第十三回

悪徳病院院長の悪事を暴く.
天使を喰うハイエナ病院

脚本:柏原寛司 監督:小西通雄

ある病院に重病の患者がICUに運ばれた. だが別の患者杉本がICUから出されてしまった.杉本の妻, そして看護婦の懇願にも関わらず, 副院長は杉本をICUから無理矢理出してしまった.そしてその晩, 看護婦の上原美和子はその病院,豊里病院を内部告発するための記事を完成させ, 出版社に電話した.だが暴漢が中に入ってきて,記事ごとさらわれてしまった.

今週のギャラ交渉

「銀座ヨットクラブ」で園山がE・Tに指令を出した.
E・T「豊里総合病院?」
園山「内科,外科はもちろん,精神科まで揃ってる総合病院だ. この病院をハンギングしてもらいたい.元凶は勿論,院長の豊里ゆうじだ. 報酬は300万.」
E・Tはこの額に不服そうだ.
園山「不満かね?」
E・Tは何も答えなかった.
園山「あーあ,君もやっぱり小出君と同じ人種なのか.」
E・T「パーフェクトな仕事をするために必要な金額をもらいたいんだ. 最低で500だ.」
園山は口をあんぐり.
E・T「それが駄目なら今回の仕事はパスさせてもらう.」
E・Tは資料を返してしまい,立ち去ってしまった.園山は大慌て.
園山「おい,結城君.」
園山はE・Tを追いかけた.
園山「結城君.結城君.結城君.結城ちゃん. ちょっと,待って.」
園山はE・Tを捕まえ,すがりついた.
園山「300.」
まず封筒を渡し
園山「400.」
懐から札束を出して渡し,
園山「500.」
尻のポケットから札束を出し,そして資料を渡すのであった.

調査開始

アジトでE・Tが指令を説明した.問題の豊里総合病院は鷺宮にあり, 院長は豊里ゆうじ(菅貫太郎). 豊里総合病院は保険の差額請求がやたらと多かったが,設備は素晴らしいし, 医者と看護婦の態度も良いと評判の病院でもあった. だから患者で一杯だった.だが実態は評判とは大違い. 園山の渡した資料に入っていた薬品会社の裏帳簿のコピーを見ると. 必要もないのに大量の薬を患者に投薬して儲けている実態が良くわかる. しかもベッドの空きを無くす為に患者の退院を許可しないのだ. さらに必要のない手術までし,儲けられることは何だってやる, とんでもない病院だったのだ.病院は一種の閉鎖社会だから, 証拠をつかむのは難しそうだというマリアに, E・Tは突破口となる事件を説明した. 豊里病院の看護婦上原美和子が数日前から行方不明になっているのだ. 美和子はある出版社に接触していた. 美和子は悪辣きわまる病院のやり方に我慢ができなくなったので, 内部告発しようとしたのだ. 美和子の失踪を調べることが豊里総合病院を叩くきっかけになるに違いない. E・Tは豊里総合病院を洗うことにし, ヌンチャクとマリアは美和子を探すことにした.

