レッドビッキーズが練習をしている最中, グランドの真中に車が乗り込んできて止まった. 車から降りてきた女坂口ルミ(小川露里)は, コーチが高校の時に世話になった人の娘だった.「石黒さん, 随分探してしまったわ.」というルミ. 「住所隠してるんですもん.」と言うルミ.令子は咳払い. コーチは今練習中なので後にしてくれと言ったが,ルミは笑い出した. 「ごめんなさい.遊んでるんだと思ったのよ.練習だなんて.」 令子は激怒.「みんな真剣なんです.早くあの車どけてください.」 ルミは車に乗って去って行った.怒る令子に「監督,妬かない, 妬かない.」とからかうペロペロ.真っ赤になって怒る令子. それを見て笑う選手達.家に帰った令子は, お母さんからお父さんの精密検査の結果が良好と聞き,大喜び.しかしその頃, ルミはコーチに父親が経営する会社の野球部でコーチをしてくれ,と言い, そうなったら最初の仕事はアメリカへ留学して本場で勉強をしてと言った. 次の日.指導に身が入らないコーチを見て女の勘でピンと来た令子は, 練習終了後,コーチに理由を尋ねた. ルミの父親は故郷の鹿児島で坂口産業と言う有名な会社を経営している人で, 高校の野球部の後援会長だった.そこに誘われていると言った. どうでもいい話だが,「コーチの先輩」の荒川堯さんは早稲田実業出身なので, 鹿児島の高校出身ではないようだ.閑話休題.そしてコーチと別れた後, 令子はルミと出くわした.ルミはアメリカ留学の件を話し,さらにこう言った. 「それは石黒さんがレッドビッキーズにしばられてるからだわ… ビッキーズはたかが子供の野球よ.」怒った令子は言った. 「悪いけど,レッドビッキーズはお遊びチームじゃないのよ. 石黒さんも私も青春をかけているんだわ.」 それを受けてルミは言った.「それじゃなぜなの. 石黒さんはなぜ故郷の人に今の住所や仕事を隠してるの.」沈黙の後, ルミは言った. 「高校野球のヒーローの挫折した姿を見られたくなかったからじゃない.」 その頃,コーチは令子からレッドビッキーズのコーチに誘われた川原へ来ていた. そして令子の言葉を思い出していた.「だからあなたが必要なんです. 甲子園で延長18回を一人で投げぬいて優勝を勝ち取ったあなたの情熱.そして技. それを教え込んで欲しいんです.」 握手しようとした令子の手を叩いて去ろうとした石黒に「弱虫.そうじゃない. プロ野球でエースになれなかったからって, そんなに卑屈にならなくてもいいと思うわ.要するに弱虫なのよ. 男らしくないのよ.」そのことを思い出してコーチは迷っていた. 「苦労したわ.住所を隠してるんですもの.」と言うルミの言葉を思い出し, コーチは呟いた.「違う.隠してなんか.」そこへ令子がやってきた. だがやって来た令子とは口論になってしまい,怒った令子は去ってしまった. 泣きながら走り,自宅の部屋で泣く令子.翌日. コーチがアメリカへ行くかもしれないという話を聞き, 元気を無くす選手達.仕事で遅くなったコーチに令子も,オーナーも, 選手達もコーチがいなくてもいい,と言った. オーナーも選手達もコーチの出世の邪魔をしたくなかったからだ. それを聞いたコーチはいたたまれずに帰ってしまった. そして迎えたバイキングとの試合の日. だがレッドビッキーズの選手達はエラー連発. 「今日のレッドビッキーズはどうかしとるな.」と, バイキングの監督は異変があったことを見抜いていた. 皆自信を無くしていたのだ.「コーチがいないとダメなんだなあ.」 と言うノミさん.そのとき,お父さんはコーチがこっそり見に来ていた話をした. それを聞いた選手達全員,コーチのところへ走って行った. 止めようとした令子にお父さんが言う. 「石黒君にとってレッドビッキーズは何だったのか. その答えは石黒君だけが出せる.」コーチに謝る選手達. そこへ令子もやってきた.令子はコーチに謝り,そして言った. 「レッドビッキーズにあなたが必要なのは,みんなが言った通りです. それ以上のことは何も言えません.後悔しない道を選んでください.」 その晩.グランドでコーチはじっと考えた.そして球を握り, 一心不乱に球を投げながらレッドビッキーズのみんなと過ごした日々を回想した. 「レッドビッキーズはあたしの青春.」と言う令子の言葉を思い出し, コーチは叫んだ.「レッドビッキーズは俺にとっても青春だ.」 次の日.コーチは笑いながら戻ってきた.「良かったわね, みんな.」という令子に「なあんちゃって, 一番良かったのは監督だろう.」と囃し立てるペロペロ,そしてナイン達. 慌てる令子を見てコーチは笑うのであった.