「必殺仕業人」第4話「あんたこの親子をどう思う」

脚本は安部徹郎.監督は蔵原惟繕. 前回は「犬のために身を売る娘」を描きましたが, 今回は「ある母子の異常な愛情」を描きます.

さて冒頭,主水は美人局(森塚敏)に引っ掛かり, 一晩で良いから菊坂の文次(三上左京)という男を牢から出せ,と強請られた. 今回はここでアバンタイトル表示.

その晩.主水は取調べと称して菊坂の文次を牢から連れ出した. 美人局こと金貸しの叶屋兵蔵は明朝明け六つに必ず返すと言った. 主水はうまい儲け口があるなら分け前をよこせと言ったが, 兵蔵は取り合わなかった.その様子を塀の反対側から捨三が見ていた.

さて藤屋の後家お遊(小山明子)は, もう元服したというのに息子の丈太郎(藤間文彦)と一緒の布団に入って添い寝. それを呆れながらも番頭の与助(大林丈史)は見て去った.
丈太郎「女の人ってみんな冷え性なんだね.」
それを聞き,好きな人が出来たんだね,と丈太郎に聞くお遊. その様子を兵蔵と文次が盗み見ていた.

捨三から兵蔵と文次が鳥越の藤屋に入ったと聞き, 主水はお遊は後家だがしっかり者だと不審な顔.主水とお遊は顔馴染だったのだ. 早速主水は藤屋へ行って恨みを買うようなことはないかと聞いたが, お遊はそんなことはないと言うばかり.主水はついでにお金も貰い,大喜び.

剣之介が芸を見せた後,お歌は捨て子を見かけた. その晩,お歌は捨て子のことを思い出し,寂しがっていないだろうかとか, あたし達も子供を持つときが来るかしら,と色々と考えていた. お歌も捨て子だったのだ.それを聞き,剣之介はお歌をいとおしく思った.

雪の降る中,お遊は丈太郎と女(横山リヱ)が仲睦まじく歩いているのを見かけ, 後をつけた.ある家の中で丈太郎と女が愛撫するのをお遊は外から見た. そして藤屋に帰ったお遊は帳面やお金を調べるように与助に命じていた. 実は女ことお菊は兵蔵とぐるだった.兵蔵の目的は, 丈太郎にお金をどんどん使わせることだった.

その晩.風呂場でお遊は丈太郎の背中を流し,背中に引っかき傷を発見. そしてお遊は離れで独りで寝ることにするのであった.

さて主水は忠助と呑んでいた. 何と忠助は主水が菊坂の文次を外へ出したことに気がついていた. 忠助は書付を見せ,こういうものを残しちゃいけない, 牢番に二,三両を渡しとくんですな,と主水に言いながら, 書付を破るのであった.「頑張りまーす」という銀次ら罪人達が乾布摩擦する中, 物陰で主水は文次を詰問した.だが文次は逆に主水を脅した. その直後,お遊が主水を訪ねてやってきた. 丈太郎が兵蔵から金を借りた形跡があったので相談に来たのだ. お遊は自分に万一のことがあったら,これで仇を取ってくれと頼んだ.
主水「おかみさん,死に金にはしませんよ.」

やいと屋も剣之介もこの仕事を嫌がった.だが主水が,必ず死人が出るぞ, と言うと,剣之介は乗り気になり
剣之介「やいと屋.お前,盗人やったことがあるか?」
そしてその晩.剣之介とやいと屋は叶屋に忍び込み, 丈太郎が「死一倍」で金を借りていたことを知った.

翌日.主水がりつに「死一倍を知ってるか?」と言うと, せんは「死になさい」と主水が言ったと勘違いして一騒動. 忠助は「死一倍」のことを知っていた. 例えば主水がせんの命を担保にして金を借りたとする.せんが死んだ場合, 主水は三日以内に借りた金の倍額を返さなければならないのだ.

剣之介とお歌が住んでいる焼け焦げた小屋に岡引がやってきた. 捨て子の貰い手が見つかったので釘を刺しに来たのだ. 岡引の相手をお歌がしたのだが,岡引は剣之介の顔を見たがった. 慌てるお歌.だがちょうど剣之介は顔を白く塗り, さらに「芸道一筋」と顔に書いていたので,事なきを得た.

丈太郎は21歳にもなるのに母親お遊と添い寝したがっていた.お遊は主水から, 丈太郎がお遊の命を担保に「死一倍」で三百両を兵蔵から借りていることを聞き, 驚いた.その頃,兵蔵は丈太郎を脅し,お遊の始末を早くつけろと言った. お遊を殺せというのだ.

藤屋に戻ったお遊を番頭の与助が出迎えた.お遊は泥酔していた. 奥からやってきた丈太郎をお遊はビンタし,奥へ入って寝てしまった. そしてお遊は番頭の与助と情事を開始.それを錠の助は覗き見て, ショックを覚えた.丈太郎は奥から匕首を取り出した.そこへ兵蔵が登場.
兵蔵「丈太郎さん.あんたがやっちゃまずい.」
丈太郎は兵蔵に匕首を預けた.夜更けにお遊が気がつき,丈太郎の布団に入った. しかし,布団の中に入っていたのは丈太郎ではなかった. 菊坂の文次だったのだ.お遊は文次に殺された.
兵蔵「42かね.いい女だったねえ.」
そして現れた与助も殺された.

翌朝.主水は菊坂の文次が前の晩に解き放ちになったことを, 「がんばりまーす」と言う銀次から聞いた. そして主水は奥方と与助が「心中」したことを知った.

早速主水は仕事にすることにした.兵蔵が文次を使って二人を殺したに違いない. やいと屋は茶を入れ,茶柱が立っているかどうかを確認.
やいと屋「へえ.上々の吉だ.」

女郎屋で遊ぶ文次の前にやいと屋が現れた.
やいと屋「こいつが花魁殺しのやいとでして.」
文次はやいと屋の懐中の火種を吹いた.文次は自分が焼いた鍼で仕置された.

丈太郎から金を受け取った兵蔵に主水が襲い掛かった. 主水は不意打ちしようとしたが交わされてしまい,脇差まで抜かれてピンチ. しかし一瞬の隙を突いて反撃し,兵蔵を仕置した.

剣之介が仕置するのは丈太郎だ.丈太郎の前にお歌が現れた.驚く丈太郎. 入れ替わりに剣之介が登場. 剣之介は丈太郎をお遊の遺体のそばまで引きずっていき, お遊の遺体のわきで丈太郎を絞殺した.

しばらく経ったある日.赤ん坊をあやす女の脇を主水が歩いて行った. 主水はわざと赤ん坊を無視して歩いていくのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp