第十一回

強姦されて殺された娘の父親が復讐の鬼と化し,有光を狙い,かおるを羅致.
哀しき父性愛

脚本:山浦弘靖 監督:宮下泰彦

有光が街を歩いていると駐まっていたダンプがクラクションを鳴らした.
正美「有光さん.」
トラックのドアが開き, 中から正美という娘(海野正美)が出てきて有光を呼び止めた. ちなみにそのトラックの整備を桜井(平泉成)という男がしていた.
正美「ぼんやり歩いていると車にはねられるわよ.」
有光と正美は笑ったが,それを快く思っていない男がいた. 正美の父立花(南利明)である.
正美「後で遊びに行くわ. 大沼さんに美味しいコーヒー入れとくように言っといて.」
立花「正美.」
有光は去って行った.仕方無く正美はトラックのドアを拭く事にした.
立花「正美,あんなヤクザもんと馴れ馴れしく口を利くんじゃねえ. 後で泣きっ面かくようになるぞ.いいな.」
正美「父さんは有光さんのいいところ知らないのよ. つまらない心配してると長生きできないから.」
立花「正美…」
正美は出かけて行った.
立花「お,桜井.お前, 正美があの男に近づかないように見張っててくれないか. 大事な一人娘,傷もんにされちゃたまんないからよ.」
桜井は肯いた.これが事件のはじまりであった.

さてチャンピオンで有光は葉書に手紙を書いていた.そこへ正美がやってきた. 正美はコーヒーを注文した.そして有光のそばに座り,葉書を取り上げた.
正美「宛名はかおるちゃんか.有光さんの恋人?」
有光は笑って言った.
有光「うん.とっても可愛い恋人さ.」
正美「まあ,にくたらしい.」
そう言って正美は有光に葉書を返した.明子は正美にお冷やを出した.
明子「恋人と言えば桜井さんとの事,どうなったの?」
正美「どうって別に.」
明子「でも,お父さんはあなたと桜井さんを一緒にさせたいんじゃないの?」
正美「ええ.でも,あたしはあんな奴,大っ嫌いよ. 父の前ではいい顔してるけど,あたしを見る目,すんごく嫌らしいんだから.」
思わず有光は正美の方をちらっと見た.そこへ噂の桜井がやってきた.
桜井「親父さんが呼んでますよ.早いとこ,帰った方がいいと思いますねえ.」
仕方がないので
正美「マスター,悪いけど,また後で来るわ. 折角のコーヒーがまずくなっちゃうもん.」
正美はさっさと出て行った.桜井は正美が座っていた席についた. そして有光に言った.
桜井「有光さん.早くやっちまいなよ.うちの社長の娘の事だ.あんないい玉, ほっとく事はねえと思うがなあ.」
有光は桜井を無視してコーヒーを飲んだ.
桜井「あんたにその気がねえんなら俺が頂くぜ.なあに, 女なんてのは一発かましゃあ,後はよ…」
有光は桜井をジロッと睨んだ.桜井は高笑いをした. 明子は桜井を見て嫌な顔をした.
桜井「どうする,有光さんよ.」
有光は桜井を睨みつけた後,無言で立ち上がって出て行こうとした.
桜井「気取るなよ.あんたがダチ殺しの悪徳デカだって事は, ちゃんとわかってるんだ.」
思わず有光は葉書を握り締めてしまった.

孤児院にいるかおるのところへ有光からの葉書が届いた. 有光にとってかおるとの因縁は5年前にさかのぼる. 殺し屋の凶弾の犠牲となったドライブ帰りの一家. 無残に破壊された自動車の中にただ一人奇跡的に生き残ったいたいけな赤ん坊. 天涯孤独となった彼女を腕に抱きとめた時, 有光はこの娘かおるの親代わりとなる事を誓ったのだ.
有光「急な用ができてかおるちゃんの誕生日には行けなくなった. 本当にごめんね.でもこの次の日曜日にはきっと行くから.」
寂しくなったかおるは横須賀線の電車に乗り,有光のところへと向かった. かおるは車内で母子を見て,ますます寂しさをつのらせるのであった.

チャンピオンに孤児院から電話がかかってきた.そこには有光はいなかったが, 桜井と正美がいた.かおるがいなくなった事を大沼は矢野と明子に言った. 矢野と明子は有光を探しに出て行った.
正美「あたしも手伝うわ.」
正美も出て行った.このとき,桜井はにやりと笑った.

自転車で走り回る正美をトラックに乗った桜井が呼び止めた.
桜井「お嬢さん.有光の奴なら,さっき新宿公園の近くにいましたぜ.」
正美「本当?」
桜井「ああ.さっき,見かけたばっかしですがねえ. なんなら送ってってあげましょうか.さあ.」
桜井は正美の自転車をトラックに載せた. 桜井と正美は新宿中央公園に向かった.だが…

その頃,かおるは新宿の界隈で葉書の宛名を見せ,有光の居所を探していた.

さて有光が新宿中央公園の近くにいるというのは真っ赤な嘘. 桜井は正美に襲い掛かった.逃げる正美だったが,桜井にすぐにおいつかれ, 押さえ込まれてしまった.
桜井「いい娘だからおとなしくしな.有光の代わりにかわいがってやるぜ.」
桜井は正美をビンタし,腹に当身を食らわせて正美を気絶させた. そして正美のジーパンを脱がせ,正美を「物」にした. 桜井がジーパンをはいている時,正美は呆然としていた.
正美「これであたしを物にしたつもり? そうはいかないわ. 警察に訴えてやるから.」
桜井は正美を睨みつけた.正美は立ち上がって逃げようとしたが, すぐに桜井に追いつかれ,地下道で襲われた.
正美「いや.有光さん,助けて.」
この言葉に逆上した桜井は正美の頭を何度も何度も壁にぶつけた. 頭から血を流し,正美は気絶した.桜井は立ち去ろうとしたが,その時, 目撃者がいた事に気がついた.それはかおるだった.かおるはすぐに立ち去った. 桜井は急いで追いかけたが,地下道を出た時には既にかおるの姿はなかった.

その夜.桜井は何食わぬ顔で立花のところに戻った. エンジンの調子が悪くなったと誤魔化して.
立花「ところで,正美見なかったか?」
桜井「ええ.お嬢さんなら新宿公園の近くで有光さんと会ってました.」
それを聞いた立花の顔色が変わった.
立花「何!」
桜井は声をかけようと思ったが仲が良さそうだったので控えたと言った. 立花は怒りに燃えて出て行った.それを見て桜井はにやりと笑っていた.

その頃,有光はチャンピオンにいた.途中でかおると会い, 孤児院のかおるの事を電話していた.そこへ桜井がやって来た. 桜井はかおるを見た.かおるは桜井を見て泣き出した.まさか,覚えていたのか? そう思って驚く桜井を偶然,有光は見ていた.
明子「どうしたの,かおるちゃん.」
桜井はかおるを抱いて出て行った.孤児院へ返すためだ.
桜井「マスター,あの娘.よう,マスター.」
あまりの剣幕に大沼はビックリしたが,かおるが施設の子だと言った.
桜井「施設…」

翌朝.立花は新宿総合病院に来ていた.正美が運ばれていたからだ. 正美は「有光さん」とうわ言を言っていた.面会謝絶の状態だったが, 立花は強引に病室に入った.
立花「正美.誰だ.誰にやられたんだ.正美.正美,何が言いたいんだ.」
正美はうわ言でこう言った.
正美「あ,有光さん.」
その瞬間
医者「お気の毒ですが…」
正美は息を引き取ってしまった.立花は号泣した.

唐橋「有光? 娘さんは確かにそう言ったんですね?」
立花は駆けつけた唐橋と古川に言った.
立花「奴は以前から正美に色目を使ってやがった.だから, 近づくなって言ったんだ.近づくなって言って…」
立花は怒りに燃えていた.唐橋と古川が出て行った後,立花は復讐のため, 猟銃を取り出していた.立花は先入観のため,正美のうわ言の意味を誤解. 有光が正美を殺したと思い込んでいたのだ.

唐橋と古川はその足でチャンピオンにやって来た.
唐橋「有光は来てないか?」
大沼「来てませんよ.」
古川は中を調べようとした.
大沼「ちょっと,ちょっと.来てないって言ってるでしょ!」
明子「有光さん,どうかしたんですか?」
古川が戻ってきて唐橋に耳打ちした.
大沼「だから言ったでしょ,来てないって.いるわけないんだよ, 孤児院行ってるんだから…」
大沼はそう言った後,しまった,と思った.だがもう遅い.
唐橋「孤児院.確かだな.」
唐橋と古川は出て行ってしまった.入れ替わりに佐竹が入って来た.
佐竹「有光の旦那,またなんかやらかしたの?」

何も知らない有光はかおると海辺で遊んでいた. 有光もかおるも本当に楽しそうだった.
かおる「ねえ,お兄ちゃん.」
有光「ん?」
かおる「お姉ちゃん(杏子)といつ結婚するの?」
有光はその質問には何も答えなかった.いや,答えられなかった.
有光「そろそろ帰ろうか.さあ,行こう.」
だがその楽しい一時が破られる時がやって来た.
唐橋「一緒に来て貰おうか.」
有光は怪訝な顔だ.
唐橋「あんたも落ちるところまで落ちたなあ.」
有光「どういう事だ?」
古川「とぼけるな.立花正美を殺したのはあんただろう.」
唐橋が逮捕令状を見せつけ,古川が有光に手錠をかけた. 有光には何がなんだかさっぱりわからなかった.
有光「待ってくれ.俺はやっちゃいない.本当だ.」
唐橋「しかしなあ,正美さんは死ぬ間際に, 犯人はおまえだとはっきり言ったそうだ.」
伝言ゲームで有光はあっと言う間に強姦殺人事件の容疑者となっていた. 有光は連行される有光をかおるは「お兄ちゃーん」と何度も何度も呼んだ.
有光「かおるちゃん.」
かおるの両目から涙がこぼれていた.
有光「心配しなくていいんだ.すぐ帰ってくるからね.」
連行されて行く有光をかおるは何度も何度も呼んだ.

有光を連行するパトカーを立花の車がつけていた.その頃, 有光は思い出していた.かおるの呼ぶ声.そして
正美「私はねえ,大っ嫌いよ.父の前ではいい顔してるけど,私を見る時, すごくいやらしいんだから.」
唐橋は言った.
唐橋「元悪徳刑事暴行傷害致死.いずれ殺人容疑に切り替わるだろう. どっちにしろブン屋さんの喜びそうなネタだ.」
古川「貴様,どこまで警察の面子を潰したら気が済むんだ. しかしガイシャはあんたに気があったんだろう.焦る事はなかったのになあ.」
なおも有光は思い出していた.
桜井「あんたにその気がねえんなら俺が頂くぜ.なあに, 女なんてのは一発かましゃあ,後はよ…」
そしてかおるが桜井を見て泣き,それを見た桜井が驚いていた事. 有光は気がついた.本ボシは桜井だ.
有光「降ろしてくれ.あの娘(かおる)が殺される.頼む,降ろしてくれ. 降ろしてくれ.」
古川は逃げる口実だととりあおうとしなかった.唐橋も胡散臭い目で有光を見た.
有光「違う.ほっとくわけにはいかないんだ.頼む.」
唐橋「おとなしくしろ!」
有光「頼む.」
その時,立花の車がパトカーの横にピタリと着いた. そして立花の車は何度も何度もパトカーにぶつかった. ついにパトカーは採石場に落ちて止まった.立花は猟銃を持って車から降り, 有光を狙い,パトカーから転げ落ちた有光と唐橋のところへ近づいた.
唐橋「や,やめろ.何の真似だ.」
立花「正美はな,俺の娘だ.娘をやった奴は俺がやる.」
唐橋「やめろ.やめんか.」
立花は唐橋を蹴り飛ばし,有光を猟銃で狙った.
唐橋「やめろ!」
立花「うるせえ!」
その隙をついて有光は立花の猟銃を蹴り上げた. そして有光は唐橋に襲い掛かり,手錠の鍵を奪って逃げた. 立花は有光を追いかけようとしたが,唐橋に阻止された.
立花「放せ.」
唐橋「やっちゃいかん.」

警視庁で
草刈「子供が殺される.確かにそう言ったんだね.」
唐橋「はい.しかし,多分逃げるための口実ではないかと.兎に角, 万一の場合を考えて孤児院の周囲に非常線を張って置きました.」
草刈「立花だが,娘の葬式もある事だ,いったん返してやってくれ.」
唐橋「はい.」
唐橋は出て行った.草刈は有光の言葉の意味を考えていた.
草刈「子供が殺される.」
草刈はタバコの火を消してから
草刈「古川君,来たまえ.」

有光は採石場に潜んでいた.パトカーが来ていた.有光は様子を伺った. だがパトカーは去って行った.入れ替わりに大沼達がやって来た. これ幸いと有光は大沼の車に乗った.
佐竹「いやあ,しかしとんだ災難だったな.もっともうちの雑誌には, 君が真犯人だった方が有り難いがね.」
この冗談を聞いて大沼は佐竹を咎め,佐竹は「冗談だよ.」と誤魔化した.
有光「手を貸してくれますか?」
佐竹「もちろん.しかし有光君よ,君は本当にその桜井って男が現れると思うか?」
有光は佐竹を睨んだ.
佐竹「警察が追っかけてるのは君だぜ.しかも目撃者はわずか5歳の少女だ. 俺が桜井だったら,追い詰められるまでは絶対に動かねえな.」
矢野「じゃあ,その間に桜井をとっつかまえて,ドロを吐かせようってわけか.」
佐竹「ああ.それ以外に手はないよ.兎に角,かおるちゃんの方は, 俺と大沼君で引き受けるから.(大沼,肯く)やってみたら?」
というわけで有光達は二手に別れた.

草刈は孤児院に来てシスターに聞き込みをしていた.
草刈「すると,あなた,何もご存じなかったわけですか?」
シスターが頷いているところへ
佐竹「じゃ,僕が教えましょうか.」
佐竹と大沼が登場した.
佐竹「実はですね,この娘(かおる)が真犯人の顔を見ているらしいんですよ. ね.」
古川「嘘をつけ! あんた一流のはったりだろう.」
草刈「古川君.(古川をたしなめた後,佐竹に)しかしねえ…」
佐竹「ほら,つい最近6歳の子供の証言が元で, 轢き逃げ犯人が捕まりましたですね.犯行時刻, ちょうどこの娘は現場付近にいたんですよ.」

立花家では正美の通夜が行なわれていた.桜井は白々しく立花にこう言った.
桜井「有光の奴,親父さんの代わりにぶっ殺してやりてえ.」
それを聞いた立花の顔は怒りに燃えた.それを見て桜井はほくそ笑むのであった.

さて佐竹はかおるの証言を元に鉛筆で似顔絵を描いていた. 似顔絵は桜井に似た感じになっていた.

その頃,桜井はタクシーを拾い,立花家を去った. そのタクシーを有光と矢野が尾行した.桜井は情婦のところに潜り込んでいた. 嫌がる情婦を脅して情事を開始しようとした瞬間
矢野「へ,へ.お楽しみのところ,どうも. こういう時はドアの鍵を忘れちゃいけませんよ.」
情婦「何さ,あんた達.警察を呼ぶわよ.」
矢野「呼んで困るのはそこにいる野郎の事ではないですか?」
矢野は桜井を蹴り飛ばした.
矢野「おい,色男.やったのはてめえだろう.え.はいちまいな.」
桜井「吐くって何をだ.サツが探してるのは有光の方だ.」
矢野は桜井をビンタした.
矢野「とぼけるな.」
矢野と一緒に乱入していた有光はラジオのボリュームを上げた. そして矢野に投げ飛ばされた桜井を有光はボコボコにした.桜井も抵抗したが, 有光にはかなわなかった.桜井が倒れたのを確認し,有光はボリュームを下げた.
有光「正美さん殺ったのはお前だな? そうだな?」
桜井「ああ.」
矢野「は,は,は.とうとう吐きやがった. 後はこいつの面をかおるちゃんに見せりゃ,一件落着ってわけだ.」
これを聞いた桜井はこう言った.
桜井「かおるって言うのか,あの娘は?」
矢野「ああ.」
桜井「どこの施設にいるんだ?」
矢野「長浜団地のそばの修道院さ.」
それを聞いた桜井はにやりと笑った.
矢野「なんだ,おまえ,知らなかったのか? 有光さん, 一手先を読みすぎたようだねえ.」
矢野も有光も油断していた.その隙をついて桜井は果物ナイフを手にし, なんと情婦を盾に取り,高笑い.これには有光も矢野も虚を突かれてしまった.
桜井「有光を縛るんだ.」
矢野「呆れた野郎だ.てめえのスケを.」
桜井「うるせえ.早くしろ.」
桜井は情婦の首にナイフを当てた.仕方無く有光は矢野に目配せ. 矢野は有光を細引きで後ろ手に縛った. そして桜井は矢野と有光を倒した.

立花は桜井に電話を掛けた.そして情婦のところから出て行った. 有光と矢野が出て行かないようにしろと言い残して. 立花は猟銃と薬莢を手にし,車に乗って出て行った.見張りの刑事を倒してだ. 立花が桜井の情婦のところに着いた時はもぬけの殻だった.

朝になっていた.矢野と有光は車に乗っていた.
矢野「桜井の野郎,てめえでは色男ぶっていたけれど,女だって馬鹿じゃねえや, ざまあみろっていうんだ.それにしても俺,えらい事教えちまったなあ. かおるちゃんの身にもしもの事があったら,俺は…」
有光「兎に角,急ごう.」
桜井の車は孤児院に着いていた.だが周りを警官が固めていたため, 迂闊に入ることはできない.桜井は長浜団地を走らせていた.

有光達も長浜団地に着いた.警官が固めており, 矢野は免許証の提示を求められた.矢野は車のトランクに有光を隠していた.
矢野「警察があっちこっちを張りこんでる. 後は俺に任してここに隠れてた方がいい.(周りを見回し)いいですね.」
だが有光も出て行った.

その頃,立花も長浜団地に着いていた.

矢野は唐橋と草刈に言った.
唐橋「桜井?」
矢野「ええ.あいつが真犯人なんです. 本人だってちゃんと吐いてるんですから.」
唐橋「信用できんな.どうせお前達は有光と同じ穴のムジナだ.」
矢野「何だと!」
憤慨した矢野を大沼と佐竹が抑えた.
佐竹「よせ.よせ.クールに,クールに,クールに.」

立花は団地の屋上に上がり,周りを見回した.そして猟銃に弾を込め, 手に持った.有光は警官の目をかいくぐって孤児院に近づいていた. かおるは庭でみんなとお遊戯をしていた.有光が団地にいた. 草刈が周囲を見渡していた.桜井が車の中から外を見ると,立花の姿が見えた.
桜井「よーし.」
桜井は警官に言った.
桜井「おまわりさん,おまわりさん,あそこに変な男が.」
屋上に登った警官が立花に職務質問すると立花は発砲.警官も威嚇射撃. この隙を突いて桜井は車を発進させた. 立花の件を聞いた草刈と唐橋は正門から離れた.
大沼「まさか,有光さん…」
矢野も心配した.草刈はお遊戯しているかおるを見張っていたが, かおるは突如,外へ出た.そのかおるを桜井が連れ去ろうとした. 佐竹が飛び掛ったため,かおるは桜井の手から離れたが, かおるはスーパーに入り込んだ.桜井も,そして立花もスーパーに入り込んだ. 逃げるかおる.追いかける桜井.猟銃をぶっ放す立花. スーパーは大騒ぎになった.立花はかおるを捕まえた. 立花はかおるを奪おうとした桜井を猟銃で殴り倒し,立花はスーパーに篭城した. そしてマイクに向かって叫んだ.
桜井「有光.かおるという女の子はここにいるぞ.出て来い. さもないとこの女の子を撃ち殺すぞ.有光.どこにいる? 出て来い.」
有光はスーパーに向かって走った.
桜井「この娘を殺してもいいのか? 有光.出て来い.」
スーパーの周りを草刈達が固め,野次馬も遠巻きにして見ていた. 大沼,矢野,佐竹もいた.
桜井「どこだ.この娘を撃つぞ.撃つぞ.有光.」
大沼達のところに有光がやって来た.
矢野「来ちゃ駄目だ.」
だが有光は大沼達の制止を振り切り,草刈のところへ行った.
有光「課長,後は俺に任してください.」
唐橋「貴様の出る幕じゃない.」
それでも有光は一礼して言った.
有光「お願いします.」
草刈と有光はしばらく睨み合った.そして草刈は決断した. 有光はスーパーの中に入って行った.
唐橋「課長.」
草刈は拳銃の引き金を引き,言った.
草刈「着いて来るんじゃない.いいか.」
草刈も有光の跡を追って中に入った.有光が中に入ったのを確かめ, 立花は叫んだ.
立花「有光,出て来い.こっちに来るんだ.有光.」
有光は立花の前に出た.
かおる「お兄ちゃーん.お兄ちゃーん.」
立花はかおるの背中に猟銃を突きつけ,言った.
立花「有光,こっちへ来い.こっちへ来い.」
有光「立花さん,犯人は桜井だ.馬鹿な真似はよせ.」
そこへ桜井が現れた.
桜井「嘘だ,社長.騙されるんじゃねえぞ.」
有光「立花さん!」
有光と立花は無言で睨み合った.そして立花は言った.
立花「さあ,前に出るんだ.もっとこっちへ来い.」
有光は一歩一歩近づいていった.草刈が,矢野が,大沼が, そして佐竹が様子をうかがっていた.有光はまた一歩近づいた. 立花が有光に猟銃を向けた.
有光「立花さん…」
桜井「殺せ! 早く殺してしまうんだ.殺せ.」
立花が片目を瞑り,撃とうとした時,大沼が散れと佐竹に合図した.
大沼「跡ついてくんな.ドジなんだから.」
その大沼の手が籠を倒してしまい,物音を立てた. 立花は大沼を狙って撃った.悲鳴をあげて大沼は弾をよけた.その時, 立花に隙が出来た.有光は立花の猟銃を蹴り上げた.かおるはその間に逃げた. 桜井が有光に飛び掛ったが, 逃げるかおるに気がついて桜井はかおるを追いかけた.だが桜井は矢野に捕まり, またもボコボコにされた.桜井は佐竹にも蹴られ,有光にぶん殴られた. そして立花は草刈に手錠を掛けられた. 有光は草刈が立花を連行して行くのに気がついた.そこへ
かおる「お兄ちゃーん.」
かおるが駆け寄った.有光はかおるを抱き上げた. かおるは有光の胸の中で泣いた.

そして立花と桜井は連行されて行った. かおるを抱き上げた有光は草刈と目を合わせた.草刈は黙って去って行った.
佐竹「かおるちゃんは,桜井と正美ちゃんがふざけっこしている, と思ったんだってさ.」
矢野「桜井の顔を見て泣き出したのも, ただ奴に睨みつけられたと思ったからだってよ.」
大沼「その方がかおるちゃんにとっては良かったかもしれないな.ねえ, 有光さん.」
シスターに抱き上げられたかおるは手を振りながら言った.
かおる「さようなら.また来てねえ.」
有光も手を振った.

その日の夕方.有光は砂浜にいた.ここに一人の男がいる. 愛の悲しさに耐え,悪への限りなき憎悪を燃やす一人の孤独な男が. 有光は砂浜を歩いて行くのであった.

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東平 洋史 E-Mail: touhei@zc4.so-net.ne.jp