脚本は中村勝行.監督は大熊邦也. シリーズ通算200回のこの作品には旧作でレギュラーを務めた人が大挙登場. ただ,この作品は通算200回と言う事を意識して書かれた訳ではありません. ゲスト出演シーンはその場で変更して追加されたものだそうです. また作品自体も中村勝行さんお得意の難関突破編で面白く出来上がっています.
札差の三原屋を出た女おたか(夏純子)は煙草を買いに行く途中,
ぼんやり歩いていたため,
水を撒いているお店の女将(中村玉緒)に水を掛けられてしまった.
女将「ちょっとあんた,どこ見て歩いてんのや.
わてが悪いんのと違うで.あんたが悪いんやで.」
さておたかは自分と良く似た女(夏純子)が歳取った父親を連れて歩いていくのを,
見かけた.
さて捨三は幼馴染のお弓(夏純子)と再会していた.二人とも大喜びした. お弓は父親を連れていた女だ.お弓の父親は体を壊し, 50両の借金を作ってしまった.その為, お弓は年季四年で女郎屋の吉野屋に売られ,江戸に出てきたばかりだった. それを聞き,捨三はしんみりとしてしまった.今回はここでタイトル表示.
その夜.三原屋にお艶(夏純子)を頭領とする盗賊一味が押し入った. お艶は先程のおたかだ.翌日.三原屋の前を蜆売り(沖雅也)が通る直前, 同心加瀬(西山辰夫)と岩村(波田久夫)が三原屋にやって来た. 有名な盗賊一味田舎屋お艶の仕業だ. 三原屋は信州から三日ばかり前に来たお弓と顔が良く似ていたと加瀬達に言った. さて主水は加瀬と岩村に出会った.加瀬と岩村は南町の定町回り. 月番中にお艶を召し捕らないと左遷される,と主水にこぼした. それを聞き,主水は牢屋見回りの後任ができたとほくそ笑んでいた. さてせんとりつと千勢が傘を届けに出かけると, 犬を連れた立派な女将(草笛光子)に出くわした. ちなみに「さすらいの唄」のメロオケが流れていた. せんとりつは加瀬と岩村を見て, 同じ同心でも定町回りと牢屋見回りとでは違うのだろうなあ,と嘆いていた. さて盗賊一味のボスお艶は替玉を使って逃げる作戦を思いついていた.
せんとりつは加瀬と岩村が羨ましいと昼間のことを嘆いていた. 主水は月番中に捕まえなければ二人は左遷になると言った. すると打って変わってせんとりつは「千載一遇の好機」と大喜びするのであった.
加瀬と岩村が,月番があと5日で終わってしまうのにお艶が捕まらない, と嘆いているとお艶が見つかったとの報せが岡引から入った. さて「望郷の旅」のメロオケが流れる中,おでん屋の主人(中谷一郎)が登場. 主人は出前に出るので後を頼むと客に言ってその場を立ち去った. その屋台の客とはお艶だ.お艶は加瀬と岩村と岡引が来たので,逃げた.一方, お艶の手下玄蔵(穂積隆信)と八十吉(田畑猛男)は女郎屋でお弓を眠らせた. そこへお艶が逃げ込み,お弓と服を取換えた.やって来た加瀬と岩村は, お弓をお艶と間違えて召し捕ってしまった.
お弓は何かの間違いだと言ったが,加瀬と岩村は信用しなかった.
お艶の手口がこうだったからだ.まず田舎出の百姓娘に化けて信用させ,
奉公人として店に入る.そしてその後,店に手下を手引きする.
三原屋でお艶は武州熊谷出のおたかと名乗っていた.
そこへ主水が囚人を引き取りにやって来た.
主水「これ,お艶ですか?」
お弓「違います.」
その囚人が「お艶」だと知った主水はがっかりするのであった.
お弓は「違います.」と何度も何度も叫んでいた.
一方,捨三は臍繰りを数えていた.だがお弓を身請けするには足りなかった.
そこへ主水がやって来た.主水に捨三は仕事はないかと訊いた.20両要ると言う.
どうしたんだと主水が訊くと,捨三は,
信州の追分に住んでいた頃の幼馴染お弓とばったり会った話をした.
捨三は主水を連れてお弓のいる女郎屋へやって来た.
早速捨三はお弓を指名し,主水は別室に控えることにした.
さて「お弓」は身請けされることになっていた.
捨三は「お弓」が身請けされると知って驚いた.
やって来た「お弓」は昨日のお弓とは違い,捨三には他人行儀だった.
お艶「あのう,お客さんにはご贔屓になりまして…」
しかも煙管の使い方が巧みだった.
捨三「贔屓?」
お艶「あたし,この度,身請けされることになりましたので.」
その様子を主水は盗み見ていた.
捨三「なんだって,おい.お弓ちゃん.いったい誰に身請けされたんだよ.
いけねえよ,お弓ちゃん.こんなとこに来る客なんか,
ろくな奴じゃないんだから.」
だが「お弓」ことお艶は捨三を冷たく突き放した.
そこへ「お弓」を身請けした人(穂積隆信)がやって来て,
「お弓」を連れて行ってしまった.勿論,身請けしたのはお艶の手下玄蔵だ.
主水は大笑い.
捨三「信じられねえなあ.あのお弓ちゃんが…旦那,ありゃまるで別人だよ.」
それを聞いた主水も怪訝な顔をしていた.
主水「あれ,俺,あの女,どっかで見た気がすんなあ.」
そこへ代わりの女郎がやって来た.
「お弓」の代わりに来た女郎は前の晩に「お艶」が捕まった話をした.
それを聞いた主水はピンと来た.
「お艶」の声「違います.あたしはお弓です.違います.」
主水「捨三,ありゃ,おめえが言うように,やっぱり人が変わっちまったんだ.」
捨三は怪訝な顔.
主水「この煙管だ.山出しの女があんな器用な煙草の吸い方出来るもんかい.
おめえの言う通り別人だなあ.」
明後日の朝に「お艶」が打ち首になると決まったと聞き,捨三は半狂乱になった.
そのとき,やいと屋が飛んでもない作戦を思いついた.
牢の中にいるお弓とお艶を刷りかえるのだ.主水は渋ったが剣之介は乗り気だ.
捨三も懇願した.沈黙が流れた後
主水「そうかあ.しょうがねえなあ.勝負賭けてみるか.」
捨三「旦那.」
主水「剣之介,お歌,俺に預けてくれ.」
剣之介は渋ったが
やいと屋「おい,一か八かの大勝負だい.捨三.仕事料もらうぜ.」
捨三「え? あっしから取るんで?」
やいと屋「当たり前だ.仲間内でも銭は銭.たっぷり弾んでもらわなきゃ,
あたしゃ似合わねえ.」
こう言ってやいと屋は捨三の臍繰りを分捕って分けた.
剣之介はしっかりお歌の分を請求した.
主水「明日の晩は宿直だ.段取りは俺がつける.」
その夜.中村家では「お艶」が捕まった話で持ちきり.
せんとりつが嘆く中,主水が作戦を練っていた.
主水「明日,夜四つ,おつや(藤田まことさんの読み間違い)を牢役所に担ぎ込む.
隙を見て獄舎の裏に運び込み,四つ半,お歌がお弓を眠らせる.
二人を掃除口で入れ替え.」
翌朝.お歌はやいと屋のところへ来て西瓜を相手に鍼の練習.
剣之介は籠を担いで走る練習.そのとき,
岡引(大塚吾郎)が剣之介に目をつけた.剣之介ピンチ…と思ったら
岡引「あら,あたしの好み.」
そう.岡引は源五郎だったのだ.剣之介は急いで逃げた.
源五郎「あの人も淡白だわ.」
余談だが,今回オリジナルのキャラクターで登場するのは大塚吾郎さんだけだ.
主水はお歌を牢の中に連れ込んだ.ちなみに銀次の入牢期限はあと1日.
延ばしてくださいよ,と銀次が頼み込んでいると囚人の妻(野川由美子)が,
子供を連れてやってきた.主水は妻と子供を追い返した.
ちなみに子供の数は赤ん坊も含めて
主水「7人か.よく頑張りやがったもんだ.」
主水は銀次に掃除口からゴミ出しをさせた.
ゴミを受け取る屑屋(田村高廣)は
屑屋「ええしょっと.あーあ.世の中不景気だとろくなことねえなあ.」
と呟きながらゴミを運んで行った.
銀次は「鍵はあっしが掛けてきます.」と言ったが,
杜撰な掛け方をしたので錠は開いていた.勿論,主水の差し金.
銀次は何のためにこうさせられたのかを知らなかった.
その晩.やいと屋は占星術をしていた.辰巳の方角に星が流れたので不吉だ, とやいと屋が言うのを聞き,馬鹿馬鹿しいと剣之介は言った. そこへ捨三が戻ってきた.お艶が見つかったというのだ. その頃,やいと屋の懸念が当たったのか, もう一人の牢屋見回り同心木久原(長谷川明男)が牢屋敷にやってきた. 運が悪い事に石出の命令で宿直を命じられたのだ.不吉だ.
「荒野の果てに」のメロオケが流れる中, 鍼医者(緒方拳)がお艶の肩に鍼を刺した.治療が終わった後, お艶と玄蔵と八十吉は事が巧く運んで大笑い.だがその時赤い光が. 玄蔵と八十吉は剣之介に一度にやられ,お艶はやいと屋の鍼で気絶させられた. そして剣之介はお艶を背負って夜の街を走った.
四つになった.主水は見回りに出ようとしたが,
寝ていた木久原が起きてしまった.仕方無く主水はお茶っ葉を入れ替えろ,
と木久原に言った.さてお歌がお弓に鍼を刺そうとした時
囚人(三島ゆり子)「なりませぬ.なりませぬ.」
寝言を呟いた.寝言だと確かめたお歌はお弓に鍼を刺した.
さて外へ出た主水は「行き倒れを発見.」
仮眠所にお艶を連れ込んで寝かせた.死んだようにぐったりしているので,
主水は木久原を坂町二丁目のやいと屋のところへ行かせた.その間に,
主水はお艶を背負って拷問部屋の前へ行き,お艶を寝かせた.
さらに拷問に使う首枷の支度をした.
木久原がやいと屋を連れて戻ってきた.白々しく木久原を連れ, 主水は見回りに行った.木久原はお茶の飲み過ぎで厠へ行きたいと行ったが, 主水は物音がする,と強引に木久原を拷問部屋に連れて行き, まんまと首枷をさせることに成功.主水は牢屋の前へ行くと, お歌が大声を出した.囚人の一人(お弓)が死んだように動かないというのだ. そこで主水はお歌に手伝わせ,どうどうとお弓を背負って行った. そしてお弓とお艶の服を取換え,見事,お弓とお艶を交換する事に成功した. 医者(石坂浩二)の手当てで牢の中のお艶は息を吹き返した. お弓をやいと屋のところまで連れて来た主水は重労働だとこぼしたが, やいと屋に言われるまで木久原のことをすっかり忘れていた. 主水は木久原の首枷を外し,さらに厠へ行かせた後(?), 木久原にやいと屋の手伝いをさせた.外では剣之介が待っていた. お歌は明日,主水が出す手筈になっていた.
翌朝.刑場で.
お艶「何故だ.あたしゃ田舎屋お艶だよ.
お前達みたいな木っ端役人に首切られるわけないじゃないか.」
主水「うるせえ.田舎屋お艶だから首切るんじゃねえか.」
お艶「違う.首切られるのはお弓なんだあ.」
主水「お前,何寝言言ってるんだ.楠本さん,お願いします.」
なおもお艶は「死にたくない.」と叫んだ.
主水「三途の川の渡し賃がたったの一両か.楽じゃねえや.」
こうしてお艶は「死にたくない.」とか「あたしゃお艶なんだよ.」と叫び,
首を切られた.
お弓は捨三の洗濯屋で目を覚ました.
驚くお弓に捨三が本物のお艶が捕まったと教えた.
お弓はこれで郷へ帰れると大喜び.郷には許婚が待っている,捨三さん,
色々とお世話してくれてありがとう,元気でね,と言ってお弓は去った.
お弓を見送った後
捨三「そりゃねえぜ.」
捨三は水を浴びるのであった.