「必殺仕業人」第15話「あんたこの連れ合いどう思う」

脚本は中村勝行.監督は大熊邦也.珍しく菅貫太郎さんが被害者役です. さて菅貫太郎さんを毒牙にかける悪い奴は誰だ?

夫婦連れ(菅貫太郎と市原悦子)が神社にやって来た途端, 喧嘩に遭遇してしまった.妻のお福(市原悦子)は怖がったが, 夫の岩松(菅貫太郎)は威勢がいいやといい気分. そして岩松は質屋に入り,腰に差した刀を片に10両を要求したが, 主人が渋ったので1分に負けた.そして岩松は商人になって一旗挙げるんだ, と言い放ち,妻のお福を驚かせるのであった.今回はここでタイトル挿入.

さて桜の花の下でお歌と剣之介が芸を見せていたが, 相変わらず見るものはあまり少なく,一文も見入りはなかった. そこへ先ほどの岩松婦が登場.なんとお福に三味線を弾かせ, 岩松はどこかへ行ってしまった.お福の三味線の腕と歌はうまく, 思わずお歌と剣之介も見入るほど.たちまち人が集まってきた. さて岩松の行先はと言うと,博打場.お福の籠にはどんどん金が入った.
剣之介「どこが違うんだろう.」
お福は場所を借りたお礼にと少しお歌達に分けようとしたが,お歌は断った. 芸人の面子がつぶれるからだ.そこへ岩松がやってきた.

さて千勢は「一日一善」について講義した.そしてお習字.せんもりつもお習字. 松井君も大熊君も藤田君もうまく書けた.松井君は誰だか知らないけれど, 大熊君と藤田君は元ネタがあるに違いない.閑話休題.その晩,村田様の奥方が, いつもお世話になっているお礼にと上げ底の饅頭の菓子折を持ってきた. 喜んだりつは主水に,ここを建て替えて手習い塾にしよう,と言い出した. せんも賛同した.ここは同心の官舎だと言う主水に, せんとりつは同心株を売り払って土地を買えばいいと言い出した. なんと主水は下男に使ってやると言う.ご先祖様に申し訳ない,と言ったが, せんとりつは,婿養子のあなたに御先祖のことなど言う資格はない, と言い放った.

翌朝.相変わらず牢を出るのは嫌だと騒ぐ銀次の言葉を無視し, 主水は,同心株を売ってでも,と言われた事について悩んでいた. 主水は婿養子なので迂闊には逆らえないのだ. 忠助は公事師に相談してはどうかと忠告した.公事師とは御定法に精通し, 離婚問題,跡目相続,金の貸し借りなど万訴え事をうまく扱ってくれる人の事だ. 今で言うと弁護士のようなものだろう.

お福は岩松から居酒屋に奉公へ出ろと言われ,嫌がった. 怒った岩松は離縁するといって出て行った.慌てて追いかけるお福. ちょうどその頃,公事師の早瀬源四郎の店の前で主水が思い悩んでいた. そこへ岩松とお福がやって来た.主水は,岩松婦喧嘩だな,と見抜き, 早瀬のお店へお福岩松婦を連れ込んだ.早瀬(清水紘治)は, 協議離婚の訴状を書けばいいんだな,と言った.岩松はそうだと言った. だがお福は心を入れ替えて働くといったので,岩松はその話を取り下げた. その間,主水は協議離婚の方法について調べまくっていた. お福岩松婦が帰ったことにも気づかなかった主水に早瀬は相談料1朱要求した.

さて大黒屋ではやいと屋が主人の藤兵衛(永野達雄)に灸を据えてやっていた. 大黒屋は女運が悪いとこぼしていた.後妻のおはまは芝居見物など遊び道楽. 連れ子の吉之助も母親に似て遊んでばかりだった. だから離縁の手続きをしていた.だが大黒屋は知らなかった. おはま(松村康世)は早瀬と浮気していた. しかも大黒屋は早瀬に協議離婚の手続きを頼んでいたのだ.

ある夜.居酒屋で主水はお福とまた会った.主水は呆れ返り, あんな岩松なんか別れちまえと言った.お福は,あの人は度量が大きいんだ, いつか大きいことをやるよ,と言っていた.その頃,岩松は博打をしていた. 博打場から出てきた岩松は銀次から金を要求された.だが小悪党の銀次は膝が震え, 呆れられる始末.翌朝.岩松と銀次は二人で組み,死骸役の銀次と一緒に, たかりを働いた.吉之助(高峰圭二)は,面白い男だ,と岩松に目をつけた. 吉之助はおはまと早瀬とぐる.三人は岩松を利用して何かやろうと考えた. 番屋から岩松はどこかへ連れて行かれ,銀次は二,三日入牢になると聞き,大喜び.