E・Tとマリアがアジトから出たところへ加代子が戻ってきた.
加代子「あら.」
E・T「あ,どうも,おかえりなさい.」
ヌンチャクはロッカーから出られなくなった.
加代子「遅くなってすいません.京都ツアーの切符,取ってまいりました.」
E・T「こりゃ,ご苦労さん.あ,奥さん, ちょっと行っていただきたいところがあるんですが…」
だが
加代子「あら,ちょっと,これ,ハワイの絵葉書. わあ,小出さんですねえ.来週お帰りになる.楽しみですねえ,来週.」
E・T「あ,奥さん,あのう,川崎ツアーへ今から行っていただきたいんですが.」
加代子「川崎ツアーですか?」
マリア「ええ.」
加代子「私,道がわからい.」
E・T「そうしたら,歩きながら説明します.」
加代子「そうですか.」
E・T「ええ.じゃあ,行きましょう.」
加代子が外へ出たと思ったのでヌンチャクはロッカーから出た.だが,その途端,
加代子「あら申込書.」
加代子が戻ってきてしまったのでヌンチャクは加代子と鉢合わせしてしまった.
加代子「あ!」
ヌンチャク「お帰りなさい.」
加代子「アキラさん.そんなところで何してらしたんですの?」
ヌンチャク「かくれんぼです.」
加代子「まあ,かくれんぼだなんてかわいい.少年みたい.」
加代子は全然疑う様子もなく,楽しそうだった.
E・T「あ,そうだ.アキラ,お前,川崎のツアー行ってきてくれ.」
ヌンチャク「はい.」
E・T「な.」
ヌンチャク「行ってきます.」
加代子「川崎のツアーなら私,行ってきます.」
E・T「あ,奥さんはもう休んでてください.どうも,ご苦労さん.じゃ.」
3人とも出て行ってしまった.
加代子「私だけ一人ぼっち.ああ,寂しい.」

豊里総合病院へやって来たE・Tは, 豊里が記者に周りを取り囲まれているところに出くわした. 記者は阿久津という男を警察の手から逃すためにICUへいれ, 阿久津のベッドを確保するために, 重態の患者をICUから無理矢理出してしまったことを質問していたのだ. ここまでなら,どこかで見たような話だ. 代わりに出された患者は死んでしまったらしい.だが豊里は前日の記者会見通り, 阿久津が動脈硬化による脳卒中で倒れたので緊急入院した, 阿久津に追い出されたために死んだ患者などいない,と言って去ってしまった. 実は阿久津はぴんぴんしていた.豊里は阿久津に記者を追っ払ったことを報告し, さらに美和子の件の礼を言っていた. 副院長の緑川は豊里に阿久津と手を組むのは危険だと忠告したが, その辺は心得ていると豊里は緑川に答えるのであった.

早速E・Tは杉本の妻を訪れ,聞き込みを行なった.杉本は脳腫瘍で入院し, 手術したが経過が思わしくなく,危険な状態が続いていた. 杉本の妻は集中治療室へ移してくれと医者に頼んだが,空きがなく, 順番を待っていた.そして1週間ばかり前にやっと ICU が空いたのだが, 入った途端,大東平和連盟の阿久津こうぞうが入院してきたので追い出され, その3日後に杉本は亡くなったのだ.集中治療室にいれば, 杉本は死なずにすんだに違いないと杉本の妻は考えていた. だが警察は何もしてくれなかった.最後にE・Tは治療費を聞いた.1ヶ月入院し, 手術費も含めて400万もかかった.高価な薬を使ったという理由だった. そこへ葬儀屋が来て葬儀のお花を片付けに来たのでE・Tは去ろうとした. だが葬儀屋がアルバイトとして連れてきた男は…前回E・Tに利用された私立探偵, 三好忠治(ガッツ石松)だった.
葬儀屋「三好,速く来い.まだあるぞ.」
三好「わかってますよ.安い賃金でこき使いやがって.」
E・Tが覗き込むと
三好「二枚目!」
E・T「探偵から葬儀屋に鞍替えか?」
三好「アルバイトよ.」
E・T「何がアルバイトだ.」
葬儀屋「三好,速く来い.」
三好「へいへい.まずいとこ見られちゃったなあ.」

