脚本は國弘威雄.監督は松野宏軌.
やいと屋が呉服屋の美濃屋へやって来た. やいと屋は下女のおのぶ(新海なつ)と挨拶をかわした後, 奥方のおみち(服部妙子)の部屋へやってきた.おみちは子供を産んだばかり. 主人の太助(水上保広)は番頭の彦三(岡崎二朗)と一緒に釣りに出かけたという. さて主人と彦三は釣り場を変えることにした.だが主人は足を滑らせてしまい, 川へ落ちた.彦三も川へ飛び込んだが二人とも溺れてしまった. そこへ助け舟が.二人とも船頭(江幡高志)に助けられた. そして鮟鱇鍋をご馳走になった. 船頭の妹(桜井浩子)は近いうちに河豚をご馳走しようといった.
さておのぶが願を掛けているところにやいと屋が現れた. 下女は何か悪いことが起きるんじゃないかと心配していた. 仕事もよくやる彦三が悪そうな奴(船頭達)に金をやっているのを見たからだ. やいと屋は考えすぎだよと一笑に付した.
その頃,呉服屋に帰ってきた太助は川に落ちたことをおみちに話した. 彦三がいなかったら,今頃土左衛門だと太助は笑うのであった. 今回はここでタイトル表示.
さて矢場で船頭の仙八と仙八の妹お咲は彦三と会っていた. 実は川に落ちた件は彦三が仕組んだもの.お咲はこの矢場の主人だ. 彦三は主人と奥方の信用を得たことを喜んだが, と同時に彦三は奥方の世話をするおのぶが自分を疑っていることを懸念していた.
捨三の洗濯屋にやいと屋が現れ,彦三とお咲ができているらしいので, 調べてくれ,と頼んだ.捨三は手を出したが,やいと屋は金を出さず, 手を叩いただけで去っていった. それでも捨三はお咲と彦三が一緒にいるところを見て来た.
さて彦三はおのぶに声を掛け,「船宿」に連れ込んだ.それを捨三は目撃. その頃,仙八は河豚の白子や真子を手に入れていた. そして鮟鱇鍋と称しておのぶに食べさせた.何も知らず,美味しい, と喜ぶおのぶ.彦三達はどんどん河豚の真子や白子を食べさせた. そしておのぶは土左衛門になってしまった.厚化粧させられていたので, 夜鷹と間違えられていた.死因は河豚に当たったことが原因らしい.
何と今日はせんの誕生日.主水が鍋料理でもてなした.だが
主水「あ,今朝方,川原に夜鷹の土左衛門があがりましてなあ.」
りつ「まあ,あなた,お食事時に.」
主水「あ,は.それが医者の診立てによると,
どうも河豚に当たって死んだらしいですなあ.
贅沢なもんですね,夜鷹分際で河豚を食うとは.
私達はせいぜい贅沢をしてこの鱈ちりどまり.もっともですね,
うちでブラブラしてる母上と違って,
別に河豚を食って精をつけることもありませんが.」
これを聞いたせんは機嫌を悪くした.だが気を取り直して食べようとしたが
主水「河豚の素人料理というのは一番危ないらしいですなあ.
特に菜種時の河豚は気をつけろと言いますからなあ.」
これを聞いたせんとりつは動きが止まってしまった.
主水「その中でも一番危ないのは真子とか肝とか言う奴ですねえ.
つまり,生半可な通に限って素人料理をやりますからなあ.
そういう連中はあっという間にころっと.」
せん「婿殿,これは鱈でしょうね.」
りつ「あなたに作って頂きましたが,まさか間違って河豚を買って来て…」
主水は,当たるならそのうち痺れてくるでしょう,と言い,
ますます座を白けさせるのであった.
さて美濃屋の太助とおみちはおのぶが二日も現れないので心配していた. おみちはおのぶから,彦三が店の金を持ち出し, 岡場所や矢場に出入りしている事を聞かされていた. だが幼い頃から一緒に育った太助はその話を信じようとしなかった. 太助が出た後,やいと屋が現れた.おみちからおのぶが現れなかった事を聞き, やいと屋はおのぶが二日前に彦三と一緒に鍋を食べた話をした.
やいと屋はおのぶの件を仕事にしようとしたが,皆乗り気じゃなかった.
主水はやいと屋にお灸を据えてもらっていた.
剣之介は雨続きで芸が見せられないと嘆いたが,
主水は内職の傘が売れるので婆が大喜びだと言った.
やいと屋は土左衛門のことを主水から聞いて,彦三の仕業に違いない,と言った.
捨三は彦蔵達が鮟鱇鍋だと言っていたと言った.剣之介は馬鹿馬鹿しい,
と去っていった.だが主水は,美濃屋が殺されるなら別だが下女じゃな,
と乗り気じゃなかった.帰ろうとする主水にやいと屋は治療代を請求したが,
主水は,足代で相殺だ,と払わずに帰った.
やいと屋「吝嗇だねえ.安い藻草使っといて良かったよ.」
剣之介はお歌と相合傘で帰って行った.
美濃屋の太助は川端で鍋を食べるにはいい天気だと言ったが, おみちは反対した.だが太助は彦三を信じきっており, 彦三の誘いに乗って出かけて行った.やいと屋が来た時は一歩遅かった. 慌ててやいと屋は川縁を走った.だが彦三と太助は船の中. そして籠の中で太助は突如苦しみだし,医者を呼べと言った. 奥方は番頭の茂七から話を聞き,失神してしまった. 結局美濃屋は死んでしまった.白々しく彦三は自分のせいだと叫び, 奥方に謝った.
美濃屋が死んだ話を聞いた主水はおかしいと言った.
彦三も河豚を食べた筈なのに死ななかったからだ.それを受け,
やいと屋は持論を力説.夜鷹はおのぶだ.
河豚の試し食いをさせられたに違いない.夜鷹なら,お上の取調べは厳しくない.
そこへ捨三が戻って来た.美濃屋に船を出した漁師はいなかった.
潜りで商売したのだろう.主水は船頭も仲間だと睨んだ.
やいと屋「乗りかかった船だ.こいつはどうでも彦三の皮ひんむいて,
仕事にしなきゃ,おのぶ婆さんの霊も浮かばれねえぜ.」
だが
主水「やいと屋.依頼人は誰なんだ.いるのか,いねえのか?」
まだ乗り気ではなかった.
彦三は仙八達にしばらく会わない方がいいと言っていた. 万が一と言うことがあるからだ.お咲は,美濃屋の身代が手に入るんだろうね, とか,美濃屋の奥方に手を出すな,と言い,仙八にたしなめられた.
さて牢屋敷に千勢がやってきた.主水は驚いたが, 千勢は以前牢屋を見学したいと言ったのだ.主水が千勢を案内していると, 女の囚人が産気づいたと大騒ぎ.千勢を見かけた銀次は新入りと勘違いし, 牢屋も楽しくなる,と千勢を追い掛け回そうとした.
さて美濃屋にお咲が現れた.慌てて彦三が相手をした. 彦三はお咲に来るなと言っただろうと追い返した.それを捨三が見ていた. 彦三達が何かを企んでいることは間違いない. だが証拠が揃わなければ主水も剣之介も納得するはずがない.
美濃屋の四十九日の法要の日.捨三は外から様子を伺った.
美濃屋太助の跡取り清太郎は生まれたばかり.そこで親戚の川津屋は,
清太郎が成人するまで後見を彦三がするべきだと言った.
奥方のおみちはしばらく里へ帰りたいと言っていたのだが,
彦三を主人に向かえた方が言いと川津屋は言い出した.
白々しく,彦三は慇懃にその話を受けることにしたと言った.だが
おみち「嫌です.お前と一緒になること,私は嫌です.」
おみちは清太郎を連れ,太助の墓へ行き,泣いた.
一方,彦三は矢場へ現れた.お咲は大喜び. 彦三は仙八達に美濃屋を継ぐ事になった話をした.大喜びする仙八達. それを天井裏から捨三が覗いていた.
その夜.正体を現した彦三はおみちを犯そうとした.
おみち「指一本触れて御覧.あたしは知っている.旦那様を殺したのはお前だ.
可哀想におのぶまでも.」
だが彦三は開き直り,おみちを犯した.
犯されるおみちの方を清太郎が向いていた.
翌日.川端でおみちにやいと屋が声を掛けた.
やいと屋「御新造さん.」
おみちはやいと屋の方を向いた.
やいと屋「諦めちゃいけませんぜ.」
おみち「やいと屋さん.」
やいと屋「貴方にも見当はついていると思いますが,
ご主人を殺したのは彦三です.」
おみちは泣いた.
おみち「彦三が憎い.旦那様の恨みを,恨みを晴らしたい.」
やいと屋「恨みを晴らす手立てがないわけじゃありません.
世の中のためにならねえ許せぬ奴らを始末してくれる,裏稼業のあるのを,
あたしゃ知ってますよ.」
おみちは金を出した.
おみち「これでお願いします.」
こうしてやいと屋の思惑通り,仕事になった.やいと屋が三両取るのを見て
主水「おい,なんだい,そりゃ.」
やいと屋「今回,だいぶ元手が掛かってるんだよ.」
出かけようとしたやいと屋は下駄を履き損じたので
やいと屋「畜生,縁起でもねえ.」
そこで碁石を取り,良い,悪い,良い,
と碁石占いを始めた…馬鹿馬鹿しい(剣之介談).
彦三は美濃屋で大騒ぎしていた.彦三が席を外した時,反物が落ちた. それはやいと屋がわざと落とした物.彦三はやいと屋の鍼の餌食になった. 仙八は屋台で呑んでいた.そこへ主水がやって来た. 主水は同心達が通り過ぎた後,仙八が屋台を離れたところを叩き斬った. お咲をやるのは剣之介だ.まず捨三がわざとお咲を狙って射つ. お咲の注意が捨三に向けられている隙を突き, 後ろから剣之介が襲い掛かり,お咲をやった.
仕事終了後,主水は家に帰ってきた. りつは戸締りをしっかりするようにと言うのであった.