お福は牢屋敷へやってきて岩松がいないかと聞いた.主水はいないと答えた.
お福「ほんとにあの人,どこ行っちゃったのかしら? 思えば今まで苦労ばかりさせられて…本当に殺してやりたい.」
これを聞き,主水は
主水「殺してえんなら,すぐ請け負ってくれる奴が知ってるぜ.」
と話を持ちかけた.だが
お福「殺したいほど好きなのよ.」
恋は盲目とはよく言ったもんだ.
お福「きっと帰ってくるわ,今に.」
呆気に取られる主水を置いて,お福は去って行った.
主水「びっくりした.」

その頃,岩松に早瀬が仕事を持ちかけていた. 大黒屋藤兵衛は心臓の発作でいつぽっくりいくかわからない. が跡目を継ぐべき後妻と連れ子はいつ追い出されるかわからない. もし藤兵衛が死ねば大黒屋の身代は宙に浮く. それを餌に早瀬は岩松に話を持ちかけた.お福を大黒屋に奉公に出し, もし大黒屋がお福を気に入ればお福に大黒屋の身代が転がり込む. しかも離婚手続きの書類を書いているのは早瀬だ. 早瀬が遺言状に手を加えることもできる.早瀬は五両を岩松に渡し, お福を大黒屋に会わせる話を持ちかけた.

騙された岩松はお福に大黒屋藤兵衛と酒の相手をしてくれと頼んだ. お福は快諾した.こうしてお福は大黒屋と酒を呑んだ.お福は越後の生まれ. 大黒屋はお福を「先生」から紹介されたので,その話をした. お福は大黒屋が「先生もいい女を紹介してくれたねえ.」と言ったので, 「あの人はおっちょこちょいなんですよ.」と言った. お福は「先生」が岩松のことを言っていると思ったのだ. その頃,奥方と早瀬はほくそえんでいた.これは不義密通だ. 訴えれば離婚はうまくいく.そこへ岩松が大黒屋へやってきた. だが岩松は吉之助に刺された.その足で岩松は大黒屋に踏み込み, 大黒屋を刺した.瀕死の岩松はお福に五両を渡し,言った.
岩松「これは,これはお前の銭だぜ.」
お福「誰がこんなに酷いことを.」
岩松「ああ,ほら,公事師の早瀬だ.あの野郎に騙された. あの大黒屋の女房と息子もぐるだぜ.」
お福「何であいつらがこんなことを.」
岩松「あ,お,この世なあ,上には上がいるもんだぜ. 俺みてえな悪党たぶらかすなんて,え.ばーかな. あんなのは極悪人って言うもんだ.」
お福「あんたは悪党じゃないよ.なーにが悪党なもんかあ.しっかりおし.」
岩松「ああ.一旗挙げるまではよ,へ,へ,くたばってたまるかってんだ.」
そう言い残して岩松は死んだ.
お福「あ,あんた.あんた.あんたあ.あんた.あんたあ.あんたあ. 殺されたあ.殺されたあ.殺されたあ.うちの人が殺されたあ. 早瀬が殺したあ.早瀬が殺したあ.殺されたあ.」
そう絶叫しながらお福は夜の街を走るのであった. 鬼気迫る市原さんの演技は必見だ.

これで幸せになれるじゃないかという主水にお福はあの公事師を捕まえてくれ, と言った.それは無理だと言う主水にお福は何でもいいから公事師を殺してくれ, と言った.早速主水はこれを仕事にした.
捨三「その早瀬って公事師が御定法を逆手にとって, 大黒屋乗っ取りを企みやがったってわけですね?」
やいと屋「結局馬鹿食ったのはその岩松って言う小悪党一人か.」
剣之介「やたらと面白いが,風変わりな男だったな.」
主水「考えてみればあのお福って女も可哀想な女だ. くだらねえ男に振り回された挙句,とうとう独りっきりになっちまいやがった.」

やいと屋は花札で縁起担ぎ.8月,1月,8月,1月と出して, 「盆,正月,盆,正月.こりゃ,めでてえねえ.」さらに4月,8月,3月, 2月の札を出し,「仕業人」だって.やいと屋はその足で大黒屋の奥方をやった. 主水は
主水「うちのかみさんがね,間男したんですよ.その場合, あたしがその男を殺したらですねえ,罪になりますか?」
早瀬「話は最初から聞こう.お主の名前は?」
主水「はい.南町奉行所内牢屋見回り同心の中村主水と.」
早瀬「役人か.女房の名前は?」
主水「お浜と申しますが.」
早瀬「お浜!」
驚く間もなく早瀬は主水に突き殺された. ちゃっかり主水は1分の相談料を取り返した.馬鹿息子をやるのは剣之介だ. 博打場で博打をしていた馬鹿息子吉之助に捨三が声を掛けた.
捨三「吉之助さんですね.おっかさんが酔っ払ってますよ.」
呼び出された吉之助は木材の陰でよろけている女の手を見た. だが母と思ったのはお歌.あっと言う間に馬鹿息子は剣之介に仕置された.

さて千勢のところに村田の奥方が乗り込んでいた. なんと息子の真一郎がいかがわしい裸女の絵を描いてばかりだというのだ. その頃,主水は紙と筆を買って帰っていた. だがせんとりつはもっともらしい理由を述べ, 要らないので返してきてくれと言い出した. それを聞きながら主水はにんまりするのであった.

剣之介とお歌はお福を見かけた.今日は商売をやめて帰りましょう, とお歌は言い,剣之介とお歌は帰るのであった.

「必殺仕業人」へ 「必殺シリーズ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp