「必殺仕業人」第8話「あんたこの五百両どう思う」

脚本は中村勝行.監督は大熊邦也.

剣之介が旧友の侍(織本順吉)を捨三の洗濯屋へ連れてきた. 彼は上州沼木藩の隣国立石5万5千石の家老牧野十郎左衛門だった.牧野は, 立石藩の江戸家老坂部将監(戸浦六宏)と用人赤松刑部(波田久夫)を殺してくれ, と頼んだ.相手が大物なのでやいと屋も主水も二の足を踏んだが, 事が成就した暁には500両出すと牧野が言った途端,目の色を変え, 引き受けることにした.一人の取り分は100両.仲介した剣之介の取り分は200両.
主水「捨三,この人(牧野)にお茶でも出して差し上げなさい.」
さらにこう言った.
主水「百両かあ.捨三.この仕事一つ決めたら,当分休業だ.」
さあ果たしてそううまくいくのか.見物だ.

牧野は江戸市中で剣之介を見かけ吃驚したと言う.そして牧野は話し始めた. 昨年の秋に藩主が高齢の為に家督継嗣問題がにわかに持ち上がった. これに乗じて坂部が藩の実権を握り,幼君を擁して悪政が行なわれていた. もちろん藩政改革派もいたが,坂部と赤松が徹底的に弾圧していた. 坂部一派が江戸を発つのも三日以内.また牧野は藩に戻り, 三日以内に金を作ると言う.だから仕事の期限は事実上三日間だ. 剣之介は金には興味がない様子だったが,お歌は目の色を変えた. 主水は油屋の株を買うつもりだった. やいと屋は家を改築するつもりで色々と大工の頭領に頼み込んでいた. 例によって縁起を担ぎ,やいと屋の注文は細かかった. 遂に主水は内職の傘貼りなんてやめてしまえと言い, そのうち百両手に入ると言い出す始末.色々妄想する主水を見て, せんは遂に「頭に来た」のかと考えた.そこへ玄覚が家賃を納めに登場. 「ご主人の周りに山吹色の光が見えます.小判が舞っておりますぞ.」 と玄覚は祈り叫んだ.が,主水がメザシを食べるのを見て怒り狂った. メザシは厄除けの御本体だと言うのだ.せんは以後気をつけますと言ったが, りつはあきれ返った.どさくさに紛れて主水は鯛の刺身をねだったが
せん「鯛が召し上がりたかったら,せっせと傘貼りをしてくださいませ!」
薮蛇に終わってしまった.

さて捨三が立石藩藩邸を探っていると国許から家臣が直訴にやってきた. だが坂部は容赦なく叩ききってしまった. さらに坂部はこれを牧野の仕業と見抜き,警戒を厳重にせいと命じた. 中村勝行さんお得意の難関突破物だ.表門も裏門も警備が厳重. 出入りの商人も裏門で通行手形を見せないと中に入り込めない. 期限はあと二日後.銭も二日後.それを聞いた主水ややいと屋は剣之介を責めた.
剣之介「おまえら,人を信ずるってことができないのか.」
やいと屋は激昂したが,結局やることにした.そのとき,剣之介が閃いた. 不浄門はどうかというのだ.見張りはいないが錠がかかっている, と言う捨三に剣之介はこう言った.
剣之介「どんな屋敷でも夜な夜な不浄門を出入りする奥女中がいるもんだ.」
やいと屋は出てきた奥女中をたぶらかすことにした. 主水は捨三を送り込むことにした. そして剣之介はお歌を女中として立石藩に送り込むことにした. やいと屋が家を買うつもりだと知ったお歌はやいと屋と意気投合. 何とお歌も家を買うつもりだったのだ.

剣之介の睨んだ通り,奥女中が不浄門から外へ出て若い僧と密会. やいと屋は縁の下から鍼を出して奥女中の足のツボを刺激し,足を痛めさせた. そして通りがかりの振りをして奥女中を屋形船へと連れ出した. やいと屋は奥女中の足を治し,不浄門の鍵をねだったが, 奥女中は鍵を渡すのを断り,さらにやいと屋の誘いまで断った. そこでやいと屋は「まだ治療は終わってませんよ.」と言い, 奥女中の足を痛めてやった.仕方なく奥女中は明晩はずっと不浄門を開けておく, と約束した.
やいと屋「畜生,このあま.明日会ったらただじゃおかねえぞ.」

さて牢内では相撲がとられていた.勝った銀次は褒美として放免させられた. たった二日ですよ,とごねる銀次に主水が耳打ちした.
銀次「がんばります.」
外へ出た途端,銀次は通行手形をくすね,十日間入牢と決まった. 主水は通行手形を手にして何事か考えていた.

その頃,お歌は立石藩に女中として潜り込んでいた. そして坂部に食事を持ってきてやった.坂部は用心深く,お毒見役を置いていた. その晩,お歌が中間報告.江戸家老の警戒は厳重. 部屋の外には見張りの侍がうようよいる.不浄門の鍵は手に入らなかったが, やいと屋一人なら何とか入れそうだ. やいと屋は隙を見て剣之介を入れることにした. だが主水が入る手立てが見つからない.主水は後で考えると言い残し, 牢屋敷に戻った.牢屋敷で主水は翌朝打ち首が行なわれることを知った. 試し斬りに使用される刀は上州立石藩からの物. それを知った主水は首切り役を買って出た.捨三は大工に化け, 銀次がくすねた通行手形を使い,何とか立石藩の藩邸に潜り込むことに成功した. そしてお歌の下調べに基づいて縁の下に潜り込んだ. お歌が薪を鋸で切る間,捨三も床を鋸で切っていた.

そして夜になった.主水,剣之介,やいと屋は捨三の洗濯屋に集合. やいと屋が不浄門から潜り込んだと同時に曲者が侵入. 義憤に駆られた立石藩の者が侵入したのだ.だが奮戦虚しく,彼は斬り殺された. これにより警戒がさらに厳重になってしまった. これでは剣之介を引き込むことが出来ない.焦るやいと屋. 剣之介は斬り殺された藩士が簀巻きにされ,大八車に載せられて運び出され, どぶに捨てられるのを見た.そして大八車の下にしがみつき, 何とか邸内に忍び込むことに成功した. 一方,主水は試し斬りの刀を預かると言う名目で堂々と藩邸に入ることに成功. さあ,仕事開始だ.お歌がお膳を下げに来たという名目で用人の目をそらした. その隙にやいと屋,剣之介,捨三の三人が江戸家老を縁の下へ運び込み, やいと屋の鍼で江戸家老は絶命.その頃,主水は用人から刀を受け取っていた. そして刀を改めるついでに用人を斬り殺した.
主水「なるほど.なかなかのわざもんだ.」
邸内では用人の赤松が殺されたと大騒ぎ.捨三が追手を引き付けている間に, 剣之介,やいと屋,お歌は脱出した.

翌日.お歌は買うつもりの家へ剣之介を連れてきた.だが
剣之介「所帯を持つつもりはないんだよ.」
と言い放った.剣之介はお尋ね者だからだ. 剣之介はその足でお金を取りに行こうと言った. そして捨三の洗濯屋に一同勢ぞろい.捨三は商売替えを考え, 洗濯物を放りっぱなし.そこへ牧野が戻ってきた.だが
牧野「全てが遅きに失した.立石5万5千石の藩庫はすでに底をついていた. 約束の金は払えん.すまん.」
剣之介は,こいつは昔から冗談が好きなんだよ,と笑ったが, 牧野は膝をついて倒れこんでしまった.何と
主水「腹切って死んでるぜ.
それを聞いた一同は二の句が告げず愕然とするのであった.ここで今回は終了. 一同の思惑は見事に裏切られて五百両は手に入らず, この稼業は当分休業にはならないことが決定したのでした. 悲劇と喜劇は紙一重と言うことですな.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp