「がんばれ! レッドビッキーズ」第43話

サードのポジションを巡ってカリカリとシゲ, そしてカリカリの父とオーナーが大喧嘩
おやじ大戦争

脚本:上原正三 監督:奥中惇夫

神雷太のいるハンマーズから挑戦状が届いた.前回引き分けに終わったので, 決着をつけたいというのだ.
ジュリ「私,対決が楽しみだわ.」
令子「そうよ.その意気よ.」
意気上がるナイン達.だがカリカリは, 太郎が新しいファーストミットを持っている事に気がついた. 何と令子の指示でファーストを守る事になったと言う. カリカリは令子に詰め寄った.令子はコンバート作戦だと答えた. ハンマーズとの試合は打ち合いになる. だから太郎を先発で使って活かしたかったのだ.
カリカリ「そんなあ.」
令子「強いチームと当たる時は9人じゃ勝てないわ. ベンチも含めて総動員でぶつかる体制をとらなくっちゃね.」
これが大騒動を引き起こすとは,令子は予想だにしなかった.

家の魚屋,魚八に帰ってきたカリカリは元気はなかった.その様子を見て, 父の魚八(小鹿番)と母(大坪日出代)は心配した.カリカリは食事も喉を通らず, おかわりもせずに部屋に入ってしまった.
魚八「西郷太郎に勝てねえとなると,あとねえ…」
そして魚八はレッドビッキーズのポジション表を見て
魚八「掛布だ.うん.決まった.おーい,剛,降りて来い.剛,速く速く. もたもたすんな,ほら.」
カリカリ「何だよ,騒々しいなあ,全く.」
魚八「ファーストが駄目ならサードがあるさ.」
カリカリ「え?」
魚八「ワンちゃんが駄目なら掛布になれよ.」
魚八の意図にカリカリは気がつき,強く肯いた.

カリカリはサードをやりたいと申し出た.令子もコーチも賛成したが, オーナーは激怒.
カリカリ「父ちゃんが言ったんだ.掛布になれって.」
これを聞き,オーナーは激怒.
オーナー「あのタコスケ!」
カリカリの父が営む魚屋魚八に乗り込み,大喧嘩.魚八の妻が仲裁に入ったが
オーナー「ふん.覚えとけよ.歴史的に見たってなあ,サードベースは燃える男, 長嶋さんのもんなんだ,馬鹿.」
魚八「しゃらくせえ.若虎掛布の叫びを聞きやがれ! わあーーーーーー!」
オーナーも魚八も息子に発破を掛けた.息子達も影響され, カリカリとシゲはノックの順番を争って喧嘩する始末.遂には
カリカリ「何だよ,七光り.」
の一言がきっかけでカリカリとシゲは掴み合いの喧嘩を始めてしまった.

令子はオーナーの所や魚八へ出向いたが, どちらも引っ込むつもりは毛頭なかった.まずオーナーは令子にこう言った.
オーナー「うちのシゲはねえ,三番バッターなんだよ. 10試合の打率は3割2分1厘.今絶好調なんだ. ハンマーズ戦には欠かせないと思うけどね.」
この後,令子は魚八と会ったが
魚八「あっしはねえ,女監督のコーン,バターって言うのかい?」
令子「コンバート作戦…」
魚八「そうそう.そのコンバート作戦,大賛成.蕎麦屋のガキなんかより, うちの剛の方が長打力はあるしよ,チーム力をアップするには, グッドアイデアだと思うわけ.兎に角見てくれ,ハンマーズ戦を. 必ず打つぜ,でっけえ奴をよ.振りが違うもん,振りが,うちの剛は.」

翌日もカリカリとシゲはノックの順番を巡って大喧嘩. 見かねたコーチは二人を呼び出し,こう言った.
コーチ「俺はプロ野球のファームで肩を痛めた. それからはゲームには出してもらえず,ただ見てるだけ.辛かった.」
滝の音だけが響いた.
コーチ「先じゃなきゃ,やだの,やめただの,そんなのは贅沢ってもんだぞ. 甘ったれてるぞ,お前ら.」
カリカリ「俺は負けたくないんだ.」
シゲ「俺だって.」
二人は睨みあった.遂にコーチはサジを投げた.
コーチ「そうか.いつまでもいがみあってろ.そうやってな.」

親同士の争いは江咲家への贈賄合戦に発展.まず恵子が魚八へ買物に行くと, 魚八がお刺身を大サービス.さらによし子が出前をサービスで持って来た.
令子の声「魚八と長山庵のサービスは裏工作だわ. どちらも我が子をレギュラーポジションにつかせたいが為の親心. あたしも決断して,回答を示してあげなくっちゃ.誰を選び, サードベースを守らせるか.こんな時,どうすればいいの, お父さん…自分で考えろですって? あは,やっぱりそうね.」
令子は一晩考えた.

翌日は親が現れ,応援する始末.肝腎のハンマーズとの試合で, サードのポジションについたのは何とペロペロ.オーナーも魚八も詰め寄った.
令子「一晩考えた末,決めたんです.冗談なんかじゃありません.」
理由を聞きたいと言うオーナーと魚八に令子は言った.
令子「シゲとカリカリはチームワークを乱しています. レッドビッキーズの基本理念はチームワークです. チームワークを乱す選手はどんな優秀な選手でも使いません.」
呆気にとられる魚八,そしてオーナー.そしてプレーボール. 打球は太郎の左へ飛び,太郎は捕ることができなかった.
魚八「あーあ.剛なら捕れたボールだぜ.」
オーナー「ふん.どうだかな.」
ハンマーズの監督(成川哲夫)はサードへのバントを命じた. ペロペロがお手玉し,さらに悪送球してしまった. こうして一死も取れずに2,3塁になった.
オーナー「言わねえこっちゃねえ.シゲなら絶対刺したんだよ.」
魚八「そりゃわからねえよ.」
次の打者は凡打に倒れ,とりあえず一死は取れたが,一点入れられてしまった. 次は神雷太だ.ノミさんはコントロールを乱してしまい,フォアボール. 次の打者の打球はサードへ飛んだ.ペロペロはエラー. 初回の表にハンマーズは二点を入れた.オーナーと魚八は息子を使えと大騒ぎ. 遂にはつかみ合いの喧嘩を始めた.
令子「落ち着いてください.4,5点なら取り返せます.」

裏の攻撃.ナッツ,センターが連打で出塁.
ジュリ「太郎,ホームランよ.」
太郎は肯いたが,ハンマーズの監督は太郎の敬遠を指示.敢えて満塁策を取った. ノミさんはファーストへのファールフライに倒れた.
魚八「剛が4番ならランナー一掃だよ.」
ペロペロは惜しくもショートライナーに倒れ, 飛び出したセンターもアウトになった.
オーナー「ついてないね.こんな時シゲちゃんがいればねえ.」

試合はハンマーズ5点,レッドビッキーズ0点で最終回を迎えた. ノミさんはまた打たれ,太郎とペロペロのミスも重なり,無死一,二塁のピンチ. コーチは令子にジュリをリリーフに起用することを進言した. それを見たカリカリはコーチの言葉を思い出した.
コーチの声「俺はプロ野球のファームで肩を痛めた. それからはゲームには出してもらえず,ただ見てるだけ.辛かった. 先じゃなきゃ,やだの,やめただの,そんなのは贅沢ってもんだぞ. 甘ったれてるぞ,お前ら.」
カリカリは令子に進言した.
カリカリ「監督,シゲをサードに交代させてください.ペロペロじゃ無理だよ.」
それを受け,シゲも令子に進言した.
シゲ「カリカリ,お前,やれよ.」
カリカリ「俺はベンチでいい.」
シゲ「俺だって.」
二人はお互いに譲り合った.その様子を見て令子は親達に言った.
令子「(オーナーに)カリカリでもいいのね?」
オーナー「え? (よし子に促され)ああ,ああ,いいとも.」
令子「(魚八に)シゲでもいいのね.」
魚八「そりゃ,しかし…」
カリカリの母「父ちゃん.」
魚八「あ! ああ,そうよ.二人とも実力者よ.どっちもこっちもあるけえ.」
令子は頬笑んで決断した.トータスをベンチに下げ,太郎をライトに回し, ファーストはカリカリ,サードはシゲ,そしてピッチャーはジュリだ. こうしてレッドビッキーズはピンチを乗り切ることになった. なお,トータスはベンチに下がる時, 「ちきしょう!」と呟いた事を付け加えておく.

そして迎えた最終回裏の攻撃.ナッツとセンターの連続ヒット, および太郎の敬遠フォアボールによりレッドビッキーズは一死満塁のチャンスに. カリカリの二塁打,そしてシゲの三塁打で四点を入れた. スタイルはサードライナーに倒れたがフォアボールが二つ続き, また満塁のチャンスを得た.この美味しい場面でジュリは初球を打ち, サヨナラタイムリーヒット.こうしてレッドビッキーズは勝利することができた. それを見て
オーナー「どんなもんだい,うちのシゲは.」
魚八「うちの剛の打球を見たかい.」
二人とも本当に親馬鹿だ…

次回はブラザー主役編.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp