2001年12月19日

「必殺仕業人」第5話「あんたこの身代りどう思う」

脚本は中村勝行.監督は大熊邦也.今回は銀次の出番が増えています. また今回はよくある話ですが,だからといって凡庸な内容ではなく, やっぱり暗いお話です.時折見せる銀次のギャグが隠し味になっているからです.

剣之介はお尋ね者だ.だからいつも白塗りの顔でいなければならない. 運が悪いことに,剣之介とお歌のいる場所の近くで女郎の死体が発見された. 御用提灯を見て慌てるお歌.そこへ岡引がやってきた. 岡引は剣之介の白塗りを落とすように言い出した. 慌ててお歌は自分達が芸人だと言った.芸を見せてみろ,という岡引に, 剣之介は居合抜きを見せた.納得した岡引は去っていったが, お歌はどこか落ち着ける場所へ行こうと言うのであった.

翌朝.牢屋敷では出戻りの銀次が放免になると知って嫌がっていた. さて捨三はお得意先で腰巻が一枚足りないと老女に言うと, 一人死んだのでそうなったのだと老女は答えた. そして剣之介は主水の勧めで訳ありの人間が集まる本所の「隠れ里」へ行った. そこは同心の手が伸びないところだった.

一方,銀次は主水に紹介された口入屋益田屋へ行き, 元締の長次郎(長谷川弘)に蔵前の両替商和泉屋の下働きの口を紹介された. なお銀次は働くのが苦手だとわがままを言っていたことを付け加えておく. 和泉屋では主人の藤兵衛(梅津栄)が, 息子の清太郎(佐々木剛)が布団に篭っていたので訳を聞いた. 何と清太郎はあの女郎殺しの犯人だった.清太郎は冗談で首を絞めたのだが, 女郎が抵抗するので力を入れ過ぎてしまったのだ. そこへ鳥越の宇之助という岡引がやって来た. 宇之助は例の女郎を連れ出したのが清太郎だということを聞き込んでいたのだ. 宇之助と入れ替わりに銀次が長次郎に連れられて現れた. 長次郎は岡引が来ていた事に気づいており, 何か揉め事があったら自分に言うように言うのであった.

隠れ里でお歌はのびのびしていた. ちょうど剣之介とお歌のような夫婦(小坂一也と赤座美代子)がいた. お歌は隠れ里を気に入るのであった.

その頃,主水は内職の傘貼りを手伝わされていた. 主水はお澄の部屋を覗こうとして,りつに注意された. そこへお澄がやってきて,一緒に芝居を見に行かないかと言った. せんは大喜びだったが,主水が鼻の下を伸ばしたのを見て, 嫉妬したりつは明日行く予定でしょと言い,内職の傘を渡すのであった.

和泉屋は清太郎のことを長次郎に相談していた. 長次郎は自分が何とかしてやろうと言った.替え玉を仕立ててやろうといった. 長次郎は裏では替え玉屋をやっていたのだ. そして本所の「隠れ里」から替え玉を調達しようとしていたのだ. そうとも知らずに剣之介とお歌は, 呉服屋の旦那だった男伸吉(小坂一也)と話し込んでいた.

隠れ里で夜が明けた.伸吉は仕事を探しに出て行った. 益田屋の手代由造(不破潤)が仕事を斡旋していたのだ. だが元呉服屋は仕事にあぶれてしまった.すかさず由造は
手代「一人だけ別口があるんだ.銭になるぜ.」
それがどういう仕事かは元呉服屋に知る由もなかった.

やいと屋は女郎屋で女郎の治療をしていた. 女郎には背中に噛み付かれた傷があった.和泉屋の清太郎にかまれたというのだ. 女郎のお駒を殺した犯人が見つかったという報せが. 隠れ里の伸吉が犯人だというのだ.牢屋敷で伸吉が拷問されるのを, 主水と忠助が嫌そうに見ていた.

伸吉の女おとせ(赤座美代子)は伸吉のことを心配していた. 帰ってくるよというお歌に, 老人が「この町では一人や二人消えることはよくあるんだ.」と言った. 老人の言う通り,伸吉は死罪に決まった.伸吉は, 隠れ里のおとせに4両が縫い付けてある着物を渡してくれ,と主水に頼んだ.

一方,和泉屋は清太郎の身代わりを斡旋してくれた礼を長次郎に言い, さらに清太郎に女を世話してくれといった. その毒牙におとせが掛かってしまった. おとせは伸吉がいると騙されて連れ出され,清太郎の慰み者になってしまった. 逃げるおとせは由造に殴られてしまった.

隠れ里へ主水がやってきた.隠れ里の者は皆主水を遠巻きにして見るばかり. それでも主水はおとせの行方を聞いたが誰も答えるものはない. そこへボロボロになったおとせが戻ってきた.主水は例の着物を渡し, 伸吉から言付かったといった.そして主水は女郎殺しの件をおとせに言った. 最初おとせはもう一度調べてくれと言ったが
おとせ「差配師の由造という男を調べてください.」
だが主水は伸吉が首を斬られてしまったことを伝えた. 文字通り,顔が真っ白になり,おとせは外へ出た.
おとせ「罪もないうちの人を殺しちまって.汚い.お役人は皆汚いよ.」
言葉を失う主水.
おとせ「あんた達は人の命なんかより賂の方が大事なんだろう. 金なら,くれてやるよ!」
おとせは主水に4両の小判を投げつけ,井戸に身を投げて死んでしまった.

その足で主水は捨三のところへ行き,由造の素性を洗うように命じた. そして捨三とやいと屋は和泉屋の件を全て調べ上げた.
主水「この金には伸吉の恨みだけじゃねえ. 井戸の底で泣いているおとせの恨みが篭ってるんだ.」
仕置へ出かけようとした主水は門前に傘が干してあるので嫌な顔. それを注意しようとしたが,逆にせんに傘を届けてくれと言われてしまった. 仕方なく主水は傘を背負って仕置に出かけた. やいと屋は足袋を履いて出かけた.女郎を上半身裸にして後ろ手に縛り, お灸責めにする清太郎のところへやいと屋が現れた. やいと屋は清太郎と一緒にツボを責めて女郎を気絶させてから清太郎を仕置. 剣之介とお歌は屋根を伝って益田屋に忍び込み,長次郎と由造をまとめて仕置. 内職の傘を背負った主水は和泉屋に傘を一本渡し,傘越しに和泉屋を刺殺.
主水「こらてえへんだ.また貼り変えだ.」

翌朝.忠助から主水は益田屋の長次郎が殺された件を聞かされていた. そこへまた銀次が戻ってきた.
銀次「和泉屋の香典を二分ばかりくすねてきたんでさ.がんばりまーす.」
それを聞いた主水は呆れるのであった.

「太陽にほえろ!」第219話「誘拐」

脚本は小川英と鴨井達比古.監督は児玉進. 今回のテーマは「義理の親子の愛」です. 山さん主役の回で,事件を通じて山さんは養子の隆のことを思います.

一人の男がバスから降りた所を拉致された. それを一人の女子高生が歩道橋から見ていた.

その頃,山さんは非番で隆と遊んでいた.そこへボスから電話がかかってきた. 誘拐されたのは目撃者でもある滝早苗という女子高生の恋人宮田明だった. ボンは現場で時計を拾ったが早苗に心当たりはなかった.

山さん,殿下,スコッチの三人が宮田(田中明夫)の家へ行った. 時計は明の兄信也の持っているものらしかった.宮田は似たものだと答えた. 信也は家を出て予備校のそばのアパートに独り暮らし.事件のあった日, 明は予備校を欠席していた.

長さんの聞き込みによると信也は前年医大を補欠合格していた. 入学金さえ払えば入学できるはずだったが, 大会社の部長である宮田は払わなかった.それから,信也はおかしくなったのだ. 宮田は山さんと一緒に信也のアパートへ行ったが, 信也は不在で部屋も片付いていなかった.

宮田家に電話が掛かって来た.宮田が不在だったので妻が出た. 電話は誘拐犯人からの物で現金500万円を要求.一方,山さんは車の中で宮田に, 入学金を払わなかった理由を聞いた.宮田は補欠入学という負い目を, 負わせたくなかったのだ.宮田家の戸籍を調べた山さんは, 信也が養子であることを知り,思わず隆のことを思い浮かべていた. そして山さんは信也が犯人と関係があるのではないかと考えていた.

犯人は午後6時半に新宿サブナードの地下駐車場へ父親ただ独りで来い, と要求してきた.早速七曲署の面々は地下駐車場で張り込んだ. ゴリさんは長さんの車の横に止まっている車が怪しいと見ていた. もしかしたら,犯人は張り込みに気づいているのかもしれない. 不幸にもこの懸念は当たってしまった.

ボスは公開調査を決断した.そしてボスは山さんを気遣い, 隆のところへ帰るように言った. 家に帰った山さんはベッドで眠る隆をじっと見るのであった.

翌朝.信也が宮田家に現れた.早速スコッチは信也を署に連れて行った. 取調室で山さんは誘拐現場で発見された時計を見せ, 信也に信也の物かどうかを尋ねた.信也は自分のものだと認め, 1週間前になくしたと答えた.だがどこで無くしたかは「忘れていた.」 ボン達は信也の麻雀仲間が安部と柴田であることを聞き込んでいた. 山さんは信也に安部と柴田に最後に会ったのはいつかとを尋ねたが, 信也は答えようとしなかった.山さんは信也を宮田家へ連れて行くことにした. 信也は出迎えた奥さんを無視し,宮田の部屋に入った.
宮田「信也,お前に500万円渡せば明は戻ってくるのか.」
答えの代わりに信也は例の入学金を払わなかったことを難詰した. 怒った宮田は信也を殴り,信也は出て行った.入ってきた山さんに宮田は話した. 信也が自分は養子だということを知ったのは, 信也が大学受験の為に戸籍抄本を取りに行った時のことだった. その時には何も言わなかった信也だったが, 補欠入学の入学金を支払わなかった時にそのことを持ち出して宮田を責めた. 信也と宮田の気持ちはその時から通じなくなってしまったのだ. 宮田が信也をアパートに住まわせたのは冷却期間を置きたかったからだが, 「親の心子知らず」で信也にその思いは通じなかった. そして宮田は独りにしてくれと言った.山さんは黙って出て行った.

スコッチは信也を尾行し,ゴリさんは安部と柴田を尾行した. その頃,誘拐犯は明を責めていた.明は何も言おうとはしなかったが, 誘拐犯は手帳を見つけた. そして手帳に書いてあった宮田の姉(東郷晴子)の電話番号を元に, 宮田の姉の所へ電話を掛けた.犯人の思惑通り,姉は宮田家へやってきて, 金を独りで渡すように宮田に迫った.姉と妻の意見を呑み, 宮田は犯人の要求通り警察に言わずに出ることにし,カバンに金を詰めていた. そこへ山さんが現れた.驚く宮田に山さんは言った.
山さん「宮田さん.誘拐事件の性質というのはあなたには良くおわかりのはずだ. だから地下駐車場に身代金を運ぶ時,あなたは我々には手を出すなとは, 一言も仰らなかった.」
宮田は一瞬動きを止めたが,また無言で金を詰めた.
山さん「営利誘拐を成功させれば必ず第二,第三の犠牲者が出ます.」
宮田の手の動きが止まった.
山さん「あなた,どんな時も自分の感情に溺れず, 自分の信念通り行動のできる人だ.私はそう思ってました. 信也君の入学金を出さなかったのもそういうあなただからできたことです. 違いますか?」
宮田「ほっといてください.あたしにはもう明しかいない. 明まで奪う権利はあなた方にはないはずだ.」
山さん「宮田さん.」
息を呑む宮田.沈黙が流れた後
山さん「息子が明君一人しかいない.本当にそう思ってらっしゃるんですか?」
宮田「あなたも聞いたはずだ.信也はあたしに500万要求してきたんですよ. 犯人の仲間でもなければどうしてそういうことを.」
山さん「信也君への疑惑を解明するのは私の仕事です.」
宮田はまた息を呑んだ.
山さん「私は刑事です.宮田さん,しかしあなたは父親だ.」
宮田は山さんを睨んだ.
山さん「血がつながっていようがいまいが, 信也君にとってあなたはただ一人の父親なんです. どうして信也君を信じてやらないんですか.」
宮田は山さんから目をそらした.
山さん「どんな子供だって一度や二度は親に心配を掛ける事があります. そのとき,その子は,本当は心の底で父親の名を大声で呼んでいるんです. 私はそう思う.そういう時,親が信じてやればこそ,その子は救われるんです. 立ち直るんです.宮田さん,戸籍に入籍という字が書いてあるぐらいで, 何が違うというんですか.信也君は今もあなたの子供です.私は, 私はそう信じたい.」
宮田は金を入れたカバンを床へ落としてしまった. 宮田は山さんの言葉通り,信也を信じることにしたのだ.

