脚本は野上龍雄.監督は工藤栄一. 今回から暗くすさまじいテーマを扱った話が続きます. ちなみにこの話は後の映画「必殺!」に一部流用されます.
今日も寺の門前で芸を見せる剣之介とお歌.
それを犬を抱いた娘(テレサ野田)や柔術家花輪東十郎(宍戸錠)が見ていた.
そこへ捕り方が浪人を追ってやってきた.東十郎は浪人を見事に倒した.
剣之介「今日は仕事にならんな.」
引き揚げようとしたとき,お歌は娘に犬を預かってくれと頼まれた.
剣之介の家へあの娘がやってきた.あの娘はお市という名で, 犬にもお市と名づけて可愛がっていたのだ. そしてお市は餌を持ってきたのだという. 剣之介はそんな大事な犬をなぜお歌に預けたのかと聞いた. お市は犬がお歌に抱きついたからだと答えた. 犬のお市は嫌いな者には抱きつかないのだ. お市はしばらく犬を預かってくれとお歌に頼んだ.
その頃,昼間から主水は忠助と酒を呑んでいた.忠助は奉行所に勤めて四十年. これでも若い頃は仕事の虫で家庭を放り投げて働いたと忠助は言った. そしてついこの間忠助は初孫を抱いたという.そこへまた銀次が戻ってきた. 今度は美人局をしたという.
その晩.屋台を出たところで主水はお市に声を掛けられた.
お市は震えながら言った.
お市「買って.買ってください.」
お市は4両で自分の体を買ってくれと頼んだが,金がない,と主水は断った.
お市は,初めてだと言い,2両でもいい,1両でもいい,と言った.
だが主水は断った.そして物事は初めが大事だ,と言った.
そして主水はお市を屋台へ連れて行き,御馳走しようとしたが,
お市は帰ってしまった.
中村家は内職の傘でいっぱい.せんは風邪をひいて寝込んでいた.
せん「婿殿に少しでもいい思いをさせてもらわないと死んでも死に切れません.」
そのとき,主水はりつに「はじめての時のことを覚えているか.」と聞いた.
恥ずかしがるりつ.主水は頭にお市を思い浮かべていた.りつは布団に入ったが,
主水はいない.その頃,主水はさっきの屋台へ行って,
お市のことを屋台の親父に尋ねていた.が,親父は知らないというのであった.
翌日.捨三の洗濯屋でも主水はお市のことを思い出し,捨三に呆れられていた. そのとき,捨三は深川で夜鷹が争っていた話をした. いつの間にか素人娘が紛れ込み,客を取ろうとしたからだ. その素人娘とはお市のことだった.
さてやいと屋のところには女の客お蝶(ロミ山田)が来ていた. お蝶は犬の千代を買う人がいると言う話をしていた. お蝶はお市の雇い主だった.お蝶はお市に千代を探し出せと命じていた. 千代はお蝶が主人からもらった犬だったのだ.
さて冒頭の捕り物は瓦版にも載っていた.
東十郎は剣之介が犬を抱いているのを見て,
ここで知り合いが犬をなくしたと聞いたといった.
そして東十郎は犬を買おうといったが
剣之介「どうやらこの犬はお前が嫌いだと言っているようだ.」
東十郎の門弟は怒ったが,東十郎は相手にしても仕方がないと言い捨て,
去って行った.
お歌が家に戻ると,お市が来ていた.しばらく置いて欲しいという. 剣之介はお市の頼みを聞いてやることにした. 楽しそうに川原で犬と遊ぶお市を剣之介とお歌は見ていた.
その晩.お市は男(伊達正三郎)に身を売ったが,男は金を払おうとしなかった. 男は明日払ってやると言い,「そんなに金が欲しいなら, もっと客を大事にせい.」と言い捨てて去って行った.
翌朝.犬を抱きながら号泣するお市を見て,剣之介は事情を尋ねた.
そして剣之介は捨三の店にやって来た.主水に呼び出されたのだ.
主水は剣之介が人身御供としてお市に身を売らせたと誤解していた.
剣之介「金のためじゃねえ.犬のためだ.」
剣之介はお市の素性を話した.お市は秩父の生まれだったが,
山津波で家族を失い,江戸へ出てきた.
そしてお市が心を許せるのはあの犬だけだったのだ.
お市は4両を持って女のところへやってきた. やいと屋が持ち込んだ話は三両で犬を買うというものだった. 4両で犬を買うと言うお市の話をお蝶は聞き入れた. そしてくにへ帰るというお市に, 今日主人が来るからもう一日いろとお蝶は言った. 何と主人は東十郎だった.東十郎はお市を買った男を連れてきた. そして男から事情を聞いたお蝶はお市を東十郎に譲るよう男に頼んだ.
何も知らないお市はお銚子を持って東十郎のところへやって来た.
東十郎はお市の年齢が16と聞き,喜んだ.そして東十郎は力ずくでお市を陵辱.
その物音を階下で聞くお蝶.そのとき,犬が東十郎に噛み付いた.
東十郎「野郎,噛み付きやがった.」
怒った東十郎は犬を殴り殺してしまった.
主水は剣之介からお市が根津で働いていると聞き出した.
剣之介「お前,惚れてるのか?」
図星だったのか,主水は躍起になって否定した.
そしてその晩.根津の神社の境内でお市が犬を埋めるのを主水は見た.
そんな主水を見たお市はこう言った.
お市「向こうへ行って.大人はみんな嫌い.向こうへ行って.」
次の日.
主水「引き受けてきたぜ.俺はやるぜ.やる気がないなら降りてもいいぜ.」
やいと屋は罪滅ぼしにやるといった.捨三は,男が戸崎一馬に違いない,
と調べ上げていた.
その晩.お市は犬の墓に呼びかけていた. 主水は風が強いので牢屋を見てくると称して出かけようとすると, 入れ替わりにお澄が帰ってきた.亥の刻までに帰るようにと言ってるでしょ, とりつが言ったが,お澄が中善の天ぷらを持ってきていると知るやいなや, 態度が一変.その頃,やいと屋は仏滅だということを気にしていた.
戸崎一馬は主水が仕置した.お蝶をやいと屋が仕置した. そして東十郎に剣之介が襲い掛かった. 剣之介は障子から手を伸ばすという不意打ち攻撃で東十郎の元結を切り, 見事に東十郎を絞殺した.
翌日.島忠助は罪人に布団を叩かせていた.放免される銀次は泣きながら,
何とかしてくれ,と主水に頼み込み,また牢に帰ってくることを誓った.
呆れながら銀次を見送る主水に忠助が言った.
忠助「中村さん.ひょっとすると,あの出戻り銀次は,
我々より幸せかもしれませんなあ.」
主水「え?」
忠助「冗談,冗談.さあ,一杯呑みましょう.」
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