アルバイト終了後,三好はE・Tを事務所へ連れ込んだ.
三好「恥ずかしい話だがよ,この頃不景気でな. 私立探偵ってのは金持ち相手の商売だろ. 景気の好不調が運にすぐ跳ね返ってくるのさ.」
E・T「ふーん.求人欄,求人欄.それで葬儀屋さんか.」
三好「アルバイトだよ,アルバイト.一番時間給が良かったんだよ.」
三好は苦笑してお茶を入れようとしたが
三好「あーあ.茶が切れてら.」
E・T「らしいな.」
三好「これで我慢してくれや.」
三好はポットから白湯を湯飲みに入れた.
三好「はい,どうぞ.」
三好は白湯の入った湯飲みを渡した.E・Tが白湯を飲んでいると
三好「な,二枚目よ,なんかいい仕事回してくれよ.」
E・T「うん.」
三好「同じ私立探偵じゃねえかよ.」
E・T「ま,そのうちいい仕事が入ってくるって.」
そのとき,E・Tは室内に縄を張って干してあったパンツとタオルに気がついた.
三好「よ,さっきのうちで何を嗅ぎ回ってたんだい.」
E・T「別に.あ,もう乾いてきたぞ.」
E・Tは話をそらそうとしたが
三好「おう,いいんだよ,いいんだよ.なあよ. 俺に嘘ついたってわかるんだぜ.な,二枚目よ.」
E・T「帰るよ.」
三好「帰さねえよ.男同士の友情だよ.な,頼むよ.仕事くれよ.」
三好は強引にE・Tを引き止め,椅子に座らせてしまった.
三好「まだ帰るには早いよ.握手しようぜ.」
E・T「それはいいよ,それは.」
また関節はずしをくらってはたまったものではない.
E・T「は,は,は.握手はいいの.」

さて美和子が接触した清文出版社にマリアは当たったが,特に収穫はなかった. だがその帰り,マリアの前に恐いお兄さん達(杉欣也ら)が現れた.
マリア「なによ,あんた達は.」
恐いお兄さん「何を嗅ぎ回ってるんだよ.」
マリア「犬じゃないんだから嗅ぎ回るわけないでしょう.」
その答えに満足しなかったお兄さん達はマリアに襲い掛かった. だがヌンチャクが登場し,ヌンチャクを振り回してお兄さん達を倒してしまった. マリアが倒れたお兄さんのバッジを調べると
マリア「大東平和連盟ね.」
ヌンチャク「何が平和連盟だよ.ちっとも平和じゃねえなあ.」
マリアはバッジに盗聴機を仕掛けた. お兄さん達は親分さんに阿久津のガードを固くしろと命じられ,さらに
親分「あの看護婦に関しては注意するように豊里に言っておく.」
盗聴したマリアは
マリア「上原美和子は生きてる.」

E・Tは美和子が病院の隔離病棟に閉じ込められているのではないかと推理した. 隔離病棟には強度のアルコール中毒患者や覚醒中毒患者が収容され, 他の患者の目に触れないように隔離されている. しかしヌンチャクは面が割れているし, 女性のマリアが潜入するのは無理だろう.
E・T「とっておきの男がいる.」
E・Tは三好を利用することにした. E・Tは病院をゆする仕事をしようと三好に持ちかけた. 三好を工務店の社長に化けさせ,入院させることにしたのだ. そしてE・Tは池袋の公園で三好を思いっきり殴った. 三好はやりすぎだと不満そうだったが
マリア「忠さん,探すのはこの女性よ.」
写真を見た三好は別嬪の看護婦を救い出す仕事なので大喜び.
三好「ついでに関節も外しとくわ.」

E・Tは三好の弟に化け,三好を豊里総合病院へ入院させた. 看護婦が来て注射をしようとしたので三好は大慌て
三好「え,やめて.注射やめてくれよ.おい,薬にしてくれよ. 薬にしてくれよ.注射駄目だよ.あいたあ.おかあちゃーん.」
本気で痛がる三好を置いてE・Tは帰ってしまった.
ヌンチャク「どうですか?」
E・T「Okだ.」
マリア「でも悪いみたい.忠さんにあんな役やらしちゃって.」
E・T「アルバイトをやってるよりいいさ.」
マリア「そりゃそうね.」
結構マリアも冷酷だ.
E・T「あの旦那が探ってる間に我々はできる限りの証拠をかき集める. この病院の不正のな.」

マリアは緑川に製薬会社のセールスマンが新薬を売り込んでいる模様を撮影した. その晩,阿久津は豊里に土地の一部を譲れと強請っていた. 三好は馬鹿力で隔離病棟へのドアをぶっ壊して隔離病棟に入り, 覚醒剤中毒になった美和子が閉じ込められている病室を発見した.
三好「ねえちゃんだ.シャブか.」
だが三好は赤外線の警報装置を遮ってしまったので, 隔離病棟への潜入がばれてしまった.三好は関節はずしで駆けつけた男を倒した.
三好「馬鹿.」
だが
親分「馬鹿はお前だ.」
大東平和連盟の親分さんが拳銃の狙いを三好につけてやってきた.

その頃,アジトでは, 緑川にセールスマンが新薬を売り込む様子を撮影した写真を見せ, その代わりに病院が製薬会社からバックマージンを取っていることを, マリアが報告した.そしてヌンチャクが, 使用済みの注射器を高校生に売りつけている様子を撮影した写真を見せていた. 薬局では注射器は手に入りにくいので, 高校生は覚醒剤を打つために病院から注射器を得ていたのだ. そうやって得た金を豊里は土地や無記名の国債に変えていた. マリアが調べた範囲だけでも25億.

次の日.豊里は緑川に, 低血圧患者用の強心昇圧剤であるアルデフレキシロンを用意しろと指示した. 高血圧の阿久津に打って,何かとうるさく要求してきた阿久津を殺すためだ. そして豊里は阿久津に降圧剤と称してアルデフレキシロンを注射した.その頃, 緑川からE・Tは三好が隔離病棟へ移されたことを聞かされた. 緑川達は三好に覚醒剤を打っていたのだ. ハングマンは病院を見張っていた.
ヌンチャク「やばいですよ.早く忠さん助け出さないと.」
マリア「覚醒剤中毒になっちゃうわよ.」
ヌンチャク「助け出しましょうよ,E・T.」
だがE・Tは無言だった.そこへ大東平和連盟の親分さん, つまり早川がやってくるのが見えた.早川はICUへ直行した.
早川「会長!」
豊里「脳溢血です.私がかけつけたときには,もう手遅れでした.」
いけしゃあしゃあと豊里が言うのをICUを覗いていたE・Tも聞いていた. そして隔離病棟の三好の病室では医者二人に
三好「おい,シャブくれよ.おい,おい,シャブくれ.シャブくれ. おい,シャブくれ.シャブくれ.シャブくれ.」
三好は覚醒剤を打つよう懇願した.
医者「わかったよ.打ってやる.」
そのとき,医者達に隙ができた.三好は医者を殴り倒して鍵を奪い, 病室を脱出して美和子の病室に入った.
三好「おい,ねえちゃん.ねえちゃん.ねえちゃん. ねえちゃん,しっかりしろよ.」
だが美和子からは何も応答がなかった.
三好「駄目だ,こりゃ.」
三好は美和子を負ぶって逃げた.階段を上がる三好.そこへ人が. 驚いた三好が振り返ると
三好「二枚目か!」
驚いた三好が大声で叫んだのでE・Tは三好の口を押さえた.
三好「脅かすなよ.俺,気が弱いんだからよー. (美和子を指して)かなりシャブ,打たれてるようだ.」
E・T「忠さん,大丈夫か?」
三好「ああ.あんたからもらった中和剤飲んでなきゃ, 今頃この子とおんなじになるとこだったぜ.」
だからE・Tはヌンチャクやマリアほどは心配していなかったのだ. そのとき,阿久津の遺体が運ばれるのが見えた.
三好「おい,あれ阿久津じゃねえのか?」
E・T「ああ.」
そのとき
緑川「うまくいきましたね,院長.」
豊里「阿久津に生きていられちゃ面倒だからな.まあ一安心だ.」
三好とE・Tはしっかりその会話を聞いてしまった.

さてギャラの分配結果は
マリア「一人115万.」
E・T「よーし,行こうか.」
アロハツーリストは閉店した.

ハンギング

杉本の妻が悲しみに暮れているところへ手紙が投げ込まれた. 杉本の妻は手紙を読んだ.
E・Tの声「あなたのご主人を死にいたらしめた悪党どもに天罰が下ります… 明日,午前10時,豊里総合病院へお越し下さい.」

次の日.
豊里「美和子と男が逃げた? どういうことだ.」
緑川「今朝,隔離フロアへ行ったところ,二人の姿が.」
豊里「早川を呼べ.あいつに探させるんだ.」
緑川「は.」
緑川は早川へ電話をした.
豊里「どうなってるんだ,これは.」
だが
緑川「出ませんね.」
豊里「探すんだ.探し出して連れ出した男を始末させろ.」
緑川「は.」
そこへ電話がかかってきた.緑川は電話に出た.
緑川「はい.何,マスコミの連中が?」
驚いた緑川は豊里に聞いた.
緑川「記者会見の約束なさいましたか?」
豊里「俺がそんな約束するはずがないじゃないか.追い出せ.」
緑川が電話を切って出ようとするとE・Tが現れた.
豊里「誰だ,君は.」
E・T「隔離病室から逃げた男の弟ですよ. 面白い話をいろいろ聞かせてもらいましたよ.上原美和子さんからね.」
緑川「何? おい.」
三好が美和子を車椅子に乗せて連れてきた. 覚醒剤中毒になった美和子の目は座っていた.
E・T「保険料の水増し,脱税,薬漬け,おまけにシャブ漬けまでね. それにもう一つ.阿久津をあんたが殺した事もわかってるんだ.」
豊里は白を切った.
豊里「君は何を言っているのかね.」
E・T「みとめないんならそれでもいい.警察へ彼女を連れて行くだけだ.」
豊里「ちょっと待ってくれ.」
E・T「阿久津殺しを認めるのなら,金で解決してもいい.」
豊里「やはり狙いは金か.いくら欲しい?」
E・T「阿久津殺しを認めるのが先だ.」
豊里とE・Tはしばらくにらみ合った.
豊里「確かに私が阿久津を殺した.」
E・T「じゃまになったからか?」
豊里「そうだ.」
E・Tが指を打つと縛られた早川がヌンチャクに連れてこられた.
豊里「早川さん.」
早川「貴様ー.会長をやりやがったのか.」
豊里「いや,私は別に…」
早川「何? 俺は知ってるんだよ.貴様が会長をやったのを.くっそう. どうなんだ.」
豊里「早川さん,冷静にしたまえ.」
早川と豊里が口論している隙にE・Tは盗聴機を仕掛けた.
早川「俺は知ってんだ,貴様が会長,やったのを! ごたごた言うんじゃねえや.」

その頃,病院のロビーには記者が集まっていた. 長い間待たされているので待ちくたびれているようだ. そこへ看護婦に化けたマリアがやって来た.
マリア「皆さん,阿久津氏の急死について院長を記者会見を行なう予定ですが, もう少々お待ち下さい.」
記者「いつまで待たせるんですか.早くしてくださいよ.」
マリア「恐れ入ります.もう少々お待ち下さい.」
仕方なく記者は椅子に座った.ロビーには杉本の妻も来ていた.そのとき
早川の声「今まで散々会長に世話になっておきながら, その会長を殺しやがって.」
スピーカーから豊里達と早川の口論が聞こえてきた.
早川「院長,貴様.」
豊里「待ってくれ.仕方がなかったんだ.」
早川「うるせえ.」
記者がどよめいた.
豊里「あのなあ,阿久津の代わりに君にもうまい汁を吸わせてやるから. この病院がある限り,金はいくらでも入ってくる.な,頼む. それで手を打とう.」
早川「本当か?」
豊里「邪魔な人間は隔離病室でシャブ漬けにしてやる. 麻酔に使うヘロインも流してやる.」
そこへ
マリア「皆さん,会見場が変わりました.どうぞこちらです.」
記者達,そして杉本の妻は隔離病棟へ連れられていった.
マリア「皆さん,会見場はあちらです.」
奥の部屋の扉に「院長会見室」という紙が貼ってあった. 鍵を開けてはいると早川,豊里,そして緑川が手錠につながれて座らされていた. たちまちカメラのフラッシュがたかれた.
豊里「皆さん,私達は何にもしてないんですよ. ねえ,助けてくださいよ.」
緑川「写真をやめろ.俺は何にもしてないんだよ.」
豊里「君,私達は何にもしてないんだよ.」
早川「外してくれよ,手錠.」
豊里「私じゃないんだよ.」
だが
記者「院長,あなたが阿久津を殺したんですね?」
記者「院長,答えてくださいよ.」
記者「どうなんですか,院長.」
記者「何も知らないことないでしょう.」
記者「ヘロインの横流しもやったんでしょう.」
記者「大東平和連合とのつながりはどうなんですか?」
豊里「何を言うんですか.根も葉もないことですよ,そんなことは.」
早川「お前が会長をやったんじゃないかい.」
豊里「何を言うんだい.」
早川「ふざけるない.」
豊里「何を言ってるんだ.俺は何もしてないじゃないか.」
早川「うるせえ.」
緑川「あー,私は何も知りませんよ. 院長の命令で私は動いていただけですから.」
この言葉を聞いた豊里は驚いた.
豊里「緑川,今更,お前,何を言ってるんだ.」
緑川「そうじゃないですか.私は院長の命令に従って忠実に動いてただけです. 本当なんです.」
豊里「何を言ってるんだ.今までのことを貴様忘れたのか.」
早川「お前ら二人がやったんじゃないか,会長を.」
緑川「いや,私じゃないです.」
豊里「何? わしがいつお前の会長を.」
早川「やったじゃないか.」
緑川「院長が注射を打ったじゃないですか.」
早川「この病院が今までやってこれたのは誰のおかげなんでえ.」
豊里「その前に会長を助けてやったのは俺じゃねえか.」
とまあ3人が怒鳴りあうのを杉本の妻も見た. そしてパトカーのサイレンが響く中,E・T,ヌンチャク,マリアが去って行った.

さて三好の事務所では三好が原稿用紙になにやら書いていた. E・Tが覗くと書き損じの山ばかり.
三好「お,二枚目.」
E・T「どうだ,原稿の進み具合は.」
三好「俺は物書くタイプじゃねえみたいだなあ.」
E・T「彼女の内部告発と忠さんの病院潜入体験ルポを出版すれば, ベストセラー間違いなしだからなあ.病院を強請るより金になるぜ,おい.」
そう言ってE・Tは三好を騙したのだ.三好は辞書を引きながら答えた.
三好「わかってるよ.だから頑張って一生懸命書いてるじゃねえかよ.」
E・T「ま,ドキュメントだからなあ.タイミングを外すと売上に響くぞ.」
三好「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるさいなあ.おいおい,よ.『ねる』って 言う字どうだったけなあ,『ねる』って言う字.」
E・T「そんなもん,自分で探せよ,お前.」
この調子では売上は低そうだ.
E・T「ま,ベストセラーを目指して頑張ってくれよ.な.」
三好「ああ.俺はこれで,ははは,大金持ちになるんだ.」
E・T「じゃあな.」
E・Tは三好の事務所に置いてあった 日刊アルバイトニュースにお金を挟んで去って行った.

「新ハングマン」へ 「ほぼ全話のあらすじ」へ 「ほぼ全話のキャスト」へ 「緊急指令トラトラトラ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp