第八回

麻薬密売組織に迫る.
刺客請負・有光洋介

脚本:小野龍之助・神波史男 監督:井上芳夫

今日も有光は土方をしていた.その時,溺死体発見の報が. 溺死体は初老の男性でそこには娘(関根世津子)が駆け寄っていた. 有光はその娘が働く食堂に出入りするようになった. 溺死体の男の名前は関根正春.娘の名前は関根治子. 正春は出稼ぎの果てに蒸発し,一家を崩壊させていた. 治子は正春を苦労して捜し当て,少しでも面倒を見ようと, 半年前からこの店に勤めたと言う. 人生の吹き溜まりのような街に咲いたこの少女の優しさに, 有光は一抹の救いを感じていた.だがその静寂が破られる日が来た. 借金取り三人組(石太郎ら)が正春の借金15万円の取り立てと称して, 治子のところへやって来たのだ.治子をなじる借金取りを見て
有光「この娘は俺が関根さんから頼まれてんだ.」
有光は借金取りをボコボコにした.

有光は治子から話を聞いた.借金取りは正春が死んだ次の日に来て, 借用証書を見せていた.確かに正春が書いた字だった. だが借りたのは15万円ではなかった.二千円,三千円と借りて行って, 合計はせいぜい4万円.それに十日に二割の利子がつき, 十日ごとに元金も含めて計算すると15万円になると言うのだ.有光は憤った. 治子は借金を返せなくなるのが嫌になって正春が死んだのではないかと考えた. 有光は治子を店に連れ帰ったが,店の主人は有光をなじった. 借金取りが仕返しに来るし,下手すれば店も目茶苦茶にされる. 有光は借金取りが何故関根に金を貸したかを尋ねた. それは愚連隊の新しい手口だった.しがない日雇い労働者に金を貸し, 手配師と組んで安くこき使い,その稼ぎまでも吸い上げていたのだ. ちょっとでも文句を言うと兄貴分の田島という網走帰りの男が来て, 怒鳴り込んで半殺しにされると言う.
有光「田島? 親父さん,それ田島てつおって言うんじゃないのか?」
店の主人「いやあ,それはようわからんけどな.ちょっと苦みばしってな, ここ(右頬)に傷のあるごっつい男や.」
そこへ借金取りと田島(岡崎二朗)が登場した.
有光「久し振りだなあ,田島.」
田島「誰でえ.」
有光「俺だよ.有光だ.」
田島「有光?」
有光「中学まで一緒だった有光洋介だよ.」
田島はサングラスをとった.
田島「しばらくじゃねえか.」

有光との再会を喜んだ田島は有光を自分のアパートへ連れ込んだ. 情婦のひろみ(川瀬ミキ)に田島は有光を紹介した.
田島「俺と違ってここ(頭)が良くてなあ,警視庁の刑事さんにまでなった男だ.」
それを聞いたひろみは警戒したが
田島「馬鹿野郎.心配しなくていいんだよ.色々わけがあってなあ, 今は廃業しているそうだ.」
有光は本題に入った.
有光「田島.お前,ドヤもん相手に金貸しの真似してるんだってなあ.」
田島「真似じゃねえさ.列記とした信用ローンって奴だ.」
有光「そうだ.お前の暴利のために泣いてる奴がたくさんいるって聞いた.」
田島「おい.久し振りに会ったんだい. 変な事はいいっこなしにしようじゃないか. てめえが汗水たらして稼いだ銭をぱっと飲んじまったり, ちんけな博打ですっちまったり,人間の屑だよ. そいつらが俺に頭を下げて貸してくれって頼むんだよ. 少しぐらいの利息で文句ある奴は最初から借りなきゃいいんだよ.な.」
田島はビールを飲んだが,有光はビールに手もつけず,田島を凝と睨んだ.
有光「だがな,田島.だからと言って, 弱い老人をぶっ殺していいってわけがないだろう.」
田島「何だと?」
有光「関根正春って言うおっさんの事だ.有光, 俺はまともな商売やってるんでい.客殺したんじゃ一文にもならねえじゃ…」
有光「だがな,直接手を掛けなくても,しつこく追い立てれば同じ事だ.」
田島「有光,お前まだデカ根性がぬけねえらしいな.第一, 警察でもあれは事故死だと決めてるそうじゃねえか.こっちこそ, 貸し倒れの被害届けを出してえくらいだ.」
有光「まあいいだろう.だが娘には手を出すな.まあな, 関根のおっさんの借金は,俺が働いて返す.いいな.」
有光はお札を何枚も何枚も出して田島に渡そうとしたが
田島「わかったよ.お前の顔に免じて借金は棒引きだ.」
田島はお札を返した.
有光「すまんな.」
田島「だけどよ,関根のおっさん,事故死じゃねえって睨んでるのか?」
有光「わからんが,娘の話じゃちょっと引っかかる.」