信也にも,そして安部と柴田にも特別な動きはなかった. ボスはボンとスコッチに犯人の指定場所へ向かうように命じた. 山さんは信也のところに現れた.その頃,宮田は犯人に指定された場所である, 屋上ビアガーデンにいた.長さん,ゴリさん,殿下,スコッチもそこにいた. 一方,山さんは
山さん「目を覚ますんだ.このままにしてたら今度こそ弟は殺されるぞ.」
信也「弟? 俺にはそんなもの…」
山さん「いないというのか! 明君はまだお前をたった一人のお兄さんだと思ってるんだよ.」
信也「知らないからだよ!」
山さん「明君は知っている.」
それを聞いた信也は驚いた.
信也「明が知ってるって!」
山さん「お前がぐれ始めた頃,お父さんが話したそうだ.」
信也「でもあいつ…」
山さん「変わりはしない.何も変わりはしないんだ. それが兄弟ってもんじゃないか.それが, ずっと一緒に暮らしてきた家族ってもんじゃないか. 親子ってもんじゃないか.」
その言葉に信也は心を打たれ,真実を話した. あの時計は賭け麻雀のかたに松本という男に取られたのだ. 松本は麻雀仲間が連れてきた男だった.そして麻雀の最中, 信也は半ば冗談で,宮田は明のためなら警察にも言わずに金を払うだろう, と松本に言っていたのだ.それを聞いた山さんはボンと合流. ジーパンのテーマが流れる中,山さんは安部と柴田に詰め寄った. そして明の監禁場所を聞き出した.

ビアガーデンでは宮田に電話がかかってきていた. 金網越しにカバンを投げろというのだ.長さんの指示に従い, 二分後に宮田はカバンを投げた.そしてカバンを拾った松本の乗る車をスコッチ, 長さん達は追跡した.車から降りた松本は明の監禁場所である, ボーリング場へやってきたが,明はいなかった. 既に山さんが救い出していたのだ.
山さん「拳銃を捨てろ.」
松本をゴリさん達が捕まえた.
信也「大丈夫か.」
明「平気だよ.少し殴られたけど,こんなのどうって事ないよ.」
嬉しそうに宮田兄弟を送る山さんを見て長さんは,山さん嬉しそうだな, と言った.それを聞いたスコッチは不思議に思った.ボンが, 山さんの子供も「もらい子」だと言うと
スコッチ「もらい子? それがどうしたというんだ.」

事件解決後.山さんは外でボスと歩きながら話していた.山さんはボスに, ボスから貰った靴を隆がそろそろ使える頃だと言った. 気が早いボスはショーウィンドウのランドセルを見て
ボス「ランドセルでも買ってやるか.」

さあ次回はテキサスを殺した拳銃密造組織の黒幕を捕まえるために, ボンと警察犬ジュンが活躍します.そしてスコッチの不器用な気遣いも見物です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp