第二十五回

スパイ組織を叩き潰す.
女カメラマンを狙う謎の被写体

脚本:鴨井達比古 監督:永野靖忠

成田空港に一人の男(小林勝彦)が降り立ち,迎えの車に乗って東京へ向かった. 男は口髭をつけて変装していた.彼はアメリカにいることになっていたのだが, 極秘に帰国したのだ.彼は運転手の女(賀川雪絵)に,日本で会うことは危険だ, 自分の顔を知っているものに見られたらどうするんだ,と文句を言っていたが, 女は万全を帰しているから大丈夫だと答えた. そして男と女はもう一人の男(浜田晃)と新宿中央公園であった. アメリカから来た男は男にライターを渡した. そのライターにはマイクロフィルムが入っていたのだ. そこへ女の三人組が写真撮影しているのが見えた. アメリカから来た男の懸念は最悪の形で的中した. 女ともう一人の男は慌てて三人組を追いかけた.

三人組は喫茶店で随分撮影できたとご満悦. 三人組の一人典子は現像代がかかるとぼやいていたが, 残りの二人は典子にはボーイフレンドのじろうがいるから安く上がるだろうと, 冷やかしていた.三人は写真展に写真を出そうとしていたのだ. それだったら自分で現像くらいしろ,と私は思うぞ. カラー写真の現像は難しいが白黒写真の現像は道具と薬品さえ揃えば, 私でもできるほど簡単なのだ.それはともかく, 男と女はしっかりこの会話を喫茶店で聞いていた.そしてその晩, 三人組の一人が車で跳ね殺され,カメラが奪われてしまった.

今週のギャラ交渉

「築地本願寺」で園山がチャンプと会っていた. 二人はコインのあてっこをしていた.チャンプがコインを投げ, 園山が表裏を当てるというものだ.
チャンプ「よし,どっち.」
園山「表.」
チャンプ「ああ,またやがなあ,もう.へい.もう一回行こう.おっし. どっち.」
園山「表.」
チャンプ「くそ.」
チャンプは園山の帽子に千円札を入れた.園山が相当勝ったらしく, 園山の帽子は千円札でいっぱいだ.
チャンプ「ああ,いかん.千円札のうなってもうた.」
園山「一万円でもいいよ.」
チャンプ「一万円? よーし,上等や.勝負したろ.どっち.」
園山「裏.」
チャンプ「裏.」
10円玉は裏だった.
チャンプ「あ,いた,もう.」
チャンプは一万円札を園山の帽子に入れた.
チャンプ「アホくさ.もうやんぺ,やんぺ.やんぺ.」
園山「やはり仏様も正直者の味方をするらしいね. お陰でいいアルバイトになったよ.」
チャンプ「うーん,ほんなのどうでもええがな.仕事の話しようか.」
園山「あ,そうだな.実はねえ,これなんだよ.」
園山はファイルを渡した.
チャンプ「女子大生の轢き逃げ事件?」
園山「ごく簡単な事件なんだけどね,君達も暇だろうし, ちょうどいいと思ってさあ.」
チャンプ「ふん.うまいこと言うて,値切るつもりだっしゃろ. 最低これだけもらわなあきまへんな.」
チャンプは左手を大きく広げた.だが園山の返事は
園山「400.これ以上は駄目だよ.」
チャンプ「あっそ.なあ,園やん,どないでっしゃろ. もう一辺10円玉で勝負しましょうか.わしが勝ったら500, そっちが勝ったら400.」
園山「いいよ.」
チャンプは10円玉を投げた.
チャンプ「どっち?」
園山「表.」
だが出ていたのは
チャンプ「裏.」
園山は口をあんぐり.
チャンプ「悪いね,園やん.仏さんも急に気が変わったらしいわ.はい, 500,500.ほい.500.」
仕方なく園山は500万円を渡した. 築地本願寺から去るチャンプは例の10円玉を投げながら
チャンプ「人がええで,園やんも.」
チャンプが使った10円玉は2枚貼り合わせて裏しか出ないようにしたものだった. ちょっと待て.園山が「裏」と言ったらどうするつもりだったんだ? ちなみにこの手は今回の脚本担当の鴨井達比古さんが執筆を担当した 「太陽にほえろ!」#10「ハマッ子刑事の心意気」で, マカロニがゴリさんに対して使った手でもある. このときはマカロニが先に「裏」と言っている.

調査開始

アロハツーリストでは
ヌンチャク「ああ5時半だよ.早く帰りてえなあ.」
とE・T,マリア,加代子に向かって言っていた.そこへチャンプが帰ってきた.
チャンプ「はい,ただいま.おい,みんな,何しとんのや.」
ヌンチャク「いや,別に.ただ加代子さんが, もうとっくに5時過ぎてるっていうのに仕事が残ってるからって.」
チャンプ「ああ,そら熱心なことですな.」
すると加代子は仕事をやめてこう言った.
加代子「そんなに追い出そうとして.どうして, あたくしをそんなに邪魔にするんですか? あたくし,あたくし, 家に帰っても誰一人迎えに来てくれるわけではなし, ここで仕事をしてるだけで幸せなのに.」
加代子は泣いてしまった.
E・T「いえ,誰もそんな.」
チャンプ「いやあ,そうですよ.我々はいつもねえ, 野川さんにとても感謝してるんですよ.何でもやってくれはるから.あ, あのねえ,僕ねえ,せめて野川さんにプレゼントしようかなあ, 思うてこうてるもんがあるんですけどね.」
加代子「あら.」
チャンプは机から包みを出して加代子に渡した.
チャンプ「これですよ.」
加代子「あたくしに.何かしら.」
チャンプ「あけてみてみ.」
加代子「はい.」
加代子は大喜びで包みを開けたが, 中に入っていたのは青いシルクのパンティーとブラジャーだった.
加代子「小出さん.」
チャンプ「はい.」
加代子「これ,たくしに対する嫌味ですか?」
チャンプ「いえ,嫌味ってそんなあ.」
加代子「だって夫が入院して三年.この方と全く縁のないあたくしにこんな.」
チャンプ「いや,野川さん,そやない,そやないの.これはね, これはあなたのご主人の特効薬ですがな.」
加代子「ええ?」
チャンプ「ま,男っちゅうもんはねえ, 絶えず女性に対してエネルギーを燃やしていくことには病気は治りません. 野川さんがねえ,きれいな体にこれ身につけてチラリズムで迫ったら,え, 病は気から,ご主人の病気,吹っ飛ぶかもしれまへん.」
いつもながら凄い出任せだ.加代子はすっかり信じて微笑んだ.
加代子「そうかしらあ.早速,着てみよう. なんかちょっとちっちゃいからはみでちゃうかも.」
チャンプ「手伝いましょうか.」
加代子「いやあだ.じゃ,あたし,早速やってみますので,お先に失礼致します. まあこんな.ちょっと地味みたい.ありがとうございます.」
いつものごとく,加代子は自分の世界に入って帰っていった.
チャンプ「難儀やなあ.おい.仕事,仕事.」

轢き逃げされたのは青木まゆみ19歳で写真学校の一年生. 前前日の夜に彼女が轢き逃げされ,轢き逃げ犯はカメラを奪って逃げたのだ. それから1時間後に同じような事件が起きた.被害者は河村明美19歳. なんと青木まゆみを跳ねた車と同じ車に跳ねられていた. そして重症を負ってカメラを奪われていた. 二人の共通点は同じ写真学校のクラスメイトということだけ. マリアは彼女達は何か撮ってはいけないものを撮ったのではないかと睨んだ. 目撃者の証言から警察が車の持ち主を探ったところ, 金井ゆういち(浜田晃)47歳のものであることがわかった. 麻布に事務所を構えている自称貿易商だが国際ブローカー, 死の商人などとかくの噂のある男だ. 車は事件のあった夜にきっちり盗難届が出してあった. 金井が手段を選ばずに奪い取ったカメラに何が写っていたのかが, 今度の事件を解く鍵になる.被害に遭った女の子の他にもう一人, 一緒に撮影に出かけた女の子がいた.松田典子19歳.同じ写真専門学校の生徒だ. 被害者の家族の話によると,この日,3人で撮影に出かけたそうだ. だから松田典子も狙われるに違いない. だから松田典子が撮影した写真を手に入れ, 同時に松田典子を護衛することが今回の任務になるだろう. チャンプとマリアは金井を調べ, E・Tとヌンチャクは松田典子を護衛することにした.

典子とボーイフレンドのじろうは明美を見舞いに行っていた. 明美は意識不明になってもう十日. 病院からじろうはオートバイに典子を乗せて自分のカメラ店に戻った. 二人をE・Tとヌンチャクが追いかけた. 典子は自分が撮影した写真をじろうに現像してもらい,写真を調べたが, 不審な写真はなさそうだった. じろうは典子にアルバイトをやめるように忠告してから別れた. それを見ていたE・Tとヌンチャクは, 典子を怪しい二人組の男がつけているのに気がついた. ヌンチャクが典子の後を追い,E・Tはじろうの店, 寺田フォトスタジオを調べることにした.

さてチャンプとマリアは金井の事務所を見張っていた. チャンプとマリアは通りの反対側にあるビルの屋上から見張っていたのだ. 双眼鏡を持ったチャンプは女性が着替えをしているのを覗いていた.
マリア「ねえ,どこ見てるの.ちょっと角度が違うんじゃない. 金井の事務所は4階よ.」
チャンプ「わかってる,わかってる.たまには息抜きのためになあ, 目の保養させてやらなあ.」
マリア「保養の度が過ぎて金井の行方を見失ったらどうするの.」
チャンプ「わかってるっちゅうに.」
仕方なくチャンプは金井の事務所を覗いた.
チャンプ「ああ,そやけどなかなか動き出さんな,金井のガキゃあ.」
そうほざいてチャンプはまた覗き始めた.
マリア「チャンプ.」
見兼ねたマリアはチャンプから双眼鏡を取り上げた.
チャンプ「諦めんぞ.」
チャンプは手で双眼鏡のポーズを取って覗きつづけるのであった.

典子はファーストフード店でアルバイトをしていた.怪しい二人組,そして, ヌンチャクは典子の働く店で典子を監視した.一方, E・Tは寺田フォトスタジオに忍び込み,典子の撮った白黒写真を撮影した. 白黒写真だったら自分で現像できるんじゃないのか,典子.

さて写真撮影された男と女は情事を行なっていた. だが男はその気がないと途中でやめてしまった.写真撮影されるし, 殺人事件は起こるし,男は気が気でなかった. 女は金井はこのことに慣れてるから大丈夫だといい, 疑われるのは金井だと言った. それに轢き逃げ犯は「自殺」していることも付け加えた. さらに男は今日本にいないことになっているのだ. 男は殺すことはなかったと言い,さらに残りの写真のありかを心配していた. 彼が日本に居る事がばれれば彼の一生は目茶目茶になるというのだ. 彼の日本滞在が長引けば長引くほど,彼のアメリカでのアリバイが崩れ易くなる. FBIやCIAが嗅ぎつければ彼の身代わりが人間ドックにいるのが, すぐにばれてしまう.

女は金井に連絡を取った.金井は今夜中に写真を手に入れると答えた. 取引相手とも今夜接触することになっていると金井は答えた.女はせかした. 早くしないと写真撮影された男,倉田がアメリカへ帰ってしまい, 取引が中止になってしまうからだ.その夜.車の中で
チャンプ「なあ,マリア.こういうところで二人っきりになると, なんや妙な気分になるなあ.」
マリア「全然.」
チャンプ「ふん.ああ,ええ匂いや.ええ香水つこうてるねえ.」
とそのとき,
マリア「チャンプ.金井が動き出したわ.」
チャンプ「なんで,こう間が悪いのや.」
チャンプとマリアは金井を尾行した.
マリア「どうしてあんなにぐるぐる回るのかしら?」
チャンプ「つけられんように気いつけとるんやろ.」
マリア「ということは誰か重要な人物に会いに行くつもりね.」
チャンプ「そういうこっちゃ.」
運転しながら金井は振り返った.
マリア「いつまで走り回るつもりかしら.」
チャンプ「いかん.奴さん,どうやら怪しみだしたようや.」
マリア「え?」
チャンプはマリアを降ろし,タクシーを拾わせた. そして二手に分かれて尾行することにした.

その頃.調布駅南口行きの京王帝都電鉄バスから降りた典子を, 例の二人組が襲った.そこへバイクに乗ったヌンチャクが登場し, 二人組から典子を救出. だが男の一人はもう一方の男にサイレンサーつき拳銃で撃ち殺されてしまった. ヌンチャクは典子をバイクで送って行った. ヌンチャクは狙われる心当たりはないかと聞いたが, 典子には心当たりがなかった.しかし, 友達が狙われたことを典子はヌンチャクに話した.

金井があるホテルのエレベータに乗った. マリアも同じエレベータに駆け込んで乗り込み, 金井の降りる階の一つ下の階で降りた. そしてマリアは階段を駆け上がり,金井の入った部屋を確認した. 金井は外国人と会っていた.外国人は倉田の情報が価値のあるものだといい, トランク一杯に札束を詰め,半金だと言って渡した. そして残りは対空ミサイルシステムのプランと交換だと伝えろと金井に言った. マリアは外国人の写真を撮った.

さてじろうは倉田と金井の写っている写真を見ていたが, 彼の目には単に公園で人が会っている写真としか見えなかった. そのとき,暗室から物音がしたのでじろうは暗室に向かった. 男がネガを探っていたのだ. そしてじろうはサイレンサーつき拳銃で撃たれてしまった. じろうは救急車で運ばれた.この事件は「カメラ店に拳銃強盗!!」 「二十才の長男 撃たれて重傷」と報じられた. この事件を新聞で知ったマリアは
マリア「何が拳銃強盗よ.警察なんていい加減なんだから.」
E・Tが撮ってきた写真からチャンプは金井の狙いがわかった. 女の正体をチャンプは知らなかったが, 金井ではない方の男は国防省合同幕僚部に籍を置いていることを, チャンプは知っていた.名前は倉田れいじろう43歳. いわゆる制服組の中の超エリートで異例の出世頭と言われている男だ. しかも彼は一年前にアメリカに出向. 以来一度も日本に帰ったことがないことになっている. そして金井が会っていた外国人はエノ・ルイセンコと言い, 東側某国大使館の一等書記官, 公安筋では例のレフチェンコ以上の大物としてマークしているのだが,いかんせん, (当時)スパイ防止法のない日本では手の出しようがないのだ. 日本に居ないはずの国防省の高官が, 東側のスパイと連絡を取っていることがばれたら命取りだ. 倉田のアメリカでの任務は軍事機密に属することなのでわからない. しかしゴッドの資料によると, 近頃日米合同で行なっている対空防衛ミサイルシステムの開発に, 倉田が参加しているらしい. そのシステムの秘密を倉田がルイセンコに売り渡したに違いない. 彼らは写真を全部取り戻したと思っているから, 取引を済ませたら倉田はさっさとアメリカへ戻るに違いない.

その頃,典子はじろうを一生懸命看病していた.一方, 倉田は女を相手にほくそ笑んでいた. 金井の事務所には取り戻した筈の写真が送られてきた. 泡食った金井は女に連絡した.驚いた倉田は写真の始末をつけろと命じた. 金井の指の動きからマリアは電話番号を調べ,倉田の居場所を突き止めた. 早速E・Tがホテルから出ようとした倉田に接触した. 倉田は用心深くはじめは否定したが,結局,E・Tの言うことを認めた. E・Tは億単位の金を要求. アメリカへ逃げたらあの写真をマスコミにばら撒くと脅して帰って行った.

ヌンチャクは典子のバイト先で典子に会った. さりげなくヌンチャクはペンダントをかけさせた. 典子は電話で呼び出しを受けた.母親が交通事故で病院へ運ばれたというのだ. ヌンチャクはバイクで病院へ送ってやった.しかしこれは罠だった. 「病室」に入った典子は麻酔薬を染み込ませたハンカチで, 口を押さえられて眠らされ,ヌンチャクは殴り倒されてしまった. そして典子は連れ去られた. 気がついたヌンチャクはバイクで追いかけようとしたが,エンジンがかからない. ヌンチャクはE・Tに連絡.E・T,マリア, ヌンチャクは典子の胸にある発信機つきのペンダントを頼りに追いかけた. 典子は逗子のヨットハーバーに連れこまれた. マリアはどの船か途方に暮れていたが, 金井がヨットに乗り込むのをE・Tが発見した.金井は典子を拷問したが, そこへE・Tから無線で連絡が入った.典子と交換に写真を渡すというのだ. 船を出た金井にE・Tは,マリアに写真を持たせ, 典子と交換で写真を渡すと言った. 金井達の注意をE・T達がひきつけている間にヌンチャクは船に爆薬を仕掛けた. 金井達がマリアを連れて船に乗った瞬間,海中で爆発が起こった. その隙にマリアが逃亡.金井も追いかけようとしたが
E・T「よせ.その船には今の数倍の爆薬が仕掛けてあるんだ.」
金井は爆薬を見つけた.ヌンチャクは海から上がってきた.
E・T「このスイッチ一つでその船は木っ端微塵だ.試してみるか.」
金井は爆弾を外そうとしたが
E・T「動くな.観念するんだな.ここで魚の餌になりたくないだろう.」

ギャラが分配された.
チャンプ「ほい.山分け,山分け.」
マリア「チャンプ,今度みたいなスパイがらみの事件にしては, ちょっと割安なんじゃない.」
チャンプ「まあそう言いないなあ.世の中楽ありゃ苦もあるさ. 気にせんと行きまひょ.」
E・T達が去ってから
チャンプ「は.園山のガキ.虫も殺さんような顔しよる.」
そしてアロハツーリストは閉店した.

ハンギング

じろうは元気を取り戻した.典子はじろうの病室に, 自分に届いた手紙を見せていた.
じろう「松田典子様.何の理由もなく君達を襲った奴らが明朝処刑されます. なんだこりゃ.」
典子にもわけがわからなかった.

E・T達は金井にボラバニア共和国大使館へ電話させ, ルイセンコを呼び出そうとしたが,そんなものはいない, という返事しか返ってこなかった. 金井は三角の棒をたくさん並べたところに正座させられ, 金井の腿の上には石が置かれていた.時代劇で良く見る, 奉行所の拷問シーンを思い浮かべてもらえばいいだろう.
E・T「どうやらルイセンコはいちはやく危険を感じて高飛びしたらしいなあ.」
チャンプ「しゃあないなあ.」
チャンプは火のついた葉巻を金井に当てた.金井は熱くて悲鳴を上げた.
チャンプ「おい.教えたとおり,倉田を誘き出してもらおうか.」
だが金井が返事をしないのでマリアが鞭で金井を引っぱたいた.女王様みたいだ.
マリア「ルイセンコはあなたを見限ったのよ.それでもまだ忠誠を立てる気?」
それでも金井は返事をしない.
チャンプ「もう一度,痛い目が見たいか.おい.」
チャンプとヌンチャクは石の上に座った.これは効いた.金井は悲鳴を上げ,
金井「わかった.言うよ.言います.」

その頃,倉田と女は苛立っていた.そこへ電話がかかってきた.
倉田「もしもし.金井か? どうだった.」
金井「今度こそ写真は全て始末した. あんたに接触してきた男も我々の手で押さえてある.」
倉田「そうか.それで?」
金井「あんたもこれでけりがついたかどうか,自分の目で見て確かめたいだろう. 今から出てきてくれ.」
倉田「わかった.どこへ.」

その頃.新宿駅西口にバスが止まっていた. マリアの案内で各マスコミの記者が乗り込んでいた.記者達には, 日本の大物スパイが記者会見をするという連絡と資料の一部が送られていたのだ.

倉田と女は芝浦の倉庫街にやってきた.そして倉庫の中で倉田と女は, 金井が縛られた上に猿轡をされてフォークリフトに乗せられているのを発見.
倉田「金井! お前,こんなところで何やってるんだ?」
金井は顔で何かをさそうとしていた.そのとき
金井の声「倉田を守る為,女を殺した.カメラ屋も襲った. 全部倉田を守るためにやったんだ. 我々にとって重要な情報源である倉田を守ることは… おい,全部喋れば本当に無事に出国させてくれるのか?」
金井はカセットデッキを女に渡し,金井を降ろそうとした.
金井の声「倉田とはまきを通じて三年前からの付き合いだ. 国防省の情報をルイセンコに売りつけてみんなで大儲けした. 情報の詳しい中身は知らないが, 日本とアメリカの軍事機密だと倉田が言ってた.」
金井を降ろし,金井の猿轡を外した倉田は金井に聞いた.
倉田「どういうことだ,これはいったい.」
金井「倉田さん.もう何もかもおしまいだ. ルイセンコは本国に帰れば責任を取らされて地獄だろうが,我々も…ああ.」
そのとき,スポットライトが点灯し,倉田達に当てられた. そして壁が降りて記者達が登場.倉田達は記者の質問攻めにあった. その様子をじろうと典子も見た.警官に連行される倉田達を見ながら
ヌンチャク「なぜなんです? なぜルイセンコが本国に帰るのをみすみす…」
E・T「ゴッドの命令だ.ルイセンコまで吊るしたら, 近々始まる通商条約の改定交渉に悪い影響が出る. だから灰色のまま残しておけってさ.」
ヌンチャク「汚いよ,そんなの.」
E・T「そんなもんさ,国際政治なんて.建前八分に本音が二分. やり切れんなあ.」
じろうは典子の肩を借りて去り,ハングマンも納得できぬまま帰って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp