脚本は保利吉紀.監督は松野宏軌. 今回は「助け人走る」#25「逃亡大商売」にも使われた逃がし屋ネタですが, それでも凡庸な作品ではありません. 必殺では珍しく被害者役で登場した大木実さんの悲劇がとても重い物だからです.
さてお澄は一生懸命離れを掃除していた. 普段なら窓拭きもしないのにだ.せんは欲求不満だと軽く考えていた. これが災難の始まりとも知らずに.主水が出かける時, お澄は旦那が来ると言った.嫉妬したりつは早く帰って来いと主水に行った. そして主水と入れ替わりにお澄の旦那が登場.薩摩からのお土産を渡した.
牢屋敷では礼願島へ忠助が出かけていった. 十五年ぶりにご赦免船に乗って戻ってくる甚八を出迎えるためだ. ちょうど銀次が牢を放免されるところだった.主水が盗みを三回働くと死罪だぞ, と言うと,銀次は,別の手を考えます,と答えるのであった.
忠助は甚八(大木実)を出迎えた.忠助は, 益田屋は甚八が島へ行ってから店が傾き, 甚八の子供勘太は薬問屋へ奉公に出されていた,と話した.それを忠助から聞き, 甚八は勘太に早く会いたいと思うのであった.甚八は方々を探し回ったが, 勘太の行方はわからなかった.
さて剣之介とお歌が芸を見せていたが,誰も足を止めてくれなかった. その隣ではあの甚八が飴を売っていた.お歌はお金を入れてくれと言った. だが甚八がお歌の芸を誉めたのでお歌は負けることにした. お歌は物を売っている若者を指差し,あんたも商売が下手だねえ,と言うと, 甚八はそれでもいいと答えた.甚八は勘太を探すために店を出していたのだ. そこへ大黒屋の連中がやってきてテラ銭を要求した. 若者は金を巻き上げられ,甚八の飴の屋台はぼろぼろにされてしまった.
その晩.主水,せん,りつの三人は内職の傘貼りをしていた.
離れではお澄と旦那さんが情事を開始.主水達は煎餅をかじり始めた.
お澄「うーん,また?」
仕方なくせんは内職の傘貼りを開始.主水が残りは私がやります,と言うと
せん「りつ.せっかくだから,休もうか.」
だが主水もせんもりつも眠ることはできなかった.
せんはお澄に出てってもらえと言った.そこへ旦那がやってきた.
お澄が腰を痛めたと言うのだ.早速主水はやいと屋を呼ぶことにした.
やいと屋のお灸は効き,お澄の腰は治った.
ついでにやいと屋は縁起が悪いので引っ越した方がいいともっともらしく言った.
こうして主水はお澄を追い出すことに成功した.
その頃,甚八は益田屋が江戸処払いになったと聞き, 忠助に,なぜ教えてくれなかった,と文句を言っていた. 甚八は若旦那の罪を被って島送りになったのだ.忠助は, 若旦那が土佐衛門となって佃島にうちあげられたこと, そして,若旦那の懐に書置きがあったことを話した. 甚八はショックを受けて去るのであった.
甚八は大黒屋に乗り込み,主人の仙蔵(南原宏治)に文句を言った.
甚八は若旦那を上方へ逃がすと言う約束で身代わりになったのだ.
仙蔵は「海が荒れれば積荷の一つや二つ落ちることはあらあな.」と言い放ち,
これで島の垢でも落とせと言って金を投げ与えた.怒る甚八.
大黒屋の手代が襲ってきた.もみ合いになった甚八は,
一人の手代を刺し殺してしまった.
仙蔵「おめえ,馬鹿なことをしたねえ.今,
おめえが刺したのは息子の勘太だよ.」
ショックを受ける甚八.勘太は三年前から仙蔵の世話になっていたのだ.
甚八は番所に突き出された.唐丸籠で甚八が運ばれるのを見て,
お歌は歌を歌ってやった.
甚八は明朝四つに打ち首と決まった.甚八を見て忠助は涙を流した.
忠助と入れ替わりに現れた主水は甚八から話を聞いた.そして
主水「おめえ,銭持ってるか?」
甚八「旦那,あっしの恨み.」
甚八は小判を主水に渡した.
甚八「これで心置きなく息子の後が追えます.」
主水「成仏しろよ.」
雪が舞う中,甚八は首をはねられた.それを見た忠助は思わず目をそらした.
早速主水は大黒屋を捨三に調べさせた.逃がし屋の尻尾を掴ませるためだ. 大黒屋は回船業も行なっており,船に乗ってもらうかもしれない, と聞かされた捨三は大喜び.その頃,大黒屋は逃がし屋の客を見つけていた. 男と女の駆け落ちだ.仙蔵は,海をちょっと回ってから殺せばいい,と言った. ちょうどお澄が引っ越す頃だった.主水はお澄の旦那に頼み込み, 旦那の口利きで大黒屋の船に捨三を乗せることに成功した. そして捨三は嵐の晩,仙蔵と大黒屋の手代,そして浪人が男と女を殺し, 甲板から海に投げ捨てたのを目撃した.
戻ってきた捨三は船酔いでヘロヘロ.
逃がし賃を取られた上に甚八は十五年も島へ送られたのだ.
金を取ろうとする捨三だったが,主水は剣之介に五両全部渡していた.
お尋ね者の剣之介を囮に使う作戦だ.やいと屋は文句を言ったが
剣之介「じゃあ,おめえ,やるか?」
やいと屋は言った.
やいと屋「絶対に死ぬなよ.」
これが仲間を思っての言葉かどうかはわからない.
剣之介「どうだかな.俺が戻ってこなかったら,香典代わりだと思ってくれ.」
そして剣之介はお歌の同伴を断り,愛撫してやるのだった.
剣之介が大黒屋に乗り込んだ頃, やいと屋は占い帖を見て辰巳が大凶で勝負事は三が吉と知った. やいと屋は一生懸命三が出るまで御神籤を引いた.
迎えた出航の日.やいと屋は大黒屋の番頭を仕置.浪人者は主水が叩き斬った. 一番の悪党仙蔵は剣之介に絞め殺され,剣之介は五両を奪還. 船から剣之介が出てきたところにお歌が現れた. 剣之介とお歌は抱き合うのであった.
また銀次が出戻ってきた.主水は銀次からの差し入れの鯛焼きを貰ってから,
言った.
主水「銀次,あんまり親を心配させるんじゃねえぞ.」
銀次「親の心子知らずって奴ですよ.がんばりまーす!」
主水「わかってねえよ.」
主水は呆れながら鯛焼きをほおばるのであった.