脚本は中村勝行.監督は大熊邦也.今回は銀次の出番が増えています. また今回はよくある話ですが,だからといって凡庸な内容ではなく, やっぱり暗いお話です.時折見せる銀次のギャグが隠し味になっているからです.
剣之介はお尋ね者だ.だからいつも白塗りの顔でいなければならない. 運が悪いことに,剣之介とお歌のいる場所の近くで女郎の死体が発見された. 御用提灯を見て慌てるお歌.そこへ岡引がやってきた. 岡引は剣之介の白塗りを落とすように言い出した. 慌ててお歌は自分達が芸人だと言った.芸を見せてみろ,という岡引に, 剣之介は居合抜きを見せた.納得した岡引は去っていったが, お歌はどこか落ち着ける場所へ行こうと言うのであった.
翌朝.牢屋敷では出戻りの銀次が放免になると知って嫌がっていた. さて捨三はお得意先で腰巻が一枚足りないと老女に言うと, 一人死んだのでそうなったのだと老女は答えた. そして剣之介は主水の勧めで訳ありの人間が集まる本所の「隠れ里」へ行った. そこは同心の手が伸びないところだった.
一方,銀次は主水に紹介された口入屋益田屋へ行き, 元締の長次郎(長谷川弘)に蔵前の両替商和泉屋の下働きの口を紹介された. なお銀次は働くのが苦手だとわがままを言っていたことを付け加えておく. 和泉屋では主人の藤兵衛(梅津栄)が, 息子の清太郎(佐々木剛)が布団に篭っていたので訳を聞いた. 何と清太郎はあの女郎殺しの犯人だった.清太郎は冗談で首を絞めたのだが, 女郎が抵抗するので力を入れ過ぎてしまったのだ. そこへ鳥越の宇之助という岡引がやって来た. 宇之助は例の女郎を連れ出したのが清太郎だということを聞き込んでいたのだ. 宇之助と入れ替わりに銀次が長次郎に連れられて現れた. 長次郎は岡引が来ていた事に気づいており, 何か揉め事があったら自分に言うように言うのであった.
隠れ里でお歌はのびのびしていた. ちょうど剣之介とお歌のような夫婦(小坂一也と赤座美代子)がいた. お歌は隠れ里を気に入るのであった.
その頃,主水は内職の傘貼りを手伝わされていた. 主水はお澄の部屋を覗こうとして,りつに注意された. そこへお澄がやってきて,一緒に芝居を見に行かないかと言った. せんは大喜びだったが,主水が鼻の下を伸ばしたのを見て, 嫉妬したりつは明日行く予定でしょと言い,内職の傘を渡すのであった.
和泉屋は清太郎のことを長次郎に相談していた. 長次郎は自分が何とかしてやろうと言った.替え玉を仕立ててやろうといった. 長次郎は裏では替え玉屋をやっていたのだ. そして本所の「隠れ里」から替え玉を調達しようとしていたのだ. そうとも知らずに剣之介とお歌は, 呉服屋の旦那だった男伸吉(小坂一也)と話し込んでいた.
隠れ里で夜が明けた.伸吉は仕事を探しに出て行った.
益田屋の手代由造(不破潤)が仕事を斡旋していたのだ.
だが元呉服屋は仕事にあぶれてしまった.すかさず由造は
手代「一人だけ別口があるんだ.銭になるぜ.」
それがどういう仕事かは元呉服屋に知る由もなかった.
やいと屋は女郎屋で女郎の治療をしていた. 女郎には背中に噛み付かれた傷があった.和泉屋の清太郎にかまれたというのだ. 女郎のお駒を殺した犯人が見つかったという報せが. 隠れ里の伸吉が犯人だというのだ.牢屋敷で伸吉が拷問されるのを, 主水と忠助が嫌そうに見ていた.
伸吉の女おとせ(赤座美代子)は伸吉のことを心配していた. 帰ってくるよというお歌に, 老人が「この町では一人や二人消えることはよくあるんだ.」と言った. 老人の言う通り,伸吉は死罪に決まった.伸吉は, 隠れ里のおとせに4両が縫い付けてある着物を渡してくれ,と主水に頼んだ.
一方,和泉屋は清太郎の身代わりを斡旋してくれた礼を長次郎に言い, さらに清太郎に女を世話してくれといった. その毒牙におとせが掛かってしまった. おとせは伸吉がいると騙されて連れ出され,清太郎の慰み者になってしまった. 逃げるおとせは由造に殴られてしまった.
隠れ里へ主水がやってきた.隠れ里の者は皆主水を遠巻きにして見るばかり.
それでも主水はおとせの行方を聞いたが誰も答えるものはない.
そこへボロボロになったおとせが戻ってきた.主水は例の着物を渡し,
伸吉から言付かったといった.そして主水は女郎殺しの件をおとせに言った.
最初おとせはもう一度調べてくれと言ったが
おとせ「差配師の由造という男を調べてください.」
だが主水は伸吉が首を斬られてしまったことを伝えた.
文字通り,顔が真っ白になり,おとせは外へ出た.
おとせ「罪もないうちの人を殺しちまって.汚い.お役人は皆汚いよ.」
言葉を失う主水.
おとせ「あんた達は人の命なんかより賂の方が大事なんだろう.
金なら,くれてやるよ!」
おとせは主水に4両の小判を投げつけ,井戸に身を投げて死んでしまった.
その足で主水は捨三のところへ行き,由造の素性を洗うように命じた.
そして捨三とやいと屋は和泉屋の件を全て調べ上げた.
主水「この金には伸吉の恨みだけじゃねえ.
井戸の底で泣いているおとせの恨みが篭ってるんだ.」
仕置へ出かけようとした主水は門前に傘が干してあるので嫌な顔.
それを注意しようとしたが,逆にせんに傘を届けてくれと言われてしまった.
仕方なく主水は傘を背負って仕置に出かけた.
やいと屋は足袋を履いて出かけた.女郎を上半身裸にして後ろ手に縛り,
お灸責めにする清太郎のところへやいと屋が現れた.
やいと屋は清太郎と一緒にツボを責めて女郎を気絶させてから清太郎を仕置.
剣之介とお歌は屋根を伝って益田屋に忍び込み,長次郎と由造をまとめて仕置.
内職の傘を背負った主水は和泉屋に傘を一本渡し,傘越しに和泉屋を刺殺.
主水「こらてえへんだ.また貼り変えだ.」
翌朝.忠助から主水は益田屋の長次郎が殺された件を聞かされていた.
そこへまた銀次が戻ってきた.
銀次「和泉屋の香典を二分ばかりくすねてきたんでさ.がんばりまーす.」
それを聞いた主水は呆れるのであった.