脚本は松田司.監督は高坂光幸. 話数調整のために制作された話で,その関係で大出俊さんは出演していません.
ある晩.和泉屋に押し込み強盗が入った.赤兎馬組の仕業だ.
その頃,主水は屋台で冷酒を呑んでいた.その時,捕り物の笛の音が.
仕方無く主水は屋台を後にした.だが一人でも捕まえてみろ,
牢屋見回りから足が洗えるぜ,と同心から言われ,興が冷めてしまった.
とは言うものの主水は赤兎馬組の一人(大竹修造)を見つけ出した.
主水は見逃そうとしたが,同僚(不破潤)が捕まえてしまった.
盗賊「畜生.覚えてやがれ.」
主水「捕まえたのは俺じゃねえぞ.恨むなよ.」
盗賊「覚えてろ.」
主水「恨むなよ.」
これが主水に降りかかった災難の始まりだった.今回はここでタイトル表示.
翌日牢屋敷で.主水は銀次から身辺に気をつけるよう忠告された. 昨日の盗賊は赤兎馬組の頭羽三(浜村純)の息子三蔵で, 三蔵を捕まえた同心岡田と主水をただじゃ置かないとわめいていたと言う. 三蔵はその日打ち首にされた.
さてせんとりつはスイカが冷えたと大喜び. 剣之介とお歌はスイカを割る芸を見せたが相変わらず不評だった. 主水が歩いていると同心の岡田が殺されたと岡引から知らされた. スイカに毒が仕込んであり,奥方は散々犯された. さらに小塚原にさらされていた三蔵の首がなくなったという.
主水は早速自宅に帰った.千勢は出かけていった.明日には帰ると言う. 主水は,赤兎馬組が襲ってくるかもしれない,という話をしようとしたが, せんとりつが大袈裟に騒ぐかもしれないと考え,やめにした. せんとりつはスイカを出そうとしたが,主水は岡田のことを思い出し, まず毒見をしてから,と言い出した.結局主水はスイカを食べず, せんとりつがうまそうに全部食べた. せんは「婿殿に似て種がなくて」と言い出す始末. その晩.りつはスイカの食べすぎでお腹を痛めてしまった.
翌朝.主水は赤兎馬組が襲ってくるかもしれないと上役に申し出ていたが,
素気なく断られた.主水は剣之介とお歌に赤兎馬組の話をした.
お歌は赤兎馬とは何だと聞いた.赤兎馬とは三国志に出てくる馬だ.
捨三の話だと,やいと屋はちょっとした仕事で出かけていた.
やいと屋は神棚に手紙を置いていた.手紙の文面は
剣之介「ちょっとした仕事で姿を消さしてもらう.
ほんの二日か三日,いやもっと長くなるかもしれない.
用事が済めばいつものところへ顔を出す.もう一つ.八丁堀へ.
赤い馬が酷くお前のことを恨んでいるらしい.気を付けな.又.
八丁堀,お前の言っていることも案外杞憂ではないらしいなあ.」
お歌「杞憂って何?」
剣之介「心配し過ぎって事だ.」
主水は婆を守ってくれないかと剣之介に頼んだ.だが剣之介は渋った.
剣之介はお尋ね者なので八丁堀界隈に昼間行くわけにはいかない.
捨三は金さえもらえばと答えた.
その頃,中村家にスイカ売りが来ていた.せんはおいしそうと一つ取った.
主人「これもおいしいですよ.」
何と主人が見せたのは三蔵の首だった.そう.
赤兎馬組が中村家を襲撃しに来たのだ.スイカ売りの主人は赤兎馬組の頭羽三.
羽三の妻お駒は三蔵の首を仏壇に供えた.
羽三とお駒はせんとりつに襲った理由を話した.
そしてお駒は三蔵の首に頬擦りしながら言った.
お駒「慌てるんじゃないよ.今すぐには殺しゃしないよ.
主水が帰ってきて三人並べてこの子の前でゆっくりと恨みを晴らさせてもらうよ.
三蔵.もう少しだからねえ.お前の仇は取ってやるからね.
お前が牢の中から仲間にことづけてくれた手紙には,
中村主水さえ見逃してくれれば俺は助かったんだって,
何度も何度も書いてあったからねえ.本当に悔しかっただろうねえ.
おっかさんはねえ,捕まえやがった同心よりも中村主水の方に腹が立つんだよ.
きっと主水の奴,むごたらしく殺してやるからねえ.」
スイカの食べすぎでりつは厠へ行きたがったが,我慢しろとお駒は言った.
そこへ魚屋や大根売りに化けた赤兎馬組の連中が続々とやって来た.
ああは言ったものの捨三は中村家へとやって来た.
何となく様子が変なので裏へ回ってみるとせんが掃除をしているのが見えた.
そこへ千勢が帰ってきた.捨三は相変わらず様子を伺っていた.
千勢も赤兎馬組の連中に監禁されてしまった.羽三は千勢を見て
羽三「この女,向こうの女どもと違って土断場には死に物狂いになる女だ.
騒がれちゃ元もこもなくなる.」
手下はなおも千勢を欲しがったが
羽三「馬鹿.ここは八丁堀だ.」
主水は気が気でなかった.剣之介の背中を拭くお歌に剣之介は, 暗くなったら八丁堀の家へ行ってみようと言った.
暮六つになった.寺子屋の生徒達がやってきた. 赤兎馬組の面々は千勢に今日は気分が悪いのでお休みだと言わせた. 捨三は喜んで帰る生徒達から話を聞いた. 千勢は生徒達を部屋へ入れようとせず, 恐い調子で「今日は気分が悪い」と言ったと言う. これを聞いた捨三は異変を察知した.
牢屋敷を出た主水に捨三は異変を伝えた.主水は早退を申し出,帰った. 捨三は奉行所の助けを借りないのを訝しんだ.主水はこう答えた. 事務手続きで二,三日かかるので間に合わないのだ. そこへ赤兎馬組の連中がスイカ売りに化けて出てきた. 捨三からそれを教わった主水は赤兎馬組の連中を殴り倒した.
捨三がスイカ売りに化けているのを見て剣之介は急ぐぞとお歌に言った.
捨三は合言葉を言って見張りを誘きよせ,主水が叩き斬った.
そこへ剣之介が登場.主水は中村家へ乗り込み,羽三を刺した.
剣之介は千勢に襲い掛かった赤兎馬組の二人を次々とやった.その頃
お駒「三蔵.お前が生きてた時は毎朝こうやって髪をすいてやってたねえ.
もうすぐだよ.もうすぐ恨みを晴らしてあげるからねえ.」
何と天井裏から赤い光が.お駒は額に鍼を刺され,絶命.
それを見てせんとりつは叫び声をあげて外へ出た.
千勢「それはもう素敵な男性でございましたわ,虚無的で.低い声で,
名乗るほどじゃねえ.あんな男性,世の中にいたんですね.」
りつ「あたくしの方にいらした方もいい男.
きびきびして若くてまだ前髪立ちで.」
せん「いいえ.前髪ではございません.立派な殿方でございましたよ.」
だが千勢もせんもりつも赤兎馬組の連中をやった者の顔を,
はっきりと見ていなかった.さらにせんとりつから,
主水は赤い光を見たことを聞いた.主水はお駒の死体を見て気がついた.
主水「やいと屋か.」
洗濯屋で主水はやいと屋からの手紙を読んだ.
主水「というわけで今度の仕事は俺一人でやるつもりだった.
赤兎馬のお駒一人消せばよかったんだからな.しかし,お前達がいてくれたんで,
助かった.これは礼金だ.おさめてくれ.私は少し金が入ったから,
温泉にでもつかってくる.しばらく江戸を留守にする.あばよ.」
捨三「ちきしょう,いいかっこうしやがって.それにしても旦那,
いってえ,誰に頼まれたんでしょうねえ.」
剣之介「あいつだいぶ貰ったらしいなあ.」
主水「おめえ,なんで二両取るんだよ.」
剣之介「俺は二人やったんだよ.割増貰わなきゃ合わねえ.」
そう言って出て行った.
捨三「あっしも遠慮なく.」
小判を取った捨三は赤兎馬組捕まえたと手柄を立てればまた定町回りに格上げだ,
と言ったが
主水「冗談じゃねえや.あんな不思議な死に方した仏さんだ.
一々洗われたらこっちの体が危なくてしょうがねえ.
それに牢屋見回りが手柄立てたんじゃ,町奉行所の名折れになる.
ま,というところで,赤兎馬組仲間割れというところで一件落着だ.」
主水はスイカを担いでいるところを子供に笑われた. そして家に帰って来ると,せんはスイカを見ると寒気がする,と言うのであった.