田島は借金取りの連中に関根の金の使い道を聞いた. 関根は麻薬に手を出していたようだった.それを聞いた田島は怒った.そして
田島「そういえばこのところポン中らしいのが目に付くな. ほじくってみれば面白いかもしれないぞ.」
田島は関根が江口のところに出入りしていた事を借金取りの連中から聞いた. 驚いた田島は江口のところへ乗り込んだ.そして田島は江口に, 関根が江口の元で麻薬の売人をしていた事を持ち出した.江口はとぼけた. その帰り道.田島はチンピラに襲われた.そこへ有光がやって来た. 有光はチンピラを殴り倒した.有光と江口はチンピラを問い詰めた. チンピラは高沢の子分だった.高沢は大きな会社を経営している男で, 田島とは何の関わりもない筈だ.だが江口が高沢に頼み込み, 田島を始末する為にチンピラが派遣された事が判明. 田島はチンピラをなおも問い詰めようとしたが, そこへナンバーを布で隠した幌付のトラックがやってきた. 幌の中には殺し屋が何人もおり, 何発も何発も発砲してチンピラを始末してしまった.

田島と有光はホテルに逃げ込んだ. どうやら田島の家までは刺客が来ていないらしい. 高沢は元は暴力団の幹部だったが今はあちこちのビルで娯楽施設を経営. だが昼間の一件で高沢が裏であくどい儲けをしている事がわかった.
田島「お前に関根のおっさんの事言われて少し当たってみたんだけどよ, おっさん,やっぱり,ポン中だったらしいぜ.」
有光「いや,俺もドヤ仲間に当たってみて,関根が酷くおびえてたって言うんで, もう一回お前に借金の事尋ねようと思って行ったんだ.そうだ. 売人に雇われている内に自分も中毒になって物に手をつけた. その穴埋めにお前に借金をした. ルートの方じゃ使い物にならなくなったおっさんを始末した.」
田島「さすが元デカだ.俺もそう睨んでるんだ.有光よ.」
有光「何だ?」
田島「さっきは危ないところを助けられて済まなかったなあ. 俺は義理固え男でよ,このお返しがしてえんだが,俺と組んで一儲けしねえか?」
有光「高沢を揺さぶる気か?」
田島「ああ.奴を揺さぶってがっぽり大金せしめてやんなきゃ, 腹の虫がおさまりゃしねえや.」
有光「やめとけ.」
田島「おい.いい格好すんなよ.お前だってデカの時に一度は手汚したんだろう. 今からきれいがったって手遅れだよ.」
有光「なあ,田島.考えてみろ.相手は大掛かりなルートだ. お前がどうあがいたって今度はお前がやられる番だ.」
田島「冗談じゃねえ.俺,学校の出来は悪くてもこういう事に限っちゃ, おめえより上だ.ま,いいや.気分が乗らねえなら無理にとは言わねえや. 俺一人で十分やってやらあ.だがなあ,お前,デカ根性捨てろよ. 俺だって体はってる仕事だ.邪魔する奴はただじゃおかねえ.例えお前でもな.」
そう言って田島は去った.

その頃,警察は田島を襲ったチンピラの死体を検分していた.
唐橋「この男一人を狙ったにしちゃ,とっても大掛かりだなあ. これは他にも狙われた奴がいたと考えた方がよさそうだなあ.」
唐橋は田島の線を当たるように命じた.田島の行方はつかめなかったが, チンピラ殺しの目撃者を知る事が出来た.そして
草刈「何? 現場に有光がいた?」
刑事「は.奴はまた後ろ暗い行動を始めたようです.参考人で引っ張りますか?」
草刈「いや,奴の事だ.参考人として叩いたぐらいじゃ何も吐かんよ. 殺しに使われたライフル弾と数年前覚醒剤の縄張り争いで暴力団と使われた弾と, ライフルマークが一致した.」
刑事「と言う事は今度の事件の裏にも覚醒剤が.課長,一月前に溺死した, 関根正春と言う労務者はヒロポンをやっていたそうです.そうすると, やはり今のその男と…」
草刈「うん.その事件の背後は意外と深いという感じだなあ.兎に角, ガイシャの周辺を徹底的に当たってくれ.」
刑事は去って行った.
草刈「有光洋介か.」

有光がアパートに帰ってくるとそこには治子がいた. 助けてもらったお礼だという.有光はいいんだと言ったが, 治子はどうしてもやりたいと言った. そしてタバコを買うという有光に着いて行き,ついでに夕飯の材料も買物. それを男が見ていた.

さて田島は渋谷の公衆電話から高沢(渥美国泰)に電話を掛け,高沢を強請った. 一億円を要求したのだ.高沢は激怒し,江口をなじった.江口は高沢に, 田島の背後に有光がいる事を報告し,一筋縄には行かないと言った.
高沢「しかし物は考えようだ.そういう男だからこそうまく使える.」
高沢は有光を利用する事を考えていた.

田島とひろみはホテルに閉じこもっていた.田島は大金が入ってくると言ったが, ひろみは貧乏でもいいから北海道の田舎でひっそりと暮らしたいと言っていた. 田島は大金つかんだら東京にいられないんだ,北海道でもどこでも行ってやる, と言った.ひろみは田島が危ない事を始めようとしている事に気づいていた.

さてチャンピオンに佐竹が来ていた.なんと朝から夕方まで水だけ飲んでいた. そこへ杏子がやって来た.杏子は,村木が有光から借りた資料を有光に返そう, と思ったのだ.大沼は有光に渡してやると言ったが
佐竹「いや,これは引き受けられない.そんな大事な物は自分で渡さないと. あなたの手で有光君に直接渡すんです.」
大沼「そう.その通りです.」
杏子「でもあたし…」
佐竹「いくら杏子さんの頼みでもこれだけは駄目.」
その時矢野が思いついた.
矢野「そうだ,持って行けばいい.前に二人でよく会ってたじゃありませんか. あの喫茶店.」
佐竹「そいつはいい.明日,午後四時,モーテで.OK?」
杏子「でも有光さんがいらっしゃるかどうか…」
佐竹「行かせますよ,必ず.行くようにさせるって.俺達三人で.な.」
大沼「え?」
佐竹「な.なあ.」
大沼と矢野は肯いた.

その頃,有光はアパートで治子の手料理を食べていた.有光は治子に礼を言った. 治子は「私,有光さんのお嫁さんになっちゃおうかなあ.」と言った. その時,ノックが.やってきたのはひろみだった.有光は何かあったと直感し, ひろみと一緒に出て行った.ひろみは有光に,田島がやろうとしている事を尋ねた. そしてひろみは有光に田島を止めるように懇願した.何度も何度も頼まれて
有光「何か変わった事があったらすぐに連絡してください. 今の僕にはそれしか出来無いんですよ.」
アパートに戻った有光に大沼から電話があった. 大沼は明日午後四時にモーテで杏子が待っている事を伝えた. そして有光が部屋に入ると
男(堀田真三)「あの娘(治子)はお預かりしてます.」
有光「何の真似だ.」
男こと海津は有光に拳銃を構えた.仮面ライダーとトカゲロン(嘘)の闘いだ.
海津「うちの社長がぜひお会いしたいと言ってますよ.来て頂けますね?」

男は高沢の部下だった.高沢は有光に自分の使いとして田島の所へ行き, 今度の事から手を引く様に言ってくれないかと言った.
有光「やはり弱みがあるようですな.」
高沢は5,6年前はやくざだった自分がここまでのしあがったのだから, 無い方が不思議だと開き直り,二千万を出し, さらに自分の元で働いてもいいとも言った.
有光「しかしもし田島が嫌がったら.」
高沢「それは君の手で彼を抹殺してもらうしかないだろうなあ. 私があの娘さんを預かっている以上,君は断れんぞ.」
有光「なるほど.その通りのようですねえ.」
高沢「ほう,話が速いんで助かる.それでいつだ.」
有光「明日.」
高沢「ほう.そいつは大変結構だ. ただそれまで君にはうちのもんを一人つけとくよ.疑うわけじゃないが, 私はもしもって事が嫌いなんでねえ.」

