子」の正道(阪本良介),
五條が10歳の時にもらい子に出されて当時4歳で生き別れになった妹よし子,
富士光建設専務,五條が叩き壊させた施設の保母よし子(柳川慶子),
五條の幼馴染の老婆,そして上野で風車のついた乳母車を押す男(奥村公延).
彼らの証言により次々と五條の過去と暖かい面が明らかになっていくのだ.
そして五條が非情な男になってしまった理由と,
五條があの格好で流れ弾にあたって安らかな顔で死んだ理由も.
紅林「しかも彼が生涯で一番人間らしさに戻ったその瞬間でだ.」
そして最後の最後で五條の死の原因となった弾丸が見つかるのだ.
墓参りに来た五條の妹よし子の目の前で.
ちなみに富士光建設の社章も五條の思いが込められたデザインですが,
それが何かは見て確認してください.
後に水戸黄門で水戸光圀を演じる西村晃さんは当時は悪役の第一人者.
だからこそ,この話で五條が鬼社長と言われる面と,
暖かみのある面の両方を演じる事ができたのでしょう.
この話,偶然,朝早く目が覚めてしまい,途中から見たのですが,
眠いのを忘れて最後まで見入ってしまいました.
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東平 洋史
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