脚本は松田司.監督は松野宏軌.
捨三のところへ旅装束の娘(浅利香津代)がやってきた.
娘は捨三に「人を5人殺して下さい.」と言い出した.
娘「あなた,殺しを請け負う仕業人の捨三でしょう.」
捨三は笑ってごまかし,忙しいんだ,と言って中へ入った.
とりあえず娘は去って行った.
剣之介とお歌が芸を見せていると,そこへもあの娘が現れた.
娘「仕業人の赤井剣之介さんでしょう? 人を5人殺してください.」
お歌と剣之介は慌ててごまかし,その場から立ち去った.
その晩.娘はやいと屋の治療を受けていた.
やいと屋が三里のツボに灸を据えた途端
娘「人を殺して欲しいんです.5人殺して欲しいんです.
仕業人のやいと屋又右衛門さんでしょう.」
やいと屋は一生懸命ごまかしたが
娘「私,ある方に聞いたんです.
江戸には仕業人という人がいて,お金で恨みを晴らしてくれるって.」
やいと屋は噂には聞いたことがあると必死にごまかすのであった.
その夜.橋を渡る主水に
娘「八丁堀の中村主水様ですね.牢屋見回り同心の中村主水様ですね.」
主水「はい,あたしが中村主水だったらどうだと言うんですか.」
娘「男を5人殺してください.」
主水「何を? お前,変なこと言いやがるとしょっ引くぞ.」
主水も慌ててごまかした.とりあえず立ち去った娘の方を,
主水はじっと見ていた.今回はここでタイトル表示.
捨三の洗濯屋に仕業人全員集合.やいと屋は娘を始末すればよかったと言った.
中に入って相談した結果,捨三が娘の居場所を調べ上げることになった.
やいと屋「ちょっと待った.女はあたしの専門だ.あたしが引導渡しますよ.」
だが探す必要はなかった.捨三が戸を開けると,そこに娘がいたからだ.
早速やいと屋は娘を始末しようとしたが,
剣之介は娘に自分達の事を話した奴のことを聞くのが先だと言い,
話を聞くことにした.娘は武州埼玉中川村の庄屋の娘お染だった.
本筋とは関係ない話だが,関東地方では「庄屋」ではなく「名主」と呼ぶ.
閑話休題.昨年の秋,取入れが終わった頃に,
その村へ犬村縁十郎一座がやってきて白浪五人男を上演した.
その面々は菊三(嵐圭史),月之介(中村靖之介),三五郎(北相馬宏),
雪之助(嵐まこと),花之助(里吉健)の五人.
娘は弁天小僧を演じた菊三(嵐圭史)と親しくなってしまった.自分の屋敷で,
菊三はお染に役者を辞めて結婚してくれると言い,お染は大喜び.
だが喜びも束の間,そこへ4人盗賊が入り込んだ.盗賊達の手には白粉の痕が.
菊三と同じ物だった.つまり,5人は本物の白浪五人男,
つまり盗賊だったのだ.お染は田や畑を売り払って年貢を作り,
菊三のあとを追った.だがお染は縁十郎達に川へ投げ込まれてしまった.
そして「ある方」から助けられ,仕業人のことを教わって江戸へ出てきたのだ.
お染は「ある方」の名を言おうとしなかった.主水は,じゃあ,死んでもらうぜ,
と言った.お染は弟,妹,父,母の仇を取って欲しい,と懇願し,
その後なら死んでもいい,と言った.それを聞いた剣之介とやいと屋は乗った.
十二両出すと聞き,捨三も乗った.縁十郎一座の行方は芸人のはしくれ,
剣之介が調べることにした.通行手形は主水が調達できる.
だが主水は役所勤めでその上旅に出るとなれば,りつが連れてくれ,
とせがむかもしれない,と渋った.だが剣之介が,自分もお歌を置いていくんだ,
というのを聞き,主水は自分も旅に出る算段をつけることにした.
捨三はお染を監視するために江戸に残ることになった.
剣之介とお歌は屋台で聞き込み.デロリン祭文の瓢念(広沢瓢右ヱ門)から, 縁十郎一座が安房へ出かけていると知った. 主水は千勢から下総の方の道中記や地図を貰うことにした.そのとき, 主水は千勢の部屋で好色本を発見.りつは出張手当が少ないことを心配. せんは内職の傘貼りにせいを出した.さらにりつは飯盛り女の話をし, そっちの心配もした.そこで主水は,今度帰ったら花見に出かけよう,と言い, せんとりつを喜ばせた.りつはあっちの方をねだったが, せんが婿殿は早発ちと言って,それとなく邪魔をした. さらに土産は「甘くてやわらかいもの」と注文して,またりつの邪魔をした. やいと屋は江戸から安房への方角が辰巳,しかも運勢が暗剣殺だと知り, 縁起を担ぐため願掛けをしていた.
「必殺仕置人」のエンディングでよくかかっていた曲に乗せ,
主水,剣之介,やいと屋の三人は出発した.お歌は置いてけ堀.
お歌はやいと屋へ行ったが,やいと屋も不在.
お歌「とうとう行っちまったんだね.こんな日がいつか来ると思ったけれど.」
主水達は途中で渡世人から「おひけえなすって」とやられたが,
剣之介が何とかやり過ごした.その頃,お歌は犬村縁十郎のことを思い出し,
一安心.主水達は何とか犬村縁十郎一座のいる村に到着した.
その夜.犬村縁十郎達は村の者に稽古をつけていた.いよいよ明日が興行だ. そしてその夜が盗みの仕事に入る時でもあった.あの時と同様, 菊三が庄屋の娘をたぶらかし,その隙に縁十郎達が盗みに入ると言う寸法だ. 早速主水達三人は縁十郎一座のあとを追いかけた.だが, 彼らの姿を見失ってしまった.その村の庄屋に縁十郎達は押し入り,皆殺し. 金を盗んで行った.そして盗みが終わったと聞いた菊三は娘まで殺してしまった. 主水達が庄屋の屋敷に着いた時は全て済んだ後だった. 主水達は縁十郎達が役者の衣装へ着替えるところを襲おうとした. 縁十郎達は水車小屋に潜り込んだ.だがここでも一歩遅く, 主水達が着いた時は彼らが去った後だった.運勢が暗剣殺だと懸念するやいと屋. 主水は翌日の興行の時にやろうと言い出した.
その頃,捨三はお染と話をしていた.お染は捨三の仕事を手伝っていた. 捨三はお染さえよかったら洗濯物手伝ってくれてもいいんだと言いかけたが, 客が洗濯物を取りにきた.出てきたお染を見て, 客は「いつの間にこんなにいいお嫁さん,もらったんだい.」と言ったが, 捨三は「妹だよ.」と言ってしまった.
そして興行の日.演目は白浪五人男.今回はこれに合わせて主水達が殺しをする. 剣之介が捕り方に扮し,やいと屋は黒子. そして主水は舞台の袖から殺していった.そして演目終了とともに, 一座全員が死亡.仕業人は見事に仕置を成功させた. ちなみに剣之介は今までのようにざんばら髪にするわけではなく, 髪を少しだけ使って絞殺.以後,この技を多用します.
仕置を終えて
主水「思わぬ大仕事だったなあ.この調子じゃあ,いつどこで命を落とすか,
わかりゃあしねえや.」
剣之介「八丁堀.俺達の素性を知っている奴がいたら尚更だぜ.」
やいと屋「まあ,そんときの覚悟はできてますがねえ.これで兎に角,
江戸へ帰れるんだ.こんなありがてえことはねえやい.」
お染の声「仕業人の皆さん,ありがとうございました.
染は何とか自分の力で生きていけそうです.捨三さん,短い間でしたが,
本当に親切にして頂いてお礼のしようもありません.
お渡ししたあの十二両は私の体を売ったお金ですから,いつまでも,
ここにいる訳には.あなた方のことは決して忘れません.
でも,あなた方のことを教えてくれた方の名を言わなかったように,
あなた方のことも決して他人様には喋りません.ご安心下さい.染.」
主水,剣之介,やいと屋は手紙を置いて洗濯屋から去った.
捨三は座り込んで何かを思っていた.
そして皆日常に戻っていった.
剣之介は白浪五人男の口上を述べ,お歌に「いいだろう?」と自慢.
お歌「あんた,今までどこで何やってたの?」
やいと屋は治療に専念.そして主水が牢に戻ると銀次は五十叩きの刑を受け,
これからは生き方変えますぜ,と叫んでいた.
主水「馬鹿野郎.おめえが生き方変えられるなら,
俺の方がとっくに変えてらあ.十ばかり追加してやれ.」