第十四回

ビル荒らしの取締りで仲間が転落死した件で有光を逆恨みする青年と対峙
青春挽歌

脚本:松田寛夫 監督:手銭弘喜

刑務所から若者が出所した.若者こと原田勇(内田喜郎)は白いシャツを着て, 胸のポケットにバラの花を刺していた. そして新宿に出て宝石サロン美宝堂へやってきて,女子店員に声を掛けた.
勇「おい.もう一人客がいるんだぜ.」
女子店員「どうせひやかしでしょ.」
勇「馬鹿.」
勇の顔を見て女子店員は驚いた.
勇「どうした.俺の顔,忘れたのか?」
そう言いながら,勇は女子店員にバラの花を差し出した.
女子店員「忘れるもんか.」
女子店員は温泉マークで勇と情事を開始した.情事が終わった後, 女子店員は帰ろうとした.勤務中に抜け出したし, 店の主人がうるさかったからだ.女子店員は有光が保証人になったので, 宝石店に勤める事が出来たという.その名前を聞き
勇「有光? デカの有光か?」
女子店員「うん.あたしだけじゃないわ. しげるだって有光さんの紹介で自動車の修理工場に勤めてるのよ. たつおはたつおでやっぱり有光さんの力添えでラーメン屋始めて, 今じゃけいこって可愛らしい奥さんまでもらったのよ.」
勇「そういう仕掛けだったのか.クソッタレ.」
勇は興奮してズボンをはいた.
女子店員「勇,どこ行くの?」
勇「決まってるじゃないか.有光の野郎に文句つけてくるのよ.」
勇は出て行こうとしたが,立ち止まって振り返って言った.
勇「野郎ばかりじゃない.おめえらにも話があるんだ. 今夜たつおのラーメン屋ででも待ってろ.しげるも呼んで来るんだぞ.」

さてチャンピオンでは皆集合し,明子のスパゲッティを食べていた. 皆,味に満足し,矢野はおかわりした. ちなみにスパゲッティはケチャップをあえただけの代物だった.
大沼「おい.矢野.矢野ちゃんよ.」
矢野「あ?」
大沼「うんじゃないよ.お,お前さんね,なんぼなんでも食い過ぎやしねえか.」
矢野「いや,最近事件屋稼業が暇なせいか, おかげでとみに体調が良くなってね.」
明子「食欲があるのはいいけど,でもあなた太り過ぎないように注意してね.」
矢野「大丈夫.大丈夫.」
大沼が文句をつけたかったのはそういう事ではなかった.
大沼「ちょっと.俺はそんな事言ってるんじゃないんだよ. な,何にも仕事をしないでな…」
それを無視して有光はおかわりした.大沼は面白くない顔をした. それを見て佐竹は大笑い.
大沼「ちょっと.トップ屋さん.笑い事じゃないんだよ. 大の男が二人稼ぎもしねえでゴロゴロ,ゴロゴロしてだ.おまけにだよ, 無駄飯をバカバカ,バカバカ食ったんじゃねえ, 半月も経たない内にこのスナックは人手に渡して夜逃げって事になんだよ.」
佐竹は頷いた.
大沼「何かないかね?」
佐竹「仕事?」
大沼「そう.こうなったら殺しでも何でもやる. どんなやばい仕事でもあのふたーりにやらせるから.」
佐竹「しかし我社もなあ,最近緊縮財政で渋くてね.」
大沼が何か言おうとしたところで
明子「マネージャー.」
大沼「ん?」
明子「まだ一口残ってるんですけど,どうする?」
矢野「マネージャーとしてはお金の事で頭が一杯で食欲の方はなさそうだな. いいよ.俺が貰うから.」
大沼「いや,冗談じゃない,冗談じゃない.私が食べます.」
そこへ客がやってきた.やってきたのは勇だった. 勇はいきなり有光の背中を叩いた.
勇「おい.」
有光「勇.いつ出て来たんだ?」
勇は興奮していた.
勇「うるせえ.てめえに勇,勇って, 気安く呼ばれる筋合いはないんだよ.」
有光「変わっちゃいねえな,お前は. 少しは大人になって出てくると思ったんだが…」
勇「うるせえってば,うるせえんだよ.てめえにダチ殺されたのに, 忘れちゃいねえんだぜ.」
有光「お前,わざわざそれだけを言いにここに来たのか?」
勇「悪いか! いいか.よーく覚えとけよ. いずれ落とし前はつけてやるからな.」
それだけ言って勇は去って行った.
大沼「誰だ?」
佐竹「有光君よ,聞き捨てならねえ事言ってたなあ.どんな知り合いだい, 今の男?」

有光は勇との因縁を話した.三年前だった.未だ現職の刑事だった有光は, 同僚と組んで頻発するビル荒らしの張り込みに当たっていた. そして有光は隣のビルから勇達がロープ伝いに渡ろうとするのを目撃し, 追跡した.勇達は二手に別れて逃げた.勇はナイフを振り回し, 有光達と渡り合った.自分に注意をひきつけ,仲間を逃がすためだ. だが仲間の一人まもるが勇を心配して立ち止まっていた. 気づいた有光はまもるを追いかけた.進退窮まったまもるは, 隣のビルに飛び移ろうとしたが失敗.しばらくビルの壁につかまったが, まもるは力尽きて転落して死んでしまった.それを見て勇は泣いた. そして有光に言った.
勇「貴様が殺したんだ.覚えてろ.貴様が殺したんだ!」

有光からその話を聞いた明子はこう言った.
明子「でも,それじゃあ,有光さんが殺したって事にはならないわ.」
有光「しかし,寝覚めが悪くてね.」
佐竹「うん.そりゃあ,そうだろう.とまあ,勇って奴の事は置いといて, 別の連中はどうなんだ?」
有光「それが,結局はわからずじまい.取調べでどんなに問い詰めても, あいつは自分の仲間の名前を絶対に喋らなかった.」
佐竹「嘘つき丸.俺だってブン屋の端くれだ.そんな話じゃ誤魔化されないぜ. もしあの男が白状しなかったとしても,君は別のルートで調べ上げた筈だ.」
有光「かなわんな.佐竹さんの前じゃ.さっきのチンピラは勇って言うんだ. 死んだのの他に共犯者は女一人,男二人. いずれも同じ町からの集団就職で東京へ出て来たガキ友達同士だった. それが働いてた町工場がぶっ潰れちまって…」
佐竹「つまり,食い詰めてビル荒らし.」
有光「ええ.」
佐竹「なるほど.でまあ,彼らの境遇への同情と, 兎も角一人殺しちまったって殺しちまったって負い目があって, 残りの連中はわからずじまいって事で,上には誤魔化しの報告をしたな.」
有光「いや,それだけの理由じゃないんですよ. 刑務所に送る事でかえって本物の悪党になってしまう手合が結構多いんですよ.」
佐竹「じゃあ,残りの女一人,男二人,計三人は君に更生を誓ったってわけだな?」
有光は頷いた.
矢野「有光さん,あんたらしいな.」
明子は黙って有光を見た.
佐竹「ちきしょう.集団就職変じて集団ビル荒らしか. 書いてもよけりゃ,面白い記事になるんだがなあ.」
大沼「ブン屋さんよ.あんたの頭の中には記事の事しかないのか?」
佐竹「それは沼さんの頭に銭の事しかねえのと同じだ.」
大沼「話,まぜっかえしちゃいけないよ.有光さん.さっきの野郎, 落とし前とか何とか言ってたが,あれ,どういう事だい?」
矢野「沼さんよ.所詮,口先だけのいきがりよ.へ. どうせ大した事はできないよ.」
大沼も笑ったが,有光は胸騒ぎを感じていた.

その夜.たつおのラーメン屋に勇の要求通り,全員集合した. 勇は半ば強引に話を始めた.
勇「お前達,まとまった銭欲しかねえか?」
なんと勇は女子店員ことはるみの勤めている宝石店襲撃を持ちかけた. 皆,渋ったが,勇ははるみに手引きさせればちょろいもんだと言った.
はるみ「いやよ,勇.」
勇「なんだと!」
はるみ「あたし達,約束したんだ.二度と変な真似はしないって. 真面目に働くって.なあ,みんな.」
勇「け.あんな豚野郎に丸め込まれやがって.」
はるみ「豚野郎じゃないわ,有光さんは.」
怒った勇ははるみをビンタした.
しげる「何するんだ,勇.」
勇「うるせえやい.てめえらはなんだ.有光さん,有光さんって. あいつはなあ,俺をパクって三年も臭い飯食わせた犬だぞ.いや, そればっかりじゃねえ.まもるを殺したのもあいつなんだ.そのなあ, そのあいつに,ひょこひょこ尻尾振って,てめえらそれでも恥ずかしくないのか!」
しげる「けどよ,まもるが死んだのも…」
勇「事故死だって言うのか?」
勇は酒を呑んだ.
勇「け.糞食らえ.てめえらなあ,ずらかってて見もしねえで, 俺はこの目で有光の野郎がまもるを追い詰めて逃げ場を失ったのを,俺は…」
勇の脳裏にまもるの叫び声が蘇った.そして勇は頭を抱えた. そして言った.
勇「お前達にはわからねえ.でも俺のこの耳が,あん時のまもるの声が, こびりついて離れねえんだよう.」
勇は卓袱台を何度も叩き,演説を始めた.
勇「こうなりゃ頼まねえよ.俺一人だってやるぜ. どうせ地道にこつこつやったって俺達,金なし,銭なし, 学歴なしの出来損ないは,一生野良犬よ.精々,このたつおのしけた店…」
さらに勇は立ち聞きしていたたつおの妻にも言った.
勇「それも借金の利息と家賃で儲けはほとんどふっ飛んでっちまうって, てめえでさっきこぼしてたじゃねえか.しげる.お前だってそうだよな. 工場で散々こき使われて歳とって体にガタが来たら, ポイッと捨てられるだけだもんな.だからよ,どでかいような一発当ててよ. はるみ.お前もいつか俺に言ってたなあ.まとまった銭が手にへえったら, 俺達ガキ友達が集まって自前でスナックでもなんでもいい, 共同経営するんだってなあ.そうだ.店の名前まで考えてったっけ.フレンド. フレンドって看板出そうって.」
沈黙だけが流れた.そしてしげるが立ち上がって言った.
しげる「勇.わかったよ.」
勇は喜んだが
しげる「だけどよ,勇.はるみの勤めてる店だけはやめてくれ. 宝石店なら他にも.な,勇.はるみの保証人になってくれたのは, 有光さんなんだ.もしはるみが手引きした事がばれりゃ, 有光さんが何もかも弁償しなければならなくなる.」
勇「お前,まだわかっちゃいないのか? だからはるみの店をやるんだよ.はるみ.お前,俺を選ぶか,有光を選ぶか, どっちなんだ?」
はるみ「だって.」
勇「俺が嫌いになったのか?」
はるみは首を左右に振った.
勇「じゃあ,有光の野郎に惚れてんのか?」
はるみ「馬鹿.」
勇「だったら,やれるだろう? はっきりしろい! もし俺の言う事, 聞かねえんだったら,お前とはこれっきりだぜ.」
はるみ「勇.」
勇「さあ,どうなんだよ.」
はるみは膝をついてしまった.たつおは妻を見てから言った.
たつお「勇.俺,おめえ達には悪いんだけどよ,どうしても, やべえ橋渡りたくねえんだ.未だ四ヶ月だけどよ,ガキが生まれるんだ.」
これを聞いた勇はたつおと妻をジロッと見,こう言った.
勇「ガキだって?」
たつお「すまねえ.」
勇「この野郎! うめえ事やりやがって.」
たつおは泣いてしまった.勇は笑いながら泣いた.

翌日.美宝堂に有光はやってきた.そしてはるみが外へ出ている事を知った. そして有光は新宿中央公園の噴水で, 勇とはるみがふざけて水をかけあっているのを見た. 二人は本当に楽しそうだった.そして二人は抱き合った. 勇とはるみは噴水から出て別れた.そしてはるみは有光とでくわした.
有光「あの男が好きだったら,二度と刑務所へ行くような, 馬鹿な真似はさせないように.」
はるみは無言だった.有光は黙って立ち去って行った. はるみは有光を追いかけようとしたが,やめてしまった.

しげるは勇にモデルガンを渡していた.
しげる「物の売り口は?」
勇「ああばっちりさ.ムショの中の先輩で関谷さんって人が, ゲンナマ用意して待ってるとさ.」
勇はしげるにモデルガンを向けた. いくらモデルガンでも気持ちが悪いとしげるは言うのであった.

その夜.はるみはシャッターを閉める時, 石を置いてわざと隙間が出来るようにした.時刻は11時過ぎ. 顔にパンストをかぶり,シャッターを開け,勇としげるは美宝堂に侵入した. そしてモデルガンで威嚇し,宝石を鞄に詰めさせた.そして店員を殴り倒した.
はるみ「大丈夫だから思い切ってやって.」
その時,別の店員が非常ベルを押そうとした. 慌ててはるみはその店員を制止しようとした.仕方無く, 勇としげるははるみを連れて逃走した.勇ははるみの行動を批難した. はるみも強盗の仲間だとばれてしまったからだ. 芋づる式に勇としげるの事もばれるに違いない.

佐竹「事件屋さん.待望の事件だぜ.天から銭が降ってきた.」
佐竹は新聞をみせたが,大沼,矢野,明子はぽかんとしていた.
佐竹「ま,読んでみなよ.」
大沼「何? モデルガンを持ったふたーり組の強盗.被害総額三千万.」
矢野「三千万.は.やってくれるね.」
有光は週刊スキャンダルを顔に載せて昼寝をしていた.
佐竹「そう.その盗まれた三千万円の物には全部保険がかかっていてねえ, という事はだよ,それを取り戻してやれば黙っていても一割, 交渉次第によっては三割こちらに転がり込んでくるって寸法だ.」
大沼は乗り気になった.
大沼「おい.おい.三割って三千万の三割か? ちと待って.900万円か?」
佐竹「そう,良くできた.それでだね,新聞には出てないけども, 俺がつかんだ極秘情報によると, 手引きをしたのはその店に住み込んでいた女店員だ.」
それを聞いた有光は週刊スキャンダルを顔からとり,起き上がった.
有光「女店員が手引き? その店の名前は?」
佐竹「森田美宝堂って宝石屋だ.」
驚いた有光は立ち上がり,新聞を読んだ.まさか.
明子「有光さん.」
有光は新聞を叩きつけた.
佐竹「どうした,有光君よ.何かこの事件に心当たりでもあるのか?」
有光「実は,こないだの勇ってチンピラなんですよ,犯人は.」
佐竹「え?」
有光「いや,それだけじゃない.手引きした住み込みの女店員は, 勇の幼馴染のはるみって娘なんですよ.」
佐竹「なるほど.読めたぜ.その女が三年前のビル荒らしの紅一点か. でもまさか,その宝石店に就職の世話をしたのは有光君じゃないだろうな.」
有光「実はそれがそうなんです.」
これには佐竹も驚いた.
佐竹「え! でもまさか,身元保証人にはなっていないだろうな.」
有光「実はそれも…」
佐竹は目を白黒させた.
佐竹「はあ,なんてこった.沼さん,こら偉いこったぜ.」
大沼「何が?」
佐竹「つまりだね,強盗の手引きをした女店員の身元保証人が有光君だ.」
大沼「うん.」
佐竹「という事はだよ,下手して迷宮入りして宝石が出てこないとすると, その女店員の不始末によって三千万円の迷惑を保険会社に掛けたのだからね.」
やっと大沼にも事情がわかった.
大沼「ちょっと.そうすると何か. その三千万円を有光さんが弁償するって言うのか?」
佐竹「そう.そうです.ところが,見なよ,この男. 逆さにしても鼻血も出ねえ.」
大沼「出る訳ないじゃないの!」
佐竹「という事はだよ.その三千万円の借金の重みが, 支払能力ありと見られるこのマネージャーの双肩にかかってくる. そういう訳だ.」
下を向いてうなだれる保証人有光.硬直して動けないマネージャー大沼.
矢野「くっそう.野郎の言ってた落とし前ってこう言う事だったのか.」
佐竹「そういう事.有光君よ.これでどうでも君が事件を解決して, 宝石を取り戻さなければならなくなった.逃亡のルートで思い当たるとこないか?」
有光「一箇所,あります.」
佐竹「よし.ともかく,そこ洗ってみよう.」
佐竹は有光を連れて出ようとしたが,そこへ唐橋登場.
唐橋「有光.とうとう貴様の尻尾を押さえたぞ.一緒に来てもらおうか.」
あっという間に有光は重要参考人として警視庁に引っ張られてしまった.

唐橋「身元保証人が知らぬ存ぜぬで通るか! 赤木はるみはどこへ逃げたんだ? 見当ぐらいついてるんだろう? 男はいたのかいないのか.大体, お前とはどういう関係の女なんだ.おい! お前も元刑事だ.だんまりを通せば, 立場が悪くなる事ぐらいわかってるだろう.おい.いいか.貴様, 単なる参考人として呼ばれたと思ったら大間違いだぞ. 部内ではお前が陰でチンピラを操って宝石泥棒をやらかしたって声の方が, 多いんだよ.聞いてんのか!」
唐橋が机を叩くと
草刈「唐橋君.」
唐橋「は!」
草刈「私が一度サシで話してみよう.」
唐橋「は.」
草刈「席を外していてくれたまえ.」
唐橋「はい.」
唐橋は部屋から出て行った.
草刈「相変わらず君は頑固だな.」
有光「課長.お願いがあります.犯人も物も私が責任をもって引き渡しますから, その代わり,本人の意思で自首したとして, 少しでも刑の軽くなるようにはからって頂きたいんです.」
草刈「いいだろう. だが君に全てを任せて警察としての捜査活動をストップする事はできん.」
有光「警察と私との競争ですか.」
草刈は頷いた.
草刈「首尾よく君が押さえられれば自首という形になる.」
有光「警察が勝てば逮捕ですか.」
草刈「うん.それともう一つ.私個人としては君を信用できても, 組織の長としては部内の多数意見を全く無視するわけには行かん.当然, 君の釈放は形だけで,容疑者として尾行が着く事になる.」
有光「それもベテラン中のベテランですね.」
草刈「町井と宮本,この二人だ.」

こうして有光は「釈放」された. だが尾行がついているので自由に動き回る事は出来ない. 有光は公衆電話からチャンピオンに電話し,佐竹を呼び出した. 佐竹はさっさと出て行ったが,大沼はびびっていた. そして有光が指定した箇所で大沼が刑事に絡んだ.その隙に
佐竹「は,は,は.さあ,行こうか.」
有光は佐竹の車に乗って行ってしまった.大沼は公務執行妨害で現行犯逮捕.
大沼「い,痛いよう.」
刑事達は唐橋に謝る羽目になった.

有光はたつおの店に行き,事件の事をたつおに訊いた. たつおは始めは白を切っていたが,有光に三人の居場所を話した. そしてしげるの働いている自動車修理工場へ行った.だが
有光「ずらかった後か.くっそう!」
有光はたつおに宝石の販売ルートを尋ねたが,たつおは首を左右に振った.
有光「なんて馬鹿なんだ.チンピラのくせに宝石なんかに手出しやがって. 物の宝石なんて物はなあ,ど素人が捌けるようなもんじゃねえんだ. ハイエナのような連中に横取りされて消されるしまうだけなんだ. それぐらいの事,わからんのか.馬鹿野郎.」

勇達は関谷のところに宝石を持ち込んでいた. 関谷は一千万で買うと言った.勇は現金を見せてくれと言ったが
関谷「それがなあ,すまねえが,一千万っていやあ,ちょっとした大金だ. だがな,そいつを預かっておいて, 二,三日中には必ずゲンナマに変えといてやるぜ.原田よう,おめえ, この俺が信用できねえのか? ムショじゃ散々面倒みてやって, へいこら尻尾振ってたくせに.ふ.」
はるみ「勇,行こう.」
勇「約束は約束だからな.」
勇は宝石の入ったアタッシュケースをとった.
勇「こいつは持って帰ってまた出直しますよ.」
だが三人は帰る事が出来なかった. 三人の男達がピストルを構えて立ち塞がったからだ.
勇「そういう仕掛だったのかい.」
関谷「命まではと思ったが,粋がりやがって!」
連中はアタッシュケースを取ろうとした.しげるが連中に飛び掛ったが, かなわず,蜂の巣になった.だがしげるはピストルを奪い, 勇に投げ渡す事に成功した.勇はピストルを関谷に突きつけた.
勇「畜生,ぶっ殺してやる.」
関谷「助けてくれえ.」
形勢逆転.
はるみ「勇.」
勇「畜生.」
はるみ「駄目よ.殺しだけはしないって約束したじゃない.」
勇ははるみを促した.はるみはアタッシュケースを取り戻した. そして勇とはるみは関谷を盾に逃走を開始した. 連中は遠巻きにして追いかけた.勇は関谷を殴り倒し, はるみを連れて逃走.連中が追いかけた.何とかまいたかに見えたが, はるみは腹に被弾していた.パトカーも駆けつけ,絶体絶命のピンチ.

関谷達は草刈に捕まり,しげるの遺体も草刈がみつけていた. 勇とはるみは中通りから西の方,青木町方面へ逃走したらしい.
唐橋「課長,有光が関係しているスナックの箇所は?」
草刈は頷き,唐橋はチャンピオンへ向かって行った.

勇ははるみを連れ,逃走を続けていた.チャンピオンでは
有光「きっと来る.」
有光も草刈同様,勇が現れると確信していた. そして勇とはるみが現れた.勇は拳銃を有光に向けた. さらに勇ははるみの傷口にウィスキーをかけた.消毒の代わりだ. 有光は窓の方を見たまんまだった.勇は戸や窓を閉めるように言い, さらに車を用意する事を要求した.だが
有光「これでも未だ逃げられると思っているのか.」
勇が窓から外を見た.パトカーのサイレンが聞こえてきた.
勇「自首しろって言うのか?」
有光「ああ.」
勇「馬鹿野郎.ふざけた事ぬかすんじゃねえやい.速くしろい!」
有光は黙ったままはるみの方を見た.そして有光ははるみに近づいた.
勇「サツに垂れ込んでみろ.こいつら二人とも(明子と佐竹),ぶっ殺すぜ.」

有光は車を用意してやったが刑事達の姿が見えた.有光はチャンピオンに戻り, 用意ができた事を告げた.勇は車の運転も有光に要求し,出ようとした.
佐竹「おい,待てよ.」
勇が振り返った.
佐竹「逃げるんなら,君一人で逃げたらどうだ.」
佐竹はウィスキーをグラスに注いだ.
勇「なんだと!」
佐竹「そのお嬢さん,だいぶ出血がひどいようだ. ちゃんとした病院へ連れて行って医者にみせないと…」
勇「黙れ! 黙れ,黙れ,黙れ!」
佐竹「ほっといたら死んじまうぞ! 殺してもいいのか? 愛してるんなら, その人をこっちに任せろよ.悪いようにはしねえよ.」
勇「はるみ.」
はるみ「いや.一緒に連れてって.」
勇「はるみ.」
はるみ「離れたくない.もう離れたくない.」
結局勇ははるみを連れ,有光に拳銃を突きつけながら出て行った.
有光「苦しそうだな.」
勇「黙れ,お前.他人の事なんかよりなあ, てめえの命の心配でもしてろい.俺にはおめえにダチ殺された恨みがあるんだ. ぶっ殺したくてうずうずしてるんだよ,この指があ.」
有光は黙って階段を降りて行った.その時,はるみが倒れた.
勇「はるみ!」
有光ははるみを助け起こした.勇は有光に拳銃を向けた.だが, 有光は勇の握った拳銃を蹴り飛ばした.結局拳銃ははるみが拾った. だがその拳銃は佐竹に奪い取られた.有光は勇と格闘を行なった.
はるみ「やめて.」
はるみは佐竹に抱きとめられていた.
勇「放せ.放せよ.」
有光「馬鹿野郎!」
遂に勇は格闘をやめ,寝転んだ.はるみは勇に駆け寄った.

そして勇は草刈に引き渡された.
勇「くそう.覚えてろ.今度こそ,てめえ,ぶっ殺してやる.」
勇には最後まで有光の思いは通じなかった. 勇はパトカーで連行されて行った.それを見ながら
草刈「盗品も戻った事だし,自首したと言う事になると, せいぜい5,6年で済むだろう.」
有光は深々と頭を下げた.そして草刈は去って行った.

有光は新宿中央公園の噴水の前で, 勇とはるみが遊んでいたのを思い出していた. 勇とはるみはしばらく顔を合わせる事はないだろう. そして今,有光は杏子を思っていた. やはり愛し合いながらも別れなければならなかった幼馴染の初恋の人の事を. 有光はタバコを吸おうとしたがやめ,タバコを噴水の中に投げ込んだ. そして去って行った.

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東平 洋史 E-Mail: touhei@zc4.so-net.ne.jp