2001年12月1日

「太陽にほえろ!」第55話「どぶねずみ」

脚本は鎌田敏夫,監督は山本迪夫. 前回はジーパンが犯人を信じて逮捕に成功する話だったが, 今回は犯人を信じようとした気持ちが裏切られる話だ. その鍵を握る人物は三人.一人は老婆矢沢タケ(武智豊子). 一人は犯人坂口(高木門).もう一人は警視庁の警部西山(平田昭彦)だ.

さて話は,郵便配達の男が銃砲店で撲殺死体を発見したところから始まる. 銃が盗まれていたことがわかり,緊張する七曲署の面々. そこへ本庁の西山が登場. 西山は次の人事異動で七曲署署長に就任する事が内定しており, 今回は本庁の刑事として捜査に当たると宣言した.

場面変わって七曲署.一人の老婆矢沢タケ(武智豊子)が七曲署へやってきて, 「息子が誘拐されたんです.」と頼み込んでいた. しかし皆相手にしようとしなかった.ジーパンは怪訝な顔. そしてジーパンは「どうしておばあさんの誘拐事件を捜査してあげないんですか! そりゃ,殺人事件は大事件ですよ.しかし, おばあさんの息子さんが誘拐されているのを放っておいて言い訳がないでしょう! 例え人手が足りなかろうと,我々は全ての事件に全力を持って, 当たるべきですよ.」呆れながらもボスは, ジーパンに老婆の相手をする事を命じた.

真面目に調書を取ったジーパンは, 「息子さん」の歳が「2つ半」でタケの歳が「71」であることを聞き, 「(誘拐されたのは)お孫さんじゃないですか?」と尋ねてみた. すると「孫なんか小遣いせびりに来るだけですよ.」という答え. 「息子さん」の名前が「コロ」だと知り,ジーパンは気がついた.「それ, ひょっとすると,お婆ちゃん,じゃないの?」そう. だから,七曲署の面々はタケの相手をしなかったのだ.頭をかくジーパン.

一方,殿下,長さん,ゴリさん,山さん達は殺人事件を追っていた. ジーパンもタケをほっといて殺人事件を追った.夜. 捜査会議を開く七曲署の面々のところへ西山が乗り込んできた. 凶器が判明したと知り乗り込んできたのだ.「これからは何かわかったら, すぐに知らせてくれたまえ.」と居丈高に言う西山にジーパンが嫌味を言った. ボスはジーパンをたしなめた.西山は「それからもう一つ. 新米の刑事さんに目上の者に対する口の訊き方を教えたまえ.」と言って, 去って行った.

翌日.新宿のビル街の工事現場で工員(山下啓介)から, 山さんと殿下は,犯人らしき若い男が地が滴る棒と布に包んだ細長い物を持って, ニタニタ笑いながら歩いていたことを聞き込んでいた. その男(高木門)は京浜東北線のそばに位置するアパートで, ライフルに弾を込めていた.そして電車の騒音に紛れて射撃の練習をしていた. ちょうどその頃,殿下はモンタージュ写真を作っていた. ボスはジーパンに西山へ写真を届けるように命じた. 嫌がるジーパンにボスは「俺達の仕事は犯人をあげることだ.」と言い, 誰があげようと同じだと言った.渋々西山の所へ行ったジーパンに, 「君は鶴岡署の警察官だった柴田けんじの息子らしいな.」と西山は言った. そして西山はジーパンの父親が「反警察的な態度」つまり, 拳銃を持たなかったことを死ぬまで事を指摘.そのため, ジーパンの父親の死は殉職扱いにならなかった事,そして, ジーパンが刑事になれたのはそのお情けだと言う事を指摘した. 「君が警察官として優秀だったから刑事になれたわけではない. 覚えておきたまえ.」この言葉にショックを覚えるジーパン.

独りで歩いていたジーパンは公園でコロを探すタケに出くわした. タケにとってはコロのいない家に帰りたくなかった. だから探してくれてもいいじゃないかと訴えるタケに, ジーパンは刑事の業務が終わったらタケと一緒にコロを探す事を約束した. その夜.「ちょっと約束があるんですよ.」と殿下とゴリさんに言い残し, ジーパンはタケの家へ行った.まずコロの絵を書いてやり, タケと一緒に聞き込みを行なった.なかなか手がかりは見つからなかったが, おでん屋の親父(大村千吉)から, タクシーの運転手が犬を轢いてしまったらしい話をしていたことを聞き込んだ. 早速ジーパンとタケは運転手のところへ向かった. 「犬轢いたくらいで捕まえにくるのかい.」と怒る運転手を, ジーパンは殴ってしまった.

翌朝.そのことでボスは署長に呼び出されていた. 物好きだなと言うゴリさん達にジーパンは「物好きじゃありませんよ. あのおばあちゃんにとって,コロはこの世で一番大事な相手なんです. 例え犬でも人間以上に大事なことだってあるんです.」と怒った.

長さんと一緒に殺人事件の捜査に出たジーパンは新宿中央公園で, コロらしき犬を若い男がかわいがっているところに出くわした. その犬はコロだった.怪我したコロをその男が手当てをしてあげたのだ. 「好きなんだな.」というジーパンに男は,「裏切らないからな,犬は. 人間なんて裏切る事ばかり考えているんだ.犬に比べりゃ, 人間なんてどぶねずみだ.どぶねずみ以下だよ.」 男は長さんとジーパンが刑事だと知ると立ち去ってしまった. コロを見つけて一安心するジーパンだったが, コロの首にライフルの弾がついていることに気がついた.そう. その男こそ銃砲店の店主を撲殺し,ライフルを盗んだ男坂口だった. もしその男が犯人だとしたら「奴は誰か特定の人間を狙って, ライフルを盗んだんじゃないのかもしれません. 奴は人間全てを憎んでるんです.」 と言うわけでここまででこの作品のテーマは語り尽くされている. 何かを信じる事の大切さだ.ジーパンは人間を信じた. 肉親を信じる事ができないタケは犬のコロだけを信じた. 人間全てを「どぶねずみ」と憎む坂口はコロの手当てをしてやった. やはり犬だけを信じていたのだ.それが最後の最後で問われる.

いろいろあって坂口が犯人だと言う事が判明. 坂口は遊園地に逃げ込んだ.ボスは遊園地の出入口を封鎖し,坂口を閉じ込めた. ジェットコースターの上からライフルを撃つ坂口. ジェットコースターの下で坂口を捕える機会を狙うボス達のところへ, 西山が狙撃隊を連れてやってきた.ボスは「我々の職務は犯人を捕える事. 犯人を裁くことではありません.」さらにボスは「例え凶悪犯でも, 我々には人を殺す権利はありません.」と食い下がった. 西山は30分だけ待つ事にした.ジーパンはタケのところへ行き, コロを貸してくれと頼んだ.坂口が信じているのはコロだけだ. それに賭けようとしたのだ.コロが死んだら自分も死ぬと言う言葉を聞き, タケはコロを貸すことを承諾した. ジーパンはコロを抱えて坂口のところへ近づいた.「コロだあ. コロだぞう.」と叫ぶジーパン.じっと見守るボス.なおもジーパンは近づいた. 一瞬,坂口は立ち上がった.それを見た西山は部下に坂口を射殺させた. 怒ったジーパンが叫びながら西山に詰め寄る.「なぜだあ.どうして撃った. どうして撃ったんだあ.」冷たく西山は言い放った. 「君を助けてやったんだよ.」「奴は撃つ気はなかった. 撃つ気はなかったんだあ.」それを受けて西山は言い放った. 「そんなセンチメンタリズムが刑事の仕事に通用すると思っているのか.」 絶句するジーパン.そして七曲署の面々.坂口の物言わぬ死体にコロが近寄り, 顔をなめていた.「ボス.俺,聞いてやりたかったんです,あいつに. なぜそんなに人間を憎むのか.あいつには撃つ気はなかったんです.」

なお,この回シンコは登場しません.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp