第十回

巧妙なやり口で街に勢力を伸ばす暴力団を叩き潰す.
暴力の静かな足音

脚本:石松愛弘 監督:井上芳夫

チャンピオンに女性(秋山ユリ)が来ていた.大沼は上機嫌だった. そこへ有光がやって来た.
有光「ご機嫌だね.何かいい事あったかい?」
矢野「ええ.おおありでしてね.」
矢野は女性客の存在を示唆した.
女性客「やだわ,矢野さんたら.」
矢野「は,は.有光さんは身内みたいなもんだから.(大沼に)おい, 紹介してやれよ.」
大沼「あ,ああ.こちらねえ,この先の喫茶店由木のママ.今度ね, あのう,スナックに衣替えするんですよ.へ, 言ってみれば商売敵になりますが.」
女性客「ごめんなさい.でもお宅のご商売の邪魔はしませんから.」
大沼は「気にしない.気にしない.」と言った.女性客は今度結婚すると言う. そして去って行った.有光は大沼特性の新製品を飲んだ.うまいという有光. 有光は先ほどの女性客の事を尋ねた.
有光「よく見かけた顔だったけど,まあ,そうか.」
大沼は上機嫌.
大沼「ええ,そうなんですよ,そうなんですよ.二人でね, よく店行ったんですよ,な.」
矢野「そうだったかな?」
大沼「お前,今日随分逆らうね.いちいち.」
有光「まあ,いいじゃないか.」
大沼は言った.彼女は病気の母親を抱えてあの歳まで一人で頑張って, やっとあの店を見つけたと言う.
大沼「あ,そうだ.開店,明後日でね,招待されてるんですよ. 有光さんも一緒に言って下さいよ.」
有光は快諾した.

スナック由木開店の日が来た.有光達は由木を訪れた.ママは大喜び. ママは自分の夫(竜崎勝)を大沼達に紹介した.彼は丁寧な挨拶をした. 組合長もやって来た.大沼はスロットマシンをした. コインが沢山出てきて大喜び.
夫「こいつは知り合いが輸入してましてね,安く貸してくれたんですが, 若い者には結構人気があるそうです.皆さんもお店のためにいかがです. ご紹介しましょう.」
店には焼鳥屋の母子も来ていた.子供のつとむがドアのそばの花を拾った瞬間, ドアが開き,つとむは入って来た男達に突き飛ばされる格好になった.
男「危ねえな,気つけろ.」
焼鳥屋たき子(東美江)「危ないじゃないか!」
男「うるせえなあ.邪魔だからはったおすぞ,この野郎.」
たき子「なんだよ,その言い草は.相手は子供なんだよ.」
男「何だよ.」
ママの夫が仲裁に入った.
夫「あいすいません.今日はご招待した方ばかりでして.」
だが
男「いいじゃないの,そんな固い事言わないで.なあ, 俺達も招待してくれよ.」
と相手は開き直った.ママは心配そうにそれを見た. 大沼は飛び出そうとしたが有光に止められた.
夫「うちは乱暴な方はお断りなんです.」
男達はなおも開き直って暴れようとしたが
夫「暴力はいけませんねえ.」
組合長「そうだとも.この町で暴力はふるわせないよ.」
男「なんだ,てめえ.」
組合長「この町の商店会長だ.音無しく出て行ってもらいたいねえ.」
別の客「暴れると警察を呼ぶぞ.」
男達は捨て台詞を吐いて去って行った. 夫はママのみつえにクリームサンドを作ってつとむにあげるように言った. たき子は夫に礼を言った.皆,夫に好意を持った. だが有光はうさん臭いものを感じていた.

その帰り道.
大沼「いやあ,良かった,良かったよ.旦那はしっかりしてるし, これで彼女も安心だよ.」
矢野「そんなに気になってたのか,彼女の事が.」
大沼「いや,だってお前,今迄散々苦労してきたんだもん. 幸せになってほしいってのが人情だろう.」
矢野「あんたが心配しなくたってあのご亭主なら彼女を幸せにしてくれるよ. (有光に)ね.」
有光は一呼吸置いてから肯いた.