そして有光のところには四六時中海津がつく事になった. 海津はトイレにもついて行く始末で, 有光が細工する手段は皆無と言って良かった.午後4時になった. 有光はモーテにやって来た.杏子がいた. 有光は杏子のところでわざと伝票を落とし,拾って置く間に紙をはさんだ. それに海津は気づかなかった.杏子は紙を読んだ.
有光の声「今夜九時から十時頃の間に富士見橋の近くから, 俺は一人の男を川に投げ込む.そいつはおそらく失神してる筈. すぐに引き揚げないと死ぬかもしれない.この事を大沼か矢野に伝えて欲しい.」
有光は海津と一緒の席についていた.

その夜.有光は高沢から預かった二千万円を見せ,手を引くように説得したが, 田島は激昂.有光は治子を盾に取られている件をさりげなく明かしたが, 田島に有光の思いは通じなかった.田島は有光を思い切りぶん殴った. 有光は田島の腹を殴って田島を気絶させ,さらに田島にウィスキーを掛けた.

大沼,矢野,そして佐竹は杏子から話を聞き,作戦を練っていた. 有光は田島を富士見橋から川に放り込んだ.大沼達は船を借り, 田島を引き揚げた.大沼達から有光のとった行動を聞いた田島の胸に, 有光の心情が突き刺さった.だが大沼達は気づいていなかった. それが高沢の部下に見られていた事を.

有光は高沢のところへ戻ってきた.高沢は治子を連れて来させた. 高沢の部下は有光に麻薬を打つ事を強要.さらに
須崎(中屋敷鉄也)「あ,そうだ.二人で打ってよ,ここで余興してもらったら, 最高に盛り上がるぜ.」
男「いかがでござんすか.」
高沢「やめとけ.」
有光は引き揚げようとしたが,そこへ高沢の部下がやって来て高沢に耳打. 大沼達が田島を助けた事がばれたのだ.
高沢「有光,貴様,下手な芝居を打ったのだな.片付けろ.」
有光は高沢達を相手に大暴れ.高沢の部下は皆,倒され,残るは高沢一人.
高沢「おい,待ってくれ.待ってくれ.話し合おう.」
だがこの言葉は有光には通用せず,高沢は有光に何発も何発も殴られた. パトカーが駆けつけ,高沢達は連行されて行った.
有光「これでお父さんも安心して眠れるよ.」
有光は草刈と睨みあったが,治子と一緒に黙って去って行った. 草刈は有光をいつまでもいつまでも見送るのだった.

田島も逮捕された.
田島「有光,すまなかったな.でもなあ, 俺はこれからもでっけえ金を握った夢は見続けるだろうよ.」
ひろみ「あんた.」
田島「なんだ,馬鹿野郎.しょぼい面しやがって.」
有光「どうせ夢は覚めるもんさ.」
夢はいつか覚める.だがそう言った有光にとって,あの村木を殺し, 悪徳刑事の汚名を着,杏子を失った悪夢だけは果てしなく続くように思われた.

みどころ

今回の見処は一人の娘を助けようと有光が奮闘するところと, その話を聞きつけた有光の旧友田島が麻薬組織を相手に一儲けを企むところです. 佐竹と大沼と矢野がした事は杏子を有光に会わせようとした事と, 有光から杏子が受けた伝言により田島を救出するところです. 佐竹達の杏子と有光に対する思いやりが田島救出の糸口になるのは, 見事な作劇だと思います.それにしても高沢と田島は捕まったのに, 大暴れした有光はなぜ捕まらなかったのでしょうか? きっと高沢に犯行を強要された事が考慮され, 高沢に対する正当防衛が認められたからでしょう.

余談ですが, テロップに出た「小屋敷鉄也」は中屋敷鉄也さんの間違いだと思われます. 中屋敷さんは新1号ライダー,仮面ライダーV3,Xライダー, 仮面ライダーストロンガー,スカイライダー,スーパー1を演じました. そして大野剣友会を退会.現在は俳優として舞台で活躍されています.

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東平 洋史 E-Mail: touhei@zc4.so-net.ne.jp