脚本は国弘威雄.監督は工藤栄一.
忠助と二人して歩いていた主水は忠助から
忠助「伝馬町の給金だけでは老後は生きていけませんからなあ.」
と言われ,寒寒とした気持ちになった.そして独り酒を呑みながら呟いた.
主水「老後の蓄えのためにか.」
その頃,お歌と剣之介は芸を見せていた.だが白塗りが中途半端だったため, 客にも笑われる始末.そこへ主水,そして幼い娘(花紀芽美)を連れ, 目の見えない侍芦川次郎左ヱ門(村井国夫)がやってきた. 芦川は剣之介達の前で門付けを始めた. そこへしょば代をせびりに政五郎一家の面々がやってきた. 娘のおさよは泣いて「お父様」と叫んだ.思わずお歌は助けようとしたが, 剣之介が止めた.それを聞き,政五郎一家の面々は去って行った.
気になったお歌は親子のあとをつけていった.そして自分達の潜む小屋に, 親子を連れてきてしまった.おさよの歳は六つ.お歌は偉いわねえ,と言い, さらにずっと江戸に,とか,お母さんは,とか聞いた.だが芦川は, これ以上は聞かないでくれ,と言い,去ってしまった.
芦川は生駒屋の行方をたずねあるいていた.その頃, お浜という女郎が蔦屋で瀕死の状態で寝込んでいた. お浜は聖天の政五郎(深江章喜)に叩き売られてきたのだ. そこへ政五郎がやってきた.その様子を洗濯物を届けに行った捨三も見た. 捨三が出ようとしたところに,あの芦川とおさよがいた. 芦川とおさよは政五郎の子分に連れられて立ち退かされていた.
さてやいと屋はおしんと言う女を相手にしていた. 政五郎は芦川親子が生駒屋清三郎を探していると子分から聞き,素性を調べろ, と命じていた.捨三の洗濯屋で剣之介は主水に, あの芦川が寺で働けるように政五郎に掛け合え,と頼んでいた. そのとき,捨三は芦川親子が吉原で生駒屋清三郎を探していた話をした. それを聞いた剣之介は芦川に会い,なぜ生駒屋を探しているのかを尋ねた. だが芦川は「それだけは尋ねて欲しくない.」と答えるのを拒んだ. ちなみに芦川が腰に刺している刀は備前長船の作だった.
さて中村家の離れに新しい間借り人がやってきた.
彼は玄覚と言う名の修験者だった.せんは妾を間借りさせたことに懲りていた.
旦那が尋ねてきた時は眠れなかったのだ.
だから修験者なら女の問題は起きないだろう,と考えたのだ.
だがその考えは甘かった.帰ってきた主水に向かって玄覚が叫んだ.
玄覚「狐が憑いております!」
あの芦川は相変わらず橋のたもとで門付けをしていた. その前を生駒屋が通りかかり,血相を変えて政五郎の元へ駆け込んだ. 生駒屋は芦川の妻を寝取っていたのだ.政五郎は浪人者を使って, 芦川を始末しに行ったが,芦川は既に橋から去って行った後だった. その橋を剣之介とお歌が通りかかった.
さて蔦屋へあの芦川とおさよが乗り込んだ.そう. あの瀕死の女郎お浜は芦川の妻でおさよの母だった. お浜はおさよの声を聞き,飛び起きておさよの元へ駆け寄った. その様子を捨三も見ていた.
その日の夕方.捨三から事情を聞いていた剣之介は芦川に言った.
剣之介「奥方にお会いになったそうですね.」
それを聞いた芦川は全てを話した.芦川は膳所藩士で江戸勤めだった.
だが奥方は京都で生駒屋と逃げ,膳所に帰ってみると待っていたのは,
おさよと中間だけ.芦川は家事不行き届きの咎を受け,長の暇を与えられた.
寝取られた女仇を討つために芦川はおさよを連れて旅に出た.
おさよにこの旅の意味はわからないだろう.しかも芦川は目の病気を患い,
目が見えなくなってしまった.生駒屋の顔を知っているのはおさよだけ.
そして芦川は旅を続け,吉原でお浜と巡り合ったという訳だ.
しかもお浜は生駒屋に騙されて吉原に売られていた.
成敗してと懇願するお浜に芦川は言った.おさよには母親が要る.
そして蔦屋の女将さんに追い出されたと言うわけだ.芦川は剣之介に言った.
今更生駒屋を斬る気はない.斬ったところで帰参が叶うわけではない.
ただ一言,生駒屋から自分とお浜とおさよに「すまなかった」と詫びてほしい,
と芦川は考えていたのだ.
芦川は腰に刺していた備前長船を55両で売った. お浜を身請けするのに50両要ると言うのだ. 芦川は剣之介の付き添いを断っていた.何で生駒屋を許すんだ,というお歌に, 主水が言った.生駒屋を斬ったら,お浜も斬らなければならない,と. だから芦川は涙を飲んで仇討ちを諦めたのだ.その頃, 芦川は政五郎の手の者によって,ボロボロに斬られていた. おさよはちょうど通りかかったやいと屋によって助けられた. 政五郎の子分が去った後,おさよは瀕死の芦川にすがった. そして芦川はやいと屋に55両を託して死んで行った. うーん,話の流れから剣之介とお歌が仲介者になると思ったのに, いい意味で視聴者を裏切ってくれるものだ.
生駒屋が女を政五郎のところに連れこみ,売り飛ばす. 被害者はお浜だけではなかった.まず,政五郎が主水に斬られた. 生駒屋はやいと屋の鍼の餌食になった.そして芦川を斬った浪人には剣之介が. 見事,剣之介は芦川の仇を討った.
しばらく経って,おさよはお浜に連れられて去って行った.
そう.剣之介達は50両でお浜を身請けしたのだ.翌朝.
畳を虫干ししていると銀次が褌を盗んでいた.その日の朝に解放しになるので,
盗んだのだ.主水は呆れてしまい
主水「よし.夕方まで伸ばしてやろう.」
それを聞き,銀次は落胆するのであった.