みつえの夫は組合長にお絞り屋を紹介していた.市価の二割安で納入すると言う. しかもはじめの一週間は無料.

有光はスナック由木に来ていた.そこへ五人組の男達がやってきた.
男A「あの野郎,どっかで…」
男達は有光を見た.そして男達が有光に近づいた.
男A「あ,思い出したぜ.こいつは人殺しだ. それも仲間を殺した性の悪いデカ野郎だぜ.」
男B「本当かよ.」
男A「嘘だと思ったら本人に聞いてみな.あー,くせえ,血の臭いだ. こんな野郎と一緒じゃミルクも飲めねえや.」
見かねてよしえが出てきた.
みつえ「よしてください.この方だってお客さんなんですから.」
男B「こんな野郎がいたんじゃ店は流行りませんぜ.」
みつえ「あなた.」
男達はみつえを無視し,有光に絡んだ.有光は無言のまま.
夫「皆さん,静かにお願いします.」
男A「しかし,兄貴.」
夫「文句のある方はお帰り願います.」
男達は退散した.有光は何かに気づき,考え込んでいた.
夫「どうも失礼しました.」
有光は無言で帰って行った.

その夜.みつえは夫に訊いた.
みつえ「あの人達とどういうお知り合い? お店であなたの事呼んだでしょ, 兄貴って.」
夫「僕の事?」
みつえ「聞こえたはずだわ.いくら何も.」
夫「覚えはないなあ.」
みつえ「じゃあ,聞き違いかしら.」
夫「そうだろう.馬鹿だなあ.俺に兄弟なんかいないもん.」
みつえ「でもさっきは…」
夫「何言ってんだい.僕が信じられないのかい?」
みつえ「ごめんなさい.」
夫はみつえを愛撫してやるのだった.みつえもそれを受け入れた.

佐竹がチャンピオンにやってきた.
佐竹「ご依頼の件だがね,素性は割れたけどいい話じゃないぜ.」
佐竹から有光はメモを受け取った.大沼は有光からそれを奪い取るようにして, メモを読んだ.夫の名は坂井達也.恐喝傷害罪で逮捕. 三年間刑務所に入っていた.大沼はそれが夫の素性を書いた物だという事に, はじめは気づいていなかったが
大沼「ちょっと待ってくださいよ.この坂井ってのは, まさかあの…みつえさんの旦那さんじゃないでしょうね.」
佐竹「それがそうなんだ.それからずっとムショ暮らし. 出所したのが去年の秋だ.目端は利くし腕もたつ. 城西会じゃ結構いい顔らしいぜ.」
大沼は笑って信じようとしなかったが
佐竹「じゃ,なんか知ってるのかい?」
大沼「それじゃあ,みつえさんどうなるんです?」
有光は冷たく言い放った.
有光「さあな.」

由木にはあの5人組がたむろしていた.他の客も去って行く始末. そこへ大沼がやってきた.
みつえ「このままじゃお客さん来なくなるわよ.」
坂井「そう言って追い出すわけには行くまい. 連中だって悪い事してるわけじゃないんだ.」
みつえは注意したが,柳に風.連中は坂井に酒を勧めた. 坂井は「ありがとう」と言って受け取った.みつえは坂井に注意したが
大沼「無駄ですよ,みつえさん.グルなんですよ,みんな.」
坂井「グルってどういう意味なんです?」
連中も大沼に絡んできた.大沼は黙って去るより他手はなかった.

チャンピオンで
大沼「ねえ,何とか言ってよ.」
佐竹「お水.」
矢野が水をいれてやった.
大沼「そりゃね,みつえさんに喋ったのは悪かったよ.だけど, 喋らなきゃならない場合だってあるだろう.」
佐竹は冷たく言い放った.
佐竹「口が軽いってのは事件屋の助手には不向きだーね.」
大沼「だけどよ,矢野.」
矢野「そうですね.そろそろスナックの親父に専念した方が良さそうだな.」
そこへみつえがやって来た.
みつえ「主人があの人達とグルってどういう事なんです?」
佐竹「旦那は何て言ってるんです?」
みつえ「ただ笑うだけであの人達と一緒にもたれはじめました. ねえ,大沼さん,教えてください.あの人達ってどういう人なんですか?」
大沼は口ごもった.
佐竹「暴力団ですよ.」
みつえ「暴力団.」
佐竹「あなたのご主人もね.」
みつえはショックを受けた.
矢野「おい.」
佐竹「それだけじゃない.彼には恐喝傷害の前科もあり…」
矢野「佐竹さん,何もそこまで…」
佐竹「今更隠し立てしてもしょうがない. それに妻が夫の事を知るのは当然の事だしね.」
大沼「みつえさんは旦那の過去は何にも知らなかったんですか?」
みつえは思い出していた.それははじめて情事をした日の事だった. 付き合って間もなかった.坂井の方から求めて来たのだ. みつえは付き合って間もないし,知らない事もあるからと言って断ろうとしたが
坂井「僕は構わないよ.君にどんな過去があろうと.」
そして二人は抱き合い,寝たのだ.

みつえは坂井に何もかもわかったと言った.
みつえ「本当に真人間になったのなら,どうして打ち明けてくれなかったの? あたし,あなたの妻なのよ.」
坂井「それを言ったら君は俺と結婚してくれなかっただろう. 昔の事は忘れて新しく出直したいんだよ.」
みつえ「じゃ,どうして昔の人達と付き合ってるの?」
坂井は答えなかった.
みつえ「あなた,今だって城西会の幹部なんでしょう.」
坂井はみつえを抱き寄せたがみつえは拒否した.
坂井「馬鹿だなあ.あんな変な連中に入れ知恵されて.」
みつえ「変な人じゃありません,あの人達.」
坂井「君は僕がどんなに好きなのかわからないのか?」
みつえは無言だった.
坂井「僕達は結婚して間がないから未だわからないだろうが今に君だって…」
みつえ「ごまかさないで.」
坂井はみつえを後ろから抱いた.
坂井「みつえ.僕は君に惚れてるんだ.昔は昔,どんな苦労だってする. 今の僕を信じてくれ.あいつにだって僕がそんなに酷い男だって思うかい? 僕が好きだから結婚してくれたんだろう.みつえ,俺から離れないでくれ.」
そう言って坂井はみつえを抱き寄せた.

そんなある日.スナック由木で揉め事が始まった.慌てて大沼が駆けつけた. 例の連中が大騒ぎをしていた. みつえは帰ってもらう様に言ってと坂井に言ったが
坂井「何てこと言うんだ,お客さんに向かって.」
みつえは連中に帰れと言ったが連中は柳に風.ついにみつえは連中をはたいたが
坂井「何てことするんだ,お客さんに向かって.」
坂井はみつえをビンタした.見かねた大沼はみつえを庇ったが
坂井「君の出る幕じゃないよ.」
大沼「乱暴はよせ.」
坂井「俺達夫婦の事だ.ほっといてくれ.」
連中も大沼を挑発した.
男「は,はあ,マスターの奥さんに気があるんじゃないのか?」
みつえは出て行ってしまい,大沼達は追い返されてしまった.

怒り狂った大沼はチャンピオンでやけ酒を飲んだ.
大沼「ちきしょう.俺はね,余程あの野郎,ぶっ飛ばしてやろうと思った. だけど良く考えたらあの野郎未だ悪い事やってないでしょう.」
有光「そうだな.女房をぶん殴っただけじゃあ,夫婦喧嘩で済ませるしな.」
大沼「有光さん,そんなに気安く言わないでくださいよ. みつえさんの身になったらですね…」
矢野「へ,へ.さては未だ惚れてるな.」
大沼「馬鹿.馬鹿.冗談言ってる場合じゃないよ,お前. この町に暴力団が巣食ったらどうなると思ってるんだよ.」
有光「それが狙いなんだ.」
大沼「どういう事なんです?」
有光「坂井であろうと誰であろうと, 城西会の連中の名義ではこの町に店は出せないからな.」
矢野「なるほど.それで店を持っているみつえさんを狙ったってわけだ. 今の内にぶっ潰すか.」
大沼は肯いたが
有光「相手は知能犯だ.そううまく行くまい.」
大沼「じゃ,そこんとこ何とか考えてくださいよ.」
有光はしばらく考え込んだ.

そんなある日.暴走族が町にやって来た. 坂井と連中は一喝して暴走族を追い返した. それを見た有光と佐竹はうさん臭いものを感じていた.

佐竹の調べで暴走族の素性が割れた.雷会と言う札付きの雷族だ. 城西会と絡んでいるのも確かだ.佐竹は雷会の昼間の溜まり場も探り出していた. 有光は始動する事にした.

翌日.有光と矢野は雷会の連中をボコボコにし, 一人を締め上げて由木に乗り込んだ.
有光「昨日暴れたのは城西会の男に頼まれたと吐いたんでねえ.」
坂井「ほう,なんで城西会が.こいつら追っ払ったのは俺達なんだぜ.」
有光「町の連中に力を見せ付けておきたかったんだ.」
坂井「しかしなんで俺達がそんなややっこしい事をしなければならないんだ. 誰かこいつに頼んだ覚えあるかい?」
皆,白を切った.
矢野「へし折られたくなかったらはっきり言え.え.」
だが雷会の男は何も吐かなかった. 仕方無く有光と矢野は雷会の男を渋谷警察署に突き出した. それを連中の一人が見ていた.雷会の男は完全黙秘を貫き, 有光の作戦は失敗に終わった.

チャンピオンで
有光「しかし,奴等はこのままおとなしくしてる訳がない. いつかは必ず爪を出す.」
佐竹「待つかね.」
大沼「そんな悠長な事言ってられないよ. 早いとこ片付けないと彼女可哀想だよ.」
そこへ焼鳥屋がやってきた.息子のつとむが行方不明になったのだ. 有光と矢野は焼鳥屋といっしょにつとむを探し回ったが見つからなかった. そこへ雷会がやって来た. 雷会は有光達がつとむを探し回っている事を知っていた. そして自分達に頼んだ方が早道かもしれないと言って去って行った. 連中は由木に入った.有光は由木に乗り込んだ. 有光は雷会を締め上げようとしたが
坂井「やめなよ.子供がいなくなったんだって? だとしたらこいつらに逆らっていいのかね.余計なお節介だったかなあ.」
雷会と城西会の連中は有光をボコボコにした.矢野が止めに入ったが, 有光が制止した.
みつえ「止めてください.」
坂井「いいんだ.」
みつえは110番しようとしたが,坂井は電話を切ってしまった.
坂井「余計な事をしないで子供でも探したらどうだ.」
そこへ城西会の男が情婦とつとむを連れてやってきた.
大沼「やっぱりてめえ達だったんだな.この子をどうするつもりだったんだ.」
男と情婦は晩御飯を食べさせてお土産まで買ってやって世話したと開き直った.
坂井「こんな余計な野郎がいるからこんな騒ぎが起こるんだ. 坊やも気をつけるんだなあ.一旦お引取りください.」
仕方無く,有光達は引き揚げた.
坂井「おい,塩まいとけ.」

店が終わった後,みつえは坂井に言った.
みつえ「私達,もう駄目ね.」
坂井「駄目? どういう事だ,そりゃ.」
みつえ「あなたのような怖い人,私駄目.」
坂井「そうかい.じゃあ,勝手にするさ. この店の拡張資金は俺が出してるんだ.店の権利書だって二人名義になってる. 俺が気に入らなきゃ,そっちが出てくんだな.」
みつえ「あなたって人は.」
坂井「ふーん.そんな怖い顔しないでこっちへ来いよ.ん? ゆっくり話し合おうじゃないか.」

チャンピオンでは大沼と矢野が有光の手当てをしていた.
佐竹「酷い目にあったな.そろそろうちの雑誌で叩こうか?」
有光「無駄ですよ.」
佐竹「そりゃ,そうだろうけど,世間の注目は集まる.」
そこへみつえがやって来た.みつえは思いつめていた.
みつえ「実は手を引いて頂きたいんです,あたし達の事から.」
つとむの一件などでみつえは連中が何をしてくるかわからないと思ったのだ.
大沼「ここであなたがくじけたらどうなるんです.まさか昔の事, 忘れたわけじゃないでしょう.」
佐竹「そうだ.あなた方,町ぐるみ暴力団と闘って追い出したでしょう.」
みつえ「あの時はみんなで一緒に闘いました.でもあたし, 張本人の妻ですから.それでも頑張らなきゃいけないと思ってたけど, でももう駄目なんです.」
有光は何事か考えていた.

遂に城西会の連中は爪を見せた. まずたき子の焼鳥屋のところに売春婦を置かせた.たき子は渋ったが, 交通事故が頻発し子供が跳ねられたと言って,暗につとむを盾にした. 組合長のところではお絞り屋がお絞りの値段を上げていた. スロットマシンを借りているところには月に300万円納めろと言って来た.

遂に商店街の寄合が開かれた.刑事も駆けつけ,被害があったら申し出てくれ, と言ったが,誰も何も言わなかった.
組合員「向こう(城西会)に筒抜けになったらえらいことですからね.」
大沼「冗談じゃないよ.彼女(みつえ)に限ってそんな. みんな長いつき合いで彼女の事は良く知ってるじゃない.」
組合長「しかしねえ,大沼さん.夫婦となると話は別でしてね.」
針の筵に置かれたみつえは外へ出て行った.それを見て有光はみつえを尾行した. 組合員の声「向こう(城西会)に筒抜けになったらえらいことですからね.」
大沼の声「冗談じゃないよ.彼女(みつえ)に限ってそんな. みんな長いつき合いで彼女の事は良く知ってるじゃない.」
みつえは京王線の踏切の前まで来た.踏切の警笛が鳴っているのに, みつえは線路の上に立った.死ぬつもりなのだ.間一髪有光がみつえを連れ出し, ことなきを得た.そこへ大沼も駆けつけた.

大沼は怒り狂っていた.矢野は相手が尻尾を出すまで待てと言ったが, 大沼はそんな悠長な事は言ってられないと言った.
佐竹「こうなったら暴力に訴えて奴等の尻尾をひきづり出してやるか.」
大沼「暴力って?」
佐竹「兎に角,警察が乗り出すきっかけを作ってやるんだよ.」
有光「手ぬるいな.」
佐竹「手ぬるい?」
大沼「どういう事です?」
有光「すぐに手を打たなきゃ,みつえさんを殺す事になる.」

城西会の連中は由木で賭けをしていた.そこへ有光が乗り込んだ.
有光「この町から出て行ってくれ.」
坂井「何? どういう事だ.」
有光「お前がいたんじゃ奥さんは生きて行けないんだ.」
坂井「馬鹿野郎.行きようが死のうが俺の女房だ.他人の指図は受けねえよ.」
有光「この町から出てけ!」
遂に格闘が開始された.有光優勢の内に格闘は進んだ.矢野と大沼も駆けつけた. みつえは包丁を手に持ち,何か考え込んでいた.矢野は連中をボコボコにした. 大沼も一人を倒した.有光は坂井と闘った.腕力では有光の方が上だった. かなわないと見た坂井は拳銃を取り出し,有光を狙った. 形勢逆転かと思われたが,そこへみつえが登場.みつえは坂井を刺し, その隙に有光は坂井を倒した.大沼はみつえを助け起こしていた.

病院のベッドで寝るみつえに大沼は言った.みつえと有光が不起訴になった事, 城西会の連中が根刮ぎ挙げられた事, 町内会でみつえが再起するための資金を集める運動が進んでいる事.
みつえ「坂井は?」
大沼は口ごもった.
有光「再犯だし,色々な罪が重なって懲役10年は間違いないでしょう.」
みつえ「これであの人とも終わったのね.」
みつえの目から涙がこぼれた. 一人の女が今その深い傷の中から蘇ろうとしている. だが暗い太陽の下を歩く有光洋介にとって, それはいか程の縁であったであろうか. 有光洋介はあくまでも一人であらねばならなかった.

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東平 洋史 E-Mail: touhei@zc4.so-net.ne.jp